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男のロマンとリアリストと

「お~~~~~い、ゾ~~~~~~~ロ~~~~~~~~~、サンジ~~~~~~~~~~~~」

 狂気のゲームの最中にある、暗い暗い森林の中。
 常人であれば恐怖に声を出すことすら憚れる暗闇の中で、男は暢気に大声をあげていた。
 前面が肌けた赤いシャツ。その奥にある胸部には痛々しい傷の跡。
 そして、その頭に乗る麦わら帽子は、もはや世界に知らぬ者などいなかった。
 超新鋭海賊団が船長。
 世界で起こった数々の大事件の渦中にいて、かの頂上決戦すら引っ掻き回した超大型ルーキー。
 つい数日前、ついに大復活を遂げた海賊―――モンキー・D・ルフィがそこにいた。

「いねえか。ちっくしょー。あの爺さん、おれたちの冒険を邪魔しやがって」

 ルフィは憤慨していた。
 魚人島での戦いを終わらせ、ようやく新世界に乗り込もうとした矢先。
 唐突に連れて来られたのは、こんな訳の分からない殺し合いの場。
 この殺し合いの場に仲間全員が連れられてる事を、ルフィは把握していた。
 一番最初の場で、自分と同様に(カッコイイ)光の輪で拘束されていた仲間達。
 二年の修行を経て集結した仲間達が、こんな殺し合いなどでどうこうなる訳がないことは、誰よりもルフィが知っていた。
 何よりも待ち焦がれた冒険を邪魔された事が、ルフィを苛立たせていた。

「ま、いっか。ここも何だか冒険の香りがするしな!」

 とはいえ、そんな苛立ちも一瞬で何処へやら。
 ルフィは殺し合いの場にはそぐわぬ満面の笑みで歩き出す。

「誰もいねえな~。猛獣もいねえみたいだし……この森はどうなってんだぁ?」

 見聞色の覇気が示すは、人どころか獣の一匹すらも存在しない事実。
 その不可解な事実に首を傾げながら進んでいくルフィ。
 そんな彼がその存在達に気付いたのは、それから数分後のことであった。

「ん? んんん?」

 その気配に、ルフィは疑問符を頭に並べて空を見上げた。
 何も感じなかった見聞色の察知域に、唐突に人の気配がでてきたのだ。
 それもその気配は物凄い速度で察知域に突入し、移動をしている。
 ルフィが不思議に感じたのは、その気配が感じ取れる場所であった。
 気配は、ルフィがいる森林からではなく―――『空』から感じ取れたのだ。
 空を怪鳥すらも越える速度で移動する一人の人間。
 ルフィは空を見上げ、その存在を視界に捉えた。


「え、」


 そして、ルフィは今度こそ驚愕に言葉をなくした。
 空も空、遥か上空にその一人はいた。


「ロ、ロボットだ~~~~~!」


 空を飛ぶ存在は、まさにロボットであった。
 赤色の身体に、胸に光る三角形の淡光。
 ロボットは両手両足背部からオレンジの光を噴き出しながら、凄まじい機動力で飛行していた。
 ルフィの目が輝く。
 ロボットとは男の夢。ロマンである。
 それを追わぬ道理など、この夢見る少年の胸にある訳がない。

「おい、待てよロボット!」

 声を張り上げるも空翔るロボが、地表のルフィに気付く訳もない。
 超速で離れていくロボット。光の残滓だけを残して夜の空へと消え去ってしまう。
 逃がすものかと、ルフィは全力の追跡を開始した。






「一体、何がどうなっているんだか……」

 アイアンマンことトニー・スタークはスーツの中で溜め息を吐いていた。
 唐突に開催された殺し合い。
 どんな組織が関与しているのかも、何を目的としたものなのかも、何もかもが不明。
 単純な愉快犯の犯行とは思えない。
 ヒーローとして活躍している自分を苦しめたいのなら、わざわざスーツまで支給することはない。
 スーツは没収し、ヒーローとしての力をなくして右往左往する自分を見物しながら笑っていれば良いだけだ。
 愉快犯ではないのか。
 自分がスーツを着込んでいること自体に何らかの意味があるのか。
 分からない。
 あのオジマンディアスとやらが何を目的としているのか、まるで分からない。

