とある森の中。一組の男女が、何やら白熱した様子で言葉を交わしている。
男の名前は
小野寺ユウスケ。古代の戦士「クウガ」の力をその身に秘める、次元の旅人。
女の名前は
黒井ななこ。何の因果か、指揮官として異世界の戦争に関わることになってしまった高校教師。
二人が意識を取り戻したとき、視認できる範囲にお互いはいた。
二人の
スタート地点は、すぐそばだったのである。
当初、ななこはユウスケを大いに警戒した。
わけもわからず
殺し合いに放り込まれ、その上目の前に見知らぬ人間がいれば当然の反応であろう。
そんなななこをユウスケはねばり強く説得し、どうにか信頼を獲得したのである。
元来、二人は共に善人である。一度打ち解けてしまえば、話が進むのは早かった。
ひとまず殺し合いに乗らないことを確認した二人は、まずお互いの簡単なプロフィールを伝え合った。
「えっ、それじゃあ黒井さんも異世界に……」
「ああ、小野寺君と違うて、いろんな世界を巡っとったわけやないけどな」
異世界への来訪。それはおよそ普通の人間ならば経験しないであろう稀な事柄である。
だが目の前の女性も、自分のように異世界に行ったことがあるという。
思わぬ事実に、ユウスケは驚きを隠せなかった。
「ほんましんどかったわー。ただの一般市民が、何十年も司令官として戦争やらされてたんやで?
そんでようやくその戦争も終わりが見えてきたと思うたら、こんなことになって……。
やってられへんちゅうねん」
「何十年も……? 黒井さん、今いくつ……」
思わず素朴な疑問を口にしてしまうユウスケ。だが、それはななこの逆鱗に触れる。
ななこは顔に笑みを貼り付けつつ、支給品の拳銃をユウスケの額に向けた。
「ユウスケく~ん、女性に年齢の話をするのは野暮っちゅうもんやで?」
「……はい、ごめんなさい」
いかに人間を超越した力を持つユウスケでも、「変身」していない今の状態で脳天に銃弾を叩き込まれたらひとたまりもない。
彼は素直に、自分の非を詫びることにする。その謝罪を受けて、ななこもあっさりと銃を下ろした。
「そもそも、うちらがおった世界は特殊でな。うちらみたいによそから連れてこられた人間は、肉体的にも精神的にも歳を取らん仕組みになっとったんや。
つまりうちはあそこで何十年も過ごしたとはいっても、まだピチピチの二十代なんやで?」
「いやあ、それでもピチピチというのには無理が……」
「何か言うたか?」
再び、銃口がユウスケに向けられる。
「いえ、なんでもありません」
◇ ◇ ◇
その後、話題はお互いの知り合いのことに移った。
名簿に載っている名前でユウスケが知っているのは、鎌田、
弟切ソウ、アポロガイスト、花織ことはの四人。
その内ことはは異世界を巡る旅の中で出会った、志を同じくする正義の戦士だ。
だが残りの三人は、人類に害をなす邪悪な怪人たちである。
もっとも三人とも、ユウスケのパートナーである門矢士によって倒されたはずなのだが。
そのことがどうにも引っかかるユウスケだが、何らかの手段で生き返ったのだろうと考え深く追求することはなかった。
一方、ななこの知る名前は多い。彼女の所属する幸星党のメンバーであるこなた、かがみ、つかさ、みゆき、けざわ(この内けざわ以外は彼女の教え子でもある)。
同盟国である日本の中心人物、ハルヒ、
キョン、長門、古泉、みくる、鶴屋、五十六。
そして敵対国の一員であった律子、ハルビン、ルーデル、ベリヤである。
「あとはまあ、呂布とか曹操は歴史上の人物やからな。知ってるといえば知ってるわ。
ほんまにうちらの世界の過去から連れてこられたか、異世界のそっくりさんかはわからんけど」
「多いっすね……」
予想外に多く挙がった名前に、ユウスケは思わず冷や汗を浮かべる。正直なことをいえば、全部は覚えられていない。
「まあたしかに多いわな。せやけど……全員が全員うちの知り合いと同一人物とは限らへんねやけどな」
「はい? どういうことですか?」
「今ちょっと言うたけど、異世界のそっくりさんってやつや。うちらが戦争やっとった世界には、うちらとは別の世界から連れてこられた連中もぎょうさんおった。
その中には、『違う世界から連れてこられた同じ人間』が少なからずおったんや。
いや、この言い方やとちょっとわかりづらいか……。
具体例を出すなら、Aという世界から来た
涼宮ハルヒと、Bという世界から来た涼宮ハルヒが同時に存在してたっちゅうこっちゃ」
「なるほど……」
ななこの言いたいことは、ユウスケにもよくわかった。
彼も自分の世界では既に亡くなっているあこがれの女性と、別の世界で再会したという経験があったからだ。
