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空ろの白と狂い咲きの黒、そして蹂躙の紅(後編)

vセラフィムはバーサーカーの無防備な左腕に狙いを定める。
この位置からの首刈りは難しい。
なら、確実に片腕を斬り落とす。確実に戦力の一つを奪ってやる。

彼女は再びバーサーカーの元へ駆けていく。限りなく零に近い、だが零ではない確率に賭けて、彼の元へ駆けていく―――――。


◇◇◇


【《戯言遣い》VS征服王イスカンダル】



ぼくの背後に立っていたのは、大男だった。
筋肉質な肉体と精悍な顔つき。『男』というより『漢』が似合うような。

風貌もまた、とてつもなく奇抜な格好をしている。
赤い髪の毛に、何処か中世風の衣服。極め付けはその背中に羽織っているマント。………うーん、ぼくの経験上、嫌な予感しかしないんだけど。
変態誘因体質とはつくづく厄介なものだ。

男は暫くぼくを見ていたが、やがてその口を愉快そうに歪めた。


「問わせてもらおうか、坊主!!貴様、よもや殺し合いに乗ってはおるまいな?」


屈強な外見にふさわしい低いトーンの声が、ぼくにかけられる。
しかし不思議と威圧感は無い。
どちらかといえば楽しむような、心が躍っているような。

殺し合いに乗っているのか―――なんて、また傑作な質問だ。

というかぼくがもし殺し合いに乗っていたらどうするんだ。
幾ら屈強な大男でも、ショットガンでこの距離から撃たれたら死ぬだろう?――――――――あ、前言撤回。ソウドオフで零距離射撃されて生きてるような人もいるんだったね。

「……ぼくは乗ってませんよ」

出来る限り簡潔に、しかしぼくの言いたいことを全て表した。

すると大男はさも愉快そうに口の端を吊り上げ、そうか、と呟く。
次にぼくの全身を頭の上から足の先まで見ていく。
あまり肉体を凝視されるのは気分の良いものではないし、ぶっちゃけこの人の素性も全然全くこれっぽっちも読めないから、情報交換もしておきたい。


「うむ………ウェイバーに匹敵し得る痩せ型よのぅ」
「余計なお世話です―――あなたは何者なんですか?正直ぼくの目には筋骨隆々の不審者にしか見えませんが」


ハハハ、と陽気に笑う大男。
正直不安しか無いのだけれど、相手も情報交換する気はあるらしい。何かこの………唯我独尊って感じは、狐さんと違う形で哀川さんに似てる気がする。


「余は征服王イスカンダル―――古代マケドニアの征服王である!!」


征服王?イスカンダル?古代マケドニア?
意味不明。


ぼくの予想の遥か斜め上を行く言葉に、さすがに混乱する。
古代マケドニア。
それがどれほど昔の時空のモノかくらいは何となく理解できる。
征服王。存在は知らないけれど、この大男・イスカンダルさんは一切虚言を吐いている様子はない。だが、古代マケドニアの王なんて、この現代に存命している筈がない。
一応、寿命を無視した人間をぼくは一人だけ知っている。
けれど『あの子』は、もうこの世に存在していない。

なら、このイスカンダルさんもまた、不死者なのか?

――――それはまた、戯言だ。


「ぼくはただのしがない戯言遣いです―――――名前は《戯言遣い》《いっくん》《いーたん》《いの字》《いー兄》《師匠》、エトセトラ。お好きにお呼びください」


とはいえ、こんな巨漢に《いーたん》なんて呼ばれたらぼくはきっと嘔吐して脱水症状起こして乾燥死した挙げ句の果てに死して尚生き地獄を味わうだろうけどね。

「よし!では余は貴様を《いーたん》と」
「すいませんやめてください許してくださいすんません」

ぼくは心の底から嘆願した。
イスカンダルさんはどこか抜けている気がする。

「むぅ。では《戯言坊主》と呼ばせてもらうとしよう」

これまた珍しい呼び方を。普通に《坊主》で良かったんじゃないか?
自称征服王だ、呼び名も仰々しくするのがこの人なのだろう。


「よし。では行くか戯言坊主」
「―――――――――――――は?」
「何を素っ頓狂な声を出しておる、馬鹿者。今からあちらで暴れている奴と矛を交えに行くのだ。貴様も、来るであろう?」


