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M.A.彼女の決意は本物なのか?

22話 M.A.彼女の決意は本物なのか?


人を一人斬った。
足りなかった。
人を二人斬った。
まだ足りなかった。
人を三人斬った。
満たされなかった。
人を四人斬った。
全然、この刀を満たさなかった。

獲物はどこにいるのだろうか。
いつの間にか私はそう考えていたような気がする。
人を殺したくないと否定を続けていた心はいつしか消えていた。
いつしか、人を殺したいという願望へと変わっていたのかもしれない。

ふと右手を見た。
そこに持たれているのは一振りの刀。
そして、今までに見た事がない血まみれの手。
微かに乾き赤黒くなり、血が絡まり動かしづらかったその手。

目の前を見ると、何故か鏡が私の前にあった。
そこに映っているのは、私であり私でなかった。
血にまみれた顔、光の入っていない目。
そして――――これ以上ないほどに歪んだ笑いを見せている、私。

違う――――『違わない』
これはわたしじゃない――――『それはお前だ』
人を殺すのは、嫌だ――――『物を壊すのは、楽しい』
どうしようもなかったんだから――――『どうしようもあったんだろう』
私は操られていたんだから――――『お前は自分自身でやったんだろう』

だって私は、この刀に――――――――『刀なんてどこにある』
ない、なんでないの?――――――――『最初からなかったんだろう』
そんなわけがない、だって……そんな――――――――『さぁ、認めろよ』
違う、そんなこと……あり得ない――――『違わない、そういうことはあり得るんだよ』

「違う、違うの――――そんな事、あるはず……」

『見ろよ、現実を』

「私は、殺してしまったけど……私が殺したかったんじゃ」

『お前の足元を見てみろよ』

「違う、やめてっ――――私は、私はっっ!!」

『何故見ない、見る事はお前に課せられた罰だ。
 このまま現実を見ない事は、許されない。
 延々ともがき苦しむか、一瞬で楽になるのか、どちらがいい』

「私は、私はっ……!」

『さぁ、見ろ……守谷彩子』
『それがお前の歩いてきた『道』だ』

「ッ――――あああああああああああああああああああ!!」

下を見ると、一人の男が足を握っていた。
最初に殺した名前も知らない男。
恨めしそうな眼をして、皮膚のほぼ残っていなく丸見え状態の眼球をこちらに向けている。
足についた手を振り払おうとすると、違う誰かがまた掴んでくる。

(せっかく、生き返れたのに――――お前が、お前がああああ!!)

その男は、私が二番目に殺した男だった。
首と胴が離れ、潰れた喉から低く呻く声で行ってくる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」

私が恐怖で潰されそうになっていると、前後に二人の男が現れた。
最後に殺し、殺された二人組。
その歪みなき肉体の二人はこちらを睨む。

(お前がいなければ――――)
(お前がいなければ――――)
(脱出の手口をつかめたかもしれないんだ――――)
(脱出の手口をつかめたかもしれないんだ――――)
(お前が――――)
(お前が――――)
(お前がッ――――!!)
(お前がッ――――!!)

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ――――」

最初に足を掴んだ男の右腕から刀が飛び出し、彩子の懐を切り上げた。
血飛沫が飛び、小腸が体から出てくる。
痛みと恐怖が彼女の体を支配し、彼女の呼吸が乱れ懺悔の声が止まる。

(俺の、俺の痛みを、味わってみろ)

次に彩子の首が飛ばされた。
それで意識が無くなるかと言えば、そうではない。
ここは現実ではなく、守谷彩子が作った空間。
痛みはリアルにあるものの、死ねるわけではない。
死ねずに痛みだけが延々と繰り返され、彼女は狂いそうになる。
だが、それだけでは許されず、残りの二人も彼女の体を襲う。
一人は彼女の体を一閃し、更に血を噴き出させる、。
彩子の顔に血が飛び、胴と首が離れているのにもかかわらず痛みが頭に痛覚として信号が送られる。
痛みをただ受けることしかできず、彼女は泣いていた。
痛みだけではない、恐怖、懺悔と言った気持ちもある。
最後に殺した男が、彼女の胴を切断した。
もう痛みに彩子は叫ぶ事もせず、ただその場に倒れていた。

