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リバーシヴル・ウルフ

4話 リバーシヴル・ウルフ



「はぁ……はぁ……」

一人の男が闇色の森の中を走っていた。
その男は、ポロシャツにジーンズ、そして緑色のエプロンをしている、見た目はごく普通の青年であった。
名前は狗伏司鑪銀。つい数年前に成人式を迎えたばかりである。
彼は、一つの事を除けば特に何もなく、勉強も運動もちょっと人並みより上程度であるし、賞も賞状ももらった事もない。世の中的に言えば、本当に普通の存在である。
それ故に異常な感情も精神もなく、中学卒業までは本当の意味でただの何の能力もない普通の人間である事は確かだった。
そんな彼は今、大きな街よりも少し離れたところで犬カフェを経営している。
理由は犬が好きだから。ただそれだけの理由だ。
そんな彼だが、ここに招待された理由は勿論ある。
先程は、狗伏を特に何もない普通の人間であると説明したが、当然特に何もないだけであり、全く普通の人間である。とまでは言っていない。
いや、正確に云うと人間という種族ではないのだが。

「う、くそ……今日はよりによって晴れかよ……」

今日の天気は夜も雲一つない晴れである。故に、月が辺りを照らし出す状態でもある。
狗伏は、それを恐れていた。


「だ、め……だ……うっ…………」

狗伏は月の光を浴びながら、悶えていた。
まだ最初はそれだけで良かったのだが、段々と彼の身体に異常が見え始めていく。
まず、身体に銀色の体毛がびっしりと生え揃っていく。これは犬の――否、狼の体毛であった。
爪は無色透明から黄色ずんだ色に変わってゆき、鋭く伸び始める。
そのまま身体全体が膨張し、尻尾が尾骶辺りから生える頃には上の服も破け、当然下の方もその形状を維持する事が困難になるほどにぼろぼろになっていた。
そして見る見るうちに、狗伏司鑪銀は狼と化した。
いや、正確には真の姿に戻った――というべきだろう。

狗伏司鑪銀は人狼である。

二足歩行の狼であり、人並みの知能を持ち合わせている地球上の生物の一種だ。
狼男という名などで伝説にもなっているその生き物だが、発見がごく僅かというだけであり、確かに存在している種族である。

狼男や人狼は満月の夜に変身するというが、正確には満月でも半月でも三日月でも人狼はその姿を変えることができる。
変身の条件は、単に月の光を受けるだけでよく、その姿は月の光に含まれる特殊な電磁波が人狼の肉体に反応し、獣の姿に回帰しただけなのである。
その際人格も元々のものに戻るが、狼にとっては特に気にならないことだ。
何故ならば、あくまで人狼の人の姿は仮の姿であり、狼の姿が真の姿であるからだ。
狼の人格が狗伏司鑪銀本来の性格であり、人の人格は人間社会に適応するだけの、いわば枷である。

つまりは、狗伏は今真の姿に戻ったと言えよう。


「……いやぁ、服が破けてしまいましたか。
 やはり人での状態での大きさでは私の身体には合いませんか。仕方ないですねぇ」

狗伏は面倒そうにディパックの中を漁る。
中に入っていたのは、基本的な支給品と、3L相当のリクルートスーツ一式だけだった。

「ふむ、この大きさなら大丈夫……ですかね?
 しかし、毛皮の上からスーツは少し暑いですねえ。
 まあいいでしょう。全身裸よりは遥かにマシですから」

そういうと狗伏はスーツに着替え始めるのだった――



【G-6/森/0:12】
【狗伏司鑪銀】
[状態]:健康、狼(真)の姿
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、リクルートスーツ
[思考]基本:これからの事は、また後で考える事にしましょうか
   1:とりあえずは着替えませんとね
   2:殺し合いについてはいかがいたしましょうか


キャラクター紹介
【狗伏 司鑪銀(イヌフシ シロガネ)】
犬カフェを経営する普通の青年。
性格はやや消極的なお調子者。そして神経質でもある。
月の光により狼の姿に変身する、人狼という種族である。
人狼において人間の姿は社会適応のための枷なので、本来の人格とは全く別のもの。
本来の人格は紳士的かつ猟奇的。しかし過激派の人狼ではないので、人間を襲う頻度は一ヶ月に2、3回程度。
銀色の体毛で、体格は一族の中では長身痩躯気味である。


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最終更新:2013年06月04日 16:22
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