イスカンダルさんが指差したのは、最悪の方向。
先程からぼくの行く手を遠回しに阻んでいた、あの怪物が居る方だ。
……………はぁ。
ぼくはかなり深刻な溜息を吐いた。

「あのですね、イスカンダルさん。ぼくは殺し合いを進んで潰したりする気はありませんよ。あんな怪物と戦うなんて以ての他です」

責められる覚えは無いぞ。ぼくはただの人畜無害な一市民だからな。
ああいう怪物を相手取るのはぼくの―――戯言遣いの役割じゃあない。そんなのはもっと格好良い、ヒーローみたいな人たちの仕事だ。
ぼくの仕事は、ただ戯言を降り撒くだけ。
そして、最悪、最低最悪条件として玖渚友だけでも助け出す。

姫ちゃんや出夢くんに思うところがないなんてことはない。


西東診療所での事件。
《人喰い(マンイーター)》の匂宮出夢が起こした殺人事件。
勿論ぼくも渦中に居て、ぼくだけは死なずに済んだ。

変人の教授に、不死の少女。そして、《人喰い(カーニバル)》。
朝が来たらみんなみんな無惨に、呆気なく殺されていた。


そして。
ようやく普通に戻り始めた紫木一姫も。
両腕が千切れて首があらぬ方向を向いて虚ろな瞳で、殺されていた。

その死はぼくに確かに影響を与えた。
だからぼくは、姫ちゃんが生き返ったかもしれないという摩訶不思議なことに、喜ぶべきなのかもしれない。それが、《人間》として《製品》として普通のことなのだろう。


そしてその犯人、出夢くん。
彼は妹を代償として生き延びる。
しかし、そんな彼も九月末のとある戦いにて、二ヶ月遅れで命を落とす。《狐さん》の言葉を借りるなら、《時間収瞰(バックノズル)》といっところか。

出夢くん。彼の死も、ぼくは涼しく受け流すことは出来なかった。

なら、今度こそみんなで幸せになろう―――って。そんなものは戯言だ。
みんなが幸せになれる結末なんて存在しない。
少なくともぼくの《無為式》の前では成り立たない。

ぼくは《欠陥製品》で《人間失格》だ。
だから、普通の人が追い求めるものには縋りたくても縋れない。

そのぼくが唯一守りたいと思うなら、それは玖渚友ただ一人だ。
哀川さんを、零崎を、姫ちゃんを、出夢くんを、崩子ちゃんを、玉藻ちゃんを、全て裏切って殺して解して並べて揃えて晒してでも、玖渚だけは守ってみせる。

殺し合いには乗らないから、そんなことはしないけど。


「………ほう。貴様、この茶番を潰したいとは思わぬのか?貴様を、貴様の大切な者を巻き込んだ主催共を憎まぬのか?」
「憎いですよ。ぼくの大切な人たちを巻き込んだことは本当に心の底から許せない。けれど―――それこそあの人たちの仕事なんですよ」


そうだ。ぼくはこの茶番において、語り部に過ぎない。
狐さんの時みたいにぼくから戦いを挑むことはない。

イスカンダルさんはぼくの戯言が解せないらしく、怪訝な顔。
征服王のこの人の豪胆さなら、案外哀川さん辺りと打ち解けて、文字通り主催の企みを蹂躙制覇してしまうのではないだろうか。ぼくは割と本気でそう思う。
そうだ、やっぱりこの感じは哀川さんだ。
征服王イスカンダルと《人類最強の請負人》哀川潤。
全く違う。


なのに、二人は同じだ。
この辺り、ぼくと零崎の間柄に近いものがある。

「そうか。貴様は予想以上の愚か者であったな」

唐突に。
ばっちーん、という小気味良い音がした。
少し遅れてぼくの額に鋭い痛みが走る。デコピン、だろう。
この体駆からの一撃は予想を遥かに越えて痛い。額に響く。

「――――しかァし、気に入ったぞ戯言坊主」

行動とは裏腹に、さも愉快そうにイスカンダルさんは微笑む。
シニカルで豪胆な笑み。ぼくは既視感を覚える。

「やはり貴様、余と共に来い。余の覇道を見せてやる」

覇道。
この人がもしも本当に、古代マケドニアの征服王だとしたら。
この人はどれだけの人の未来を狂わせてきたのだろうか。
唐突に現れた侵略者たち。刃と矛を携え迎え打つ兵士たち。
それらを苦もなく蹴散らし、国を略奪していく。
ぼくには、彼の語る覇道とやらは戯言にしか感じられなかった。


「――――――あなたもかなりの戯言遣いですね、征服王さん」


ほう?とイスカンダルさんは驚いたような声を漏らした。
やはり、この人とは相容れない。何より在り方が異なりすぎている。
ぼくは彼の覇道を否定する。
《戯言遣い》を始める。これは本当に下らない、戯言に等しい対決だ。


