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だからわたしをあいしてちょうだい

アリサ・スカーレットはとある天才ピアニストの恋人である。

そのピアニストの所有する巨大な家を一人で掃除し、そのピアニストの生活を手伝い、そのピアニストと、「そのピアニストの恋人」の名に恥じぬよう、自分を磨いた。
しかし、その恋人はアリサを愛してはいない。
アリサはなぜそんな生活を送っているのか? 答えは一言。

ノエル・ドルチェと共にありたいからだ。

ノエル・ドルチェ。音楽に興味の無い者でも大抵は知っている有名人で、音楽界では若き天才と称されるピアニスト。アリサは彼を愛していた。
叶うことならノエルと「本当の恋人」になりたかった。ノエルの興味は殆どピアノにしか向かない。だから彼女は彼に愛してもらうことを決意したのだ。
ノエルと対等の立場でありたい。友人から初めてでもいいから、ノエルの傍にいたかったのだ――――。

「……ノエル」
そして、現在の状況。愛して愛して愛してやまないノエルが今まさに死にかけているかもしれないのだ。もしノエルが死んだら、死んだら!!
「殺させない。ノエルはこれからもずっとずっと私と一緒なの……!」
自分よりノエルのほうが身体能力は良い。そんなのは知っている。ノエルの前に自分が死ぬかもしれない。そんなのは知っている。三日間生き延びても、その間にノエルに会えるかどうかわからない。そんなのは知っている。ノエルは守られることを望まないかもしれない。そんなのは、

そんなのはありえない。

「ノエルは私がいないと生きられないの。ノエルは私のなの。ノエルは私以外のいかなるものを拒絶しても、私を拒絶するわけが無いのよ。今度会ったら、大丈夫よって抱きしめてあげるわ」
ふわりと微笑んだ彼女の顔は、とても美しく。美しく歪んでいた。


アリサは決意してから、まずデイパックの中をくまなく調べた。入っていたのは、一般的な支給品と、銃。弾も沢山ある。
「説明書が、入っているのだったわね」
ごそごそとデイパックの中から説明書を取り出し、代わりに銃をしまう。説明書によると、銃の名前はコルト・ガバメントというらしい。

そのときだった。

「どうしよう……」
道の端の林の中から、少女の声がした。
彼女の名前は当然ツクモ・サーシャだが、アリサにそれを知る術は無い。
「……そこに誰かいるの?」
アリサが問い返してみると、林の中の一箇所だけ、露骨に空気が固まった。アリサは「殺し」や「隠密活動」のプロではないので、普段ならそんなことなどわからないだろう。しかし、相手も素人だったのだ。アリサですら、相手の緊張を感じ取れる。
(……さて、どうしましょう)
悩んではみるものの、答えは決まっている。
林の中の少女を殺す。全てはノエルのために。
見知らぬ少女であるとか、かなり怯えている様子だとか、そんなことはどうでもいい。
全てはノエルのために。
全てはノエルのために。
全てはノエルと自分の将来のために。

(すこし時間をかけても良いわ。油断させて殺しましょう)
それほど覚悟などせずに、アリサはデイパックのチャックをあける。銃は出さない。警戒されては困るからだ。

「……返事をしてよ。私からいくわよ」
とっくに場所は特定できている。だけど私に対する恐怖を植え付け、それをひっくり返すために、わざとゆっくりとそちらに近づいた。
「見つけた」
蹲っていた少女に、立ったまま声をかける。少女は既に泣いていた。アリサは彼女を安心させるように、極上の笑みを湛える。
「大丈夫よ。怖がらないで」
安心させるように。優しい口調で語りかけた。
「え……?」
「怖かったでしょう、今まで。もう大丈夫よ」
すこし優しい言葉をかけてやれば、すぐに見えた、彼女の「隙」。アリサ・スカーレットはそれを逃さなかった。

「あなたはノエルのために今死ねばいいのだから」
デイパックの中からコルト・ガバメントをとりだし、彼女の腹を撃った。ぱん、と言う音と、腕への衝撃は比例していない。
蹲った彼女の腹を狙うのは少々面倒ではあったのだが、仕方がなかったのだ。
(だって女の子の顔を痛めつけたらノエルに嫌われちゃう。でも心臓を撃ったら、すぐに死んじゃうわ)
アリサは償ってほしかったのだ。死ぬまでの数秒、少女――ツクモ・サーシャに与えられた使命はひとつ。

ノエル・ドルチェを一秒でも不安がらせたことについての懺悔。

ツクモはこの使命を知らされなかった。だから知らなかった。だから、アリサの歪んだ笑みを見て、悲鳴も上げられずに絶命した。アリサはそれを確認してからデイパックの中に銃をしまう。

「ノエル、私はやったわ。まだたったの一人だけれど……あなたを不安がらせた下郎と下女は、私が絶対に消すからね。安心してね」
アリサはツクモの頬に唇を寄せ、その柔らかい皮膚を「べろり」と、舐めた。

「帰ったら、私を、愛して、愛してちょうだいね」




【8-E/道/一日目-昼】
 【アリサ・スカーレット@Rondo】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [持物]:基本支給品+銃(コルト・ガバメント@真田麻緒)
 [方針/目的]
  基本方針:奉仕(ノエル)
  1:ノエルノエルノエルノエル
  2:ノエルのためならなんでもする(対等でありたい)
 [備考]
 ※ 「ヤンデレ」です。






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最終更新:2012年12月20日 21:47
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