匂宮出夢が地面を蹴り。
ランサーが地面を蹴り。
戦いが始まった。
出夢は槍使い(ランサー)の槍の間合いと強度を脳内で把握しながら、それこそ殺人的な威力の蹴りをランサーに向け低い体勢から放つ。
ランサーもまた、その蹴りを体を後退させることでかわす。
そしてまた、最初の激突で互いに相手が危険な相手だと察した。
匂宮出夢の必殺《一喰い》を防ぐ強度の槍と、殺し屋の蹴りをかわすほどの身体能力。今まで殺し合った相手の中でもかなりやばい相手だ―――と、出夢は苦笑する。
宝具『刺し穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』の上から、ここまで攻撃を響かせる馬鹿げた威力の平手打ち。更に驚異的な身体能力。本当にガキかよ、とランサーも苦笑。
しかし、互いに闘志の萎えは見せない。
むしろ、未知の強敵に心を躍らせるように瞳をぎらつかせている。
「おぉぉぉらぁぁぁぁぁぁッ!!」
「……ッ、やっぱその槍おかしいだろ――――だァが!!それでこそ殺し甲斐があるってもんかねぇ!!ぎゃっははは!!」
ランサーの槍が出夢の眼前に迫るが、逆にその一撃を流し、カウンターの一撃を放つチャンスを自ら出夢は作り出す。そして、一気に間合いを詰める。
出夢の取る構えは《一喰い》ではない。
連続で攻撃するためにも、隙の小さないわば『弱攻撃』で攻めていく。
ランサーの無防備な腹部に一撃目を叩き込み、出夢はにやり、と笑む。
「そう何発もよぉ―――食らってやるほど俺はお人好しじゃなくてな」
膝蹴りが出夢の首元にヒットする。僅かに体勢を崩すが、まだ攻撃可能な間合いだ。しかし、匂宮出夢は敢えて、退いた。優位に立てていた筈なのにも関わらず。
ランサーの槍撃を警戒しての行動だ。
あの槍は一撃貰えばそれだけで致命傷になりかねない。
何せ《一喰い》を受けて尚びくともしない程の強度なのだから。
再び両者が地を蹴り、前へと進む。
ランサーの槍と、出夢の肉体。どちらも立派な凶器であった。
更に。拳と槍を交える中で、出夢はランサーの槍の特性をある程度理解し始めていた。強度こそかなり硬いが、止められないものではない。うまく衝撃を逃がせば止めることも可能だ。
確かに常人なら難しいだろうが、《人喰い》の彼になら不可能ではない。
その隙に《一喰い》をランサーの肉体に叩き込む。
それさえ決まれば、出夢の勝ちは確定したも同然だろう。
カキン、という音。
ランサーは舌打つ。
匂宮出夢の攻撃が今まで簡単には通らなかった訳。
それは彼の宝具を出夢が必要異常に警戒してくれたからでもある。しかし、出夢は既に『刺し穿つ死翔の槍』を流して、逆に攻撃に繋げる方法を見出しているのだ。
これは非常に厄介。
格闘戦ではランサーのステータスで出夢を倒すことは難しい。
――――いや、不可能に近いだろう。
「ハッ――――僕の勝ちかぁ!?」
「嘗めてんじゃねえよ――――――!!」
取られた構えは《一喰い》。
槍を戻して防ぐには時間が少々足りない。
だが、この一撃を貰えばランサーの敗北は決定的なものになってしまう。
不思議と高鳴る、沸き立つ、闘争心。
英霊クー・フーリンの誇りに懸けて。
《人喰い》匂宮出夢を打ち倒さなければならない―――
「―――上、等だ。やってやろうじゃねえか―――!!」
槍を引き戻すまでも無い。
ランサーはそのまま、左腕で出夢の肉体を横に押し退ける。
当然。この方法では《一喰い》を防ぐことは出来ない。
ランサーの取った戦略は、被害を最低にすること。
即ち、左腕を捨ててこの状況を打開する、捨て身の策だった。
鈍い音がした。
不思議と一切痛みは無く、ランサーの左腕が《散らされた》。
しかしこの場では。
匂宮出夢の《一喰い》の、『痛みを感じる前に神経を破壊する』性質が、ランサーの勝率を余計に高めてしまうことにつながる。
静かに、ランサーは口を開いた。
紡がれる言葉は、まさに彼の切り札。
サーヴァントだけに許された、必殺の言葉――――
真名解放。
「刺し穿つ(ゲイ)―――――死翔の槍(ボルク)!!」
槍を、投げた。
不気味な赤い光を発する槍が、出夢に向かい死翔する。
そして。出夢の右目を、槍の切っ先が抉った。
出夢の回避がどうにか間に合ったのがせめてもの救い。
脳まで破壊される事態だけは避け、失明に止めた。
五分五分、だろうか。
ランサーは片腕を、出夢は片目を失っている状況。