ぼくは、何がしたいんだろう。


◇◇◇
さて、帰るか。
◇◇◇
◆6LQfwU/9.Mは、予期せぬ最強との遭遇を越えていた。
学園都市最強の怪物から無事に逃げ切れたのは奇跡だったろう。
《手駒》の一つを失ったが、仕方ないことだ。

彼は歩く。
バトルロワイアルからの生還、保身を優先して。
一旦危機は脱したが、あの怪物にもう一度遭遇しないとも限らない。
このエリアに居てもロクな事にはならないだろう。
まず目指すのは、協力者の調達。尤も協力関係など上辺だけで、自分が不利になったら何時でも切り捨てる。もしも殺し合いを潰せそうなら便乗したっていい。

―――――あぁ、こういうの何て言うんだったっけ?

常に有利な側につき、立場を場合によってコロコロ変える。
そんなもののことを形容する言葉が、あったはずだ。


「―――――あぁ、そうだ。蝙蝠っつーんだったな」


蝙蝠。それは自虐ではなく、本当にただ自分を表したものだと彼は自覚している。そして自虐するほど彼は罪悪感や後ろめたさは感じていない。彼は自分を悪と思っていない。


しかしながら、◆6LQfwU/9.Mは最大の災厄を見落としていた。
彼を破滅させ、策も何もかも通用しないだけのイレギュラーを。
本来彼を守るための支給能力『妄想彼女』・『支配願望』。
『支配願望』。程なくして彼は彼女を召喚することになる。そしてそれが、彼の計画に一石を投じるだけの誤算となる―――――。


【深夜/B-6】
【◆6LQfwU/9.M@非リレー書き手】
[状態]健康
[所持品]不明支給品
[思考・行動]
0:自分の命を優先し、生きて帰る
1:基本的には誰も信用しないが、利用する同行者は欲しい
2:このエリアから出る。
3:書き手たちにはとりあえず能力的な意味で警戒。
※一方通行に『頭脳明晰』を譲渡しました

【能力説明】
『妄想彼女』
三種類の少女を召喚できる。各個が個性・意志を持ち、参加者には含まれない。
『支配願望(ヤンデレーション)』『頭脳明晰(カリキュレーター)』『二面性格(ダブルパラメータ)』の三種。

■■■

「ではイスカンダルさん。あなたの唱える覇道がどれほど愚かな愚論か、どれほどの人々があなたのせいで不幸になったか、分かっていますか?」
「………ん。そうさな……余の馬鹿げたユメに付き合わせてしまった」

戯言遣いと征服王。
覇道に異を唱える戯言と、かつて最果ての海を夢見た王の言葉。
時代と立場を越えて、二人の人物が己の理論を語る。

これがイスカンダルでなく金色の英雄王であったなら、この時点で戯言遣いの命運は尽きている。王に仇なす逆賊として、文字通り『粛正』されて彼の物語は終わっただろう。
自分を否定し、貶める輩も。
当然、自分の覇道に異を唱える輩も、寛容に受け入れる彼だからこそ、この戦いは実現されたのだ。その点、戯言遣いは運が良い。

「なのに、あなたはまだ覇道を唱える。これは、どういうことですか」
「ハハハハ、可笑しなことを宣うのだな。余は征服王イスカンダル!!何時の時代も余が布く覇道が途切れることなどありはせぬ!!」
「また、あなたは繰り返す気ですか」
「応。朋友と覇の道を共に往くのは実に心躍るのでな」
「一体どれほどの人が真の朋友だったんでしょうね」
「余が友と認めれば皆余の朋友だ」


はてさて。この三人称視点から言うと、戯言遣いは呆れていた。
征服王イスカンダル。彼が、あまりに自分と違いすぎて。

彼の思想はまさしく、軍勢を率いる歴戦の勇士のものだ。
もはや、征服王と云う肩書きも信じない訳にはいかないだろう。

イスカンダルは心の中で、これまたおかしなことに。
自らの覇道を、生涯を否定されながらも、その心にある感情は一つ。
そう、『愉快』。
彼は楽しんでいる。この問答を、言うならば『戯言問答』を。
そして、とある人物に戯言遣いを重ねてもいた。

ウェイバー・ベルベット。
彼の感覚ではつい先刻終えたばかりの『遠征』にて、彼の相棒となった人物。プライドばかり高くて、肝心な所はまだまだ未熟な、一人の少年。
形は少しばかり違うが、彼もまた覇道を理解しなかった。
目先の栄光だけを求めて、人生を楽しんでいなかったのだ。
あの頃のウェイバーにはここまでの問答をする度胸もなかっただろう。

