それほど足場が良いわけでもない道を走って走って、それから走った。
転がるように走って、本当に転がって、膝やら肘やらを擦りむいて、血が滲んで、それでも走った。
とっくに息は切れていて、足は重い。けれど、だって、死にたくないから。
死にたくない、死にたくない、と。ただただ、それだけで走った。
「……っ、も、ダメ……!」
だけど私の体力にはやっぱり限界があって。走り出したところから数百メートル離れた木の陰で、私は膝から崩れ落ちた。振り返れば、もうあの場所は見えない。だけど、私は足が速くないから、きっとあまり距離は離せていないのだろう。
けれどもがくがく震える足は限界を訴えていて、はあ、はあと荒い息を繰り返し、落ち着きたくて水を飲もうとデイパックを探したところではじめて気づいた。
「あ、デイパック……置いてきちゃった」
地図も見なかったせいで、ここがどこかも、走り出した場所がどこかもわからない。多分、「彼女」から逃げる際においてきてしまったんだ。
そう、彼女から。
彼女。
チトセ・ダン。
この恐ろしい島の中、偶然見かけた友人の後姿。頼る人がいなかった私に、それはたまらない安心感を生んだのだった。
「チトセ……っ!」
三つ年上の友人、チトセに、思わず後ろから駆け寄った。彼女は私に気づいていなかったようで、びくりと肩を跳ねさせ、ばっとこちらを振り向いた。
彼女の目元にはいつもと変わらず赤い化粧が施されていて。いつものチトセに、私は涙ぐんで問うた。
ああ、チトセ。怪我は無い? 私は無傷なのだけど、とっても怖いの。どうしてこんなことになっているのかしら? 私、昨日はいつも通りエヴァンジェリン様のお相手をさせていただいてから寝たのだけれど。あなたは昨日変わったことした? どうして私たちはここにいるのかしらね――――。
聞きたいことは沢山あったのに。言いたいことも沢山あったのに。
彼女がデイパックから槌を出した瞬間、そんなものは全て消し飛んだ。
面は私の顔より大きく、柄は私の腕の長さ以上。そんな巨大な槌を、彼女はデイパックから引き出したのだ。彼女の顔を見たら、彼女の表情はまるで雪のように冷たかった。
驚いて動けなくなっていた私に向かって、彼女は槌を振り上げる。槌を持ち上げた両腕が小さく震えている。私を殺すことを躊躇しているのだろうか。
違う。
ただ、重いだけなのだ。
彼女の目は私を捕らえていたが、その瞳は私を「今から壊す」と伝えているのだ。ただ、女性の身体には大槌が重いのだ。だから、多分そろそろおろす。……私に向かって!
そこまで考えて頭が冴えた。
きゃああ、と悲鳴を上げて、私は一気に駆け出した。振り返らずに走ったけれど、どうやら追いかけてくる様子は無い。……よかった、私はまだ生きられる。
だけど、デイパックがなければ何も出来ない。どうしよう。
あの場所に帰るのが一番いいのかもしれないが、場所はわからないし、あの場所には帰りたくない。……チトセが怖い。
次にいいのはなんだろう。他の人に会うことかな。……でも、他の人もチトセみたいだったらどうしよう。怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い……!!
「どうしよう……」
私は独り言が多いのかもしれない。思わず呟いたその言葉が。
「……そこに誰かいるの?」
誰かに聞かれてしまった。
「…………!!」
息がつまった。次の瞬間には心臓が騒がしくなり始めた。思わず傍の木に身を隠す。口を押さえてうずくまっている状態の私を、声の主が見つけているのかはわからない。
「……返事をしてよ。私からいくわよ」
綺麗な女性の声。怖い。出て行くなんて出来ない。怖い怖い。私は隠れられているだろうか。怖い怖い怖い。心臓の音は聞こえていないだろうか。怖い怖い怖い!
「見つけた」
うずくまっていた私を、女性が見つけるのにさして時間はかからなかった。ものの十数秒で、上から声が降ってきた。
「……!」
彼女の顔を見る。金髪の、美しい女性。年は……チトセさんくらいだろうか。彼女のデイパックはチャックが開いているが、中を見ることは出来ない。彼女は安心させるように私に微笑み。
「大丈夫よ。怖がらないで」
「え……?」
「怖かったのでしょう、今まで。もう大丈夫よ」
私を安心させるようなその口調。そしてその美しい微笑に、私が微笑み返そうとした次の瞬間。
「あなたはノエルのために今死ねばいいのだから」
デイパックの中から銃を取り出した彼女に、至近距離で腹を撃ち抜かれた。
「あ……!」
最期に見上げた女性の顔は。
酷く。酷く美しく。
歪んでいた。
【8-E/道/一日目-昼】
【アリサ・スカーレット@Rondo】
[状態]:健康
[装備]:銃(なんの種類かはわかりません)
[持物]:基本支給品
[方針/目的]
基本方針:奉仕(ノエル)
1:ノエルノエルノエルノエル
2:ノエルのためならなんでもする(詳しいことはまだわかりません
[備考]
※ 詳しいことはまだわかりません
※ ただひとつ言えるのは、「ヤンデレ」です。
【ツクモ・サーシャ@UNKNOWN:死亡】
【残り60名】
最終更新:2012年12月20日 21:45