『どう? これが貴方のしてきた事よ』

先ほどまでの声の主が彼女に声をかける。
それは誰でもなく、守谷彩子だった。
しかし声の主は、守谷彩子であり、守谷彩子ではない。
『妖刀』であった彼女、というべきだろうか。

「私は、どうすれば」
『許される訳ないじゃない。 貴方がしたのは殺人――――これ以上ない禁忌よ』
「でも――――私はしたかったわけ、じゃ」
『したくなかったから許されるの? したくなくて物を盗んだら許されるの? そんな甘い事を言うんじゃないわよ』
「ごめん、なさい」
『――――興ざめね、あなたは所詮そんなものだったってことよ』
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
『じゃあね、守谷彩子――――精々足掻いて死になさい』

声の主は彩子に銃を向けた。
彩子は、再び殺されるのかと思った。
死にたくはない、でも――――苦しいのも嫌だ。
その矛盾した感情をもち、彼女は最後に声の主(彼女)を見た。
彼女の顔は、これ以上ないまでに頬を涙で濡らしながら歪ませていた。
それは彼女の中にあった、本来の優しい彼女。
殺人を拒んでいた彼女であった。

「――――――――私は」
『――――――――私は』
「誰も」
『誰も』
「殺さない」
『殺さない』
「今度こそ」
『今度こそ』
「最後まで」
『最後まで』

「『抗ってみせる!!』」

その瞬間、辺りが光に包まれた。
いつの間にか、不気味な場所は綺麗な景色へと変わっていた。

「――――私は」
『もう、間違えないようにしなさい』
「――――そうだ、私は……間違わない」
『貴方は、もう弱くはない、強くなったのよ』
「――――うん」
『さぁ、行きなさい……もう私には用は無いでしょう』
「――――わかったわ」

彩子は眼を閉じた。
少しづつ、意識が光に包まれていく。
少しづつ暖かくなり、意識がどこかへと飛んで行きそうになる。
そんな中に、彩子の頭に一つ声が響いた。



『頑張りなさい、彩子(わたし)――――再び間違いを起こさないために』



◆    ◆    ◆    ◆    ◆



体が異常なほどにだるかった。
まるで先ほどまで体をバラバラに裂かれてたかのように。
私は視線だけを動かして周りを見た。
横に見えた窓の外から覗く太陽。
ハートとかが描かれている壁紙。
ここはよくある女の子のような私室のようだ。
だが、どうしてここにいるのかが分からなかった。
私は先ほどまで――――先ほどまで、何をしていた?
思い出せないまま、視線だけを動かし続けると、何かが見えた。
視線の端に映った黒い色の何か。
それが何かを見ようと少しづつ首を動かしていく。

白く柔らかそうな肌。
柔らかそうな唇を動かし、寝息を立てている。
幼い体躯はその芸術的な光景をさらに引き立てているようだ。

というか、簡単に言うと女の子が寝ていた。
あまりの急なことに私は驚きを隠せないでいた。
すこし落ち着こうか。

息を吸って、吐いて。

もう一度大きく吸って、吐いて。

はい、そこには何がありますか。
相も変わらず女の子でした。
以上です。
……………………。

(何があったの!? え、ちょ、落ち着こう、こういうときには素数を数えると良いって何かで見たような!?)

