朝日の昇る林の中に、イヒヒヒ、と悪ふざけをした子供のような笑い声が聞こえた。
林の中には若い男が二人、一人は、野球チームのウィンドブレイカーを着用した、茶髪の鶏冠頭の青年。
もう一人は、『警戒してください』と言わんばかりの黒い服を着用し、動きにくそうなジーンズを履いた二十歳過ぎの男。
笑い声を上げたのは、後者の方である、二十歳過ぎの男。どこかヘラヘラとしており、青年に対して警戒していない。
対する青年も、不審な格好をしている男に対して、警戒しているような素振りは無かった。
「ここだけの、秘密やけどねぇ……これドッキリ企画なんよ」
「マジっスか!? いや、プロなってから初めてなんスよ!!」
前者のジャージを来た青年の名前は、大塚英哉。一年半前までは、とあるプロ野球チームの、選手であった青年。
守備位置は俊足を生かした二塁で、打順も俊足を生せる一番か二番だった。
ヒットも量産し、ゴールデングローブ賞を新人ながら獲得するなど、球団にとっては失ってはならない戦力だった。
それはともかく、彼は、野球馬鹿と呼ばれる属性に入る、頭の良くない社会人である。
野球選手のヒーローインタビュー以外は、テレビに出たことが無く、黒服を着た男の嘘を信じきっていた。
「このバックを俺に渡せば終了や。後は、その辺におるスタッフに声、かければええ」
「マジ感謝ッス!! オンエアー、楽しみにしているッス」
ドッキリ企画でもなんでもない、ただの嘘。これはただの
殺し合い。
しかし、大塚英哉は気づいていない。いや、気づいていないと言うよりも理解できていないのだろう。
彼は、満面の笑みで、支給品一式の入ったデイバックを渡すと、一礼をして鼻歌を歌いながら舗装された道を歩いていった。
過ぎ去っていく姿を見ながら、二十歳過ぎの男――諏訪悠磨は、支給品を確かめる。
デイパックの中には、食料や水など、生存する上で最低限必要とされる物から、携帯電話やランタンなど生活する上で便利な物まで入っていた。
武器として支給されたのは、64式微声手鎗。明らかに特徴的なその拳銃には、サイレンサーが銃身と一体化している。
そして、二つ目の支給品は、━━━。64式微声手鎗も変わった支給品ではあるが、━━━もまた、変わった支給品だった。
「なーんか、つまらへんなぁ……」
【一日目/深夜/A-3・家】
【諏訪悠磨@出すつもりだったキャラ】
[状態]健康
[装備]64式微声手鎗
[道具]基本支給品×2、戦利支給品×0~4 、???
[思考]
基本:なーんか、つまらへんなぁ……
1:騙してよかったんか?
◇
そんな、嘘とは知らずに、大塚英哉は人生最初のドッキリと勘違いして、上機嫌で道を歩いている。
支給品を全て、騙し取られたとは知らずに、本人はドッキリに騙されている演技をしているつもりだが、笑みを浮かべていた。
機嫌よく、ファミリーレストランの自動ドアを通り抜けて、店内へと入る。特別、その行動には意味がなかった。ただ、上機嫌で勢いで入っただけだ。
自動ドアを通り抜けたすぐ先にはレジなどが備え付けられている、カウンターがあり、その横には漫画雑誌などが置かれた低い棚がある。
ファミリーレストランの店内の設備は、ドリンクバーを含めて充実しており、また、客席数も多い。
そして、店内には誰もいない。店員も客も、誰もいない。参加者もいない。
「スタッフさーん、仕掛け人さーん、誰かいないんスか?」
「動くないで。動いたら撃つ」
本棚の影から、金髪短髪の白人女性が散弾銃を向けている。いや、もしかしたら白人男性かもしれない。
金髪の白人は、無表情で散弾銃の銃口を向けており、何時でも引き金を引けると鋭い目つきで、けん制している。
だが、大塚英哉は、それに動じることはなかった。理由は、本物の散弾銃をドッキリの小道具程度にしか認知していなかったからだ。
驚いた演技をしていたが、大根役者より酷く、少し笑っていた。
「何が可笑しい?」
「うわー、こわいっす」
「私を馬鹿にしているの?」
「う、うたないでーっす」
さすがに、棒読みの演技を真剣に目の前でされたら、無表情だった白人も笑いを堪えることは出来なかった。
笑い声を上げながら、ゆっくりと散弾銃を下ろして、大塚英哉に片手を差し出す。
敵意と言うものはなく、共闘を持ちかけるような眼差しだった。
「な、なにっすかー?」
「私は、ジェイミー・バセット。よろしくね」