(『青色』と『赤色』……これにはどんな意味がある?
 参加者の大半が既に『青色』となっている……単に殺し合いをさせたいならば、このような救済措置など必要ない筈だが……)

 オジマンディアスが語った謎の色分け。
 全員が『青色』となればゲームは終了する、といったもの。
 それは、最後の一人にならねば生還できないという根本の終了条件からすれば、遥かに甘く感じる。
 言わば『希望』だ。
 『絶望』という暗闇の中で、余りに暗い世界の中だからこそ光り輝く『希望』。
 何をもってオジマンディアスがこのようなルールを立ち上げたのか、理解に苦しむ。

(ともかく『青』と『赤』の定義を判明させねば……)

 携帯タブレットを取り出し画面を灯す。
 現れた三十近くの名にやるせなさを感じながら、『青色』と『赤色』の人数、それと参加者の名を記憶していく。
 そして、唐突にスタークは動きを止めた。
 仮面の裏の表情すら驚愕に凍り付く。
 スティーブ・ロジャース。
 それは、親友であり、盟友であり、相容れぬ敵となってしまった男の名前。
 それは―――既に死んでしまった男の名前であった。

「これは……どういう事だ……」

 何故、死者の名前が記されている。
 あの死は紛れも無く本物であった。
 スティーブ・ロジャースは……キャプテン・アメリカは、死んだ。
 そう、死んだのだ。
 死んだ男を殺し合いに参加させるなどジョークにしても笑えない。
 スタークは己の内で沸々と感情が沸き上がるのを感じていた。
 キャプテン・アメリカとは英雄である。
 平穏を捨て、長きに渡る戦いを続け、そして死んでいった男。
 その生き様は、どんなヒーローであっても並ぶ事などできない、真の『ヒーロー』の姿であった。
 そして、彼は解放された。
 不適切な言い方かもしれないが、彼は死によって多くの重荷から解放されたのだ。
 自由の国の尊厳を一身に背負う『キャプテン・アメリカ』という象徴から、
 ただ一人何十年もの時を経て現代に蘇り、最古の『ヒーロー』として戦い続けた孤高から、
 彼はようやく解放されたのだ。
 その彼を、例え名を語っただけかもしれないとはいえ、殺し合いに参戦させるだと?
 ようやく訪れた安寧の時間すら許さず、棺をひっくり返すというのか。

「オジマンディアス……」

 気付けば携帯タブレットを握りつぶしていた。
 あの男は叩き潰すと、理性を超えたところで心が声をあげる。
 トニー・スタークは怒りに震えていた。
 確かに一度は殺しあうまでに陥った仲。
 互いの道はついぞ交わることなく、スティーブの死をもって唐突に終わった。
 それでも、それだとしても怒りを覚えずにはいられなかった。
 かつての盟友の死を穿り返した墓泥棒に対して怒りを湧き上がらせながら、トニーは夜の空へと飛び立つ。
 殺し合いの打破。
 そして、その末に待つであろうオジマンディアスとの決着。
 それらを胸にトニー・スターク―――鋼鉄のヒーロー・『アイアンマン』が、空を飛ぶ。


 ただ、彼は思い描かなかった。
 彼が大切に感じた人物との再会の瞬間を。
 二度と会うことは無いと感じていた盟友との再会の瞬間を。
 それがわざとなのか、無意識的なものなのかは分からない。
 ともかく、彼は思い描かなかったのだ。
 決定的に袂を分かちたまま死別してしまった男と、もし再会したとしたら―――。
 その瞬間を思い描かずに、アイアンマンは行動を開始した。
 その真意は、誰にも分からない。
 おそらくはトニー・スターク自身にも分からないだろう。
 ただ思い描かなかった……その事実は確然として其処に存在した。








 そうして空を飛ぶアイアンマン。
 そんな彼を地上から見上げているものが二人存在した。
 一人は彼を好奇の瞳で、一人は冷徹な瞳で、飛行中のアイアンマンを見ていた。
 二人の行動は、その方向性こそ違えど、迅速なものであった。


