A-1の洋館。
その一室で一人の青年がデイパックを探っていた。
青年の名前は玄野計、最初の部屋で一人黒い球体……GANTZに声を荒げた男である。
デイパックに入っていた物を片っ端から広げ、息を荒くしながらCOMPとはまた別の機械を手に取った。
「くそっ、地図しか見れねぇ……!」
一言吐き捨て、その機械を置き拳銃を手に取る。
ずしりと重さが伝わり、それがモデルガンなどではないということを伝えてくる。
「実銃……本当に星人じゃなくて人を殺せっていうのか」
彼は他の参加者――加藤・西・和泉の三人を除いた――とは違い、GANTZに
殺し合いを強制されるのは初めてではない。
最もその内容は大分違い、GANTZに呼ばれた者全員で星人と言う異形の生物と戦うというものだ。
部屋に呼ばれた者同士で殺し合えなどということは今までなかったはずだ、少なくとも玄野の知っている限りでは。
そして彼は知っている、ただの銃などでは何十発と撃とうが星人は倒せない、こんな銃を渡されても気休めにすらならないということを。
つまり、これから自分が相手にするのは星人じゃなく、人間なのだ。
「何が起こってる……おっちゃん達はいないし、和泉の奴、死んだはずじゃないのか」
一度GANTZのミッションから解放されたにも関わらず、命のやり取りを楽しみたいと戻ってきた異常な男、和泉。
彼はミッション外に起きた襲撃事件によって死亡したはずだ、しかしあの場にいたのは和泉以外の何者でもない。
それに玄野の他の仲間、共にGANTZミッションを戦い抜いてきた仲間たちはいなかった、彼らと殺し合うなど御免だが、それでも心細いと思ってしまう。
「解放されるには300点、8人も殺せってのか……?」
ルール説明を読み、その数字に落胆の色を表に出す。
星人なら何体も倒してきた、それですら始めは生き物を殺すことに抵抗感があった、人間を殺すことなどとてもできない。
「後は、これか……」
目にとまった一文を指でなぞる。
そこに書かれているのは6時間毎に星人が呼び出されるという説明。
星人一体につき90点手に入るのならば、4体倒せば誰も殺さずに解放されることができる。
……が、それを実行に移すには最初の問題に戻る、実銃では星人に勝つことなど無理だということ。
「ああ、くそっ!」
どうしても手詰まりになってしまい頭を抱える。
星人と戦うならばどうしても武器が必要だ、最低でもいつもなら最初の部屋に用意されている「スーツ」と「Xガン」の二つ。
この二つが無ければ星人とはまともに戦うことさえできない、玄野はスーツがない状態でミッションに参加し生き残ったこともあるが、それもXガンなどの武器をもっていたおかげだ。
今はその両方がない、考えれば考えるほど自分が危機的状況に陥ってることを思い知らされ絶望感が強くなっていく。
(いやっ、まだだ! 落ち着け、落ち着け……そうだ、一人で戦うわけじゃない、もしかしたらガンツの武器を支給されてる奴がいるかもしれない、そいつと協力すれば……)
落ち続ける思考を無理やり奮い立たせ、少しでも有利になれる方法を思案していく。
この思考の切り替えと最後まで諦めない心、これが玄野がGANTZミッションの中で得た物だ。
玄野がどう動くか考えてる間に、その背後で扉が開かれ一人の少女が部屋に足を踏み入れる。
「あ……」
「えっ、わっ」
突然の遭遇に玄野は咄嗟に銃を向けようとするが、相手がただの人間であることを思い出し構えることができない。
少女はそんな玄野の顔を見て自身の赤みの強い髪を弄りながら何か考えている。
「んー……もしかしてあなた、さっきの部屋ででっかい球に叫んでた人?」
「あっ、そう、だけど」
「よかった、事情を知ってそうな人がいないか探してたのよ、あ、私の名前は竹井久、よろしく」
「えっ、と、玄野、計……よろしく」
笑いかけながら右手を差し出され、玄野は銃を置いてその手に応じる。
考えてみれば、突然GANTZに呼ばれただけではどうなっているのか理解できるわけがない、玄野自身初めてGANTZミッションに参加させられた時は星人を目の前にするまで何もわからなかった。
必要以上に怯えていた自分に気恥ずかしさを感じながら、広げていた荷物をデイパックに戻し久と向き合う。
「それで、聞きたいことって……俺も、あんまよくわかってないんだけど」
