深い闇に、木々が静かに揺れる。
穏やかな音が、
殺し合いの場に暢気に響いていた。
既に数名の参加者が脱落しているとは思えないほどに、暢気に。
拳を木に叩きつける音がした。一度ならず、二、三度繰り返して。
一人の少年が憤慨していた。
少年――――長谷川昴は、殺し合いという状況に怒りを燃やしている。
否。『殺し合いの参加者』の選定に、怒りを燃やしているのだ。
昴は、バスケットボールの優秀な選手である。
それはプレイングよりも、他者へのアドバイスやコーチングに秀でており、七芝高校の中でも非常に優秀な部員であった。
しかし、とある事件によりバスケットボール部は休部になり、昴もまた、自らの居場所と目標を一度に失ってしまう。
そこからが、長谷川昴の転機だった。
慧心学園初等部女子バスケ部のコーチ。
それが昴の次の居場所。
5人の部員たちが切磋琢磨しながら成長していくのを、彼は確かに楽しんでいた。
そんな時に、昴たちは殺し合いに巻き込まれることになってしまう。
昴は死にたくはなかったし、死んでやる気もない。
が、彼の怒りはそこには向いていない。
湊智花、三沢真帆、袴田ひなた。
彼女たちは、昴の大切な『教え子』であり、可能性の卵だ。
その芽を、殺し合いなどという理不尽が摘み取ることなど決してあってはならない。
だからこそ、それを平気で行う主催者に昴は怒りを燃やした。
「……みんな…必ず俺が、みんなを守ってやるからな」
支給されたのは短剣。
魔術知識が皆無な昴は知る由も無いが、その短剣の名は『アゾット剣』。魔力を入れれば霊装としても機能する、極めて珍しい品だ。
アゾット剣を護身用に携え、昴は慎重に歩を進めていく。
殺し合いに乗る気は、彼には無い。
湊智花たちを、あくまで正義側の行動で守り抜く。
長谷川昴は強い決意を胸に、殺し合いの打倒を目指すが。
彼が視界に捉えた金髪縦ロールの少女との出会いから、昴の知る世界の常識が通用しない『オカルト』の領域を、彼は知っていくことになる―――――。
その出会いが彼にもたらすものは結果的に正しいのか。
それとも誤りで、長谷川昴を破滅の道に導くのか。
答えは解らない。
だが、彼の出会いはもう避けられないくらい近くに迫っていたのだ。
本当に、数秒前に。
□
森の、鬱屈とした茂みに、一人の少女がへたり込んでいた。
縦ロールの金髪が特徴的な、歳の割には発育が良い外見。
世間一般に『美少女』と表現される、目を引く容姿をしていた。
その表情は、絶望。
殺し合い―――バトルロワイアルがもたらしたものではない。
彼女が知った、『彼女たち』の真実に。その余りにも救いの無い、超最悪の絶望に、彼女は絶望していたのだ。
魔法少女。
一つの願いと引き替えに、魔女と呼ばれる害悪を狩る使命を与えられる。しかし、その真実は夢や希望とはかけ離れたものだ。彼女たちは契約の対価として、ソウルジェムという宝石を授かる。魔力が減れば黒く汚れる、としか彼女たちは知らないだろうが、真には違う。
契約の対価は、肉体がどれだけ破壊されようと死ねない肉体になること。
即ち――――ゾンビとなる。
人間としての理から外れた者となり、ソウルジェムが破壊されない限りは死ぬことも出来はしない。
しかし、真の絶望はまた、違う。
それは、魔法少女の運命にして末路。
魔法少女の絶望は、ソウルジェムを汚れさせる。
そして、完全に汚れきったその時。
ソウルジェムが汚れきったその時、魔法少女は魔女となる。
その隠されたルールに、魔法少女・巴マミは絶望した。
何故かソウルジェムが汚れないのはきっと、主催の手が加わったのだろう。
しかし、運命は変わらない。
魔法少女は希望で始まり、絶望に終わるのだ。
―――だから、マミはマスケット銃を手に取った。
そして、視界に入った少年に、静かにその銃口を向けるのだった。