『アーマーより警告。非常事態発生。未確認飛行体が急速に接近中―――』


 その結末が、スーツから唐突に告げられた警告音。
 そして―――、



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



 それはトニーが反応するよりも早く、アーマーが警告を言い切るよりも早く、訪れた。
 ドガという音ともに衝撃がスーツを揺らがす。
 高度な耐衝撃性能が内臓されているアイアンスーツを介して、それでも衝撃はかなりのものであった。
 ヘビー級ボクサーのボディでも喰らったかのように、鈍い痛みが刻まれ、呼吸が止まる。


「な……な……!」


 事態に追いつけぬトニーが苦悶を漏らす。
 痛みと苦しみに歪む視界でトニーは見た。
 何重にもなってスーツへと巻きつく肌色のロープ。
 いや、それはロープなどではなかった。
 人肌だ。
 ゴムのように伸びた人肌がスーツに絡みついているのだ。


「おおお、すっっっげぇぇぇえええええええええええええええええええええええ!」


 そして、彼は何がなんだか分からぬ状況で、その声を聞いた。
 声は途方も無く大きく、力強く、真っ直ぐなものであった。
 数十秒ほどの苦悶の末に、ようやく心身ともに落ち着きを取り戻したトニーは、声の主へと意識を向ける。


「君は……何だ?」


 そう、その男はどのような手段を用いてかそこにいた。
 まるでMr.ファンタステッィックのように腕を伸ばし、自分へと巻き付いてる男。
 空を飛ぶトニーにしがみつき、まるで悪びれた様子もなく満面の笑顔を向ける。
 地上数十メートルの夜空を高速で飛んでいるのだ。
 常人ならば多少なりとも恐怖やらを感じるところだが、その青年はただただ楽しそうであった。
 瞳を好奇心に輝かせて、トニーを見詰める。


「俺はルフィ! よろしくな!」
「あ、ああ」
「お前、すげぇな。ロボットなのか!?」
「いや、違うが……」
「ビームは!? ビームは出せねえのか!?」
「まぁ、出せるが……」
「すっっげええええええええええええええ! お前、すげえな!」


 もはや涙すら流して歓喜するルフィに、トニーは困惑の極みにあった。
 どのような能力か、腕をゴムのように伸ばし、何が楽しいのか、異様なまでなハイテンションで喜ぶ青年。
 何処からどうやって現れたのかも不明であれば、何を目的として接触してきたのかも分からない。
 言葉は通じるようだが、そのテンションに阻まれコミュニケーションは困難。
 せめてまともな会話さえできれば何とでも事態を転がせるのだが……。
 ともかく何とかせねば、とトニーが口を開いたその時であった。


「よし、決めたぞ!」


 ルフィは決意に満ちた顔でそう告げた。
 何とも嫌な予感を感じるトニー。
 そして、その予感はものの見事に的中していた。



「―――お前、俺の仲間になれ!」



 ルフィの言葉に、既に最高潮にあったかと思われた困惑が完全に振り切れた。
 あまりにストレートかつ無駄のない勧誘だ。
 路端のスカウトマンだってもっと上手く勧誘するだろう。


「……ルフィ君。一つ聞いても良いかな?」
「ん、なんだ?」
「その仲間というのは、一体なに誘ってくれているのかな?」
「海賊だ!」


 思わず口から出た問いに、ルフィは眩しいくらいの笑顔で返す。
 その返答もまた想定の斜め上のところをぶっちぎっているものであったが。


「……あー、君は熱でもあるのかな? それともここが夢だと思っているとか?」
「俺は元気だぞ。風邪なんて生まれてから一回も引いたことねえし! それよりも、仲間になってくれよ!」
「……本気か?」
「おう!」


 頭が痛くなる。
 まるで異星人と会話をしているかのようだ。
 会話がかみ合わないどころか、そもそもパズルのピースがずれているかのようにズレている。
 何か根本的なところで、この男は自分と違う。
 半ば本気で、トニーはそう感じていた。


「ん?」


 超新星の海賊が放った勧誘に頭を抱えるトニー。
 そんな中、それまでひたすらに歓喜に染まっていたルフィが唐突に顔を上げた。
 その視線は目下を流れる地面へと。


「―――あぶねえ!」


 その行動は俊敏なものだった。
 思考の迷路へいたトニーを置いて、ルフィはスーツを蹴って宙に身を躍らせる。
 何を、と当惑の中にいたトニーはようやく事態を把握するに至った。
 己のスーツが警告音を発したのだ。
 先程ルフィが飛来した時と同様に、非常事態の宣言をならす。
 警告音と同時にトニーも動く。
 宙へ緊急停止し、右手のリパルサーをレーダーがとらえた影へと向ける。
 それはロケット弾であった。
 下方向、おそらくは地上から発射されたロケット弾。
 速度は相当、狙いも正確だが撃墜は可能。
 トニーは冷静にロケット弾をロックし、リパルサーを放つ。



