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BLACK ACTION

暗い夜道に少女は一人立っていた。

確か自分は自宅で姉妹たちと共に夕飯を取っていたはず。なのにどうしてこんな所に居るのだろうか。

突然の異常事態に困惑しつつ、ふと先程の光景が頭をよぎる。

見知らぬ部屋に自分と大勢の見知らぬ人々。よく見れば大切な家族と友人も居るではないか。

知った顔を見つけ安心しそちらに駆け寄ろうとした時、妙な雰囲気を纏った男が現れ殺し合いを命じてきた。

この人は何を言ってるんだろう、と訝しげに思っていたら突如ボンッ!という音と共に前に居た若い男の首が吹き飛んだ。

呆然としながら体を離れゴロゴロと転がる“ソレ”と目が合った時、嫌な汗が流れる。

ロン毛の男が何かを言っていたが、全く頭には入らず、そうして気が付けばここに放り出されていた。

顔を青くしながら右手で首をなぞると、冷たい金属の感触がした。

途端に恐怖で足がガクガクと震えだす。


怖い、いやだ、死にたくない、殺し合いなんてしたくない、家族や友達に会いたい。


ふと自分の居る場所が道路のど真ん中だと思い出す。

こんな所に突っ立っていては目立つ。それこそ殺し合いを平然と行うような危険人物にでも見られたら…

慌てて周囲を見渡すと一軒のガソリンスタンドが見つかった。

震える足を無理やり引き摺ってそこに辿り着くと、急いで中に入る。

それを見ている者が居るとは気付かずに…



街頭のみが照らす薄暗い道路をゼロはバイクで走り抜ける。
目指す場所は地図中央にある市街地。
マントをなびかせバイクを操る姿は、まるでコミックブックから飛び出したヒーローのようだ。
支給品の一つであるこのバイク、ハードボイルダーという名で紫と緑の奇妙な配色がなされている。
園咲邸を出た時玄関前に置いてあるのを発見し、デイバッグに入っていた鍵を試しに挿したところエンジンが掛かった。

(中々便利なものだな)

ゼロ=ルルーシュには乗馬はまだしもバイクの操縦をした事は一度も無い。
学生時代のバイクの運転はリヴァルの役目で、ルルーシュはサイドカーでのんびりしているのが常だった。
そのため折角の移動手段も宝の持ち腐れだと思われるかもしれないが、全く問題ない。
ゼロの超人的な身体能力ならば多少強引にだが、ハードボイルダーを乗りこなす事も十分可能なのだ。

(このまま一気に中心部まで…ん?)

丁度ガソリンスタンドの近くに差し掛かった時、微かな人影をゼロの視覚が捉えた。
影が見えたのは一瞬だが見間違えなどではない。確かに人影が待合室の奥へと移動しているのが見えた。

「寄ってみるか」

瞬時にそう判断すると進む方向を変える。
ガソリンスタンドに入ると給油機の所でハードボイルダーを止める。
相手がゲームに乗っていないならばそれで良し。乗っているのならば排除する。
どちらにせよ他の参加者との情報交換は必須だ。積極的に接触を図るべきだろう。
そう考えつつゼロは待合室への扉を開けた。


…………


中に入るとゼロは室内をぐるりと見回す。
待合室はそこそこ広く内装も小奇麗なもので売店もある。
奥には左右に扉が一つずつあり、天井から垂れ下がってるプレートを見ると右は男女共同トイレで左が事務室らしい。
待合室は透明ガラスなので外から丸見えだ。幾ら何でも殺し合いの最中にそんな場所で呑気に居座る奴は居ないだろう。

(ふむ、ならばこっちだな)

左にある事務室のドアに手をかける。
トイレのような身動きの取り辛い狭い空間にわざわざ入りはしないだろう。
ゼロは事務室の扉を開けると、ゆっくりと足を踏み入れた。
事務室に入ると同時に、ガタッという小さな物音をゼロの鼓膜が捉えた。
音の発生源は左奥にあるデスクの下からのようだ。ゼロはそちらに目を向け声を掛ける。

「先に言っておくが私に殺し合いをする気は無い。無論、襲われれば対処するがな」

言いながら一歩近づくと息を呑むのが聞こえた。

「そちらがゲームに反対する者ならば話がしたい。出てきてはくれないか?」

エデンバイタルの魔王たる自分がこんな穏便な方法を取るとはな、と我ながらどこか可笑しく思った。
だがこの場で余計な荒事を起こすのは得策ではないと理解しているし、不必要ないざこざは避けるに限る。

