起き……なさい、……さくん……
――僕は、聞き慣れた、といえばそうなのかそうでないのかよく分からない声を聞いて、その目を開けた。
そこは、学校の体育館で、そこは僕が通っている――組の木製の小屋のような教室でなければ、本校舎の体育館。というわけでもなかった。
……ぷ……に、、ってんの?
――――なの、えてるわけないジャン!
そして、もう一つは、拍子の抜けた、とても能天気なとぼけた声だった。
そして僕は途切れ途切れの曖昧な意識の中、「先生」の声を聞いた。
『――くん。――さん。そして……―さくん。どうか、「殺す」という事がどういう事かを、忘れないでください』
それが、僕が最後に聞いた先生の言葉だった。
chapter0 絶望症候群
――僕の名前は潮田渚。
一つ違うところを除けば、僕は一般的な中学生、なのかもしれない。
その違うところ、それは。
先生を殺す事を目的とした特殊な生徒……
殺し屋というところ。
そんな僕が暗殺の対象としている先生――
クラスの皆からは『殺せんせー』と、呼ばれているその先生は、
タコのような触手の先生――と言っても分からないかもしれない。
だけど、そんな先生。
そして殺せない先生。
マッハ20で移動し、空を移動し、脱皮し、皮膚の色が変化し、粘液でヌルヌルしていて、分身して、色々教えてくれる――
そんな殺せないマッハ20の触手の先生、『殺せんせー』。
僕は確かにそこで、先生の声を聞いた。
殺せんせーの声を。
まずはオーソドックスに自己紹介から始めたいと思う。
ボクの名前は、苗木誠だ。
外見はごらんの通り、どうしようもないほど平均的な普通の高校生。
勿論中身の方も同じ……
性格にも特技にも成績にも、これといった特徴はない。
特別な趣味や嗜好があるわけでもなければ、人造人間のパイロットでもないしゲームの天才っていう訳でもない……
ボクの好きなアイドルや、好きな漫画、好きな音楽、好きな映画を知りたければ、ランキング番組でも見れば1発だ。
―― その1位になるヤツが、大抵そうだから。「王道」という言葉が裸足で逃げ出す、まさに普通の中の普通。……それがボクだ
最初に、自己紹介と言うオーソドックスなところから始めたのも、そのいい例だと思う。
まぁ、強いて言うなら、唯一の取り柄は……、人よりちょっと前向きな事くらい、かな。
そんなボクは、ある日ある学園に入学することになった。
――私立希望ヶ峰学園。あらゆる分野の超一流のみを集めた、超エリート校
。
この学園を卒業すれば、人生において成功したも同然……とまで言われている。
何百年という歴史を持ち、各界に有望な人材を送り続けている伝統の学園らしい……
国の将来を担う”希望”を育て上げる事を目的とした、正に希望の学園と呼ぶに、相応しい場所だ。
そんな僕が希望ヶ峰学園に入学した理由。
それはただ、抽選による結果なんだ。
つまり、ただ運がよかっただけ……『超高校級の幸運』なんて肩書きはついてるけど、仮初めのようなもの、なんだよな。
それにーーそれが幸運だったのかも怪しい、しね。
その学園で、僕に待っていたもの。それを考えると……
素直に喜べなかった。
そんな事をぼんやりと暗闇の中で考えていると、あの吐き気を催しそうな、非常に能天気で異常に場違いな、無邪気で邪悪な「あの」声が聞こえた。
「オマエラ! さっさと起きなさい! 今から開会式をザクっと、刺すように華麗に始めちゃいたいからね~!!
あと関係ないけど、カレーって美味しいよねぇ! なーんちゃって! 今のジョークどうだった~?」
……五月蝿い。
次はなんなんだ……僕たちを閉じ込め、コロシアイを強要した次は……
「うぷぷぷ、起こしちゃった? ゴメンね。
でも今から起こすつもりだったんだけどね~! 今から色々話しておかなきゃならないしね~」
その青い狸のような声で皆は目を覚ました。
第三者視点から見ると、それは白黒のクマだった。
左側は無邪気で無垢で可愛げのある白色の顔。
右側は邪悪で凶悪で悪意の混じった黒色の顔。
彼女はモノクマと云った。希望ヶ峰学園の学園長であった。
見た目はかわいいかわいいマスコットだ。
だが中身は、生徒を学園内に閉じ込め、脱出というアメと死というムチでコロシアイを強要しちゃったりしちゃうような--そんな可愛い可愛い無邪気で邪悪なクマ型ロボットの学園長なのである。
モノクマは絶望が好きな、普通のモノクマである。
まるでそれは虚構の希望と真実の絶望――つまりは残酷なこの現実を具現化したような存在である。
咀嚼もオブラートも、産業もそっぽを向き無視して仲間外れにした事を前提に云うとするならば、『残酷な天使と悪魔のアンチテーゼ』というべきだろう。
世にも珍しかな絶望厨。非現実主義者。
彼女--いやモノクマは、そんな学園長なのだ。
モノクマは、今からコロシアイを開始しようとしていた。
そしてそれはあっさりと開始される事となる。
「ありゃありゃ……ネタバレが好きなんだね~
こんなもの、推理小説だったら即絶版ものだよ。まあ僕は推理小説はキライなんだけどね。だってツマラナイじゃん。あんな必ず探偵が勝つ話なんてさぁ」
「えー、そんな事より今から開催式を始めたいと思います。
こんにちは、僕はモノクマ。このイベントの主催者なのだ~!