とりあえず状況を整理しよう。
ベッドの上で目を覚ましたら横に可愛い女の子が眠っていたッッ――――!
どうしてこうなったと言わんばかりにおかしい状況である。
昨日私は何をしていたのか思い出そうとしても何故か思い出せない。
飲み会に付き合って飲まされて倒れたとか、その帰りにこの子を拾ってお持ち帰りしちゃったとか。
もしそんな事をやっていたらモロ誘拐ね、私。
どうしよう、警察さんのお世話になってしまう。
それ以前に未成年の飲酒って時点で逮捕モノじゃない。

「――――うーん、まぁ……でも」

結局は状況は変わらない。
私はこの子と寝てしまっていたようだし。
それになんかこの子可愛いしね。
ちょっとくらい抱きついちゃってもいいよね?
きっと誰だって抱くと思うのよね、この感情は。
だって、お人形さんのような女の子が目の前で寝てたら、抱きつきたくならない?
そう、その状況がまさに今。
だから私は悪くないのよ。
悪いとしたら、こんな状況にしてしまった天の神様だと思う。

「……んぅ」
「ッ――――!?」

寝がえりをうったときに制服が捲れてへそが見える。
異常なほどにポイントが高い状況である。
しかもこの無邪気な笑顔、可愛すぎる!
うわぁぁぁぁぁぁ!!

「……やっぱり我慢できないっ!」

結局我慢できずに抱きついてしまう。
あったかい、やわらかい。
とてつもないほどに幸せだった。
と、まぁ……抱きついてしまえば女の子も目を覚ましてしまう。

「……ん、おはようございます」
「お、おはよう……ございます」

しまった、目を覚ましてしまった。
起こさないでおきたいとも思っていたけれども仕方ない。
女の子は眠そうに眼をこすっている。
その仕草も可愛いなぁなんて思いつつ彼女を見ていた。

「えーっと、初めましておねーさん……ぼくは飯島遥光だよ」
「え、あー、わた、私は守谷彩子、よろしく」

女の子は笑顔で私に自己紹介をしてくる。
想った通りの可愛らしい声に再び頬が綻びそうになるが、どうにか耐える。
それよりも、聞きたい事が数個あったのだ。

「あの、聞きたい事があるんだけれど」
「ん? どーしたの?」
「――――あの、なんで私たちはここにいるの?」

そう、最初に抱いていた(はずの)疑問だ。
どうしてここにいるのかわからない。
この子が一緒に寝てたのもそうだが、ここは私の家ではない。
なぜこの家にいたのか……。

「――――おねーさん、覚えてないの?」
「な、何を?」
「何をって、さっきの事だけど――――」

さっき、と言うと何だ。
私が起きるまで何かがあったのか。
思い出してみよう。
とか言ったけれども、思い出せたらこんな事は聞いていないのだ。

「いいや、思い出せないんだけど」
「うーん……それだったら、ぼくが話してあげるよ」

そう、それは私の目が覚める前の話。
壮絶なほどに吹っ飛んでいて、可笑しい話。
常識という常識が、壊れていく話。



◆    ◆    ◆    ◆    ◆



「――――何故だ」

この状況にクリス・レッドフィールドは困惑していた。
新しい相棒のシェバと共にジルを探しながら任務を遂行して、最後にウェスカーを倒した。
あの惨劇を何とかできるようにする大きな一歩だったはずなのだ。
だが、彼が今いるのは希望とはほど遠い殺し合い

「何故、こんなことになったんだ――――」

首につけられている、如何にもな首輪。
残念ながら自分にはこの首輪を解除する力はない。
ジルならできるかもしれないが、彼女でも難しいかもしれない。
しかしながら知り合いがジルだけと言うのも変な話である。
いや、知り合いはほとんど死んでいってしまったから仕方ない。
だがシェバがいなかった事には感謝すべきなのだろう。
もし最悪の場合――――自分が死んだとしても彼女なら戦い続けてくれる。

「だが、死ぬつもりはないからな――――こんな殺し合いなんて潰してやる」

そう言いながらクリスはバックの中を漁り始めた。
彼はバックの中からある物を見つけて取り出す。
ガトリングガン、それ以上でもそれ以下でもないものだ。
弾は無限に供給されるようになっていると書いてあるが、どうしてそうなっているのか分からない。
だが、この武器は相当ラッキーだと彼は判断する。
こんな場所で弾丸をすべて避けるような人間はほぼいないと思われる。
いたとしてもごく少数、それに打破策はあるはずだ。

