深夜の暗闇は、やがて消えて行き、やがて、朝日の立ち込める朝がやってくる。
日光の届かない屋内エリアでも、小鳥の囀りと共に、夜が明けたことに気づくだろう。
それは、屋内エリアである、デパートでも同様に。
飲食店街はかつてあったであろう、活気は消え失せて、最早、ゴーストタウンの如く、誰もいない。
シャッターも下りてはおらず、そのことが逆に、異常性を際立てている。
暫く行くと、飲食店街を抜けて、ブティックや書店などの商店が連なっていたが、無論、誰もいない。
正確に言えば、無人ではない。その異常性には、気づかない青年が一人いた。
彼の名前は、雷音金具。一見冴えない会社員であるが、天才的な才能を持っていた。
ハッキング、いや、クラッキングといえば正しいのかもしれない。
十歳の頃に、嫌いだった教師にメールボムを贈り、十三歳で、ファイアーウォールを破った。
十五歳で警視庁からは危険人物として監視され、同年のクリスマスに、FBIの警戒対象に選ばれた。
しかし、大学二年生の時に、暗殺されかけてからは、もう、不正アクセス行為は止めていた。
そんな彼は、カタカタ、とキーボードを弾きながらパソコンを見ている。
そのパソコンの画面は、真っ黒なバックに緑色の字で出鱈目な数列やローマ字が羅列されており、不気味な印象を与える。
メモリースティックが挿されており、メモリーの中にはウィルスが入っていた。
雷音の首輪には、USBケーブルが乱暴に突っ込まれている。
そんな状態で、スナック菓子を食べる姿は、どこか狂気を感じる者も多いだろう。
今、彼は首輪から、相手が使用しているネットワークを逆探知しようとしているのだから。
◇
イヒヒヒ。なぁ、同い年くらいのアンタに、ええ事、教えたろか。
首輪のなぁ、造りは簡単。爆薬と、火薬と、機械で作られとるだけやねん。
作りはお粗末なモン。田舎の工場を経営しとるような奴でも解体は出来とる。
けどな、結構な数、不可能なことがあんねん。
まずはな、首輪は心音爆弾に近い。いきなり、止まれば違和感を察知される。
それにな、盗聴器も内蔵されとるから、メールで文字コードに変換し、信号を送られるんや。
メールを受けた主催者は、
殺し合いを妨げる危険分子として、メールを返信しソイツの首輪を爆破させる。
主催者に気づかれへん、ようにするには、三つ方法があるんねん。
一つは、主催者を殺して、そっから解体をすること。まぁ、やらん理由は分かるやろ。
二つ目は、主催者が使用しとるパソコンや携帯を潰すことやねん。リスクを伴うし、やれる奴おらんやろうな。
三つ目はな――――――――ちょっと、こっからは、キギョーヒミツや。
んじゃ、これ渡すから。頑張ってや。応援しとんで。
ああ、後、生きて会えたらそん時は、ヨロシク。
◇
幾つものモニターがあるパソコンには、カチカチと画面が点滅しながら、大量のタブが出てくる。
異常なほどの広告や、迷惑メールなどで、埋め尽くされて、パソコンが使い物にはならない。
俗に言う『メール爆弾』。初歩的なハッキング行為の一つ。
怒り狂ったかのように、キーボードを叩くが、無論、そう簡単に元には戻らない。
そんな、サイバー攻撃の被害に遭った━━━━は、不機嫌そうに机においてあった、アイポットの電源を切る。
不運なことに、アイポットは、勢いのあまり、机からから落下して、床に叩きつけられた挙句、不気味な音を発していた。
完全に壊そうとしているかの如く、全体重をかけた左足は、アイポットを踏み潰す。
進行役である精霊、色欲ことアンドレイ・チカチーロが音を聞きつけて、現れる。
どこか━━━━を嘲笑うかのように、愉快そうな笑顔を浮かべている。
「八つ当たりは良くないよー。ったくねぇ……エロサイトの見過ぎじゃないの?」
