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禿山・テニスボールの脅威

殺し合いか……。一、中学生が随分と物騒なもんに巻き込まれたものやな」

頭を剃り、まるで修行僧のような格好をした男――石田銀は、この緊急事態でも冷静に落ち着いていた。
テニスボールを殺人道具に使用するというのはあまり納得がいかなかったが、それだけが心当たりだ。
基本的に礼儀を重んじ、どんな相手であろうが全力を以て試合を臨むという姿勢を一貫している彼は、スポーツマンとしては超一流だ。
全力を以て試合を行なってしまったが故に重傷を与えてしまった相手もいたが、それは相手のことを考えてのこと。事実、相手は石田銀に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えていた。
観客に「バケモン」、「殺される」と言われたことがある彼だが、殺生をしたことなど一度もない。マナーはしっかりと弁えており、むしろ試合前に相手の身を案ずるほどだ。

そんな心優しきテニスプレイヤーにとって、開幕式直後に行われたテニスボールでの殺害はあまりにも許し難い行為。
テニスボールは本来、テニスの試合を行うために使用するものであって、誰かを傷つけたり殺したりするために存在するものではない。テニスプレーヤーならば、その程度のことは知っていて当然だ。
にも関わらず、あの男はテニスボールで人間を殺した。それは即ち、『テニス』というスポーツへの冒涜だ。
そんな極悪鬼畜なテニスプレイヤーによって殺されたあの少年は、あまりにも哀れ。石田銀がどれだけ哀れもうとも、お経を読もうとも、その命は一生現世へと戻ることが出来ない。
あの後にせめてもの情けでお経を詠んでやったが、今の自分が出来るのはそれだけだった。

「テニスボールをあないなことに使用するとは……。あれは一体、何者やったんや」

あの少年の死因はおそらく出血多量によるものだろう。人体の血液が極端に減ってしまうと、人は簡単に死んでしまう。
しかし、テニスボールで人体を貫くことなど出来るのだろうか?石田銀の誇る最強の技、「百八式波動球」ですらあんなことが出来るかどうかはわからない。
今まで様々な人間と試合をしてきた石田銀だが、あれは最早人間がするテニスの域ではない。あんなことが出来るのは、本当の化物くらいだろう。
「バケモン」と呼ばれた石田銀だが、彼は列記とした人間。本物の化物が出てきたら、その死合に勝利することが出来るかどうかわからない。

それに加え、今の自分には替えのラケットがない。もしもガットが貫かれたりしたら、テニスをするのが困難になってしまう。それだけはなんとしても避けねば、他の参加者への対抗手段がなくなる。
自分以外の知人がいない今、頼れるのは自分と自分の持つラケットのみ。デイパックを持つ自分の手が、より一層強くなったのを石田銀は実感した。

「考えてても仕方あらへん。とりあえず、まずはこの殺し合いから脱出するための仲間を探さな――ッ!?」

不意に、野球ボールが石田銀の腹へ打ち込まれる。
鉄壁のような肉体を誇る巨漢である石田銀はその程度の攻撃はそこまでのダメージにならなかったが、何よりも痛かったのはその直後の追撃。
気付いたら、自分の腹にバールが命中していた。バールを持つのは、緑色の髪をした少女。

なんとかせねばとテニスラケットを手に握るが、相手は一般人だ。無意味に殺生をするわけにはいかない。何より、今此処でテニスボールによる殺生を行なってしまえば自分もあの男と同じ畜生へと成り下がってしまう。
が、それの一瞬の油断が命のやり取りでは致命的だった。女は続けて呆然と立ち尽くす巨漢に、もう一撃バールを叩きこむ。
流石に同じ箇所に二度もバールを叩き込まれると石田銀とは言え、ただでは済まない。油断が原因で状況が更に悪化してしまった。

「何をしてはるんや。こないなことしても、おぬしは何一つ救われへんぞ!」

石田銀の問いかけに動じることはなく、女は更に追撃を加える。これで三度目。
急いでその場から走りだしたが、女は必死の目をして追いかけてくる。間違いなく自分を殺す気だ。
これ以上の攻撃を食らえば、間違いなく自分は気絶してしまうだろう。それはなんとしても避けたい。
あまり乗り気にはなれないが、こうなってしまえばやむを得ない。百八式波動球を使ってやり過ごすしかなかろう。

「弐式波動球!」

ドゴォ!という、まるで何かが爆発したような大きな轟音をたてて石田銀のラケットから放たれるのは、紛れも無いテニスボール。
そしてそれは、容赦無く自分を追跡してくる女の腕へと命中。大きな衝動と絶大な威力によって手に握られていたはずのバールは、地面へと落下してしまう。
女は完全に無防備になった。これが河村隆のようなタフネスな人間ならば新たな武器を取り出して追跡を続行してきたかもしれないが、相手は女だ。
痺れてしまった手で新たな武器を取り出すことも出来ることが無く、追跡はそこで終了。石田銀は無事に逃げ出すことに成功した。

「もしもおぬしが自分以外を皆殺しにしてしてでも元居た場所に戻ろうとすると言うんやったら、哀れやな」

石田銀は静かに呟く。
先程の女がどのような事情を抱えているのかはわからない。だが、突然の状況に気が狂ったように攻撃してくる彼女の姿は、あまりにも哀れだった。


【一日目/朝/B-3】
※テニスボール(1/1)@新テニスの王子様が放置されています
【石田銀@新テニスの王子様】
[状態]ダメージ(中)、疲労(小)
[装備]石田銀のテニスラケット@新テニスの王子様
[道具]支給品一式、テニスボール(13/12)@新テニスの王子様、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本:殺し合いから抜け出す。殺生は行わないが、ある程度の正当防衛は已む無し
1:この殺し合いを共に脱出するための仲間を見つたい
2:テニスボールで殺生を行ったあの男は、同じテニスプレイヤーとして許し難い
※園崎詩音の姿を確認しましたが、名前は知りません

【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]ダメージ(小)、右手に痺れ、右手に弐式による打撲痕
[装備]なし
[道具]支給品一式、バール@現実、野球ボール(13/12)@現実、不明支給品0~1
[思考・状況]
1:全員殺して殺し合いから抜け出す。特に紅音也は確実に殺す
※石田銀の姿を確認しましたが、名前は知りません

悲劇的序曲・日常の崩壊 時系列順 英雄行進曲・戦いの神
悲劇的序曲・日常の崩壊 投下順 英雄行進曲・戦いの神
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最終更新:2012年03月01日 22:09
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