アットウィキロゴ

Overture

俺は今、夢でも見ているのだろうか?
この状況が夢でないなど信じられないし、夢であって欲しいとも強く願う。
頼む、夢なら早く覚めてくれ。こんな不気味な夢、別に見たくも無いし不愉快なだけだ。


「御機嫌よう皆さん」

誰もが緊迫した表情で壇上の上にいる少女を見つめる。
そりゃそうだ、いきなりこんなことに巻き込まれたら誰もがあの少女が怪しいと思うだろう。
もちろん、俺もそう思っている。でなけりゃ少女はマイクなんて持ってないはずだ。

「あなた達には今からちょっとしたゲームをしてもらいまーす☆」

ゲーム? 大人数でやるゲームと言えば鬼ごっことかかくれんぼとかそういうものを思いつくが……何故か嫌な予感がする。
それは多分、あの少女の怪しげな言動とこの不気味な雰囲気に俺が呑まれているからかもしれない。
俺はまだ希望を捨てたわけじゃない。相手はまだ少女だ、きっと鬼ごっことかそういうのに決まってると信じたい。

殺し合い……それが今から始まるゲームの名前でーすっ」

俺の期待はあっさりと裏切られた。
なんとなく嫌な予感はしていたが、まさか殺し合いだなんてな。
尤も、これも最悪な展開のうちの一つとして予想は出来ていたんだが、いざ本当にその予想が的中するとなると色々と困る。
参加者の大多数が驚きの声をあげている。当然といえば当然のリアクションだ。
本当なら俺も驚きたい場面なのだが、それはグッと堪えて我慢する。ある程度の予想がついていたから、他の奴らと比べて驚きが少なかったというのもあるかもしれない。
さて。驚きの声が止むとことは無かったが、それよりも一段と大きな『音』が会場に鳴り響いた。



ポンッ☆



そんなふざけた、この雰囲気にはあまり似合わない間抜けな音。
だが音量だけは無駄に大きく、当然、俺達の視線はそこに向くもので。

「……ッ」

そこにあったモノは、見るに耐えないものだった。
それは死体。首から上だけが綺麗になくなって、そこから血が溢れ出しているグロテスクな死体。
普段からそういうのに見慣れている人間にはダメージが少ないのかもしれないが、俺のような一般人にはかなりの大ダメージだ。
首から上のなくなった死体。それは本当にグロテスクだったが、それでも身内の人間にとっては大切な存在だというのには変わりない。

少女が泣いている。首から上のなくなった死体に駆け寄って、泣いている。
俺にはもうあの『死体』が『人間』だとは思えない。非情かもしれないが、もうアレは死体だ。生きてはいない。
壇上の少女は笑っていた。死体の傍で泣き喚く少女を眺めて笑っていた。
身体が熱い。他人が死んだだけだというのに、それだけで無性に苛立つ。
どうしてそう簡単に人を殺せる?人を何だと思ってやがる?

気付いた時には、俺の身体は壇上へと駆け登っていた。

「……どうして殺したんだ」

少女の胸ぐらをつかみ、問いかける。
まだ年端もいかない少女に暴力で訴えかけるというのは、男としては情けないことかもしれない。
でも、今はもうそんなことを気にしている場合ではない。
それに相手は人殺しだ。油断をしたら俺は間違いなく殺される。ここは、絶対に手を抜いたら駄目な場面だ。
もちろんこの少女が殺人をしたとは決まっていない。だが、あの気持ち悪い笑いを見れば疑いたくなるというのが当然だろう。

「うーん……」

少女は少し考え込むと――――

「皆さんがあまりにもうるさいから、それを黙らせるために一番うるさい人を殺しちゃいました☆」

ふざけた回答を寄越してきた。

「そんな理由で人を殺してもいいと思ってるのか?」

「もちろんです!」

「ふざけるな!お前は人の命をなんだと――」

「待て」

俺が言いかけると同時に首元に冷たい感触が伝わる。ナイフだ。ナイフが、背後から俺の首元に当てられていた。
あまりにも冷たいそのナイフは、人の命を刈り取るには十分過ぎる程の切れ味を持っている。実際こうしてナイフを首元に当てられたことは今までなかったが、こうして体験してみるとその恐ろしさがわかる。
これが本物じゃなくて偽物だったら、と現実逃避もしてみたがどうやらこれは本物のようだ。でなければここまで恐怖心を煽られることはないだろう。