しかしウェイバーはイスカンダルの臣下となり、朋友となった。
彼は変わった。
英雄王さえ認めた、立派な一人の男に成長した。

戯言遣いとあの頃のウェイバー・ベルベットはどこか似ている。
戯言遣いは、ウェイバーとは別の意味で人生を楽しめていない。
きっと彼は自身の『在り方』に迷っている。
自身が負の存在であることを理解しているからこそ、彼は生きていない。
少なくとも、征服王の目にはそう映っていた。

なら、これはまた実に心躍る。
あのウェイバーでさえ、あれほどの男に成長したのだ。
この青年が、どれほど自身に触れて変わっていくのか。
そこはまさしく彼の腕の見せ所だろう。

「………うむ。決めた」


え?と、戯言遣いは不意を突かれたような声を漏らした。
次の瞬間、イスカンダルが一本の剣を取り出す。
それを力強く振るうと、漆黒の夜空に突如稲妻が走り、雲の間から――――二頭の、これまた漆黒の雄牛がゆっくりと地上に降りてくる。

これこそ彼の宝具。
かつてゼウス神がゴルディアス王に授けた供物。
その名も、『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』。
これこそが、彼がライダーのクラスに据えられた理由。
立ち塞がるものを蹂躙して制覇する、彼の相棒のような宝具。

「往くぞ戯言坊主。貴様、やはり余の朋友にしたい」
「――――――、へ?」

数分かからぬ内、戯言遣いはなかば強引に同行させられる。


自身の負を自覚する『欠陥製品』と生粋の王気質『征服王』。
二人が向かうはとある難敵の居場所。
神からの呪いにも似た祝福を受けた『最狂』の怪物の元へ。


◇◇◇
「………そうですか。貴方は異能力者なのですね」

透き通った、どこか清楚な印象を受ける声がしている。
声の主。黒色の清潔感を与える長髪に、逆にアンバランスなくらいの貧乳。それに、白いワンピースの下にスクール水着。彼女は人間ではない。とある能力により生み出された紛い物、『頭脳明晰』。
その前に立ち、威圧感を漂わせるは白い髪に紅い瞳の怪物。
華奢な肉体からは想像も出来ないほど強大な存在は、ため息を吐く。

「驚かねェのか。……何つゥか、『あいつら』に似てるな」

一方通行。彼の行ってきた暴虐の実験における、獲物たち。
『妹達(シスターズ)』。第三位の超能力者のDNAマップを元に作り出されたクローン。既に一方通行は、『実験』の課程で一万以上を殺めている。
後に『幻想殺し』の少年に一方通行が敗北して、終わる筈だった。
しかしながら、一方通行の呼び出された時期は最悪。
即ち、『絶対能力進化計画』が壊滅する前の『一方通行』。
『無敵』を求めて、道を踏み外して闇の底に居た頃の。


彼は殺す。
自らが『無敵』であることの一環として、全てを血塗れの肉塊にする。
最強の超能力者は、最悪の道を正しいと誤認したまま、壊れていく。

話を戻そう。
どうにも一方通行の能力『ベクトル変換』が制限されているらしいのだ。そんなことを行える人物など思いつかなかったが、現に彼は反射ONモードが15分しか持続しないことを確かめている。
そして恐らくは、タイムラグもつく。
今の一方通行からは『反射』が消えている。まさに無防備だ。

支給された銃はFN SCAR。
銃の扱いは慣れていないが、それでも丸腰の相手なら圧倒できる。

それで、明らかな丸腰の男を襲撃して、見逃す代わりに貰ったモノ。
それが『頭脳明晰』だ。
一方通行自身が学園都市のトップに相応しい頭脳を持っているため、正直なところ必要性は薄い。しかし、味方は多い方がいいだろう。
頭脳明晰は一方通行が殺し合いに乗ると知っても、とがめなかった。

彼女は参加者ではない。
故に、一方通行と彼女が二人残っても、二人が生還できる。
頭脳明晰は一方通行に従うつもりのようだった。


「では行きましょう一方通行(アクセラレータ)、先ずは片っ端から闇討ちしていくのが良いかと」


「あァ、じゃあ行くかァ」


二人は歩き出す。往くのは悪の道。更なる闇の底に堕ちていく。
最強故に歪んだ少年は、たった一言だけ呟いた。





「―――――――――さァて、シケたお遊びを始めよォか」






【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康、反射回復まであと35分
[所持品]FN SCAR
[思考・行動]
0:無敵の存在になるために殺し合いに乗る。
1:参加者を減らしていく。
2:とりあえず頭脳明晰を連れていく
※『絶対能力進化計画』凍結前からの参加です
※反射は15分使用すると一時間のタイムラグが生じます