「大塚ドッキリ終了ッスか?」
「ハァ? 何のこと?」
「デイパックを関西弁のスタッフに渡して、貴方に声をかけたらドッキリ終了じゃないんスか?」
「なるほどね。騙されたわけだ」
◇
「じゃぁ……ヤバイじゃないッスか!!」
ジェイミーは、大塚に小学生に勉強を教えるかのように、分かりやすく説明している。
そのおかげか、大塚英哉は、低い知能ながら、自分が置かれている今殺し合いをしていると言うことと現実を理解できた。
支給品がなくて、尚且つ、超人的な能力を持つ参加者が数名いることも理解した。
「君は殺し合いに乗っていないって判断する」
「俺は、人様にはもう、迷惑をかけるつもりは無いッス」
「殺し合いは貴方には向いてなさそうだ」
ジェイミーは殺し屋だった。元アメリカ軍所属の軍人の凄腕の殺し屋で、大勢の人を殺してきた。
その仮定で、多くの人に殺されそうになり、多くの悪人と出会った。だから一目で、大塚英哉は悪人で無いと理解する。
その時だった。
ガタリという物音が、客席の近くで響いた。
一人の女性。ジャージ姿に軍服を羽織って黒い髪を後ろで束ねており、片手には一丁の中華包丁。
「動くな。動いたら撃つ」
「じゃあ、撃てば」
ジェイミーは躊躇うことも無く、散弾銃の引き金を引いた。
距離はあるが、銃口を真っ直ぐ一直線に黒髪の女に向かって向けられており、躊躇はしていなかった。
散弾銃の銃弾は炸裂して、飛び散りながら――――
女性に被弾することは無く、ショーウィンドーが崩れ落ちる。
女性は咄嗟に避けながらも、間合いを詰めて、ジェーミーを切り付けようとするが、散弾銃で防がれて刃は砕ける。
柄だけになった中華包丁を床に捨てると、客席と遮蔽物にするように飛び込んで隠れる。
「ど、どうなっているんッスか!?」
「とにかくヤバイ状況」
ガシャリと、散弾銃をコッキングすると、隠れたと思われる座席に向かって発砲する。
木製の土台とクッションで出来た椅子は、銃弾に撃たれて弾け飛びながら破壊されたが、女性の死体の気配は無い。
銃声が鳴り響きながら、ジェイミーの方からは血が吹き出す。
数メートル手前に、小型のルガーを構えた女性が立っている。移動したにすれば早すぎる距離だ。
行動に構わず、ジェイミーは発砲。またしても、被弾することなく手前のタイルが弾け飛び、間合いを詰められる。
近距離から、ルガーと散弾銃の銃口を互いに向け合う。
――――だが、もう一つの銃口が、二人に向けられている。
銃口を向けているのは、赤毛の天然パーマ頭のアロハシャツの男。
白衣を着ているが、どう見ても医療機関に属していないと言うことが、一目で分かった。
「武器を下ろしてね。下ろさないと撃つから」
「撃てば、二人とも死ぬけどね」
「あら、あたしが死ぬこと前提?」
「武器を下ろせって言っている」
「この女が銃を下ろせば、下ろす」
「嫌だわ。このおばさん、撃つ気満々」
「もう、止めろッス!!」
謙った言い合いは、大塚英哉が叫んだことにより終了すると同時に、三人は武器を下ろした。
まさか、ここで、大塚英哉が大声を上げること自体、三人にとっては予想外のことだったのだろう。
「俺は馬鹿ッスけど、殺し合いなんてしている場合じゃないんスよ!!」
◇
昔の戦場。バグダット周辺の乾燥地帯の町。これは回想。
三名の武装した、青年とアメリカ軍の小隊が銃撃戦を繰り広げている。
完全武装の米軍部隊が、ここまで手間取っているのは、青年達の装備だった。
通常であれば、パチモンのAK47。しかし、装備していたのは、二丁のWA2000とスコープ付きのG36。
ドイツ軍の哨戒基地が襲撃されて、見事に最新鋭の装備が強奪されたというわけである。
油断していた兵士も、連射式の狙撃銃に倒れていき、二名が死亡、五名が重傷を負っている状況。
一部の班は後退し、激しい銃撃戦を繰り広げているのは、ベータ班だけだった。
「手榴弾を投げろ。このままじゃ、全滅するぞ」
「建物の中には、一般人もいます」
「ジェイミー。仲間と一般人、どっちが大切だ?」
手榴弾を投げた。簡単に爆発し、粉塵が舞う。
三名のうち一人は、破片が刺さった衝撃で、ベランダから転落し死亡。
残る二人のうち一人は、外へ飛び出した挙句、集中砲火を浴びて、血を大量に吹き出して死んだ。
窓からは、ゾンビ映画に出てくるゾンビのような呻き声が上がっている。
