0話 デンジャラス・ゲーム
それは、本当に初めて見る光景だった……
今まで僕が生きてきた世界とは全くもって違っていて、それは本当に人生の中で見たこともなかった事であって、あってはならないことだったのだから――
――僕は、朦朧とした意識の中で目を覚ました。
そこは、学校の教室の中だった。
学校といっても、中はボロボロで、並んでいる机や椅子も朽ちかけており、そこは学校というより廃墟の中であった。
そして僕は、その教室の椅子になぜか座っていたのだった。
僕以外にもそこにはいろいろな人間が椅子に座らされていた。
僕と同い年ぐらいの学生もいれば、小さい子供や大人もいた。
それは本当に千差万別で、十人十色な面々であった。
「あれ?」
「なんだ……これ」
「俺、なんで、こんな、所に?」
「嘘だろ……捕まっちまった!? そんなのってありえねえ……だろ……」
「あれっ、なんであたし、生きてんの……」
次々と目を覚ましたらしい他の人たちも声をあげ始める。
僕も声をあげそうになったが、踏み止まって冷静に周りを見た。
特に目立った人間はいない。
確かに見渡す限りでは、みんな普通の人間のように見えた。
なぜ、こんなにもの数の人間がこんなことろに集められているのか。
僕の考えはまずそれだった。
そして、皆の姿をその目で確認していくにつれ、ある事に気づいた。
――首輪だ。
皆の首には鉄の首輪が填められているのだ。
そしてそれは僕の首にも――填められていた。
「なんだよ、これっ……」
俺は、ついについ声を漏らしてしまっていた。
そして皆が混乱しているところに割って入るように声が響いた。
「よし! みんな起きたようだね!」
その声がしたほうへ視線を寄せると、そこにはスポーツマン風の男性がいた。
いつでも笑顔を絶やさない爽やかそうな顔立ちの好青年。そんな印象だった。
「皆さん、サバイバル大会、デンジャラスレースへようこそ!
僕は、この大会の進行役、七釜戸人雄(ななかまど ひとお)です。みなさん、よろしくねっ!」
その男、七釜戸はそう名乗ると、すぐに大きな用紙を謎のマスクをした怪しい男に渡されると、黒板に貼った。
そこには地図の上に『デンジャラス・レース』と書かれた紙であった。
地図の下には、何かの文章が細やかに書き込まれている。
「早速、大会の説明をしていきたいと思います!
ルールは簡単! ここにいる皆さんでたった一人の優勝者が決まるまで……
殺し合いをしていただきます!」
……そう、それが、この大会のルールであったのだ。
殺し合い。それだけらしいのだ。
日本中の特異な人間を厳選してその中から殺し合いをさせるという、裏社会の遊びだというのだ。
それに優勝した者には、生活において一生の安定が約束されるが代償として大会主催機関に入らなければいけない。と言われた。
つまり、負けたら死、勝っても次の主催者として生きなければならない。ということであった。
その後僕たちはこの大会のルールを聞かされた。
まずは支給品。
この中には食糧、水、地図、名簿、時計などが入っているらしい。
その中には個別の武器があるらしいのだが、武器の種類はバラバラらしい。
次に放送。
始まってから6時間おきに死亡者の発表とエリア指定の情報があると言われた。
エリア指定とは、入ってはいけない『禁止エリア』というものを指すらしい。
地図は、8×8にライン分けされており、指定されたエリアに入ると……
首輪が爆発する。そう言われた。
そして、説明が終わった。
僕たちは、当然理解できるはずもなく、ただひたすらに動揺していた。
そして、七釜戸は少し顔を笑顔に緩ませ、なぜかリモコンをさっと取り出した。
なんでリモコンなんて。と思ったが、それはすぐに理解させられる事となった。
ピッ。
そんな音がして、音のするほうに視線を寄せると、そこには首輪の中心部が赤く点滅している参加者の一人がいた。
なぜ、光っているのかは、すぐに理解できた。しかしそれは、僕の中にある恐怖を煽られる事にしかなかった。
あの首輪は――爆発する。
その首輪を着けている女性は顔が青ざめ、七釜戸に叫んでいた。
こんなのありえない、絶対にこんな事はあり得るはずがないというような顔で叫び続けていた。
「ちょっと、何これ! 冗談だよね!?
なんで私がっ、死ななくちゃならないのよっ! こんなの間違いだよ、ありえないよ!」
「いえ、あなたは死亡例として死んでもらう事が決まっております。
残念でしたね、これも決定事項ですので」
七釜戸は、爽やかな顔でそう冷酷に言い放つだけだった。
「嫌、やめて! 助けて、助けてお姉ちゃ――」
そう言い終わる前に女性の首輪は爆発した。
その後の惨状は、この先ずっと忘れられないものになるだろう。
「あー……一人減ってしまったので、代わりに特別ゲストを参加させましょう。
鬼頭くん、入ってきてください」
お前たちが殺したんだろう。
そう言いたかったがやめた。
そして、そんな事を思考している間に、その鬼頭と呼ばれた者が入ってきた。
しかし、それは人とは呼べないものであった。
「……」
そこに立っていたのは2m以上もある大男であった。
しかし、その姿は人と呼ぶにはあまりにも異形すぎるものであった。
顔は明らかに怪物のそれであり、体の色も肌色ではなく白や赤や黒などが入り乱れた異様な皮膚だった。
指先には鋭い爪があり、その手も真っ赤に染まったおどろおどろしいものであった。
その名の通り『鬼』と呼ぶに相応しい容貌の男は、何も言わず殺された女性がいた血塗れの空席に座った。
その女性の死体を踏み潰しながら……
そして、大会は始まる。
七釜戸の点呼に合わせ、僕は教室をあとにしたのだった。
こんな光景は、僕の中で一生忘れられないものになるだろう。
そして、僕の当たり前のような日常も、今日を境に崩れ落ちるのであった。
【春々苗 死亡】
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最終更新:2013年01月09日 13:02