その人物は、あまりにも異質で場違いな存在だった。
時代を明らかに錯誤している無骨な兜と鎧、結えた頭髪もまた現代人のそれとは明らかに違う。
特徴だけで判断するならば、さながら血迷った初老の男―――だが、その獰猛な光を持った相貌と、何よりも全身からひしひしと放たれる威圧にも似たオーラが、彼が只者ではないと示していた。
「痴れ者が……この信長を駒とするか、小童」
声こそ荒げはしないが、その口調には明確な怒気がこもっていた。
殺し合いなどという俗物の遊戯に自らを巻き込み駒とした主催者達へのものと、自らを裏切った逆賊の家臣、明智光秀への激しい憎悪が、彼を満たしている。
普段の男を知る者であっても、これだけぶち切れた男を見れば戦慄を禁じ得ないだろう。
とても人の身で生まれ落ちた人間とは思えぬ程の魔性を宿す両の眼、同じく気迫や経験などといったものでは証明できないまでの、この世のものとは思えぬ威圧的なオーラ―――。
故に男を知る者は、畏怖の念を込めてこう呼ぶ―――『尾張の第六天魔王』と。
「しかし、真奇怪な代物よ……余を犬扱いとは、生かしておけぬ」
自らの首に装着された、男にとっては未知の技術の結晶である爆弾をコツコツと指で叩き、半端者ならば失禁してもおかしくない激怒の表情を見せる。
羽織った外套が風に吹かれて揺れ、大気を伝って魔王の邪悪なる気が轟く。
が、魔王と呼ばれし生まれながらの魔性が黙っているだけに止まる筈もなく―――あの忌まわしき不届き者共に与えられた物であることが気に食わなかったが―――、一本の日本刀、しかし幾つもの術式により加工されているそれを携え、進撃する。
男の生きる時代とは明らかに違う風景が広がっている、その様子に僅かばかり口元を歪める男。
「行け好かぬ場所ではあるが興味深い……余が領土とするも悪くない」
男の容貌が時代錯誤して見える最大の理由であろう要因が、周りに広がるごく一般的な民家だ。
現代を生きる者からすれば何の変哲もない、退屈とさえ思える程に単純な設計だろう。
しかしこの男、『尾張の第六天魔王』――現代より遥か以前の戦国乱世に生まれ、名だたる武将たちを震え上がらせ、天下に武を敷くことを目指した破滅の権化にとっては違う。
戦国の時代では考えられないレベルの建築技術。
日ノ本を蹂躙した魔王でさえも見たことのないような、興味深い技術。
よく見れば地面も謎の技術による整備が為され、砂利道一つとて見当たらない。
一体全体何が起きているのか――なんて当たり前の疑問以前に、彼はこの技術を欲した。
参加者も、主催者も一人として残さず皆殺しにして、この謎多き大地を魔王の支配下に置く。
あの逆賊に手ずから天誅を下した後に、再び魔王の侵攻を行うにあたって不足はない土地だ。
自らに矢を引いた逆賊―――明智光秀を討つ機会もまた『不届き者』によって先延ばしにされたと考えると腸が煮えくり返る思いがあったが、しかしそこに執着していても仕方がない。
と、そこで業物『七天七刀』の納められていた奇妙な構造をした鞄に、他の様々な物品の中に紛れて入れられていた紙切れのことをふと思い出す。
別に気にせずともいい些事ではあったのだが、魔王は乱暴にそれを取り出し幾つかの名を確認する。
そして一つの名前を確認した瞬間、その全身から震え上がらんまでの殺意が迸る―――。
「此所におったかァ………光秀ぇ!」
冷眼下瞰、明智光秀。
特徴的な銀髪を伸ばした死人のように青白い素肌、そして死神を連想させる大鎌『桜舞』を振るう、第六天魔王の家臣―――『だった』男。
彼は主君を自らの手で討ち果たしたい、ただそれだけの理由で謀反を起こした逆賊――。
自らの命を狙い、主君に牙を剥いた狂犬を、魔王が捨て置く筈もなかった。
必ず手ずから首を貰う。
魔王の怒りを呼び覚ました男がこの殺し合いの舞台に呼ばれている、何と因果なことか。
光秀は魔王以上の狂暴性と残虐さを併せ持った、文字通り戦闘狂と呼ぶべき人物だ。
成る程、考えてみればいかにも奴が悦びそうな趣向の遊戯だ―――今頃、文字通り狂喜乱舞していることだろう。
或いは、既に犠牲者を出すとまではいかずとも、他の参加者と戦いを始めていても不思議ではない。
そして自惚れでも何でもなく、真の意味で魔王はあの逆賊が自らの命を再度狙ってくると踏んでいた。
そうなれば丁度良い。
あの忌まわしき銀髪を血に染めて、その首を切り離してやる。
返り討ちにしてやる。
「奥州の独眼竜、四国の海賊―――安芸の知将までも、か」
名の知れた、まさに猛者と呼べる武士共ばかりが参加している。
たった一人で荒くれ共を統率する実力者、『独眼竜』と『西海の鬼』。
自らの元に集いし者を、自らに忠誠を誓う者さえも捨て駒として扱う『安芸の知将』。
誰一人とて卸し易い敵はいない―――とは考えず、彼はその三人に逆賊を加えた四人を、確実に滅ぼさねばならぬ外敵として捉えた。
まさに暴君、魔王の思考回路。
征天魔王に、畏怖の念は存在しない。
魔王の人としての名は、織田信長。
自らを第六天より来たりし魔王と自称し、その名前に恥じぬ暴虐の限りを尽くす『生まれながらの魔性』。
もしもこの『バトルロワイアル』が起きなければ、魔王信長は蒼き竜と赤き若虎によって冥土へと還され、乱世には束の間の平穏が戻ることとなった。
しかし悪しき魔性が引き起こした遊戯が結末をねじ曲げ、魔王は再び破滅をもたらす。
その仰々しい姿にそぐわぬ細き刀、だが信長の力量に相応しい特殊加工が施された一振り。
皮肉にも『誰も不幸になってほしくなかった』、極東の聖人の武装であったそれを持った信長は、彼女の理想とは対極の不幸と破滅、日ノ本を覆い尽くす絶望の塊だ。
魔王は往く。
皆殺しの道を。
焦土をもたらすために。
――――――――魔王、再臨。
【E-3/住宅街/一日目/朝】
【織田信長@戦国BASARA】
[状態]健康
[装備]七天七刀@とある魔術の禁書目録
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品2
[思考]
基本:全てを滅ぼし、この地を自らの領土とする
1:光秀は手ずから殺す
2:独眼竜、西海の鬼、安芸の知将らを探し、滅する
支給品
【七天七刀@とある魔術の禁書目録】
織田信長に支給。
極東の聖人・神裂火織の武装で、その見た目自体は普通の日本刀だが様々な術式で加工され並々ならぬ強度、加護、術式による強化を得ている。尚鋼糸は付属していない。
最終更新:2012年03月29日 10:34