「コイツに常識は通用しない。話すだけ無駄だ」


背後から聞こえる青年のような落ち着いた声。
だがその声は何処かに怒りや憎しみ、狂気を持っているような極めて危険なモノだと一瞬で判断出来る程に鋭く、圧倒的。
確かに、こんな何を考えているのかわからない、化物みたいな少女に何を言っても無駄かもしれない。それに、今ここで死ぬのは御免だ。
でも、ここで下がったらあいつの死は何になる?あの少女は救われないまま終わって、それでいいのか?
それに俺は殺し合いなんかに巻き込まれる気は毛頭ない。ここでこの可笑しな少女を捕まえて、それで終わりが一番だろう。

「俺の名前は星野月夜。全参加者中最強を誇る人間だと自負してはいるが、それでも目の前の化物には及ばん。
……それにコイツは俺の獲物だ。貴様のような雑魚にやるつもりはない」

「獲物とは言いますねー、月夜さん。
天人君もわかったら元の場所に戻った方がいいですよぉ?」


怖い


それが、ついさっき、俺の持った感情だった。
憎しみだとか怒りだとか、そういう類の感情は一切消えて『恐怖』という感情だけが心に残る。
何故かはわからない。普通に話しただけなのに、今の少女の言葉には今までに無い威圧感が感じられた。
月夜と名乗った男はナイフを仕舞って元の場所に戻り、俺も壇上から降りる。
俺のあまりもの格好悪さにブーイングをする奴も出てくると思ったが、そんな奴は一人も居なかった。
あの少女は「うるさかったから殺した」と言った。ブーイングをしたからという、くだらない理由で死ぬ奴がいるわけもないか。

「ではでは皆さん、足元に置いてあるデイパックを開けて説明書を取り出してそれを読んでみてくださーい☆」

デイパックに入っていた説明書。
そこには幾つかの注意事項やルール説明が書いてあったが、その内容は人の命を『ゲームの駒』としか扱っていないようなものだった。
一応は生き残って元の場所に帰る方法も記されてはいたが、それは自分以外の人間を殺さなければ実行できそうにないものだ。
つまり、自分達が平和な日常に帰るには嫌でも殺し合いに参加しなければならない。
それに加え、五時間に一度、多数決を行なって最も票が集まった人間は死刑にされるらしい。
多数決で自分が票を入れた人間が死刑になるということは、自分がそいつを殺したのと同じだ。
ゲームに乗らなくても必ず誰かを殺さなければ生き残れない。このゲームを考えた奴はそう言いたいんだろう。
多数決に参加しなければ自分が死刑になるとも書いてある。生き残りたいなら意地でも誰かを殺すしか無いようだ。

「わかりましたかぁ?わからないことがあれば質問も受け付けますよぉー」

とぼけやがって。
わかるかわからないかとか、これはもうそういう問題じゃないだろ。
いきなり殺し合いを強いられて、誰かを殺すのを強いられて、それをいきなり理解しろだなんて無茶がある。
それに頭ではわかっていても、自分が誰かを殺すことなんて想像したくない。
必ず誰かに殺意を向けなければ自分が死ぬだなんて、そんな出鱈目なルールをそう素直に受け止められるかよ。

「はい……」

巫女服を着た可愛らしい小柄の少女がおずおずと手を挙げる。
さっきの惨劇を見たせいか瞳には涙を浮かべているようにも見えるが、それでも質問をしたいということはよっぽどのことなんだろう。
それが俺や他の参加者にとって有益なものになるのかどうかはともかく、この少女の勇気は褒めてやって良いと思う。

「睡蓮くん、質問をどうぞー」

くん?あの少女のことだから『ちゃん付け』だと思ったら男でもないのに『君付け』して呼ぶんだな。
まあ、そんなことは今はどうでもいいことだ。今はとにかく巫女服の少女の言葉に耳を向けよう。

「あの、参加者毎に割り振られている点数はどうしたら下げられるんですか?」

点数。説明書に書いてある『ポイントシステム』のことか。
人を殺せば殺すほど点数が溜まっていき、自分が溜めた点数に応じて色々な利益がある。死者の蘇生まで出来るというのだから、とても信じられたものではないが。
だが、大切なのはそこじゃなくて『特定の人間を殺すと一気にポイントが溜まる』ということだろう。
俺のような一般参加者は30点――良くも悪くも普通で、特別高いわけではない。
でもそれは俺みたいな一般人だけの話であって、一部の参加者は特別に点数が高い奴がいる。さっきの月夜なんかだと一度殺すだけで100点も貰えるらしい。