「もしまだ信用できないのなら私のデイバッグをそちらに投げよう。それで戦意が無いことの証明にならないか?」

デイバッグをデスクの方へと放り投げるとそのまま黙って相手の出方を見る。
これでも信用できないなら仕方ないが当初の予定通り市街地に向かう。時間を無駄にはできない
もし向こうがバッグを奪い襲ってきても余裕で撃退できる自身がゼロにはあった。

「…本当に、殺し合いには乗っていないんですか?」

向こうからの問いかけ、声からすると少女のようだ。

「ああそうだ。」

デスクの下から感じる息遣いなどから少女はまだ迷っているのだろうことが理解できた。
だが意を決したように息を吐く音が聞こえると、デスクの下からゆっくりと立ち上がる姿が見えた。

白のミニドレスに白薔薇の髪飾り、更に右目にも白薔薇の眼帯を着けた白い肌の美少女が姿を見せる。
どことなく儚げな雰囲気のある白い少女。そんな第一印象をゼロは抱いた。
少女は不安気な表情をしていたが、こちらの姿を見ると一変してキョトンとした顔をする。

「…コスプレ、ですか……?」
「違う、間違っているぞ」

思わず素で答えてしまった。





「私はゼロ。さっきも言ったがこのくだらんゲームには乗っていない」
「えっと…雪華綺晶と言います。私も…殺し合いなんてする気はない、です」

椅子に腰掛け向き合いながら自己紹介をするゼロと少女―――雪華綺晶。
雪華綺晶としては黒い装甲服とボディスーツ、マントに仮面というゼロの格好が気になったのだが、当の本人が「気にするな」の一言で済ましたので、余り深く考えないことにした。
もっともゼロからすれば雪華綺晶の格好も少々変わっているように思えたが。
その後は互いの知り合いの話となった。
雪華綺晶によると、姉の水銀燈と翠星石、上の学年で幼馴染であるやる夫と その友人のやらない夫。
この4名は信頼できるし、殺し合いなどには絶対に乗らないとのこと。
逆に伊藤誠は面識は無いが女癖が酷いなど悪い噂が絶えない男子生徒だという。
最初の部屋に居たロン毛男と殺された青年については知らないらしい。
ゼロの方はスザクと扇が信用できる人物だと伝えたが、ロロに関しては今のところ不確定要素が多いので告げずに居た。

「ふむ…」

情報を交換し終えるとゼロは腕を組み暫し思案する。

(思った以上に面倒な事態となっているようだな)

自己紹介の際に聞いたが雪華綺晶は日本の学生だと言う。
それ自体は別段気にすることではない。問題は彼女が自分を全く知らない素振りであったことである。
ゼロはかつて反ブリタニア組織、黒の騎士団を率いて“弱者を虐げる暴力”への反逆を行っていた。
日本解放戦線によるホテルジャックでの人質救出を皮切りに、黒の騎士団は次々と法では裁けない悪を断罪してきた。
当然その出来事は連日のようにニュースで報道され、国を問わず黒の騎士団とゼロの名を知らない者は居ない程の知名度となった。
にも関わらずこの白い少女はゼロを、変わった服装の男の人くらいにしか認識していない。
余程の田舎出身の人間かとも思ったが、話によると都会の学生だと分かったのでそれも違うようだ。

(加えてブリタニアも知らない。いや、そもそも彼女の認識ではそんな国自体存在しない、か)

世界の三分の一を支配下に置く超大国、それが神聖ブリタニア帝国。
かつての極東事変により日本もその配下に治められ、エリア11というブリタニアの属領としての名を与えられるなど屈辱的な扱いを長年に渡り受けてきた。
現在では新皇帝ユーフェミアにより各エリアは解放されたが、それでも日本人との間には未だ溝が残っているだろう。
先程試しに自分はブリタニア出身だと言ってみたが、雪華綺晶からは外国の方でしょうかといった反応しかなかった。
ゼロという存在以上に知らないなど有り得ない事なのだが、彼女が嘘を言っているとは思えなかったし、嘘を付く理由も無い。
これは一体どういうことなのか。暫しの思考の末ゼロは一つの答えを導き出す。

(パラレルワールド…)

天獄門(ヘブンズドア)に触れたナナリーが見たという無限の可能性宇宙。
そして自身も魔王を受け継いだ時よりエデンバイタルを通して知った異なる世界。
そう考えれば雪華綺晶とゼロ、お互いの常識がまるで違うのもそれぞれが別の世界の住人だからだろう。
ここに来て最初に名簿を見た時のロロに対しての疑問も、彼が自分とは違う世界――或いは時間――から連れて来られたと考えれば納得がいく。