ランサーは指で自分の腕の破壊面をなぞる。瞬く間に燃え上がり、出血を止め、いびつな破壊面が整えられる。
さて、これはどうしたものかな―――と、両者は思案していた。
この後戦い抜いたとして。勝利の代償は更に大きくなるだろう。
最悪相討ちになるかもしれない。それに、出夢の場合は紫木一姫もその後で相手にしなければならないのだ。正直、勝ち目は無いに等しい。
□
「すげえな……どうなってんだその指」
「ただのルーン魔術だ」
結局。ランサーと出夢、二人の戦いは打ち止めとなった。
ランサーが提示したのは紫木一姫を見逃すこと。
匂宮出夢が提示したのは左目の処置をすること。
話を聞いてみれば出夢自体
殺し合いを積極的にする気は無いらしく。
勿論ランサーにもそんな気は無い為、戦う理由が無くなった。
紫木を出夢が殺さなければ、別段ランサーに文句はない。
「………俺はとりあえず代わりの腕を探す。形なんざいじっちまえばいいだけだからな」
「僕はぶらぶらさせて貰うとするかねぇ。ぎゃははは」
それじゃあな、とだけ短く言って、匂宮出夢はそのまま立ち去る。
「あのう。姫ちゃんも糸を探したいのでご一緒させてもらうです」
「あー……紫木っていったか……?」
ランサーには、一つ躊躇っていることがあった。
彼が英霊としての力をフルに使うためには、彼と魔術回路を繋ぎ、契約を結ぶ必要があるのだ。
が。この殺し合いでは相手が魔術師である必要は無いようだ。
せいぜい『奇跡の魔法』とやらの恩恵だろうが。
この子供に、契約が理解できるかも怪しい気がする。
「……何か凄い失礼なことを思われている気がするですよ」
しかし。着ているのはセーラー服。つまり、女子高生だろうか。
駄目元だ、と半ばヤケクソでランサーは持ちかける。
「良いだろう……ただし、俺のマスターになるならな」
「良いですよ」
ザ・即答。
■
紫木一姫の右の腕には、奇妙な三画の文様『令呪』が浮かび上がっている。彼女が契約した英霊・クー・フーリンに対する三度までの絶対命令権の徴。
魔術師としての才能は皆無な紫木でも契約できたのは非常に幸運。
《人類最強の請負人》にさえ匹敵する戦闘技術と。
決して折れることの無い闘志を胸に抱いて戦う英霊。
ここに、まさに《ジグザグ》なコンビが誕生した。
【深夜/E-5】
【紫木一姫@戯言シリーズ】
[状態]健康、ランサーとの契約
[所持品]トンプソン・コンデンダー@Fate/Zero
起源弾@Fate/Zero
[思考・行動]
0:《師匠》を探して守る。
1:殺し合うつもりはないが、敵には容赦しない。
2:ランサーさんと行動する
3:《糸》を探す
※『ヒトクイマジカル』死亡後からの参加です
※ランサーと契約しました(令呪残り三画)
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]左腕欠損(処置済)
[所持品]刺し放つ死翔の槍@Fate/stay night
[思考・行動]
0:バトルロワイアルを潰す。
1:一姫を守る。
2:衛宮士郎、遠坂凛、一姫の≪師匠≫を探す。
3:義手を探すか……。
※UBWルート、死亡後からの参加です
※紫木一姫と契約しました
◆
おいおい。いきなりこんなになっちまった。
まさかこの僕が最初の殺しで目玉を抉られるとはな。
しかし、あそこまで心地良い殺し合いは久しくしてなかったっけか。
さて。もうここらで匂宮出夢(ぼく)の、《人喰い》の物語は終わらせたい。妹も失ったし、目が効かなきゃ仕事も満足に――――いや出来るけど、やりずれえ。
何より、殺して潰して殺して潰すのにも疲れた。
僕はこの殺し合いに命を散らせてやる。
勿論タダでとはいかねえ。
僕を満足させるような、とんでもねえ殺し合いの果てに死んでやる。
さあ。
殺戮奇術の匂宮兄妹、最後の殺しをさせて貰おうか。
おっと、もう《兄妹》じゃなかったな。
「…………ぎゃはははは」
【匂宮出夢@戯言シリーズ】
[状態]右目失明(処置済)
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:戦う。
1:最高の殺し合いの果てに殺される。だが手は抜かない。
2:出来れば《死色の真紅》とも殺し合いたい。
3:弱者に興味はない。
※『ヒトクイマジカル』、哀川潤と戦う前からの参加です
最終更新:2011年10月19日 00:26