この世の総ての悪(アンリ・マユ)。
長きに渡った魔術師たちの戦争の果てに求められた万能の願望器『聖杯』――――その中身、全てを呪い叶える呪詛の権化。
結局、それを初めて知ったのは四度目の戦争。
心を殺した、正義を求め奔走した一人の悲しき暗殺者が掴んだ勝利。
彼は知った。
自らの求めたモノが、世界最悪の害悪だったのだと。
宿敵を討ち果たし、『彼』―――――衛宮切嗣は、聖杯を破壊した。
結果、戦争の舞台は黒き灼熱の泥に呑まれ、多くの命が散った。
一つの物語が終わった時に、『宿敵』は何を思うか。
『宿敵』―――言峰綺礼は、金色の英雄王と共に、再び『
この世全ての悪』を求める。
更に。魔術師たちは新たなる戦争に招かれるのだ。
『バトルロワイアル』―――
殺し合いの果てに、願望器を夢見て。
神父・言峰綺礼は再び、久遠の果てを願う。
自分の求めるモノを、ただひたすらに求め続ける―――――。
□
また。言峰綺礼とは違う方向に、何かを求める者も居る。
彼女――――否。
『彼』が求めるモノは、綺礼とは違いはっきりと、理解できていた。
求めるのは―――単純に、ヒトとしての強さ。
強くなりたい。
それが、彼・不二咲千尋の心からの願いだった。
一度味合った『死』を、不二咲は憎悪してはいない。
自分を殺した、『憧れの強者』のことも、憎悪はしていない。
ただ、憎悪しているのは自らの弱さだった。
強くなれないまま、生涯を終えた。強さを手に入れる機会など、沢山有ったのに、目を背けてきた自分の『弱さ』がただひたすらに憎らしい。
皮肉な話だ。
彼を殺害した人物は、彼を『自分より強い』と評したのに、彼は自分自身の強さに気付けなかったのだ。
彼にとってもまた、『バトルロワイアル』は救済に近かったのかもしれない。
今度こそ強く在りたいと願う少年と、今度こそ莫大な悪を手にしたいと願う神父。
彼らの行き着く先は何処か。
残念ながら、世の中はハッピーエンドで終わることは非常に稀だ。
綺礼と不二咲が一度辿った末路のように、不幸な終わりが殆ど。
二人の求道者が交差したとき、祝福の女神はどちらに微笑む―――?
■
不二咲千尋は、迷走していた。
正確には、彼の思考回路が自問自答の迷路に落ちているのだ。
強くなりたいの?
強くなりたい。
怖くないの?
怖い。
怖かったら、それは弱いって証拠じゃないの?
だから、強くなりたい。
でも、怖がってたら強くなんてなれないよ。
もう一人の自分は、辛辣な質問を幾度と無く浴びせかける。
結局、殺し合いは彼にとっての救済などでは無く―――むしろ、更なる絶望の坩堝に月落とされたと言った方が正しい。
迷う、迷う、迷う、迷う。
今の不二咲には、答えが見つけられなかった。
自分は本当に強くなれるのか?
そんな、絶望に限りなく近い不安が、彼の心を覆い隠していく。
「……強くなりたいか」
確かな、声がした。それは深層心理に語り掛けるような声であった。
声の主は、光彩の消えた瞳の男性。
怖い。怖い。この人は悪い人だ。逃げたい。叫んで喚いて、逃げたい。
そんな弱さを、彼は圧し潰して、ただ小さく呟くのだった。
「僕……強くなりたい……弱い自分は…捨てたい…」
男性は薄く微笑む。期待通りの答えに、満足したかのように。
しかし、その笑みも、言葉も、不二咲千尋の為ではない。
言峰綺礼は、見たかっただけだ。
『呪い』に侵された、無垢な子供の姿を。
「なら、私が君を強くしてやる―――精々足掻くんだな」
シュッ、と、銀の刃が一振りされた。
不二咲の頬に一筋の傷が生まれ、彼の瞳が病的な紅色に変わっていく。
正気を、刀に破壊されて、不二咲千尋は確かに『強く』なった。
――――――――――――余りにも汚れた、呪われた強さを得た。
◇
しかし―――効果は予想以上だったな。
興味深い『物』を引き当てた故、あくまで実験台の筈だったが……。
妖刀罪歌。愛の呪いで斬った者を侵す刀、これは素晴らしいな。
私が殺し合いを楽しむ為に、一役買ってくれそうだ。
待っていろ、衛宮切嗣。
貴様は、今度こそこの私の手で冥府に送ってやる。
それまで――――正義の味方を気取っているが良い、紛い物が。
【深夜/B-6】
【言峰綺礼@Fate/Zero】
[状態]健康
[所持品]妖刀・罪歌@デュラララ!!
[思考・行動]
0:殺し合いを楽しみ、堪能してから優勝する。
1:『罪歌』の子達を増やしていく。
2:衛宮切嗣と出会ったなら今度こそ殺す。
※原作終了後からの参加です
【妖刀・罪歌@デュラララ!!】
斬った相手を『罪歌の子』として暴走させる妖刀。
持ち主は精神に罪歌の呪いを受けるが、言峰は今『生きてはいない』ため、呪いを一切受けていない。
◆
ローマ正教20億人の信徒のトップ・『神の右席』の一角。
『前方』のヴェントもまた、バトルロワイアルに招かれた参加者である。
「……ふざけた真似してくれるわねぇ」
ヴェントの発する感情は『怒り』。彼女のプライドは、自分を勝手にこんな催しに巻き込んだ主催者達を許さなかった。
必ず、グチャグチャにぶち殺してやる。
そして、『神の右席』の力をその身に刻みつけてやる。
支給されたのは、彼女にとって必要不可欠なハンマーではなく、ただの金属バットだったが、彼女はそれを適当に振る。
そして、対主催とは思えないほどの邪悪な笑みを浮かべるのだ。
まるで、余裕だとでも言うかのように。
―――しかし。
前方のヴェントは、いかんせん運に恵まれなかったのだろう。
背後から接近してくる外敵には気付けても、その攻撃までは予測していなかった、という、余りにも致命的なミス。
「――――ン、な」
短い断末魔。
前方のヴェントの背中に、数本のナイフが刺さっていた。
彼女が最後に見たのは、両の瞳を真っ赤にした一人の少女――――いや、少年の姿であった。
◇
愛しましょう?愛しましょう?愛しましょう。愛しましょう、愛しましょう愛しましょう愛しましょう。愛しましょう?愛しましょう?
愛愛愛愛愛愛、愛愛愛愛愛。
罪歌の歌が、ただただ、不二咲千尋の脳内を埋め尽くしていた。
彼女の願いは、叶った。
ただ、本人の望んだ形でかどうかは知らないが。
強くなりたかった少年は、今やその『強さ』に狂わされる。
言峰綺礼にハメられたとも知らずに、不二咲はただ、殺すのみ。
罪歌の声に従い、斬って刺して抉っていくだけ―――――――――――――。
【ヴェント@とある魔術の禁書目録】 死亡
【残り135/141人】
【不二咲千尋@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
[状態]『罪歌』による重度の精神汚染
[所持品]投げナイフ(残り14本)@現実
[思考・行動]
0:愛のままに斬り、刺し、抉る。
※死亡後からの参加です
※自我は殆ど残っていません
最終更新:2011年10月19日 00:00