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疑心暗鬼の引き金

7話 疑心暗鬼の引き金




おっはよー!
私、瀬ノ尾真麻績! 花の高校二年生!
私はね、見た目も素行もふっつ~の! 女子高校生なんだケドー……

実はとってもスゴ~イ、神様の贈り物を授かった娘なんだ!
ねえねえ、聞いてくれる?
とぉーっても、スゴイんだよ!
それはね~……


「やったァ! なんかわかんないけど、すっごく強そうな銃が当たったゾ☆」

やっぱり!
私の能力は殺し合いでも健在だわ!
だってすでに発動してるモン!

私って、幸運なんだ。
ほんとに。私って、今まで一回も失敗したことなんてないしね。
それに懸賞に応募すれば欲しいものがピンポイントで毎回当たるし、くじ引きもほとんどが1等で、はずれを引いた事は全くないの。
テストもヤマカンでで毎回100点満点だし、みんななぜか私にはとっても優しいし……
そう。まさに私は運命に選ばれた奇跡の子ってわけ!
だから私の武器もすごかったんだよ。

だからね。
私はこの殺し合いに勝つ自身。すごくあるの。
でも殺しなんて嫌だから、私は殺さずにこの殺し合いを脱出してみせる。
私は幸運。だからこの殺し合いの主人公にもなれるはずよ。
ふふふ。さーて、さっそく行動開始しますか!


「よしっ、とりあえず森を抜け……」

と、瀬ノ尾の台詞はそこで打ち止めとなった。

瀬ノ尾真麻績。
支給品、ハイパーレーザー・ギガ。
それは、『組織』のオーバーテクノロジーで開発された強力な破壊力を持つ光線銃である。
その銃口から放たれる高密度の光線は、人間に当てれば痛みも感じずあっという間に蒸発してしまうほど強力なものであった。
瀬ノ尾真麻績はそれに直撃してしまったのだ。
当然、瀬ノ尾はそれに気づかず跡形もなく消え去った。
瀬ノ尾は、ハイパーレーザー・ギガを取り出した際、安全装置を外した状態にしており、それを再度ディパックに戻し、動かした反動で暴発したのだった。
ハイパーレーザー・ギガはその強力過ぎる威力から、最大5発までという制限がある。これがどう転ぶかはまだ分からない。

こうして瀬ノ尾は痛みも伴わず死んだ。
傍目から見れば、これは幸運ではなく不運だ。と思うかもしれない。
しかし、瀬ノ尾真麻績は間違いなく幸運の体現者であった。

まず一つ目。支給品の中で最も強力なものが支給されたこと。
ハイパーレーザー・ギガは、48つの支給品の中で唯一『組織』が用意したラッキーアイテム。そして、最も破壊力を持つ武器であった。

そして重要なのが二つ目。殺し合いの舞台において痛みも苦しみもなく一番最初に死ねたこと。
これはこの殺し合いの性質上最もありえない事であった。
誰とも出会わず、痛みも苦しみもなく、ごのゲームからいち早く開放されたのだから。
……その代償としてその命を失う事になったが。
ただ、それも幸運の一つなのだろう。
このまま、この地球上から去ることができた。世界の闇を知らぬまま、絶望の未来を見ずに済んだのだから。


【瀬ノ尾真麻績 死亡】
[残り45人]




 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■





「……凄い光がしたと思ったら……なにこれ」

瀬ノ尾真麻績が蒸発した時、実はもう一人少女がいた。
瀬ノ尾が死ななければニアミスだっただろうが、ハイパーレーザー・ギガの暴発により彼女はその存在に気がついた。
その少女の名前は岡利名奏美。
肥満体系で三つ編みというなんとも言えない容姿の女子ではあったが、顔はなかなか整っており、「痩せれば可愛い」を象徴したような少女であった。
岡利名は漫画、アニメ、ゲーム、お菓子が好物という見るからに現代の子だなと思える人間。
そして、引きこもりでもあった。
理由は、彼女のプライバシー保護から伏せておくとして――
岡利名は正直、この殺し合いに怯えていた。普通の人間の思考としては当然であろうが。
怖いので、とりあえず誰にも会わないよう安全なところに隠れていようと思い、森の中をさまよっていた。
しかし、ハイパーレーザー・ギガの光に気がつき、その辺りを見た。
それが現在の岡利名の状況であった。