「よし、行こう……まずはジルを探す事だ」
「おいおい、そう急ぐんじゃねーよ」
「ッ――――!?」

行こうと動き出した次の瞬間だった。
その男は悠然と俺の後ろに立っていた。
気付かなかった、いや――――気付けなかったというべきだろう。

「何驚いてんだよ、別にそう驚く事でもないってんだけどな」
「お前、いつの間に俺の後ろに」
「何か色々やってた時にな、つーか気付かない方がおかしいだろう」

いいや、普通の人間なら気づけるはずだ。
だが、こいつは一切気配も何もなかった。
ウェスカーには劣るが、異常な敵だということには変わりないようだ。
しかも、ガトリングガンをもっている俺を前にしても余裕の笑みをしていた。
一般人なら恐怖を覚えるはずなのにだ。

「おっと、そういえば名乗ってなかったな――――◆ymCx/I3enU、しがない書き手さ」
「書き手――――?」

書き手、とはなんだ。
それ以前にコードネームのような名前だ。
名簿を見た時にもあった気がするが、やはり本名ではないのだろう。

「そう、書き手――――知らなくても当然だけどな、マイナーだし」

ハハハ、と男は笑う。
話にまったくと言っていいほどついていけない。
だが、先ほどまで笑っていた男の顔が急に冷めた物になった。
その急な変化に、軽い恐怖すら覚える。

「――――しかしよぉ、普通に暮らしてたはずなのにこれだよ……全くふざけてるよな。
 平和な日々を返しやがれってんだよ……俺は普通に暮らしたいんだってのよ……」
「何が言いたい――――?」
「まぁ、手軽に言うならよ……」

男は右ポケットに手を突っ込む。
左手で顔を蔽い隠し、笑っている。
この男の次の行動が目に浮かぶようだ。



「死んでもらうぜ、見知らぬオッサン」



予想通り、男は右ポケットからバタフライナイフを取り出し走ってくる。
対処も仕方なし、と判断しガトリングガンを起動する。
そして異常な数の弾丸が射出される。
一瞬で決着がつく攻撃――――の、はずだった。

「じゃあまずはコイツだな……小神さくら」

男が何かをつぶやいた瞬間男の雰囲気が一気に変わる。
そしてガトリングガンの弾丸を異常な動きでよける。
数発命中しているが、表情を曲げもしない。

「ッ、らあ!」

ナイフで首を斬られそうになるがなんとか避け、回し蹴りで男を吹き飛ばす。
男は見事に着地して笑っていた。

「いやぁ、アンタ強いなぁ……ウチのさくらでここまで苦戦するとは」
「さくら……誰だそれは」
「名簿にも載ってたはずなんだけどなぁ、ま……名簿見たところで同じか」

男は再び戦闘態勢を取る。
再びこちらもガトリングガンを構える。
そして男が動き出した瞬間こちらも弾丸の射出を始める。
うるさいほどの作動音とともに肩に響く反動を受けながら撃ち続ける。
だが、男はほとんどと言っていいほど被弾しない。
先ほどよりもキレの良い動きをしている気がする。

「ははは、ヒリューの方が体が軽くていいなぁ……これなら弾丸も余裕で全部避けれるな」
「ッ――――!」

どうやらこいつはウェスカー並の強さをもっているらしい。
何故か飛んでいる男を見ながらそう判断する。
翼をはばたかせ、こちらを見て男は笑う。

「さっさと諦めてくれた方がいいんだけどねぇ……面倒だしさ」
「……悪いが、諦めは悪いんでな」

男は地上に降り立ち、翼を縮ませた。
そして先ほどまでの余裕の表情を消して怒っているようにも見える表情でこちらを再び見つめる。
何故表情が消えたのか分からないが、向こうも何かあったのだろう。

「――――そうか、これ以上やっても面倒だしな……俺は帰らせてもらうよ」
「…………」
「じゃあな」

男は急に後ろを振り向いて行ってしまった。
止めようかと思ったが、恐怖で止める事が出来なかった。
これほどまでに恐怖を感じたのは、やはりウェスカーとの戦い以来だろう。

