12話 衛る者
「……名簿におじゃる様の名前は載っていないようでございますが……急に
殺し合いなど……できるわけございません……」
違う次元世界にある町、ヘイアンチョウの妖精貴族の子供、坂ノ上おじゃる丸の世話係である伝書ボタルの電ボ三十郎は、森の中で名簿を確認していた。
殺し合いの参加者におじゃる丸の名前が万が一入っていたとなれば。そう考え名簿を確認したのだったが、入っていなかったためひとまず安心はしていた。
しかし殺し合いなどという行いは、彼にとっては初めての事であったし、まずそんなことできる訳がない。
それ以前に、まず殺し合いという行為自体が、心優しき一介の虫である電ボにとっては、許せない事であった。
森の中でこの伝書ボタルは、今現在から、殺し合いに対する対処。そしてこの状況をどう動くかを考えていた。
下手に動けばやる気になっている者に命を狙われる。
それなりの知能があるとはいえ、やはり虫だ。
大きな体の者には、まさにアリがゾウに踏みつぶされてしまうかのように簡単に殺されてしまうだろう。
自分はおじゃる丸を、自分の大切な者を衛らなければならない。
そのためには、今自分がここで死ぬ訳にはいかない。
それなりの覚悟を決めた後、電ボは行動を開始しようとしていた。
「さて…とりあえず…」
――しかし。
ガッという音がして、電ボは動く事ができなくなった。
「!?」
電ボは背後から何者かに体を掴まれていた。
何度も言ったがこれは殺し合い。いつ何者かに殺されるか分からない。
電ボは必死に小さな体をばたつかせ、自分を掴んでいる参加者を振り切ろうとした。
「おやめください! 私は、私は殺し合いに乗る気などノミ一匹程もこざいません!!」
「貴様、名を名乗れ」
「は…?」
そこにいたのは2メートルはある牛の大男だった。
褐色の肌に大きな二本角。
皮膚の表面に薄ら見える細かい切り傷の数々は、まさに歴戦の戦士と言わざるをえないものであった。
牛の男は、自らの手中で乱舞する電ボを見ながら静かに
「名を名乗れと言ってるんだ」
――と、言った。
電ボは彼が殺し合いに乗っていないような台詞を言っていた感じがしたので、つい動きをやめてしまっていた。
「わ……わたくしめは電ボにこざいます」
「俺はミノタウロスだ」
「は、はあ……」
「手荒な事をしてすまない。俺も殺し合いに乗る気はない、それだけは一応言っておく」
「本当に、でございますね?」
「ああ。安心しろ」
電ボとミノは、とりあえず大木の洞の中で、自分達が持ちえるいくつかの情報を交換しあうことにした。
電ボは自分がヘイアンチョウという別の世界から来た伝書ボタルだという事を。
ミノは自分が魔界から召喚された召喚獣である事。そしてルルーという女性を守護するために魔導世界という魔法が栄える世界に点在しているという事を話した。
二匹ともこの殺し合いに対する情報は知らなかったため、とりあえず情報の交換はここで終了という事にした。
「ふむ……貴様はどうやら危険なヤツではないらしい。むしろ人畜無害といったヤツだな。血の気の多い俺とは正反対だ」
「ミノタウロス様は、はじめは見るからに危険な輩だと思いましたが、しかしそれほどでもなくて安心しました」
「……まあここにルルー様が参加しているとなれば、乱心して殺し合いに乗っていたかもしれん」
「まあ、こんな状況ですから……お気持ちは分かります」
その後、お互い返す言葉が見つからずしばらくの沈黙が続いた。
だがその沈黙の中、ミノが口を開き、こんな事を言った。
「電ボ、提案がある」
「……何でしょう?」
「一緒に、行動しないか?」
「……はい?」
ミノはさらに言葉を連ねる。
「一刻も早くこの殺し合いを終わらせたい。それならば協力者が必要になる。だから協力してくれ、電ボ三十郎」
ミノは電ボに協力を求めた。
これだけだと説明が不十分のような気がするが、それ以外の説明はしようがなかった。
それだけ彼の提案はシンプルかつ実直なものだったのである。しかし――
「……お断りします」
「……何故だ」
「ここは殺し合いの場所にございます。今の所は味方でも、時が経てば殺しに走る可能性が無いとも限りませぬ。
もし私とあなただけになった時、最後に自分だけ生き残るために手を組んだ。という可能性もありますし、もしさっきの言葉が本当だとしても、やはり初対面の相手に易々と信用はできかねます。
という訳で、残念ですがあなたと共に行動する事はできませぬ」
電ボはまだミノを完全に信用した訳ではなかった。
ここでできれば電ボはこの話しを終わらせたかった。
実際のところ、本当に信用できるかどうか分からなかった。だからああ言うしかなかったのだ。
だがしかし、ミノはその電ボの思考を凌駕する言葉を放つ。
「俺は衛る者だ」
「……?」
「俺はルルー様に仕える部下だ。
俺はルルー様に命をも懸ける覚悟をしている。ルルー様を衛るまでは俺は死ねない。
……それに俺は、自分が言った事をそう簡単に曲げる程、落ちぶれてはいない!」
そしてミノは、電ボに自らの使命と覚悟を全て話した。
ミノに敵意は無く、いや、いつものミノタウルスには無い奇妙な落ち着きを醸し出していた。
そのミノの言葉に電ボが出した答えは――。
「…わかりました。私も大切な人を衛るまでは死ねませんので。
共に行動しましょう。よろしくお願いします。ミノタウロス様」
同行の許可、であった。
まだ信用できない所はあれど、彼の言う言葉は真っ直ぐで、だからこそ嘘偽りのないだということは分かった。だからこその選択であった。
「ならば行こうか。地図によると寺院が近いな。とりあえずそこに行ってみるか」
「かしこまりました。では、夜が明けるまではそこにいる。という事で構いませぬか?」
「構わん。それと、俺のことはミノでいい」
こうしてミノと電ボは、大切な者を衛る為に動き出した。
そしてこの出会いが、このバトルロワイアルを終わりに導くキーの一つになろうとは、誰も予想してはいなかった。
【C-4/森/一日目/深夜】
【電ボ三十郎@おじゃる丸】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考]基本:とりあえず今は生き残る事に専念したい
1:ミノタウロスと共に寺院へ向かう
2:夜が明けるまで寺院で待機
【ミノタウロス@ぷよぷよシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考]基本:なにがなんでも生き残る
1:電ボと共に寺院へ向かう
2:夜が明けるまで寺院で待機
3:襲ってくる者には容赦はしない
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最終更新:2012年09月02日 21:48