「うおりゃ!」


 寸前で、見た。
 スーツから離れたルフィがロケット弾に向かって拳を飛ばす瞬間を。
 それでもって拳でロケット弾を弾き飛ばす瞬間を。
 もう一度言おう。
 素手で、高速で飛来するロケット弾を、弾いた。
 それも制動の聞かぬ空中で、まるで易々と、だ。
 トニーの知る『ヒーロー』達の中に、ロケットを無効化できるものは多数として存在する。
 その俊敏性で回避したり、そもそもロケット弾が直撃しようとダメージすら通らなかったり、とだ。
 だが、素手でロケットを弾ける者がいるかと云われれば、挙げられる者は限られるだろう。
 それだけの腕力と俊敏性、そして飛び抜けた度胸―――それらの内のどれかを有した者は余る程にいる。
 だが、それら全てを持ち合わせる者はそうはいない。
 更に言えば、ルフィはスーツが察知するよりも早く、飛来するロケットに気付いた。
 それが魔術的なものなのか、トニーでさえもそのトリックは分からない。
 ただ眼前の青年が、超常的な力を有するヒーロー達に並びたつという事は理解した。



「ふぃー。あぶねえ、あぶねえ。おい! 何すんだ、お前!」



 再びトニーに巻き付きながら眼下の地上へと声を飛ばすルフィ。
 地上は、既に市街地へと景色の変わっていた。
 そこに並び建つビルディング。その屋上に一人の参加者がいることにトニーも気付く。
 宙から見れば米粒ほどの大きさだが、スーツを介せば何ら問題はない。
 ルフィに至っては肉眼だというのに、またもやスーツより早く参加者の存在を察知している。
 巨大な、人間の背丈すらも越えるほどに巨大十字架を担いだ男。
 十字架の先端は上下に分かれ、その合間から暗い銃口と硝煙の残滓を漂わせている。
 趣味の良い武器だ、とトニーは皮肉を込めて思いながら、身体を動かす。


「うおっ!」


 自身に巻き付く青年のことなど考えようとも思わなかった。
 さんざ振り回されたのだ。少しばかりお返しも込めての行動だ。
 一瞬でビルの屋上へと着地するトニー。着地の衝撃に吹き飛ぶルフィ。
 着地と同時に襲撃者の姿を見やるも、襲撃者は襲撃者で迅速な行動をとっていた。
 その着地点へ、再びロケットを一発放っていたのだ。
 この行動はトニーの予想を越えていた。
 襲撃者とトニーの着地点との距離は、十メートルと離れていない。
 この距離で爆発すれば襲撃者も巻き込まれることは必至。
 困惑のなかでトニーは電磁シールドを張り、自分と、ついでにルフィとを守る。
 爆発は、これまたトニーの予想外に強烈なものであった。
 通常の兵器だと考えていたが、十字架の火力はトニーの知るそれを遥かに凌駕する。
 直撃すればアイアンスーツも無事では済まなかったであろう程の威力。
 砲弾の外見はトニーの知る物とほぼ変わらず、その火力だけがモンスター級に向上されている。
 電磁シールドを張ってすら衝撃が身体を揺らす。
 どのような技術力を活用したのか、そもそも何を相手にするために製造された兵器なのか、思わず考えてしまう程の火力だ。


「くそっ!」


 その火力を前に耐え切れなかったのは、トニーを支える足場であった。
 爆発に崩壊する屋上にトニーはルフィを脇に抱えて、空へと逃亡する。
 空中で静止し、崩れ落ちる屋上を探るも、襲撃者の姿は見受けられない。
 跡形もなく吹き飛んだのか、とはトニーも思わなかった。
 あの一瞬で着地点へとロケットランチャーを撃ち込んだ判断力と技術。
 あれほどの技巧を見せた襲撃者が、自爆などという陳腐な終わりなど迎えるとは思えない。
 おそらく姿を隠したか、それとも影から虎視眈々と狙いを定めているのか。


