鹿目まどかは突然の事態にどうすることも出来ず、ただただ混乱気味に名簿を眺めていた。
名簿には「美樹さやか」、「佐倉杏子」、「暁美ほむら」と自分の知っている人物が三人。他にも様々な人間の名前が載っている。
こんな
殺し合いは夢であって欲しいと願った。だが、この悪夢は一向に覚めそうにない。
デイパックには武器も入っていた。武器とは、人を殺すための道具だ。
自分には無縁過ぎるモノを見て、まどかはすぐにデイパックへと仕舞い込む。
そして暫くは一人で色々と考え事をしながらこの悪夢が終わることを待っていたが、まどかの前に中年の男が現れた。
「警察です。今回の一連の事件について、事情を説明してもらっていいでしょうか?」
一切の乱れのないスーツを着こなした男は、警察手帳を見せてまどかに情報提供を迫った。
何故こんなところに警察が? と疑うのが正常な判断だとも言えるが、中学生のまどかにとって、目の前の警察は自分を助けてくれるかも知れない存在だ。
だからまどかは、目の前の警察に何の惜しげも無く自分の知っているだけのことを教える。
と言っても、まどかもここにきたばかりだ。情報など全く知らない。
次に警察は自分の持っている武器を回収したいと申し出てきた。もちろんまどかは平気で渡す。
まどかは目の前の警察を完全に信用しきっていた。
それは目の前の男にとっても警察としては名誉なことだし、悪い風には思わない。むしろ警察官としては誇らしいことだ。
だが、自分が今から命を落とすということも知らずに、ここまで協力的な態度を取ってくれるというのは、実に滑稽。
警察という立場は非常に便利だ。
この「権利」にどんな人間でも触れるだけで瞬時に、一切の証拠も残さずに殺すことが出来る「悪魔の手」が加われば、自分にとっての理想の社会を実現することが出来る。
尤も、悪魔の手の対極とも言えるどんな怪我や病気でも治してしまう「神の手」は邪魔だが。
だから警察官――沢村敬之にはこの殺し合いで神の手を持つ男、竜崎臣司を殺す必要があった。
殺し合いというのだから生き残れるのは最後の一人だけになるのかもしれないが、その時はその時だ。
主催者らしき男は「願いを叶える」と言った。ならば悪魔の手を持つ男、碧井涼介を殺しても自分が悪魔の手を手に入れれば何の損害も無い。むしろ、その方が便利だ。
「他に持ち物や知っている情報は無いですか? こんなイレギュラーな事件だ。出来る限り証拠がある方が、警察としても助かるのですが」
もしもこれ以上何も得られるものがないなら、この少女は用済みだ。銃の引き金を引いて殺してやればいい。
あまり得られるものは無かったが、まだ殺し合いは始まったばかりだ。役に立つ持ち物が手に入っただけで良しとしよう。
「多分信じてもらえないと思いますけど、魔法少女のことなら――」
「魔法少女、ですか。出来れば、詳しい説明をお伺いしたいのですが」
まどかは自分が知っているだけの魔法少女のことを包み隠さず話した
沢村が魔法少女の話を聞く姿は、真剣そのもの。実際、自分も神の手や悪魔の手という異常な能力のことを知っているのだ。
ならば「魔法少女」というものが実在していてもおかしくない、と思ったのだ。
それに自分はわけのわからないうちにこんな殺し合いに巻き込まれていた。それに、霧に包まれたと思ったら今度はこんな場所にワープしていた。
そんなことは、普通の人間ならば到底不可能なことだろう。だからこの殺し合いを仕組んだ人間は何か未知の、人智を超越した能力を持っていたとしても何らおかしくないのだ。
沢村は魔法少女の話を聞いて、魔法少女というものは化物だと思った。
魔法などを主体とするのではなく武器を主体として戦うというのは実に現実染みているが、ソウルジェムが砕かれない限りは不死に近いという。
それはおそらく、悪魔の手をもってしても殺すことの出来ない存在なのだろう。紛れも無い「化物」だ。
だが、そんな化物でも自分の魂を結晶とした物体――ソウルジェムを砕けば即死する。神の手、悪魔の手とも共通しているが、化物でも人間の作り出した武器の前では等しく平等に死ぬ。
そうと決まればある程度の「対策」をしなければならない。
ソウルジェムを砕けば一撃で死ぬとはいえ、相手も武器を持っているようではこちらが確実に勝つとは言い難い。
そのためにも、目の前の少女をさっさと始末しておく。これだけ有益な情報を教えてもらったのには感謝しているが、彼女にはもう生かす価値はない。
それに自分と接触したということ他の人間にバラされるのは何かと不都合だ。特に竜崎や碧井に気付かれるのはなんとしても避けたい。
そのために始末する。彼女は自分が「理想の社会」を作るための犠牲になってもらう。
魔法少女を殺す時の人質にするというのも考えたが、それで相手が取引に応じてくれるとは限らない。
やはり、不安要素は排除するに限る。
「捜査協力、ありがとうございました。それではお元気で」
有益な情報を聞いた沢村は先程まどかから受け取った銃の銃口を用済みとなった少女へと向けると
「え――」
一切の躊躇いもなく引き金を引いた。単なる一般人であるまどかには避けることも出来ず、何も抵抗できないまま頭から血を流し、死体はその場に転倒する。
中学生の少女の命は、警察官の男の放った銃弾によって散った。
沢村はまどかを殺したことについて、何の罪悪感も沸かない。殺し合いの場で一人の少女が死んだ、ただそれだけだ。
ただ残念なのが、あまり綺麗な死体に出来なかったということか。やはり悪魔の手を用いて殺した死体のほうが何倍も美しく、綺麗だ。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】
【一日目/夜/A-3】
※鹿目まどかの死体が放置されています
【沢村敬之@オルトロスの犬】
[状態]健康
[装備]ニューナンブM60(8/9)@現実
[道具]支給品一式、不明支給品×0~3、鹿目まどかのデイパック(支給品一式、不明支給×0~2)
[思考・状況]
1:警察という立場を利用し、利用できる者は利用する
2:出来るだけ早く竜崎臣司を始末しておきたい
※鹿目まどかから魔法少女に関する知識を得ました
最終更新:2012年03月17日 21:41