『殺してやる』
『許さない』
『悪魔め』
―――そうかい。じゃあ君の呪いごと君を殺すよ。
沖崎翔。端正な顔立ちに甘いマスク、更に華麗なサッカーの腕前。
非の打ち所が無い彼は、女子からとても人気があった。そう、『表向きの』彼は。
陰で彼が重ねてきた快楽の罪の数は、もはや数え切れないだろう。
殺人、強姦、窃盗、詐欺、賭博、銃刀法違反。
他にも様々な罪を犯しているが、彼は主に殺人と賭博を好んでいた。
最高の相棒のアーミーナイフ片手に獲物を刻み、金を奪い取る快楽。
時には数百万の利益と損失を発生させる賭博という誘惑。
沖崎は一つたりとも妥協せず。自分が楽しいと思うことだけを全力でこなす。最近だと、ボランティアで行った孤児院で子供を『刻んだ』りもしていた。
祖父は生意気な頑固親父だった。クロスボウで謀殺した。
優しい先生が居た。何となくムカついたので屋上から突き落としてみた。
告白してきた女子の顔が気に入らなかったから、犯して売り飛ばした。
全て隠匿される。
大企業のトップを勤める父の前には、どんな社会常識さえ無力だ。
そんな彼にも、本気で愛している少女が居る。
井岸由那。
沖崎翔が生涯で初めて恋をし、そして恋人となった最愛の少女。
『息を吐くように悪事を働く』彼でさえも、由那を守るためになら国一つを敵に回しても構わないというくらいの情熱は有していた。
「由那……ああ、必ず守ってやるからなぁ」
言葉とは裏腹、瞳には爛々と下卑た光を称えて、沖崎は微笑む。
手の中に握られているのは黒光りする殺人の道具―――グロック17。彼は学生だが、ありとあらゆる悪に精通した彼に隙など無い。散弾銃を片手で撃ったことさえある沖崎に、グロックを扱うくらいは造作もないだろう。
□
「――――かけ、る?」
「……良かった、無事だったか由那」
幸運にも。
沖崎が最初に遭遇した相手は彼の最愛の恋人・井岸由那であった。
怯えた瞳の色が次第に安心に変わり、大粒の涙が溢れ出す。
沖崎は由那に駆け寄り、そっとその体を抱き寄せた。
何度も感じた感覚にしばし身を互いに委ねながらも、由那が落ち着いたのを確認して、沖崎は彼女に穏やかな声色で言葉をかける。
「怖かったか?まあもう大丈夫だ。ここからは天下無敵の翔さんが、由那を死んでも守り通すから」
「……うん、ありがと、翔」
和やかな風景。
どこまでも穏やかで和やかで見ている者さえ安らがせるような――――もしくは嫉妬させるような、あまりに美しい恋人たちの愛。
沖崎翔という巨悪さえ、井岸由那という存在の前では立派な男。
きっと彼らは黒崎の催しを打ち砕き、二人でヴァージンロードを歩むのだろう。いつまでも、どこまでも幸せに、永遠の愛を誓うのだろう。
ただ。
そんなものは幻想だ。
沖崎に、そんな幻想などは通用しない。
ダァン
乾いた破裂音が一つ、鳴った。
沖崎は全ての意味を知り。由那は状況が理解できなかった。
つい先ほどまで『恋人』を体現していた二人の片割れが、由那の腹に銃口を突きつけているなんて、理解することなど出来はしないだろう。
「……かけ、る…………どう、して」
ダァン
二発目の破裂音。
由那の額に赤い孔が開き、ゆらり、とその肉体は真後ろに倒れていった。
「あ……悪ぃ、間違えて引き金引いちまったよ……いけないな、この癖どうにかしないと恋愛もできないぞ」
『間違えて』。それは何の比喩でもなく、本当に言葉通り。
ただ、ついうっかり引き金を引いて殺してしまった。殺意も何もなく、ただ間違えて殺してしまったのだ。
初めての経験ではない。もう既に5,6人は誤って殺している。
彼はその全てにおいてこう言った。『間違えた』と。
「すまなかった、由那――――お前はいい女だったから暫くは忘れない」
へらへらと。
まるで何か軽い失敗のように、彼は恋人の死を笑い飛ばした。
由那の死体のデイバックから適当に物を引っ張り出す。
まずはサバイバルナイフ。そして発煙筒。発煙筒でおびき寄せて、グロックで確実に殺す、がセオリーだろう。沖崎はにやり、と下卑た笑みを浮かべる。
「死んでやる気はないぞ……人生、もっと楽しまなくちゃなあ
【井岸由那】 死亡
【残り44/47人】
【深夜/D-5】
【沖崎翔】
[状態]健康
[所持品]グロック17、サバイバルナイフ、発煙筒
[思考・行動]
0:生き残れるならどうでもいいが、
殺し合いを満喫する。
1:ぶらぶらする
【沖崎翔(おきざき・かける)】
赤髪、身長180cm。
サッカー部のエースにして甘いマスクで女性を魅了して虜にする。しかし本質はありとあらゆる悪に精通する極悪人で、かなりの恨みを買っている
【井岸由那(いぎし・ゆな)】
黒髪のボブ、身長159cm。
美術部で、沖崎翔とは相思相愛の恋仲。少々気が強い。
最終更新:2011年10月18日 23:52