「――――しかし、生き延びたが……止められなかったな」

ため息を一つ吐く。
ガトリングガンという強力な武器をもっても勝てなかった相手がいるのだ。
しかも、最初に遭遇した相手が。
残り自分とジル以外の97人が化物だけと言う可能性もある。
あくまで可能性だが――――。
しかし、少なくともあいつクラスが5人くらいはいてもおかしくはない。

「これ以上ないほどにピンチだな……」

味方も今のところ誰もいない。
自分と同じ志をもつ味方がいれば、かなり戦いも楽になる。

「まぁ、そういうやつがいるかもわからないけどな」

とりあえず今は戦うしかない。
そんな連続して化物と戦うことなんて、無いはずだ。






――――――――パァン






その幻想は、すぐに打ち壊された。



◆    ◆    ◆    ◆    ◆



「ハハハッ、いいねぇ……やっぱり殺し合いはこうでなくちゃあな」

男は笑った。
目の前で恐怖におびえ、声も出せずにいる少女。
それに対し、彼女の支給品だった銃を奪って余裕の笑みをしている男。
この状況を笑わずにはいられない。
だって彼は今、狂気の殺人鬼となっているのだから。
◆ymCx/I3enU――――今現在は氷室勝好としての力を得ている。
彼に作られた数百のキャラクターの内の一人。
そして、その中でも最凶の部類だ。

「悪いなお譲ちゃん……俺は勝たなくちゃあいけないんでな、人を信じるとこうなるってことを知っておくべきだったな」
「……」

少女はいまだ何もしゃべらない。
それを少し不満に思ったymは銃を一発撃つ。
パァン――――その音とともに少女の顔のすぐ左に銃弾が通り過ぎる。
風圧を肌で感じ、少女はさらに恐怖する。

「――――チッ、やっぱだんまりかよ……そうだなぁ、もう終わらせちまってもいいか」

男は左手で顔を覆う。
そして、可笑しそうに笑う。 犯しそうに、嗤う。

「――――じゃあな、お譲ちゃ「待って!」ん?」

男が喋っていると、彼の右側の方から声が聞こえてきた。
その声の主――――守谷彩子はymを見据えていた。
銃をもっている相手に対しても、怯まずに。

「貴方、そんな事をして、恥ずかしくはないの!?」
「恥ずかしい? これは殺し合いだぜ……悪ぃが、これは正当な方法名だよ……『ココ』ではな」
「ッ――――でも、女の子に対してそんな事」
「女の子だからどうした、結局は全員敵だ。 子供だから見逃せってか? だったら子供が優勝しちまうじゃねーかよ、それじゃあ面白くもない」
「貴方は、殺人が楽しいと思うの――――?」
「ああ、今の俺は思うよ――――『快楽殺人者』だからな」

間違ってはいない。
彼自身今は快楽殺人者なのだ。
人を殺すという事を最高に楽しむ。
それが彼なのだ。

「――――なら、私は殺していい……その子は殺さないで」

彼女は冗談でもなく、本気でそう言った。
自己犠牲であるのは分かっている。
だけれども、目の前で小さい女の子が死ぬのを見逃すのも嫌だった。
それに、彼女は4人の人間を殺した。
そんな罪人よりも、あの女の子の方が生きるにふさわしいはずだと。

「は、ははは……アッハハハハハハ!!!!」
「何がおかしいの? 私は本気で――――」
「お前を殺してこのガキを見逃す? 出来るわけないだろうが、逆になんで見逃さなくちゃあならねぇんだよ。
 お前もコイツも死ぬ、これはもう決まってるんだよ」
「――――――――」
「どうしたよ、何も言い返せないのか?」

彩子は黙り込む。
だが、彼女の瞳には憎しみ――――或いはそれに似た感情が移されていた。
それを見て、ymは再び笑った。

「それじゃあ、死んでもらうか――――じゃあな」

パァン――――と、音が響いた。
彩子は体を跳ねさせ、地面に倒れ込む。

「――――あら、ミスった……肩に当たっちまうとはな」

だが、弾丸は彩子の肩を貫通したのみとなった。
かなりの出血をしているとはいえ、これでは死ぬ事は無いだろう。
仕方ない――――そう思いながらymは彩子のところへと歩き出す。
一歩、一歩、一歩――――少しづつ彩子に近づく。
そして、彩子の目の前に立つ。