【頭脳明晰@非参加者】
[状態]健康
[所持品]なし
[思考・行動]
0:一方通行に付いていく。

◆◆◆

セラフィムの斬撃が、バーサーカーの首筋を深く切り裂いた。
僅かな隙に『秘剣』を叩き込み、やっとのことでバーサーカーを殺害することに成功した。本当に危なかった。後少し遅れていれば、自分が殺されていただろう。

しかし。セラフィムは何も勝ち取ってなどはいない。


「■■■■■■……………」


背筋が、凍り付いた。
地の底から響くような唸り声。終わってなどいなかった。それどころか、まだ始まってすらいなかった―――――バーサーカーは、まだ十一の命を有している。
十二の試練。その何より厄介な効力は、そこにあった。
確かにセラフィムの『秘剣』はバーサーカーを『一度』殺した。
だが、バーサーカーを真に殺すためには、セラフィムの今までの消耗戦を最低11回は繰り返さなくてはならない。
振るえば振るうだけ溜まる疲労も相俟って、回数はもっと多い。

絶望が、支配した。


セラフィムの目的。それは即ち、優勝した後相川歩を蘇生すること。
『彼女』ユークリウッド・ヘルサイズを、壊さないために。
歩を失ったなら彼女は暴走しかねない。
それどころか、同居人のハルナや同胞メイル・シュトロームも悲しむ。

だから。


彼女は殺し合いに乗った。そして、思い知らされた。本物の怪物というものを。


「(嗚呼――――――私、は―――――)」


乱暴に、セラフィムの右腕が肩口から切断された。
あまりにも傷口が大きく、血がシャワーのように吹き出す。
この時、吸血忍者セラフィムはその生涯の幕を緩やかに閉じた。
だが、殺し合いはまだ終わらない。



「――――――――AAAALaLaLaLaLaLie!!」



雷。蒼い稲光を迸らせて、黒い二頭の雄牛が、バーサーカーを綺麗に跳ね飛ばした。その一撃はバーサーカーにクリーンヒットし、その命のストックを一つ削る。
普段のイスカンダルならここからが本番だろうが、ここでは追わない。
倒れているセラフィムを険しい目付きで一瞥し、溜息を吐く。

「……間に合わんかったのぅ」

脈はまだ残っているが、恐らくもう二度と目を覚ますことはない。
戯言遣いは、一つ思っていた。

無為式。

また、か。もうこんな光景を見るのは何度目だったろうか。
また死んだ。よりにもよって、ぼくの目の前で。
ぼくは、この殺し合いにおいても無為式なのか?

――――――――それでも。

【◆meUMrrZs9o@非リレー書き手】  
【セラフィム@これはゾンビですか?】  死亡
【残り138/148人】



【いーちゃん@戯言シリーズ】
[状態]健康、僅かな動揺
[所持品]イサカM37、片翼のインゴット@うみねこのなく頃に
[思考・行動]
0:玖渚と脱出する。
1:イスカンダルさんは……どうしよう
2:姫ちゃんたちは保留しておく
※『ネコソギラジカル(下)』終了後からの参加です


【イスカンダル@Fate/Zero】
[状態]健康
[所持品]不明支給品
[思考・行動]
0:この殺し合いを蹂躙制覇する。
1:戯言坊主を朋友にしたい
2:あのでかいの(バーサーカー)は無理には追わない
※死亡後からの参加です
※『神威の車輪』は後1時間使用できません



□□□
唸り声が不気味に響いている。
狂戦士は未だ死せず、ただ破壊衝動に身を震わせている。
彼は強い。先のイスカンダルとも戦いを続けていれば彼に分があったろう。

二人の命を吸った剣を握り、不気味な唸りをあげながら。
再び、バーサーカーはアテもなくさまよい始めた。


【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]狂化、残り命10
[所持品]射殺す百頭@Fate/stay night
[思考・行動]
0:■■■■■■■―――――――
※Fateルート、死亡後からの参加です
※『十二の試練』の攻撃無力化は弱体化しています

これは殺人鬼ですか? ――――いえ、COOLな芸術家です 投下順 [[]]
GAME START ◆6LQfwU/9.M [[]]
GAME START ◆meUMrrZs9o &color(red){GAME OVER}
GAME START イスカンダル [[]]
GAME START バーサーカー [[]]
GAME START いーちゃん [[]]
GAME START 一方通行 [[]]
GAME START セラフィム &color(red){GAME OVER}

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最終更新:2011年11月19日 09:57
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