性的嗜好と眼光

相本連太郎は森の中をゆっくりと動き回っていた。
花の水やりと、飼育が趣味の変わった男。
彼は殺し合いをすると言われても、さほど驚きはしなかった。
最初から知っていたかのように。
周りで40人が死んでも、気にしなかった。
はじめから分かっていたかのように。
といっても実際に彼は、殺し合いが行われることも、40人が死ぬことを知っていたわけではない。
ただ、彼はあまりにも他人や出来事に興味を持たなさすぎた。
ゆえに、彼はこの事態の深刻さに気づいていなかった。


□□□


4人は集まり会議をしていた。
黒羽茜、該凱哉、倉田文江、湖桷匁それぞれ男女2人ずつ。
それぞれが特殊な性癖を持つ。
黒羽茜言う、自分はブラコンだと
該凱哉言う、自分はシスコンだと
倉田文江が言う、自分はファザコンだと
湖桷匁が言う、自分はマザコンだと
彼らは一致団結し、自分たちをバカにするものたちに復讐をしようとする。
しかしそんなことを考えてるのは、倉田と湖桷だけだが。
倉田と湖桷はファザコンマザコンだからとバカにされいじめられてきた。なので復讐をすると心に決めた。
一方、該と黒羽はそんなことはなかったので、殺し合いはせず、生き残ろうと心に決めた。
4人は危ういバランスのもと、性的嗜好というもので成り立つ。
残るはロリコンとショタコンのみ。

「それでは次はロリコンとショタコンを探すとしよう。で、どうする?」
「え~~~~~~面倒くさいよ~~~~~~~」
「却下だ。下手に動くと死ぬからな」
「いないかな。ロリコンとショタコン」

上から順に該凱哉、黒羽茜、湖桷匁、倉田文江である。

「あのなぁ……そのまえに茜、いい加減背中から降りろよ」
「いやだ~~~~~~動きたくないよ~~~~~~」

基本、休みの日の移動は兄や弟がやってくれていたため、黒羽は降りたくなかった。
逆に該は姉や妹を背負ったことがある。
それゆえに、黒羽が男子のなかで誰かに乗りたいと言った時、該は進んで立候補した。

「それよりもさ。武器を見せ合いましょ」
「そういや、そうだな。じゃあ、降りてくれ、茜」
「分かったよ、そこまで言うんなら……」

黒羽は凱哉の背中から降りる。背中の感触が名残惜しい。
該も同様に、背中にあった柔らかい感触が名残惜しかった。
なぜか、お互いを見つめる。

「もう一度、乗って良いですか」
「乗って良いですよ」

なぜか頬を赤らめながら言っていた。
それを見て、湖桷匁と倉田文江はイライラしていた。
黒羽が該の背中に乗ろうとしたとき、倉田がそれを止めた。

「そこ!ピンクムードを出さない!」
「ちっ(ちえっ)……」

二人とも舌打ちをして乗るのをやめ、渋々とデイバッグを開いた。


□□□


お互い見せ合った結果、1人一つずつ武器があった。
該はカンプピストルと弾が3つ。
黒羽は火炎放射器。
湖桷はトイレットペーパー。
倉田はPSPだった。
どうやら後者がハズレで、前者が当たりだったようだ。

「なんで、PSPなのよ!」
「俺のよりはマシだろう。PSPは至近距離で有効活用できる。無いよりマシだ」
「火炎放射器か~~~~重たいから湖桷くんにあげる」
「む……ありがたく頂戴する」
「俺はカンプピストルか。弾は3つと……大事に使わないと……」

武器に使えるのはカンプピストルと火炎放射器のみ。
カンプピストルは該が持ち、火炎放射器は湖桷が持つことになった。

「む、誰か来たぞ」
「やっと来た……」
「アイツはどっちだ? ロリか、ショタか?」
「とりあえず話しかけようよ~~~~~~~」

そして、該が黒羽を背負い、通りかかった男性に話しかける。

「あの、すいませーん!」

男はゆっくりとコチラを向いた。

「なんだ貴様らは。用か?」

男性は訝しげにこちらを向く。
目つきが異様に鋭い大人の人だ。
鋭い目つきに4人は竦むが、該は意を決して尋ねた。

「あの……失礼ながら、あなたに性的嗜好はありますか?」
「性的嗜好……? 残念ながら、そんな異常者が持つようなものは持っていない。すまんな」

男はそう言い立ち去ろうとする。これに黙ってなかったのが湖桷と倉田だった。
倉田はPSPを手に、湖桷はトイレットペーパーを手に、男に襲い掛かった。
男は気配を察知したのか、すぐに後ろを向き、PSPの攻撃を避ける。トイレットペーパーも避ける。
男は一旦首を傾げると、すぐに頷いた。
どうやら、いま、自分が置かれている状況を理解したらしい。

「ああ、成るほど。これは殺し合いだったな……隙をつき、俺を殺そうとしたと。いや、関心関心」
「五月蝿い! 私達をバカにしやがって!パパが好きでなにが悪いのよ!」
「貴様はここで殺す。俺たちをバカにしたことを後悔させてやる!」