そして改めてこの悪趣味なゲームを開催したロン毛男に疑問を抱く。
50人以上の人間を突如まとめて拉致している。その中にはゼロのように特殊な力を持ったものが居るであろうにも関わらずだ。
さらに並行世界や時間にまで干渉する能力又は技術を手にしているであろうあのロン毛。
ギアスユーザーか、別世界の異能者か、はたまた神や悪魔の類か。
その正体は不明だが自然と警戒心が上がっていく。

「あの、どうかしましたか…?」

と、声のした方へ視線をやると雪華綺晶が心配そうにゼロを見ていた。
どうやらこちらが一言呟いて急に黙り込んだので不安になったらしい。
何でもない大丈夫だ、と言い雪華綺晶の方へ視線を移す。
答えが見つからないのならば今あの男の事をあれこれ考えても無駄と思い、思考を打ち切る。

「そういえば、支給品は何が渡されているかはもう確認したか?」
「え、あっ」

慌ててバッグの中に手を入れる雪華綺晶。

「ご、ごめんなさい。私、まだ…」
「別に謝る必要は無い。今落ち着いて確認すればいいことだ」

怯えて隠れていたことや話の内容からしても雪華綺晶が争いとは無縁の一般人であることはすでに分かっている。
突然巻き込まれた殺し合いという異常な状況で、冷静に行動しろと言うのは酷な話だろう。
そうして雪華綺晶がバッグから取り出した物は二つ。
忍者が使うような10本セットのクナイと裏にダイヤルとスピーカーが付いた蝶ネクタイ。
付属していた説明書を読むと後者は蝶ネクタイ型変声機という名で、声色を自在に模倣できるアイテムらしい。
中々面白い代物だが殺し合いの場では特に必要は無い。

「雪華綺晶。このクナイを私の支給された銃と交換しないか?」
「え…?」
「なに、そう深い意味は無い。ただクナイよりは銃の方が扱い易いと思ってな」

当然ながら雪華綺晶は銃など使ったことは一度も無い。
ただそれでもクナイよりは強力な武器だろうことは確かだ。

「でも、いいんですか?」
「構わん。私もあまり銃は得意ではないのでな」

ゼロの戦闘スタイルは己の肉体とマント、ギアスを武器にした肉弾戦である。
何度か拳銃を使ったこともあるが、無ければ無いで困るものでもない。
ならば自衛の手段として一般人である雪華綺晶に譲っても特に問題はないだろう。
それにゼロの腕力ならば投擲したクナイで銃弾並の威力を出すことができる。
雪華綺晶は暫し逡巡していたが、やがて差し出された銃と弾薬をありがとうございますと礼を言い受け取るとクナイを手渡す。
互いの情報を粗方整理し終えると、突然ゼロがスッと立ち上がる。

「さて。では雪華綺晶」
「…?何でしょうか?」

何だろうかと思い自分も立ち上がろうと腰を浮かばせようとした時



「下がっていろ」



事務室の扉が轟音と共に吹き飛ばされた。




暗い夜道に男は一人立っていた。

とある大学で空手部の師範代を勤めている自分は、今日も部員に指導をする為部室に向かっていた。

それが何時の間にかおかしな所に居て、これまたおかしな男に殺し合いをしろと言われた。

男のふざけた言動に苛立ち一発殴ってやろうとした瞬間、知り合いの首が吹っ飛んだ。

その知人は教え子の恋人だった男だ。彼とは数回話した程度の間柄だが、こんな訳の分からない場で死んでいいような奴ではなかった。

そしてそれはここに連れて来られた三人の教え子達も同様だ。お調子者だったり、不真面目な所もあるが皆良いやつらばかりだ。

こんなふざけた事をしでかしたあのロン毛に怒りが湧くと同時に、どうすれば教え子たちを救えるか考えた。

己が直々に鍛えたのだ。そう簡単にくたばりはしないだろうが、集められた参加者の中には明らかに堅気では無い輩も混じっていた。

そんな連中に襲われればいくらあいつらでも危険だ。


どうすればいい?いったいどうすれば……


そのままじっと考え込み数分が経過した頃、男は覚悟を決めた。

教え子たちのために己の拳を血で染める覚悟を。

今の自分を彼等が見たら大いに失望するだろう。だが構わない。大切なものを守るためになら鬼にも悪魔にもなってやる。

支給品の手甲を装備しどこへ行こうかと思案した時、バイクのエンジン音が聞こえた。

音のした方へ近づくと一軒のガソリンスタンドが在り、バイクが止めてあるのを発見した。

修羅と化した男――AKYSは拳を強く握り締めると、参加者を殺すべく店内へ入っていった…




一瞬何が起こったのか雪華綺晶は理解できなかった。
ゼロが下がれと言ったのとほぼ同時に事務室のドアが破壊され、胴着を着た長身の男が飛び込んで来た。
ハッとゼロの方を見ると、彼は胴着男の放ったであろう右拳を掌で受け止めていた。
素手でドアを吹き飛ばす胴着男も恐ろしいが、それを平然とガードするゼロも只者ではない。
両者そのまま睨み合っているが、ゼロが沈黙を破る。

