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絶望、そして……

「随分、惨い殺し方だな……」

ホーム内に放置されている遺体を調べていたら、無意識に口から言葉が漏れていた。
そう言いたくなるほど、この遺体は酷かった。
――――なにしろ、尻の辺りにおびただしい量の血が溜まっているのだ。
おそらく、尻からの出血が原因で死亡したのだろう。
何故、そんな場所から死ぬ程の出血をしているのかは分からないが。

(…………)

これで、2人目だ。
こんな所で、誰かの遺体を見るのは。
……当然、良い気分はしない。

(全く、どうなってるんだ)

そんな時だった。
辺りを包みこんでいた静寂を、轟音が打ち破った。








あれからどれほど経っただろうか。
時間は、誰に対しても平等に流れている訳だから、その点は他の参加者と変わらない。

「……………………」

あのライオン頭を吹き飛ばした後、00号は何故か吹き飛んだ方向とは逆の方に向かっていた。
あれほどの攻撃で生きていられる人間はいない――――そう頭の中に入っているからだ。
その前提があるからこそ、ライオン頭の生死を確認せずに、反対の方向に向かったのだ。
それが正しい判断かは、彼には分からない。
ただ、自身の心にのみ従っているだけだからだ。
心――――本能、と言い替えてもいいかもしれない。
人の本能……相手を打ち倒し、自分が優位に立つ……。
ある意味、一番シンプルな欲求だ。

「………………」

そして。
ゆっくり歩を進めていた00号は、ついに駅に辿り着いた。
もちろん、巨大な体躯で入り口をすんなり通れる訳も無い。
所々、派手に音を立てながら、駅を破壊しながら侵入していく。
足を踏みだすたびに、足音が大きく響き渡る。


「確か、さっきの音はこの辺りから……」

そして、戦場へと新たに足を踏み入れる男が、一人。
その名は、藤田茂。
本来の運命通りに事が進んでいたなら、既に命が絶たれていた男。
果たして、運命は変わるのか?それとも、運命には逆らえないのか?

「――――何だ、こいつは」

――――見えない場所で、運命は変化している、のかもしれない。








「――――何だ、こいつは」

ただ、驚くしかできなかった。まぁ、当然だろう。
音に気がついて歩いてくれば、そこには巨大な化け物がいたんだから。
――――クルリ、と化け物がこちらを向く。
……逃げなければ。逃げなくちゃならない。
思考でも、感情でもない。自分の理性が。
「早く逃げろ、コイツはヤバい」と語りかけてきている。
だが、体は。
まるで、コンクリートで固められたみたいに、硬直している。
早く、逃げないと!
焦れば焦る程、体は硬直していく。
逃げたい、逃げたい、逃げなければ!
でも、逃げられない、逃げられない、逃げられない……!
そんな間にも、化け物は、ゆっくりと手に持つ標識を振り上げている。
まるで……恐怖心を煽るかのように。
このままじゃ、殺される――――!

「……うわぁぁぁっ!!」

ブウン、と風を切る音と共に、標識が振り下ろされた……。
――――それと同時に、体の硬直が解け……ドッ、と横に倒れこむ。

(た、助かった……!)

いや、助かってなんかいない。
化け物は、標識を2本持っているんだ。
今回はたまたま助かったが、今度は……殺される。
体の硬直は、既に解けている。今度は、逃げなければ!
荷物なんか、回収している暇はない。
何も持たずに立ち上がり、とにかく逃げる。
逃げる。
逃げる……?
……逃げるって、どこへ?
ここは、狭い駅の中だ。逃げ場なんて、ない。
走って逃げても、あの標識でやられるだけ。
それ以前に、さっきまで固まっていた状態での、全力なんてたかが知れている……。
――――つまり、もう、何をやっても無駄と言う事になる。
走っても逃げられない。そのままでいれば殺される。
八方塞がり。










――――出来れば、このタイミングで気付きたくは無かった。










(そうか…………ああ、やんなっちまうなぁ)












……化け物は、再度、攻撃体勢に入っている。
おぼつかない手つきで、さっき落とした銃を拾う。
……あの、妙な男が落として行った銃だ。
狙いなんて、この際どうだっていい。
とにかく、滅茶苦茶に引き金を引いて、銃弾をバラ撒く。
――――全ての弾丸を撃ちつくしてしまえば、俺は。
おそらく、その時が。
俺の、最期だ。






そして、カチッ、と弾切れを知らせる音が、小さく響いた。
それと同時に、標識が目の前まで――――。






「――――すまんな、」













【藤田茂@SIREN2 死亡】














血の海。
そして、その中に転がる、かつて人だったもの。
頭部は原型を留めぬほど破壊され、その他の部分も、損傷が酷く、直視出来る物ではない。
じわじわと、しかししっかりと、駅の中に血液特有の臭いが立ち込めて行く。
凶器となった標識からは、未だに血液が滴り落ちている。
良く見ると、所々組織片もこびり付いている。

「…………」

00号の体には、小さな傷が出来ていた。
さっきの、銃弾による傷だ。
だが、まるで気にしていない様子である。
……拳銃弾程度では、ダメージを与えることすら叶わないのか?
――――いや、違う。
あくまで、00号は生物だ。生命が宿っている。
小さな積み重ねが、いずれは大きな形になるように……。
この小さなダメージも、いつかは、多大なるダメージになるだろう。
だが、当の本人は、その可能性に気付けない。
与えられた使命に従うだけの、「殺人マシーン」であるが故に。

「………………あぁ」

再度、00号は歩き出す。
次の標的を、探すために。




【一日目・深夜/A-4】
【被験体00号@オリジナル
[状態]:健康
[装備]:交通標識×2
[所持品]:なし
[思考・行動]
基本:全て殺す
1:……。
※A-4の駅が多少壊れています
※駅内部に、ワルサーP99(0/15)、シングルアクションアーミー(6/6)@MGS3
 藤田茂のデイパックが放置されています



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ライオン嫌い 被験体00号 [[]]
ツミナガラ…と彼は謂ふ 藤田茂 GAME OVER

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最終更新:2012年09月15日 22:30
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