■
「ッ!?」
昴は、飛び込むようにしてマスケット銃の弾丸を間一髪避ける。
突然、見ず知らずの少女から発砲された事実に、昴は当惑していた。
慌てて木の陰に隠れるが、少女は――――巴マミは、ゆっくりと近付いてくる。その瞳に、冷たい殺意を称えながら。
マミは幾多の魔女と戦ってきたベテランだ。
昴がここでアゾット剣を持ってマミに突撃しても、勝率はとてつもなく低い。
マスケット銃に撃ち抜かれて死ぬのが関の山といったところか。
直後、黄色いリボンが突然に昴を木に拘束した。
「(何だ……これっ…!?)」
マミが近付き、昴の額に無言でマスケット銃を突きつける。
完全な詰みだった。しかし昴は、少しでも意志の疎通を計ろうとする。
「……っ、君は、どうして殺し合いなんか――――」
拘束された苦しさと、突きつけられた銃口が言葉を満足に出させてくれない。
それでも、マミの眉が微かに動き、彼女はそのまま語り始める。
「私はね、―――――全ての魔法少女を救済したいのよ」
救済?魔法少女?
昴には訳の分からない話だったが、マミはふざけた様子ではない。
つまり。彼女の言う『魔法少女』は、彼女にとっての常識だと言うこと。
「貴方に話しても意味は理解できないでしょうけどね」
「そうだね。僕には少なくとも理解できない」
新たな声が、二人の会話に割り込んでくる。
端正な顔立ちをした青年だった。
その手には、FN P90が握られ、マミに向けて銃口が向けられている。
「あなたが彼を撃つなら、僕はその後であなたを撃つ」
マミは魔法少女だ。
頭を撃たれたところで、時間が経過すれば何の問題もなく再生する。
が、本当にそうなのか?
ソウルジェムの汚れという機能が奪われているのだから、肉体の再生能力が失われていたとしてもおかしくはないのではないか?
言いしれぬ不安が、マミの引き金を引く勇気を奪っていく。
マミはマスケット銃を静かに下ろす。
「……命拾いしたわね」
マミは静かに体を翻し、二人の元を去っていく。
こうして、長谷川昴の一つの出会いは何とか過ぎていくのだった。
◇
夜神月と、青年は名乗った。
珍しい名前と端正な顔立ちは、昴の脳裏に強く焼き付いていた。
「僕は警官でね、あのキラ事件の捜査をしていたんだ」
「キラ事件?」
は?と月は拍子抜けしたような声を漏らす。
キラ事件。『キラ』と呼ばれる人物が犯罪者をとあるノートによって次々と殺害していった、全世界を騒がせた大量殺人事件。
昴の反応は、それを知らないとでもいうかのようだ。
違う世界の常識に触れて、長谷川昴は何を思うのか?
【深夜/D-3】
【長谷川昴@ロウきゅーぶ!】
[状態]健康、困惑
[装備]アゾット剣@Fate/stay night
[思考・行動]
0:智花、真帆、ひなたを守る。
1:夜神さんと行動する。
2:『魔法少女』?『キラ事件』?
※合宿後からの参加です
【夜神月@DEATH NOTE】
[状態]健康、困惑
[装備]FN P90@現実
[思考・行動]
0:本性を隠して殺し合いに乗る。
1:キラを知らない……?
※死亡後からの参加です
◆
巴マミは、改めて自分の求めるモノを再確認していた。
求めるのは全ての魔法少女への救済。鹿目まどかも、美樹さやかも、暁美ほむらも、佐倉杏子も、その他の全員も、平等に救済する。
「……私が」
全て救う。
【巴マミ@
魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、決意
[所持品]マスケット銃@魔法少女まどか☆マギカ
[思考・行動]
0:優勝して全ての魔法少女を救済する。
1:鹿目さん達には会いたくない。
※本編前時間軸、杏子殺害後からの参加です
最終更新:2011年10月19日 00:04