正体はヒミツだよ。だってその方がミステリアスでカッコいいじゃな~い!」
「そんな事より、このイベントの説明を始めたいと思います。
ルールは簡単! オマエラにはいまから最後の一人になるまでコロシアイをしてもらいま~す!!」
コロシアイ。この言葉を聞いた者達は驚愕の色を「おーっと! そんなお決まりのベタな常套句なんて聞きたくないよ! そんな事より話を始める方が先でしょ? だらだら引き延ばす小説なんて誰も読みたくないよ! 速さが足りないよ!」
「なんてね☆
とりあえず
ルール説明いっちゃいましょうか!
ルールは、今ここにいる330人の皆様でコロシアッてもらうだけです! 反則も期限もありません!
舞台はボクが造ったデ×◎△☆日本! 凄いっしょ? 少し狭いけど、そこは我慢してね! さすがにボクでも完全にはサ□○できないからね。
ちなみに逃げる事も反抗も許可しません。そんな事する困ったちゃんはオマエラに装備したそのモノ首輪でオシオキしちゃうよ。まあそれがポンと爆発するだけだけどね。
心臓パルスで身体状況も確認できちゃう健康的でスバラシイシロ物だよ。勿論耐ショックも防水も完璧だよ。
どう? スゴいでしょ?
ちなみにモノ首輪でオマエラがどこにいるかも丸わかりだから逃げようなんて考えない事だね!
まあオマエラならそんな醜い事はせず清らかにコロシアウと信じてるよ! 僕、信じてるからね!」
「そしてもう二つ、オマエラにプレゼントするモノがあります。
まずはこれ! ザ・モノクマポーチ~!
中には色々コロシアイに役立つモノが入ってまーす!
さらにどれだけ入れても限りが無い、つまりは無限で四次元なスグレモノなのだー!!
食べ物とか、飲み物とか、名簿とかね!
勿論オマエラが殺すために必要不可欠なアイテム、『凶器』もね!」
「凶器の種類はランダム! ハズレ引いたらゴメンね。昨日僕眠たくて適当に入れちゃったんだ。
凶器は何処かの他のモノとは違って一つしか入ってないから勘違いしないでね!
2つや3つも絶対に入ってないからね!」
「それと、『電子参加者手帳』も渡しておきます。これも防水&耐ショックだから安全安心快適長持ち任せて安心だね!
現在位置も分かるから便利だよね~
それと、そこにはオマエラの本名と僕がジョークで付けた『超ロワ級の才能』も書いてあるから!
僕でも分からなかった才能には『超ロワ級の???』と書いてあるからね。
まあ超ロワ級の才能ナシと考えればいいよ。大抵僕が分からないほど何もない奴らだからね!」
「次の説明は放送と禁止エリアだね。これは面倒だから速めに言っちゃう!
放送とは、6時間おきに僕が教える禁止エリアと死者の名前。そして軽いトークだね。
殺伐とした状況なのに、少しも癒しが無いなんて絶望的でしょ?
だからせめて僕のトークで笑ってよ。辛い時こそ笑わないとシアワセが逃げちゃうよ。死合わせもね。
禁止エリアってのは、立ち入り禁止区域のこと! つまり入っちゃダメー!って事だかんね!
入ったらモノ首輪が爆発して死んじゃうよ。嫌でしょ?」
「それと、これ大事だから良く聞いてね。
各放送の間に一人も殺さない参加者がいたら、その参加者はオシオキされます!
まあ僕が抽選で選んだ一人だけだから殺さなきゃ絶対死ぬって事はないけどね?
まあ必要の無いのは分かってるけどね。だってオマエラを信じてるから!
でも、やっぱりしないよね? 多分しないよね? だから僕は――――
オ マ エ ラ の 中 に 僕 の 仲 間 を 紛 れ 込 ま せ て お き ま し た 。 」
「まあ仲間じゃ無いんだけどね。まあ、協力者ってところかな。
僕は協力者をトランプの規格外に例えて『ジョーカー』と例えております。これでファングもいたらとてもエクストリーム! だよねぇ。
ちなみにそいつらには僕の右目を象った『契約のマーク(嗤)』がどこかに刻まれてるから探してみるといいかもね。
もしかしたらオマエラの友達がそうかもしれないしね~。うぷぷぷ」
「まあ、そんな感じかな」
――呆然、だった。
長々しいモノクマの早口説明に参加者達は呆気に取られるだけだった。
対してモノクマはあっけらかんとうぷぷぷと嗤うだけであった。
と、さりげに参加者の一人が「オシオキって……?」と呟く。
それに反応して待ってましたと言わんばかりにモノクマが喋り出す。
「処刑だよ」
「処刑……どういう……」
「処刑は処刑だよ。ショ・ケ・イ!