そんな中、一人の人影が、こちらへ向かって走ってくる。
軍人の走り方でないと判断し、ジェイミーは引き金を引いた。判断が間違っているとは知らずに。
ここまでが回想の話。
◇
ひとまず、緊迫した空間がピタリと止むと、客席に座って外を眺めるジェイミーにアロハシャツの男――グラニットはコーヒーに渡す。
ジェイミーは警戒しながらも、アイスコーヒーの入ったガラスのグラスを眺める。
「毒なんて入れてないさ、君を殺したら、あの鶏冠頭の兄ちゃんに怒鳴られるだろう」
「……どうもありがとうございます」
グラニットの笑顔に、警戒心を解いたのだろう。ドリンクバーのアイスコーヒーに口をつける。
「ところで、アンタ、軍人かい?」
「そいういう貴方は探偵さん?」
「無事に生還したら、探偵にもなろうかな
「元軍人。今は、まぁ……それなりに食える仕事をしている」
ジェイミーは、まるで嫌な夢を見るかのように苦しそうな顔をして、目を瞑る。
元イラク駐留のアメリカ軍所属の軍人。そして、今は傭兵としてマフィアの抗争に加担していた。
嫌な思い出を忘れるかのごとく、コーヒーを口の中に流し込む。
「勲章持っていた?」
「何個かは、ね。まぁ、一般兵だったから出世には縁がなかったけど」
「じゃあ、民間人を撃ったことはあるかい?」
「あるよ。非武装の子供も撃ったことはある」
「最後の質問―――撃ち殺して楽しかったか?」
「……仲間がそのことで口論して、仲間同士で撃ち合いになった……」
結果は残酷なものだった。彼女は、それ以上は口にしたくなかった。
仲間同士で殺し合い流血沙汰になった戦場など誰がどう見ても、地獄絵図にしか見えやしない。
生き残っても、軍事裁判にかけられる。最悪の状況だ。
「いきなり、何で、そんな暗いことを聞くの?」
「僕は、国境なき医師団の医師でね。米軍の軍人に三つの質問して全部、答えてくれたのは、君が初めてだ」
「嬉しくない一番乗りだ」
◇
【一日目/深夜/A-3・レストラン】
【ジェイミー・バセット@元所有者】
[状態]健康
[装備]水平二連式ソードオフショットガン(0/2)
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:…………。
【一日目/深夜/A-3・レストラン】
【エヴァン・グラニット@一般人】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~3
[思考]
基本:不明
1:不明
【一日目/深夜/A-3・レストラン】
【大塚英哉@一般人】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考]
基本:殺し合いはしないつもり
1:ドッキリじゃないんスかぁ……残念ッス。
【一日目/深夜/A-3・レストラン】
【ヴェル・ロペス@一般人】
[状態]健康
[装備]ルガーP08 (7/8)
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~2、中華包丁(現地調達)
[思考]
基本:???
1:???
[オリキャラ紹介]
諏訪悠磨
ヘラヘラとした性格で京都弁と大阪弁の混じった方言(伊勢弁)が特徴的。 謎が多い。
大塚英哉
野球バカ。野球選手。実は、高校までバスケをしていた。
ジェイミー・バセット
元軍人。マフィアの傭兵を務める女性。ユニセックスな容姿で、美青年と間違えられることが多い。
本人自体は、そのことに関して、特別、気にしていない。
エヴァン・グラニット
国境なき医師団の医師。自称天才名医。
ニコニコとしているが、真意は不明で、必ず誰かに三つの質問をする癖がある。
ヴェル・ロペス
ヴァンパイヤ。美女。運動神経が高いが、優柔不断な一面もある。
| 02:詳しくはYhoo!翻訳で |
目次順 |
next:名も無き男の過酷なる運命 |
| GAME START |
諏訪悠磨 |
:[[]] |
| GAME START |
大塚英哉 |
:[[]] |
| GAME START |
ジェイミー・バセット |
[[]] |
| GAME START |
エヴァン・グラニット |
[[]] |
| GAME START |
ヴェル・ロペス |
[[]] |
最終更新:2012年05月01日 22:50