そういうと、湖桷はトイレットペーパーを捨て、火炎放射器を取り出す。

「おい、やめろ! いま戦っても意味が無いだろうが!」

決死で止めようとする。
俺と茜は殺し合いに乗らないつもりだった。もちろん二人もそうだと信じていた。
しかし、彼らは全く別の考えだった。

「なによ! 該はバカにされて悔しくないの?」
「別にバカにされてもいいじゃん。その人がどう思うかはその人の自由だよ~~~~~?」

もちろん俺は茜と同じ考えだ。
しかし、彼らにとっては逆効果だった。

「湖桷、あんたはコイツらを頼むわ。アタシはこの男を殺すわ。」
「了解した。」
「まて!おい!なんで俺らまで!」

湖桷はうなずくと、じりじりとコチラに迫ってくる。
その光景を見届けると、倉田は男のほうに向く。
男は以前、表情を変えない。

「さて、私達をバカにした罪は重いわよ……!」
「いや、バカにした覚えはない。単に思ったことを口にしただけ……」
「それをバカにしてるのよ!」

そう言うと、倉田はPSPを片手に男へと飛び掛る。
男は理解していなかった。なぜ、バカにされたと勘違いをしたのかと。
しかし、分かったとしても彼はなんとも思わない。

「分からんな」

男は飛び掛った倉田をいなしてそのまま、地面に伏せさせる。

「ぐふっ!」
「さて、アイツだな……」

倉田をそのままにし、湖桷のほうへ走り出す。
そのころ、黒羽と該は湖桷に追い詰められていた。
逃げ場はない、まさに絶体絶命。

「さて、死んでもらおう」
「なんで、俺たちまで殺されなけりゃいけねえんだよ!」
「俺たち同じ人種なのに復讐しようとしない。ただそれだけだ」
「復讐をすること自体、間違いだろうが!」
「五月蝿い! 貴様らには分からない。俺たちがどんなに苦しんだかを……!」
「どんなことがあったの~~~~?」
「知らなくてもいい。どの道貴様らはここで死ぬのだからな」

ああ、もう終わったな……
湖桷が火炎放射器の引き金を引こうとしたとき

ごきゃり

湖桷の首がありえない方向に向いた。
と同時に、倉田が息を切らしながら到着した。

「はあ……はあ……許さな……

男は湖桷の手にあった、火炎放射器をふんだくり、引き金を引いた。
倉田はあっという間に火に包まれてしまった。
倉田はしばらく暴れたあと、力尽き、その場に倒れた。
俺と茜はその光景をただ見てるだけだった。

「おい、小僧。ケガはねえか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「私も大丈夫です~~~~~~~」
「そうか。じゃあな」

そういうと男は去っていった。
しかし、その数秒後、男は帰ってきた。

「失礼、聞くことを忘れていた。十村鈍吉を知らんか?」
「知りません」
「そうか。ならば、こんどこそサヨナラだ」

男は立ち去ろうとする。

「あのっ!」
「なんだ?」
「名前はなんですか!」
「……相本連太郎だ」

それだけ言うと、男は去っていった。
該は火炎放射器と、PSPを拾うと、そこから立ち去った。
そして残ったのは、二人の男女の死体だけとなった。

「どうするか?」
「えーっと、歩こうっ!
「そうだな!」

目の前に起きた光景を胸にしまいこみ、歩き出す。
また会えるといいな、相本さん。
あ、僕たちの名前を言うのを忘れてた。

【F-5/森/一日目・夜】

【該 凱哉】
[状態]健康、茜をおんぶ
[装備]カンプピストル 弾×3
[道具]支給品一式、火炎放射器
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。生き残る。
1:茜と行動
2:茜を守らんと……
3:茜って以外に胸デカいな……

【黒羽 茜】
[状態]健康、おんぶされている
[装備]なし
[道具]支給品一式、PSP
[思考・基本]
基本:殺し合いには乗らず、生き残る。
1:凱哉と行動
2:凱哉の背中は落ち着くなあ~~~


□□□


彼はようやく事態の深刻さに気づいた。
しかし、彼にはそんなことはどうだってよかった。
彼は人を殺すことも慣れていた。また、人が死ぬことも見慣れていた。
彼が所属する、警視庁犯罪操作部第零課というところは人に知れ渡ることのない。表向きには存在しない部署。
上司、十村鈍吉と合流しようと彼は考えていた。
しかし、十村鈍吉は油断しているところを女性に撲殺されたことを彼は知らない。
彼はもういない上司を探し、歩き続ける。
ふと、先ほど助けた二人がこのあとどのようなことになるかを想像する。
しかし、その想像はわずか数秒後、彼の頭から消え去っていた。

【倉田文江 湖桷匁 死亡】

【F-5/森/一日目・日中】

【相本 連太郎】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・行動]
基本:人を殺してでも生き残る
1:十村さんと合流する。
2:邪魔する人間は削除する。

【参加者特徴】

該凱哉
重度のシスコン。高校2年生。
姉と妹がおり、どちらもスタイルとルックスはいい。
姉と妹をおんぶをすることが多々ある。

黒羽茜
重度のブラコン。高校2年生
兄と弟がおり、どちらもイケメン。
兄と弟におんぶをされることが多々ある。

倉田文江
重度のファザコン。高校1年生
父親が好きで仕方が無く、一緒に風呂に入ることも多々ある。
それゆえに、クラスでいじめられる。

湖桷匁
重度のマザコン。高校3年生
母親が好きで仕方がなく、一緒に寝ることが多々ある。
それゆえに、クラスでいじめられる。

相本連太郎
目つきが異様に鋭く、警視庁に勤める男。
しかし、警視庁犯罪操作部第零課という表向きには存在しない部署に所属する。
十村は彼の上司である。

Back:010俺には通じない 投下順で読む そして図書館には誰もいなくなる
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最終更新:2012年04月16日 22:26
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