電気イスでビリビリ! 毒ガスでモクモク! ハリケーンなんちゃらミキサーで身体がバラったりってやつだよ」
『処刑』――つまりは、「ルールに乗っ取らない者は死ね」。モノクマはそう言っているのであった。
「オマエラに合った専用のオシオキを用意してあげるよ。勿論みんなにも見せてあげるから安心して。こんなメーンイベントを見られない人がいるのはかわいそうでしょ?」
「というわけで、話はこれでお終い。それじゃあオマエラ……」
「待て! モノクマ!」
「はにゃにゃ??」
「お前は俺たちをどうしたいんだ……!
俺たちをコロシアイ修学旅行をさせてすぐに、なぜこんな事を始めた!」
それを言い放ったのは、茶髪の少年であった。
その少年はモノクマを知っているようであった。
それを聞いた苗木誠は、当然何故モノクマを彼が知っているのかが気になっていた。
しかし、当のモノクマ本人は
「コロシアイ修学旅行なんて知らないよ、日向創くん」と非常に疑問的に言うだけだった。
その日向と名乗る少年は何かおかしい。そう顔に出したような顔で床に座るのだった。
「じゃあとりあえず、
スタート記念としてみんなに良いモノでも見せてあげましょう。
それはこんなモノでーす! ぜひご覧じてくださ~い!!」
モノクマが上から引き出した「それ」――
――それは世にも珍しき、木の十字に磔られた無残なタコの死骸であった。
「――殺、せんせー…………?」
少年――暗殺者――エンドのE組――潮田渚は驚愕した。
殺せない先生が死んで――殺されていたからである。
渚は先生には弱点が多々あるとはいえ、殺す事ができた事に驚愕を覚えた。
面識は少なかった。だが一時的でも先生であり担任だったのだ。多少のショックは拭えない。
それにしても、それはグチャグチャのドロドロであった。
吐き気がしそうな、無残な無惨凄惨の先生の「死」体は、いや、先生のその顔は笑っていた。
いつものように――余裕のあるニヤニヤ顏だった。
だからこそ、彼は、信じられない。
殺せんせーが殺された事に。
「凄いっしょ? 世にもレアリティ120%な不思議生物の死体だよ!
グッチョグッチョでスライムみたいでしょ? レアだよね!
でももっとレアなのはそんなナマモノをオシオキできた僕の方だったりして!
オマエラもドロドロなドロリッチになりたくなかったら、清く正しく美しくコロシアイに取り組む事! 分かったね?」
「じゃ、そう言う事で、ヨロシク!
それとしつこくうざったく味が濃いかもしれないけど、もう一つ甘い甘い激甘なアメ--もとい勝利後のプレゼントの紹介でもしておきましょう!」
「それはね……好きな願い4つ! なんでも叶えてあげましょう!
ウソはつかないよ! 本当だよ? だって僕は神の龍をも上回る力の持ち主なんだモン!
コロシアイに勝つ……こんな簡単な事で願い事が叶うなんて、こんな良い話はないよ! 龍の玉玉を七つ集めるよりもずっと楽だからね! 龍のおっきな玉玉を七つ集めるよりも願いが1つも多いからね!
さらにひゃくおくえんもオマケとしてつけておきましょう! 働いたりギャンブルで稼いだり、嘘つきゲームに勝ったりしなくてもこんな大金が手に入るなんて!
本当にオマエラはラッキーマンだよね! ウラヤマしくたっちゃう!
ゆきのつもったしずおかの大きい山をのぼれることよりもずっとずっと羨ましい代! うぷぷぷ
ああ、羨ましくて恨めしい! 僕も参加しちゃおうかな~、なんて。
『嘘なんだけどね』。「戯言だけどね」。うぷぷぷぷ~」
「最後にこのしがない主催者からひとつ」
「殺りたい放題殺らせて殺るから殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!
じゃ、またオマエラの誰かがここに来るのを待ってるからね~!」
そんなモノクマの言葉を最後に開会式は終わった。
皆は、いやモノクマ以外の皆は、
殺し合いの舞台に電送された。
超多人数ロワ。否、『絶望ロワイアル』、始動。
「はっじまっるよ~!! うぷぷぷ」
【gA●e St☆熊パ】
主催者
【モノクマ(江ノ島盾子)@ダンガンロンパ】
【殺せんせー@暗殺教室 死亡】
[残り345人]
TO BE CONTINUED……
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DEAD END |
最終更新:2013年02月01日 12:42