◇
これは、過去の話。
だが、あの日の事を忘れられない。
雨の降りしきる日。
血の海の中で、倒れている自分。
腕を切られた。
ナイフで切られた。
けど、致命傷にはなっていない。
出血も酷くない。
気絶もしていない。
だけど、俺は動けなかった。
怖くて動けなかった。
死にたくなかった。
母が死んでいる。
喉を切り開かれて死んでいる。
父が、母を殺した男に腹を刺された。
父は腹部を抉られ、出血が酷い。
父は助からないとすぐ分かった。
弟は、ただ殺した男を見ているだけだ。
男は、弟に話しかけているが、内容は聞こえない。
何が起きているか、そのときは分からなかった。
そのときは。
◇
世間にとって復讐は虚しい物らしい。
今から、俺は復讐をする。
虚しい事をする。
その為に、人生を捨てて道を踏み外した。
復讐は虚しい。
所詮は戯言だ。
あの男を許すことは出来なかった。
家族を殺したアイツを許すことは出来なかった。
だから、俺はアイツと■■■を殺しに行く。
殺す為に生きている。
奴は殺されるために生かしたのだろう。
ならば、復讐じゃないだろう。
それから、数年後の話。
今から、数日前の話。
そのために、わけの分からない男と出会った。
黒髪、赤い瞳。
名前は、アンドレイ・チカチーロ。
アンドレイ・チカチーロ。彼はそう名乗った。
偽名であるのは一目瞭然。
本物は、禿げのジジイ。
本物は変態だ。
本物より、紳士的。
本物より、不気味さはあった。
本物は、処刑された。
本物のわけがない。
目的も不明。
正体も不明。
不気味さだけが、そこにある。
気持ち悪さが、どこかにある。
何をするつもりだ?
何を喋るつもりだ?
と、考えても分からない。
行動予測不可能。
「情報を渡すから、ゲームを盛り上げて欲しいんだよね」
携帯ゲーム?
レクリエーション?
前者でも後者でもない。
ゲームとは、
殺し合いのこと。
と、後から説明された。
誰を殺しても許される。
そして、あの男もいた。
家族を殺したあの男もいた。
何年も捜し続けたあの男もいる。
憎み続けて、殺したいくらい憎み続けて。
だが、不気味な男。
目的も分からない。
殺し合いなどする目的が。
リスクしかない殺し合いをする目的が。
騙す。
騙されている。
恐らくそうだ。
俺は、コイツに騙されている。
ハメるつもりだ。
いや、殺すつもりか。
「信用できないね。アンタが誰かさえ分からないんだ」
名乗っていた。
けど、信頼が出来ない。
慎重に。
神経を尖らせて。
話を聞く。
復讐の計画がこの男のせいで。
殺すための計画がこの男のせいで。
復讐の計画が。
殺す計画が。
崩れたら、最悪だ。
もしも、嘘なら。
もしも、情報が偽者なら。
信じれない。
偽名を使うような男のことが。
信じれるわけが無い。
「……なーんだ。ノリ悪いじゃないの」
「信じる人を選べって、親父に言われたんだ」
父は殺された。
幼い頃に。
だから、覚えているわけが無い。
嘘。
コイツだって、嘘は吐いている。
俺だって、嘘は嫌いだ。
人を騙すことは嫌いだ。
それも嘘。
嘘には嘘を返す。
「ふーん。結局どうするわけ? 僕と契約はせずに、ここで死んだほうがマシって事かい?」
「……死ぬのは嫌だな」
「まあ、いいよ。君は━━━━━だからね」
「……分かった。協力はするよ」
◇
撃たれた傷はもう直っている。
幻影。
見せられていた幻影の中で撃たれた。
弟に。
弟と、病院で出会った。
久しぶりの再会だったが嬉しくはない。
あの男が言う殺し合いは病院から始まった。
病院のベッドの上で目を覚ます。
少なくとも、普通の病院ではない。
窓は数枚割れて、誰もいない。
それはまた、不気味だった。
「支給品という奴はコレか」
デイパック。
この中に支給品一式が入っている。
あの青年が言ったことが嘘ではないと言うのならの話だが。
それは、丁寧の病院のテーブルの上に置かれていた。
武器。
人を殺すための。
武器。
ゲームを盛り上げるための。
武器。