「……やっかいだな」


 トニーは急加速をもって場から立ち去った。
 サーチ機能は爆発による熱と煙、埃によって役に立たない。
 姿を見失った今、あれほどの火力を有した兵装と一流の兵士を相手に正面から戦うのは得策ではないと判断したのだ。


「おい、逃げるのか?」
「ああ」


 それでなくても今は大きな厄介事を背負っているのだ。
 ともかく問題は一つずつ消化せねばならない。
 アベンジャーズがBIG3が一人、アイアンマンことトニー・スタークのバトルロワイアルは数多の受難から開始された。



【D‐2・市街地・深夜】

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]麦わら帽子@ONE PIECE
[道具]支給品一式
[『色』]青色
[思考]
1:ロボを仲間にする
2:冒険する
3:ゾロ達は大丈夫だ!



【トニー・スターク@アベンジャーズ】
[状態]健康
[装備]アイアンスーツ@アベンジャーズ
[道具]支給品一式
[『色』]青色
[思考]
1:殺し合いを止める
2:……厄介だ











「空飛ぶサイボーグに素手でロケット弾く化け物か……思ったよりもヤバそうやな、これは」


 そして、崩壊した屋上の数階下の窓際にて、飛び去るアイアンマンを見る男がいた。
 男の名はニコラス・D・ウルフウッド。
 最強の暗殺集団『ミカエルの眼』が最高傑作が一人にして、『パニッシャー』の名を冠する唯一の男。
 そして、今は『人間台風』ヴァッシュ・ザ・スタンピードが盟友が一人だ。
 ウルフウッドの初戦は何とも苦い結果で終わってしまった。
 砲弾を数発使用したにも関わらず、獲物の命は愚か傷一つとつけることはできなかった。
 相手が悪い、といってしまえばそれまでだが、それでも事実は事実。
 物資も重要となるだろう殺し合いの場でこの消費は痛いと、ウルフウッドは正直に感じていた。


「はぁ、けったいなことに巻き込まれてしまったなあ。ホンマに」


 煙草を咥え、火を灯す。
 肺を満たす紫煙に僅かに気が収まるが、それでも根本の苛立ちは何ら変化を起こさない。
 殺し合い。
 生還したえれば、願いを叶えたければ、殺し合い生き残れ。
 巻き込まれたのは三十の命。
 その中には、かの『人間台風』の名もあった。


「……やらな、あかんのや」


 自分の世界は急速に『死』へと突き進んでいる。
 この絶望的な状況を打破するには、あの男の存在は―――ヴァッシュ・ザ・スタンピードの存在は不可欠であった。
 いや、ヴァッシュであっても、ナイブズを止められるかは分からない。
 むしろ確率は最悪といって良い程に低い。
 だがそれでも、あの状況に一石を投じられるのはヴァッシュだけだ。
 だから、生還させねばならない。
 自分などはどうでも良い。
 あの男を、ヴァッシュ・ザ・スタンピードを、生還させねばならない。


「……選ばな、アカンのや」


 この場にある三十の命を奪おうと、絶対に。
 『色』とりゲームに興じている暇などない。
 全てを救うなどと奇跡の回答を待っている暇などない。
 人生は絶え間なく連続した問題集。
 揃って複雑。選択肢は酷薄。加えて制限時間まである。
 一番最低なんは夢みたいな解法待って何ひとつ選ばない事。
 オロオロしてる間に全部が終わる。一人も救えない。


「……ワシらは神さまと違うねん……」


 漆黒のタキシードに身を包んだ牧師は、煙草をふかしながら俯く。
 その背に背負うは、その業を体現したかのような巨大な十字架。
 男は祈る様に目を瞑り、そして煙草を落とし、踵で踏みしめる。
 断罪者の名を冠した殺し屋が歩き出す。
 決断をもって、決意をもって、歩き出す。






【D-2・市街地・深夜】


【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]健康
[装備]パニッシャー@トライガン・マキシマム ウルフウッドの拳銃@トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式
[『色』]赤色
[思考]
1:ヴァッシュを生還させる
2:参加者を殺して回る

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最終更新:2013年01月24日 22:58
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