「ハッ、それじゃあな……今度こそ、サヨナラ」



ダダダダダッ―――――――――――――――――。



その言葉は続けられる事は無かった。
背中から血液の羽を生やし、ymは倒れた。
彼の周りは次第に血の海と化した。

「――――殺した、か」

少し遠いところで一人の男が呟く。
先ほどymと死闘を繰り広げ、引き分けへと持ち込んだ男――――クリス・レッドフィールドだ。
銃弾の音を聞きつけ、奇襲と言う形でymを殺した。

「……後ろの攻撃は避けれないってか、それは当然だが」

ガトリングガンを肩にかけ、クリスは先ほど撃たれた彩子のところに走る。
近くに少女がいるが、そちらは無傷のため一旦置いておく。
肩から出血があるけれど、死ぬほどではない。
だが細菌などが入れば目も当てられない状態となる。

「おい、そこの女の子! ちょっとこっちに来て手伝ってくれ!!」

そして時は、最初へと戻る。



◆    ◆    ◆    ◆    ◆



話を聞いた時は理解出来なかった。
女の子の身代りになろうとした事など、覚えてもいない。

「――――これがすべてだよ」

だが、飯島ちゃんが嘘を言っているようにも思えない。
右肩の怪我は本当にある。
治療してあるので、痛みはほとんどない。

「…………」
「本当に、吃驚したよ……怖かった」
「…………」
「ああ、目を覚ましたか――――怪我は大丈夫か」

若干落ち込み気味の雰囲気を壊してくれた。
入ってきた男の人は、まさに格闘家と言ったような体格の人だった。
先ほどの会話にあった、ガトリングを持った男の人だろう。

「――――この様子だと、話したようだな……まずは申し訳ないと言っておく」
「え、いや……助けてもらったのに、そんな」
「本当ならば、一般人を守らなければいけないのに……こんなことになってしまったんだ」

男の人は何故か私に謝ってくれている。
本当なら死んでいたのに、生きさせてくれたのだ。
感謝してもしきれない。

「いいえ、本当なら私は死んでたんですから……助けてくれた嬉しかったんです、ありがとうございます」
「――――そうか」

男の人は謝るのをやめてくれた。
本当なら私があやまらければいけなかったはずなので、変な気はするんですけどね。

「……と、そういえば自己紹介がまだだったな……俺はクリス・レッドフィールド、BSAAに所属している」
「び、びーえすえーえー?」
「――――知らなくても無理はない、君は見たところ日本人かだろう」
「え、はい……そうです、守谷彩子です」

何故このタイミングで自己紹介したのだろう。
緊張とか色々混じったからだけど、なんか恥ずかしい。
何故こいつは今自己紹介したんだとか思われてるよ絶対。
時を巻き戻してやり直したい。

「――――そうか、彩子……君に一つ頼みがある」
「え、はい……何でしょうか」
「俺に、協力をしてもらえないだろうか」

帰ってきた答えは予想の斜め四十五度を超える物だった。
えー、ちょっと落ち着こう。
え? 協力してって言ったよね……?
私は別に訓練された人間でもないのに。
私が手伝ったら逆に足を引っ張ってしまうと思うんだけど。
それに、あの男の人を倒したって言うほどこの人は強いんだ。
別に私の協力を得なくてもいいはず。

「――――嫌なら、断ってくれても構わない」
「い、いや……嫌じゃないですけど、その……なんで私なんか?」

私にとっては一番の謎なんだけど。
クリスさんはそれを聞き、呆けた顔をする。
何か変な事を言ったわけでもないはずなんだけど。
するとクリスさんは少し呆れたように笑いながら私に言った。


「他人を助けるために命を捨てれる奴が、そんな事を言うのはおかしい。
 もっと堂々とするべきだ。 それに、俺が欲しいのは腕っ節が強い仲間ではなく、信頼できる仲間だ」