しかし顔や名前はそっくりでも、住む世界が違えばそれは別人だ。現に再会した彼女は、ユウスケの知る彼女とはまったく違う人生を送っていたのだから。
「だいいち最初にルールを説明しとった女の子も、うちらの味方のハルヒとは違う別のハルヒやった。
名簿にはハルヒの名前が二つ載っとるし、少なくともこの場には三つの世界から来た涼宮ハルヒがおるっちゅう話になる」
「つまり顔と名前は知り合いと一緒でも、中身は別人ってこともありうるのか……。
どうするんだよ、これ。これじゃ知り合いに会っても簡単には信用出来ないじゃないか」
頭を抱え込むユウスケ。だがそれとは対照的に、ななこは冷静である。
「まあ、そう悲観的になる必要もないと思うで。別人かも知れへんゆうても、まったく知らん人間に比べたら味方になってくれる可能性は高い。
まずはそいつらとの合流を目指すべきや。最終的にはこのバトルロワイアルとやらをぶち壊すにしても、今はまだ具体的な手段は思いつかん。
それやったら今は、知り合いを守ることを考えた方がええ。たとえ別人やったとしても、顔と名前が同じやつが殺されたら自分も気分悪いやろ?」
「それはもちろんですが」
「せやったら、迷うことはない。さっそく顔見知り探しに行くで。善は急げ言うしな」
ユウスケを促し、移動を開始しようとするななこ。しかし、そこに第三者の横やりが入る。
「ちょっと待った。その話、俺も乗らせてくれねえかな?」
「誰だ!」
夜の闇の中から聞こえてくる声に、ユウスケはすぐさま反応を見せる。
彼がにらみつける先には、一人の男が立っていた。
闇夜だというのにサングラスをかけた、いかにも怪しげな風貌の青年である。
「おっと、そう殺気立たねえでくれよ、兄ちゃん。俺はただ、たまたまここを通りかかって話し声を聞いただけなんだからな」
飄々とした口調で言葉を並べながら、青年は軽やかな足取りでユウスケたちに近づいていく。
「俺はベガ。ただのしがない墓荒らしさ。俺も殺し合いなんてもんはごめんなんでね。
あんたらに協力させてくれよ」
友好的な言葉を続けつつ、ベガと名乗った男はさらに二人との距離を縮める。
「どうも変な感じがするな、あいつ……。黒井さん、とりあえず名簿の確認を。
まずはベガって名前が本当にあるか確認して」
「わかった」
ユウスケに小声で促され、ななこはすぐさま名簿を取り出す。
「ベガ……。たしかに名簿に載っとる名前やな。せやけどなんや? 括弧して横に書かれとる、『タカロイド』っちゅうのは」
「!」
ななこが何気なく口にした単語を耳にしたベガは、ピクリと眉をつり上げた。
「なんだよ、わざわざ名簿に書いてあるのか。余計なことしてくれるねえ。
まあ書いてあるんだったら、隠してる必要もねえな」
口元を笑みの形に歪めるベガ。次の瞬間、ばさりと空気を叩く音が周囲に広がる。
音の発生源は、ベガの翼。
そう、彼の背中からは、黒く巨大な鳥の翼が生えていたのだ。
「俺のもう一つの名前は、タカロイド。BADANの改造人間だ」
翼を最大限まで広げながら、ベガは改めて名乗る。
「なんや、あれ……」
「……!」
予想外の展開に、動揺を隠せないななこ。その傍らで、ユウスケは眉間にしわを寄せる。
「お前……まさか大ショッカーの残党か! それなら、俺がこの手で……」
「落ち着け、兄ちゃん。大ショッカーとか知らねえから、俺。それに言ったろ? 殺し合いなんてごめんだってな。
正体を隠してたのは悪いと思うが、あんたらと協力したいってのは本心だよ。
それとも何か? 俺が化け物だってだけで殺すか? 人種差別なんてのは見慣れてるが、ここでは勘弁してもらいたいね」
「クッ……」
ベガの言葉に、ユウスケの戦意は削がれていた。ベガは間違いなく、今まで自分が葬ってきた異形たちに近い存在だ。
だが、化け物だからといってすぐさま悪と決めつけ殺害するのは正しい判断とは言えない。
それは人間と怪物<ファンガイア>の共存を目指した親友・ワタルへの裏切りにも繋がる行為だ。
相手が友好的な態度で接してくるのなら、こちらも友好的な態度に出るのが筋というものだろう。
たとえそれが、人にあらざる存在であっても。
「わかった。お前を信用する。だが俺たちを裏切るようなら、その時は……」
「わかってる。殺してもらってかまわねえぜ。まあ、そんなことはねえだろうがな」
ベガは、いったん止めた足を再び動かす。そしてユウスケの眼前で止まると、はめていた手袋を外して右手を差し出した。
「これからよろしく頼むぜ」
「ああ」
一瞬の間を置いたあと、ユウスケは差し出された手を自分の右手で握った。
「さて、いきなりだが……。おたくらどっちか、バイクの運転できるかい?」