復讐のための。
武器。
虚しいことをするための。
中身は、通信用の携帯。
中身は、青酸カリ。
中身は、M92。自動拳銃だ。
丁寧に、弾奏とサイレンサー付き。
面白く、ゲームを運んで欲しいらいい。
けど、復讐するつもり。
目を抉って、八つ裂きにする。
焼き殺す。原形を留めいないほど。
それが、長年の復讐。
父と母を殺した復讐。
誰かいる。
情報によれば、刑事。
海棠凪とかいう、ただの雑魚。
ヤバイ。
公安や上層部からはマークされている。
顔を知られている。
正体も知られている。
テロリスト。
過激思想者。
親を殺され、
死にかけた時から、
始まっていたんだ。
追加情報。
とっさに見る。
海棠は、南雲市警察の刑事。
経歴によると、警視庁には勤務してない。
無論、SATなどの特殊部隊の所属経験も無い。
テロリスト捕縛にも関わったことは無い。
運が良かったと言える。
初っ端から、軍人と出くわしていたら、
初っ端から、殺人鬼と出くわしていたら、
俺は死んでいた。
復讐できずに。
「動かないでもらえますか? 出来れば殺し合いはしたくありませんので」
考え事をしているうちに、来た。
小口径の自動拳銃を構えている。
名称は不明。
背後から、少し離れて突きつけている。
反撃は出来そうに無い。
携帯以外の支給品は、デイパックの中。
運が悪かったといえる。
支給品が奪われたら、■■■を殺せない。
素手で殺せるわけが無い。
返り討ちに遭う。
復讐にも失敗する。
「ちょいちょい、撃たないでくれよ!! 俺もワケ分からない殺し合いに巻き込まれただけなんだ!!」
嘘。
嘘。
コイツだって、嘘は吐いている。
『殺したくない』
それは嘘。
人は皆、殺人衝動を持っている。
殺したくて堪らない。
絶対にそうだ。
死にたくない。
絶対にそうだ。
嘘ばかりの汚い人間。
俺だって、嘘は嫌いだ。
人を騙すことは嫌いだ。
それも嘘。
嘘には嘘を返す。
ワケの分からない殺し合い。
巻き込まれただけじゃない。
少なくとも、志願した。
殺す。殺すために。
復讐。復讐するために。
この場を切り抜けるには最適だ。
自分にしては、上出来だ。
「良かった。あの、一緒に行動しませんか?」
「はい!!」
コレも演技。
恐らくコイツは殺しに来る。
その瞬間、返り討ちにして殺す。
支給品は奪う。
いや、今から殺してやってもいい。
だが、もう少し、待ってもいい。
銃口を人に向けているが。
撃つつもりはなさそうだし。
アイツと■■■を殺すためなら、魂は売る。
合流して、アイツと■■■を殺して、コイツも殺す。
「あのお名前は?」
「関春翔です。よろしくお願いします!!」
これは本当。
殺す相手には、名乗る。
ソイツが礼儀だろ。
殺す奴だ。
邪魔なら、殺す。
利用して殺す。
何よりも復讐を。
どんなことよりも復讐を。
長年、恨んできた男に復讐を。
【一日目/深夜/C-1・病院】
【関春翔@単なる伏線キャラ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、青酸カリ、携帯電話、M92(フル装鎮)、追加弾奏(個数不明)、サイレンサー
[思考]
基本:ジョーカーとしてゲームを盛り上げる
1:■■■を殺し、コイツ(海棠凪)も殺す。
【海棠凪@単なる伏線キャラ】
[状態]健康
[装備]拳銃(種類は不明)
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~3
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:関春翔と共に行動する。
関春翔(せき・はると)
関勝宏の兄。気さくな青年だが、実はテロリスト。
幻影の中では、フルフェイスヘルメットの男として高校を襲撃した。
海棠凪(かいどう・なぎ)
南雲市警察の刑事。伊達坂浩二の相棒だった。
幻影の中では、平沢に裏切られて精霊に爆殺された。
最終更新:2012年05月06日 15:44