「――――そう、ですか…………わかりました、私も協力させてもらいます」
「よろしく頼むよ彩子……それに、遥光も先ほど言ったとおり、頼む」
「うん、よろしくね」

遥光ちゃんも、クリスさんに協力してくれと言われたのだろう。
これで、少しだけど皆で帰れる可能性が上がった。
私は、頑張らなくてはいけない。
それが――――約束だから。



彼女との、守谷彩子(あなた)との約束なのだから。



私はあがいてみせる。
操られて好き勝手される事しかできなかった私だけれども。
出来る限りのハッピーエンドで終わらせてやるんだ。

――――さぁ、第一歩だ。

【朝/C-2住宅街民家内】
【守谷彩子@他の方のオリキャラ】
[状態]右肩に銃創(処置済み)、決意
[所持品]基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを出来るだけ幸せに終わらせる
1:クリスさんと飯島ちゃんと行動する
[備考]
※重要なしロワ死亡後からの参戦です。
【飯島遥光@他の方のオリキャラ】
[状態]健康
[所持品]基本支給品
[思考・状況]
基本:生き残る
1:おねーさん達と行動する
2:熊本潤平と合流
[備考]
数だけロワ参戦前からの参戦です。
【クリス・レッドフィールド@BIOHAZARDシリーズ】
[状態]体にダメージ(小)
[所持品]基本支給品、ガトリングガン@BIOHAZARDシリーズ
[思考・状況]
基本:この殺し合いの打倒
1:彩子、遥光と行動する
2:ジルと早く合流したい
[備考]
※数だけロワ参戦前からの参戦です。



◆    ◆    ◆    ◆    ◆



と、まぁいい感じに終わったと思うだろう?
それはあくまで幻想、空想上の話だ。
守谷彩子が見た物は自分を正当化させるものだったのかもしれないだろう。
だったら先ほどまでの話は、視点がくるっと変わる。
自身の罪を乗り越えて決意する女性、ではなく『自身の罪を忘れ自分勝手な正義を押しつける女』になる。
なんて滑稽なんだろうな。
あれだけの事を豪語しておきながら。
結局やっているのは自己を正当化する事だ。
呆れを通り越して笑いまで出てくる。

「――――ん、っと」

さて、久々に体を動かした気がする。
先ほどまで死んでいたのだから、ある意味久しぶりではあるな。
死んでから生き返るまでと言うのは、時間にしたら短いが体感からするとかなり長いんだな。
しかし、便利なものだ――――久木山凌河の生命力。
背中を大量に撃たれてもこれだ。
死なずに、若干ふらふらするが行動できるようにはなっている。

「ハッ――――しっかしま、これも便利な能力だよな」

書き手特権――――主催により与えられた能力。
創造したオリキャラの能力を使う、優れた力。
その中でも彼、◆ymCx/I3enUは他の書き手とは違う。
圧倒的なキャラの数。
そして異常な性能を持つキャラ。
まさに、『最強』の書き手と呼ぶにふさわしい。
各々のキャラの所有時間が短かろうが、数で押せばいいのだ。
それは彼にしかできないような、能力の使い方だ。

「さーて、じゃあいっちょ狙ってみますか――――優勝」

最強の書き手は今ここに動き始めた。
彼を止めれる者は、現れるのだろうか。

【朝/C-2住宅街】
【◆ymCx/I3enU@非リレー書き手】
[状態]背中に大量の銃創(治療中)、失血(大)、久木山凌河の能力使用(傷完治まで)
[所持品]基本支給品、不明支給品、エンフィールドNo.2(4/6)、380エンフィールド弾(30)
[思考・状況]
基本:殺し合いに優勝する
1:書き手さん相手にするのは面倒だろうな……どうすっか

前の話   次の話
Opposite woman SS順 悲しみを超えてなお
START 守谷彩子 [[]]
START 飯島遥光 [[]]
START クリス・レッドフィールド [[]]
START ◆ymCx/I3enU [[]]

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最終更新:2012年09月19日 22:49
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