「っ! なんだ、外に出たのか……?」
街灯の明かりに照らされ、青年……花村陽介は夜の街並みを見渡す。
周囲に誰もいないことを確認すると一つ息を吐き、つい先ほど起きたことを思い出して頭を抱える。
「いったい何が起きてるんだ……
殺し合いとか書いてあったけど、あれマジなわけねーよな」
妙に真剣な様子で謎の球体に叫んでいた青年の姿がもしや、と思わせるが現実的にありえないだろうと首を振る。
そもそもあの部屋の外に出れたのだからこのまま帰れるのではないだろうか?
そう考えどこかコンビニでもないかと歩き出そうとし、一歩目でずっこける。
「いっつー……! なんだこりゃ?」
足に引っ掛かった物体を拾い上げて見ると、それは小ぶりなデイパックであった。
普通、道の真ん中にこんな物が落ちているわけがない、嫌な予感を感じ取りながら何となしに中身を探ってみる。
手を入れてまず感じたことは、広いということだ。見た目は小さいのだが手を奥まで入れてもまったく端に行きあたらない。
もしかして四次元空間にでもなってるんじゃないか、などと思い始めたところでようやく指先が固い物に触れる。
「なんだ、ゲーム機か」
手の平より一回りほど大きめな二つ折りの携帯ゲーム機。
花村の父親が店長を務めている、大型チェーン店のスーパーであるジュネスでも取り扱っているコーナーがあったはずだ。
と、よく見るとすでに電源が入っていることに気付く。
何故だか鼓動が早くなっていく胸を押さえながら、そっと開いて画面を確認する。
『ようこそバトルロワイアルへ』
「くっそ……」
画面に映し出されていた文字に頭を抑える。
バトルロワイアルという言葉が何を指しているのか気付かないほど彼は頭の回転が悪くなかった。
そのまま操作を続けていくと「ルール」と書かれた項目へと行き着き、その内容を見て思わず顔を歪めてしまう。
「頭の中に爆弾……!? 48時間で爆破って、おい、そんな手術された覚えないっての!」
自分の頭の中に異物が埋め込まれている、その事実に言いえぬ悪寒を感じそっと頭に触れる。
無論、この荷物自体が花村とは無関係な物である可能性もある。
……が、あいにくと彼はここまで異常な状況が続いているのを「偶然」の一言で片づけて逃げてしまえるほど平凡な人生を送ってはいない。
「テレビの中、とは流石に無関係だよな……だけど、あんなことが起こるんだ、似たような現象の一つや二つ、起こったっておかしくない」
マヨナカテレビ。
雨の日の午前0時、テレビを見ると自分の運命の相手が映るというありがちな怪談話。
だが、彼の住んでいた街では少しばかり話が変わる。マヨナカテレビに映った人間が死んでしまうのだから。
彼やその仲間たちもマヨナカテレビに関わる事件によって幾度となく命の危機に曝されてきた、そんな経験がある以上、今の状況を楽観視することなどできはしない。
「殺し合いなんて普通の人間がやれることじゃない、ってことは、この星人とかいう奴が何か仕掛けてくるのか……?」
星人というのが何者なのか花村にはわからないが、彼が敵対したシャドウのような化け物だとしたら恐ろしい相手となりかねない。
「……くそっ、考えても仕方ねーか、とりあえず里中達を探して一緒にいたほうがいいよな、白鐘なら何かわかるかもしれないし」
デイパックを背負い歩き出す。
知り合いがどこにいるかのあてなどないが、じっとしているよりは気が紛れるだろう。
◇
「なんだか大変なことになってるみたいっすね」
花村が視界から消えたのを確認し、彼女はようやく声を発した。
鶴賀学園一年生、東横桃子。
彼女は隠れていたわけではない、始めからずっと花村の目の前にいたが、彼が『気付かなかった』だけだ。
影の薄い人間というのはそれほど珍しくはない、学校のクラスに一人ぐらいは目立たない人というのはいるものだ。
だが、彼女の存在感の薄さは特別だ、歌って踊ればよくやく気付き、直接一対一で話しているというのに気を抜くと見失ってしまう、もはや存在感が「無い」と言えるレベル。
だからこそ彼女は自分がここにいることにかなりの衝撃を受けていた。
集団誘拐、自分が敬愛してやまない先輩も巻き込んだのは何よりも許せないが、それより前に自分のことを誘拐したという事実が彼女にとって衝撃であった。
(どう連れてこられたのかはよくわからないっすけど、私を連れ去ったということは私のことが見えているということ……だけど、清澄のおっぱいさん以外にそんな人がいるなんて)
この存在感の無さを武器としてきた彼女にとってこれは由々しき事態である……と、ふと我に返り強く首を振って考えを追い出す。
「私のことより先輩っす! さっきの部屋で叫んでた人や今の人の言ってたことを考えると、本気で危ないことに巻き込まれてるみたいだし、ほっとけないっす」
さしあたって先ほどの青年を追うべきだろうか、と考えたところでふと思い立ちデイパックを探る。
花村がルールを呼んで悩んでいる間に、彼女は他に何が入っているのか確認していたのだ。
目当ての物はすぐに見つかり、取り出して街灯の明かりに照らして改めて観察してみる。
「これも、ただのオモチャじゃないんすかね……」
パッと見では手の平サイズの銃だが、銃口がなかったり引き金が何故だか上下二つに分かれていたりだとか、そういった知識のない桃子にも実銃じゃないということがわかる。
試しに、とすぐ近くの塀へ上の引き金を引いてみる……が何も起こらない。
(……やっぱりオモチャ?)
拍子抜けしながらそのまま下の引き金も引いてみる。
ぎょーん
「わっ!?」
奇妙な音と共に銃の前方がわずかに開く。
だがそれだけで狙った塀にはやはり何も起こっていない。
「ま、まあそりゃそうっすよね」
馬鹿らしいことを考えていた、と笑いながら踵を返そうとした瞬間。
目の前の塀が破壊された。
「……え?」
内側、ブロックの内部から壊れたかのように破片が飛び散り、そのうちの一つが桃子の頬を浅く切り裂く。
この瞬間、初めて彼女は自分たちがどういった状況に陥っているのか理解した。
【C-5/街/一日目 深夜】
【花村陽介@ペルソナ4】
【状態】健康、
【装備】なし
【所持品】支給品一式 不明支給品1~3
【思考】
1:知り合いとの合流
【東横桃子@咲-saki-】
【状態】健康、
【装備】Xガン@GANTZ
【所持品】支給品一式 不明支給品0~2
【思考】
1:殺し合い……本当に……?
2:加治木ゆみを守る。
最終更新:2009年11月25日 20:50