「ディパックだけ……でも、ボロボロだ……持ち主はどこ?」

岡利名は恐る恐るそのディパックの近くに寄った。
人がいなければ武器や食糧を奪おう。彼女はそれだけの理由で瀬ノ尾のディパックに近寄って行った。

「支給品、全部焼け焦げてる……そんなぁ。
 でも、この大きい銃だけなんともない……でもこんなの見た事ないし……」

とりあえず。
そう思い、岡利名はその銃を手に取った。


「よし。これがあれば……」


「ねえキミ!」

銃を手に取り、少し落ち着いた様子の岡利名。
そんな岡利名に声をかけてきた少女がいた。
浪河波流海という、高校でも指折りの実力を持つと言われているスイマーであった。
彼女は怯えていた様子の岡利名奏美を心配に思い、声をかけたのだった。
浪河波流海は底抜けに明るく、広い海のような寛大な心を持つ少女だった。
ちょっとしたことでは怒らず、どんなに酷い目に逢ったとしても彼女は明るく笑い飛ばしていた。
他人は自分よりも大事で、誰かが困っていればなにがあったとしても助ける。
そんな人間であった。
当然、彼女はこんな殺し合いは許せなかった。しかし彼女はそれを許した。





殺し合いはよくないけど、裏社会の人はそれを見てると楽しいんだよね?
ならいいじゃん! 殺し合いなんかさせたって。私たちが協力し合って殺さなければ誰も死なないんだから。
だから私は殺し合いをしない。でも殺し合いをさせられた事は恨んではいないよ。だって他の人にだって理由はあるんだから。
勿論、殺し合いに怯えてる人がいたら助けてあげる。だって困った時助け合うのは当たり前の事だもん。
みんなで協力して、殺し合いなんてしなければいいんだよ!
そして私はそれをしたい。だから私は歩くよ! 立ち止まらない!

浪河は、殺し合いが始まった時こう思ったという。




「誰!」

声に気がついた岡利名は、銃を声のした方向へ向けた。
そこには学生服に身を包んだ程よく健康的な肉体を持つ少女がいた。

「ごめんね、驚かしちゃって。
 私、浪河波流海! 水殿寺高校の二年生。あなたは?」
「……私を殺しにきたの?」
「そんなわけないよ。私はみんなを助けようと」
「……嘘だ。信じない」
「え……」

そう言った岡利名の眼光は鋭いものであった。
そして、その目はどこか濁っていた。

「私はもう誰も信じないって決めたの。
 殺し合いが始まる前から……私が学校に行くのをやめてから!」
「それって、どういう……」
「うるさい! どっか行け!
 でないと……撃つよ。殺すよ?」

岡利名の言葉と、気迫と、その目から、浪河はその言葉が本気だと悟っていた。
これ以上近づいたら撃たれる。死ぬかもしれない。
でも――

「お願い! 私は何もしないから」
「うるさああああい! 来るなこの嘘つき女ァ!」

物凄い剣幕で怒鳴り散らした岡利名は脱兎のごとく走り出した。
――浪河とは逆の方向に。

岡利名奏美は、逃げていた。
ただ只管逃げていた。
恐怖と不信感とが混じり合い、彼女の精神は危ういものであった。
だから彼女は逃げていた。
『もう人に出会うのはごめんだ』
『私は一人でいたいんだ』
そんな思考のみが彼女の精神を支配していた。
こうして彼女は夜の闇に溶けていった。


「なんで……私、間違ってたのかなぁ……」

一方で、浪河は信じてもらえなかったことにショックを受けていた。
『私は、あの子を助けようとしただけなのに』
『私は、あの子の気持ちを理解ってあげられなかったのかもしれない』
『あの子は一体どうなっちゃうんだろう』
そんな罪悪感に満ちた感情が浪河に涙を流させていた。


信じない岡利名。
信じる浪河。
この二人の感情の違いは、とても大きなものだった。
しかし、今はそんな事は知る由も無かったのである。




【F-5/森/一日目/0:21】
【岡利名奏美】
[状態]:健康、精神的に不安定
[装備]:ハイパーレーザー・ギガ@オリジナル(残り4発)
[道具]:基本支給品、不明支給品、ハイパーレーザー・ギガ@オリジナル
[思考]基本:絶対に誰も信じない
   1:誰にも会いたくない!
   2:隠れられる場所が欲しい

【浪河波流海】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考]基本:みんなを助けてあげる
   0:なんで……
   1:私、間違ってたのかな……




【キャラクター紹介】
【瀬ノ尾 真麻績(セノオ マオミ)】
絶対的な幸運を持つ少女。
何をしても成功してしまうせいで、いい加減な性格に。
さらに能力のせいで努力を知らないため、かなりの怠惰者でもあった。

【岡利名 奏美(オカリナ カナミ)】
漫画・ゲーム・お菓子が大好きな肥満体系の少女。
とあるトラウマを抱え引きこもる。
同時に、自分以外は誰も信じないと思うようになる。
音楽は耳障りだから嫌いとのこと。

【浪河 波流海(ナミカワ ハルミ)】
海のように広い心を持つ少女。
水殿寺高校の二年生で、高校生の中でも指折りの実力を持つ天才スイマーでもある。
とびきり明るい性格で、学校では友達も多い。
味付きの飲料は混じりっ気のある味がして嫌だという理由で、水しか飲まないらしい。



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最終更新:2013年12月02日 19:49
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