「そうね……とりあえず、私たち以外にも人がいっぱいいたけど、皆無事なのかしら? 知り合いも結構いたのよね」
「それは無事……だと思う、始まったばかりなら星人がいないみたいだし」
歯切れの悪い玄野の言葉に久は困った顔を浮かべるが、気を取り直してデイパックから荷物を取り出す。
「!?」
「これ、ガンツスーツって言うらしいんだけど、玄野君、あの球のことガンツって言ってたわよね? 何か知って……るって感じね」
「あ、ああ……!」
玄野の反応ににやりと笑みを浮かべ、久はガンツスーツを広げる。
上下2ピースに分かれた黒いピッチリとしたタイツに玄野は希望を見出す。
『女性用』と書かれた紙が貼ってあるそれは玄野が着ても効果を発揮しないだろうが、久がそれを着て共にいてくれれば自分の生存確率は格段に跳ね上がるはずだ。
「それは着た方がいい、着るだけで生き残れる確率が上がる」
「……生き残る、か」
久の反応に玄野は慌てる、嘘っぽいと思われてスーツを着てもらえなければ両者にとって命取りとなりかねない。
「あっ、いやっ、嘘とかじゃなくて……」
「ん? 別に疑ってなんてないわよ、玄野君が必死だってことは見てるだけで伝わってくるわ」
「そ、そっか……」
「察するに、これに書いてある殺し合いって本当のことなんでしょ? みんなが無事かどうか、心配になっちゃってね」
想像以上にすんなりと状況を理解し知り合いの無事を祈る久に、玄野は加藤の姿を重ね合わせる。
危険な思考を持つ西と和泉を除けばこの場にいる自分の唯一の仲間、加藤勝。
彼はGANTZミッションの中でも誰一人犠牲者を出さないようにと奮闘していた、更には星人であろうとできるだけ殺さないようにと捕獲用の銃を常に持っているほどの優しい青年だった。
加藤が側にいればいくらか心強いかもしれない、そんなことを考えて少し情けなくなる。
「ねえ、玄野君」
「え?」
「この殺し合いから逃げる手段って、300点獲得する以外にないのかしら」
「っ!」
久の言葉に玄野の表情は強張る。
先ほど玄野が考えていた星人のみを倒して解放されるという案……それを行うにはまだ考えていない問題点がある。
それは星人の数、二日間というタイムリミットの中、星人が現れるのは6時間に一回、タイムリミットである48時間目を除けば七体しか現れないのだ。
つまり星人だけを倒す方法をとれるのは一人だけ、残りはどうしても参加者同士で殺し合わなくてはならない。
「これを見る限りこの殺し合いに参加させられているのは30人、一人40点だから1200点あることになるわ、そこにこの星人ってのの分が630点加わって1830点……自分の分を除いて1790点ある計算になる」
「あ、うん……」
「この点数を無駄なく配分したところでたったの5人しか逃げれない……こんなのって、酷すぎるわよ」
「……竹井」
点数計算をして沈む久へ、玄野は語りかける。
「……ごめん、何かしら?」
「俺にも、ガンツから完全に解放される方法はわからない」
「……」
「けど、諦めるのは早い、今回は俺の知ってるガンツのミッションとは違う、なら何か抜け道みたいなのがあるかもしれない」
「……無いかもしれないわよ?」
「それなら、作ってやる」
それは、ただの強がりだったのかもしれない。
スーツを持ってる久にやる気になってもらおうという、打算から来た言葉だったのかもしれない。
それでも、例え何の根拠もなかった言葉だったとしても。
「俺が、ガンツに支配された世界をぶち壊してやる!」
その時の玄野は、久にとってとても格好良く見えたのだ。
【A-1/洋館/一日目 深夜】
【玄野計@GANTZ】
【状態】健康
【装備】スタームルガーP85(15/15)@現実
【所持品】支給品一式
【思考】
1:ガンツから解放される
【竹井久@咲-saki-】
【状態】健康
【装備】無し
【所持品】支給品一式、ガンツスーツ(女性用)@GANTZ
【思考】
1:ガンツから解放される
2:知り合いの無事の確認
※ガンツスーツについて
本来個人専用のスーツでない限り例え性別や背格好が同じでも効果は発揮されない。
けれど今回のバトルロワイアルでは「男性」「女性」「子供」の三通りに分かれそれぞれに合っていれば効果を発揮する。
最終更新:2009年11月29日 12:47