PCの前に座る━━━━は、現れたアンドレイ・チカチーロの姿を不愉快そうに見る。
自分によって生み出された、精霊に馬鹿にされたことに対するプライドが許せなかったのだろう。
そのため、彼の言動を黙っている。いわゆる、シカトという奴だ。
「あれれれぇ~? ……パソコンなんて支給したっけねぇ、━━━━ちゃん」
◇
最後のメールに、試作品を仕込むと、タブを閉じる。
そしてコンセントを抜く。電源の入れっぱなしだったため、コンセントから、火花を噴いた。
位置を悟られる前に、パソコンの電源を切り、吹き抜けから、一階にある噴水へと投げ込む。
パソコンは叩きつけられた衝撃と、水の中に入った衝撃のダブルパンチで、使い物にはならなくなった。
雷音にとって、後ろ目出度い行動であった。他人のパソコンを壊したくは無かったからである。
いくら殺し合いに巻き込まれているからといって、技術の結晶であるパソコンを壊したくは無かった。
決して安いものではなく、作るのにはかなりの労力を必要とされる。
コンピューターウィルスも、防御用のプログラムの同様に、心得ていた。
罪悪感を感じながらも、彼は、ポケットに押し込められた首輪の設計図を取り出す。
文房具コーナーに置いてあった、ドライバーとライターは拝借し、熔接をしながら解体する。
簡単だった。熔接のより、首元を幾度か火傷しそうになったが、事なきを得た。
後はネジを回すだけだった。
警告音。
彼の頭の中に響いていた。続いて、首元からも警告音が鳴り響く。
この男が鳴った瞬間、中年男は首を吹き飛ばされた。
つまり、暫くすると、首が吹き飛ぶということを息しているのだ。
何重にも、サーバーを経由して、パソコンもキチンと処理した。
しかし位置を把握された。信じられないことに位置を把握されたのだ。
彼は信じられなかった。
自分が敗北することに。
「何で!? 完璧にしたはず!?」
ピーピー
ピッピーッピピー
ピーーーーーーーーーー
『バーン、ってね。ハハハハ、爆発しないよ~♪』
まるで、時間が止まったかのように、デパートのフロアは、静まり返っていた。
死に掛けたわけだから、仕方ないことだが、その光景はアンドレイ・チカチーロにとって、愉快で堪らなかった。
デパートの監視カメラには、彼の姿がばっちりと映っている。モニター越しにその姿を見ている。
人が恐怖に溺れていく姿は、色欲――――アンドレイにとって、快感でしかなかったのだ。
『ハハハ!!! 詰めが甘いね。面白くて、お腹が裂けちゃうよ。ハハハハハ』
「どう言うことか説明してくれよ」
『パソコンのある位置ってデパートか、学校しか無いじゃん!!』
「そっちじゃないよ……首輪が何故爆発させなかったかだよ」
『ああ~……そっちのは、冷やかしただけ。まっ、次やったら、首と胴体は離れ離れになっちゃうけどね』
だが、どちらも気づいていない。
二人が持っている――――隠し玉《トラップ》のことに。
やがて、ノイズ音と共に、放送は止む。互いに笑みを見せながら。
【雷音金具@ネタキャラ】
[状態]健康、冷や汗
[装備]なし
[道具]基本支給品、戦利支給品×0~3、USBメモリー(中身不明、PCウィルス類系)、首輪の設計図
基本:殺し合いには乗らず、主催者をハッキングで翻弄したい。
1:隠し玉を行使して首輪を解除する。
2:……馬鹿に……しやがって……
※とある参加者から、
オープニングの際に、首輪についての事を教えられています。
※(とある参加者は、主催者でもジョーカーでもありません。)
雷音金具(らいね・かねとも)
大学院生。元凄腕のハッカー。注意深い性格。人と関わりを持とうとはしない性格。
最終更新:2012年04月09日 12:59