今回質問をした巫女服の少女の名前は『睡蓮』らしい。『睡蓮』は一度殺すだけで70点も貰えると書いてある。
そして100点溜まればそれなりに良いご褒美が獲得できる。
つまりは70点である睡蓮と誰かを殺せば最低でも100点になるわけで、必ず褒美が貰えるということになる。
俺みたいな奴にはあまり気にならないこのシステムだったが、どうやら高得点が与えあられている張本人にとってはかなりのプレッシャーになってるらしい。

ちなみにこの点数は五時間に一度の多数決後に変動するらしい。
だから睡蓮と呼ばれたあの少女は『点数を下げる方法』を聞いて点数を下げようと思ったんだろう。


「死ねば下がると思いますよぉー」


……まあ、予想はしていた。
この少女は最初から真面目に質問に答えるつもりなんてなかったのだろう。
とは言え、『点数を下げる方法』という頼みの綱と自分の顔まで割れてしまった睡蓮にとって、この答えはかなりの痛手だ。
わざわざあの少女が名前を呼ぶのには、こういう理由もあったのかもしれない。事実、この短時間で月夜と睡蓮という高ポイントを持つ参加者二人の顔が割れた。
そしてわざわざそんなことをしてまで参加者に狙わせたいということは、もしかしたら高ポイントの参加者達は何らかの手掛かりを掴んでいるのかもしれない。特に月夜は言動からしてあまりにも怪し過ぎる。

睡蓮は少女の答えにしょんぼりと俯いて「そうですか……」と言って、その場で黙り込んだ。
これは間違いなくヘコんでいるな。少しばかり同情してやりたい気分だが、今はそれどころじゃない。
と言っても、は自分のことで精一杯で誰かに同情してやる暇なんて無いというだけの単純な理由なのだが。


「もう質問はないですね?それじゃあ転送開始ですぅ」

は?
何を言ってるんだ、コイツは。いきなり転送開始とか言われても意味が――――


ふと気付いた時、俺は何処かもわからない場所に辿り着いていた。
なるほど、そういう意味だったのか。なにがなんだかわからないが、とにかくあの少女が有り得ない技術を持っているというのは間違いないらしい。



【獄石恵――――死亡】


オリキャラ解説
【日草天人】
17歳。学生。身長170cm程度。正義心と人を思いやる心が少しだけ強いだけの極々普通の少年。
困っている人を放って置くことが苦手で、なんだかんだで助けてしまうことが多く、厄介ごとに巻き込まれることが多い。
所謂ラノベ主人公タイプ

【星野月夜】
17歳。学生。身長は天人とあまり変わらない。
過去に一族を抹殺されており、復讐に燃える復讐鬼。異常なまでの自信家でもある。
能力は血液を自由自在に操るというモノ。能力自体は大したことは無いが応用が効く。
人外と対等に渡り合える程の戦闘技術と常軌を逸した殺人技術を有しているが、力はあまり強くない。
学生ではあるものの『星野』という一族の関係上、裏の世界にある程度通じており、殺人を行ったことは数えきれない程ある。
得意な武器は持ち運び便利で殺傷能力も高いという理由でナイフ。苦手な武器は刀のような無駄に重くて長いモノ。
その他、様々な謎があるがネタバレになりそうなので今は自重。色々とぶっ壊れているが種族はあくまで『人間』である

【雪柳睡蓮】
15歳。巫女服を着ているが男。見た目は女にしか見えないが列記とした男である。
陰陽師とイタコの能力を有しており、才能は全参加者中トップクラスだが、ヘタレ。
ちなみに巫女服を着ている理由は『女として育てなければ危険な災が襲いかかる』と予言されたことがあるからである。
故に本人は自分が男だという自覚があまりない。

【獄石恵】
見せしめ。宝石が大好き。何故か彼女の首輪にだけダイヤモンドが埋め込まれていた。

GAME START 時系列順 Monster
GAME START 投下順 Monster
GAME START 日草天人 Monster
GAME START 星野月夜 [[]]
GAME START 雪柳睡蓮 [[]]
GAME START 獄石恵 死亡

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年04月03日 17:31
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。