「え? 俺は出来るけど……」
突然の質問に戸惑いつつ、ユウスケは素直に答える。
「そうか。それじゃあ都合がいい。これは俺からの、お近づきの印だ。受け取ってくれ」
ベガはユウスケたちから少し離れると、自分のデイパックに手を突っ込む。
そしてそこから、一台のバイクを取り出した。
「はあー、こんなでかいもんも入るんか。無茶苦茶なカバンやなあ」
「たしかに、俺もこれがカバンの中から出てきたときはさすがに驚いたぜ。
でもまあ、便利だから別にいいんじゃねえの?」
「それもそうやなあ」
「いや、それでいいのかよ」
朗らかに笑うベガとななこに若干の呆れを感じつつ、ユウスケはさっそくバイクにまたがる。
「じゃあ遠慮なく、このバイク使わせてもらうよ」
「おう。俺は後ろから飛んでついて行くから、置いていかれない程度のスピードで走ってくれ」
「大丈夫なんか? 鳥は夜目が利かんとかよく言うけど……」
「改造人間舐めるなよ、姉ちゃん。夜だろうが昼だろうが、俺の目は普通の人間以上に見えてるんだよ。
こんなサングラスかけててもな」
「はー、そりゃすごいなあ」
「黒井さん、早いところ乗ってもらえます?」
「おお、すまんすまん」
ユウスケに促され、ななこはバイクの後部に腰掛ける。
「しかしこのバイク、前にどこかで見たような……。まあいいか。それじゃあ、出発しますよ」
かすかな疑問を感じつつも、ユウスケはバイクをスタートさせる。
勇猛なエンジン音を響かせ、バイクは闇の中へと走り出した。
◇ ◇ ◇
(しかし……。なんでこうなったのかねえ)
先行するバイクを追って飛行しながら、ベガはふと思う。
実を言えば、彼はこの殺人ゲームの行方などどうでもよかった。
なぜならば、ベガは一度死んでいるからだ。
エジプトにおける仮面ライダーV3との対決。それに敗れ、彼はたしかに死んだはずだった。
なのに彼は、こうして生者としてこの地にいる。
生き返ったことについて、ベガは特に喜びを感じなかった。
なぜなら、今更やりたいことなどなかったからだ。
バダンに対する忠誠心も、ゼロではない。しかし、自分ではもう充分組織のために働いたと思っている。
一度死んで、生き返ってまでバダンのために行動するつもりにはなれない。
家族に会いたいとも思わない。化け物に成り果てたこんな体で、今更どの面下げて会いに行けというのか。
だからベガは、最初に会った人間に自分の進む道をゆだねようと考えた。
何もしたいことがないのなら、他人のしたいことに付き合えばいい。ただそれだけの考えだった。
しかし今の彼の中にあるのは、そんな他力本願の考えだけではない。
ユウスケの顔を見たとき、思ってしまったのだ。こいつに協力するのも、面白いかも知れないと。
(なんで俺は、あいつにカザミの面影を重ねてるんだろうな……。顔も年齢も、全然違うっていうのに……)
風見志郎。自分を倒した男であり、自分が強く興味をひかれた男。
その姿を、ベガはユウスケの姿に重ねていた。しかしなぜそんなことをしているのか自分でもわからず、ベガは困惑する。
彼はまだ知らなかった。生まれた世界は違えど、ユウスケも風見と同じ「仮面ライダー」であることを。
仮面ライダーと、怪人と、ただの人。奇妙な三人組は、先の見えぬ暗闇の中を突き進んでいく。
【一日目・深夜/F-3・森】
【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【状態】健康
【装備】ハリケーン@仮面ライダーSPIRITS
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:バトルロワイアルをぶち壊す。
1:ことは、ななこの知り合いと合流。
2:鎌田、弟切、アポロガイストは遭遇したら倒す。
※映画「オールライダー対大ショッカー」終了後からの参戦です。
【黒井ななこ@こなたとハルヒの第二次世界大戦】
【状態】健康
【装備】ジョナサンの銃@犬マユゲでいこう
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:バトルロワイアルをぶち壊す。
1:幸星党&SOS団のメンバーと合流。
※南米でアメリカ連邦と交戦している時期からの参戦です。
【
ベガ(タカロイド)@仮面ライダーSPIRITS】
【状態】健康、半怪人形態
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:バトルロワイアルはどうでもいいが、今はユウスケたちに協力
※死亡後からの参戦です。
最終更新:2009年11月25日 00:47