「聞くまでもないだろうが、どうやらゲームに乗ったようだな」
「…ああ。恨みは無いがお前らには死んでもらうぜ」

言い終わるよりも早く胴着男ことAKYSが左手でゼロを殴りつける。
しかし当たる寸前、ゼロのマントが生き物のように動き、AKYSの腕を絡み取る。
抜け出そうとするAKYSを待合室の方へと放り投げるが、下に叩きつけられる直前右手で床を殴りつけ落下を防ぐ。

「あっ、あの」
「下がっていろと言っただろう。巻き込まれるぞ」

呼び止める雪華綺晶へ再度警告をしゼロはAKYSを追って事務室を飛び出す。
相手は既に構え直しており、こちらを見つけるや否や怒声と共に正拳突きを繰り出してくる。
ゼロは素早くそれを避け、蹴りを叩き込むが手甲で防がれる。

「チッ…。無駄な抵抗しやがって」
「それはこちらの台詞だ」

今度はAKYSがお返しとばかりに殴りかかるが、ゼロは自分の拳をぶつけて相殺。
互いに己の拳をぶつけ合い、ラッシュの応酬が繰り広げられる

「オルルァ!オルルァ!」
「フンッ…!」

お互い徐々に殴る速度を上げていき、その余波で待合室の自販機や椅子が破壊されていく。
互いに一歩も引かず拳を打ち付けあう。
しかしゼロの拳がAKYSの頬を掠めると、相手の動きが一瞬鈍る。
その隙を見逃さず、ゼロが渾身の一撃を叩き込む

「ぐっ、おォォ!!」

咄嗟に両腕でガードするAKYSだが、ガラスをぶち破り外へと吹き飛ばされる。
追い討ちを掛けるべく自身も外に出ようとするゼロだが、両手に鈍い痛みが走っているのに気付く。
AKYSと激しく拳をぶつけあったせいだろうか。
4メートルを超える起動兵器に蹴り飛ばされても無傷だった己が、これしきで傷を負ったという事実に首を傾げる。
何か体に細工をされたか、胴着の男が思った以上の実力者だったか、或いはその両方か。
だがこの程度の傷どうということはない。
両腕を軽く振り痛みを振り払うと、外へ出て敵を追う。
外へ出ると血が点々と落ちていた。あの男のものだろう。
血はガソリンスタンドを出て左側に続いている。その先を見るとAKYSがふらつきながらもゼロを睨み付けてくる。

「それ程の力を持ちながら、あんなふざけた男の言いなりか」
「……」

呆れたようなゼロの言葉に視線を更に鋭くするAKYS。
ゼロが一気に片をつけようと近付くとAKYSも応戦するべく走り寄り殴りかかる。
拳と手甲が音を立ててぶつかり合い、衝撃でアスファルトが砕け散る最中

『ゼロさん上です!逃げて!!』

雪華綺晶の声が響き、ゼロとAKYSは咄嗟に言われた通り上を見た。

「あれは…」

そこには見た事の無い怪物が宙に浮き、こちらに黒い光弾を放とうとしていた。




雪華綺晶はゼロに言われた通り事務室に隠れながら、間近で起こる戦闘を固唾を呑んで見守っていた。
ゼロも、襲ってきた胴着の男もまるで漫画のキャラクターのようにデタラメな動きで戦っている。
その現実離れした光景に夢でも見ているのだろうかと混乱するが、頭を振って意識を現実に戻す。
ふいに姉と友だちの事が頭に浮かんだ。
自分はゼロという殺し合いに反対する者と出会えた。だが彼らはどうだ?
姉二人とやらない夫は運動神経抜群だがゼロ達のような動きは当然できないし、やる夫に至っては体育の成績は常に1という有様。
もしも彼らがが胴着男のような危険人物に襲われていたら?いや、ひょっとしたらもう既に…
脳裏に浮かんだ最悪の光景を必死に振り払おうとするも、一度想像してしまったらそう簡単には消えない。

(姉さん…やる夫さん…)

震えだす自分の体を両腕でキツく押さえつけ俯く。
怯える彼女の耳にガラスの割れる音が響いた。
咄嗟に顔を上げると、胴着男が外に殴り飛ばされたのが見えた。
男を追ってゼロが外へと飛び出したのを見て、自分も様子を見に行こうかと考えた時。

“ソレ”が目に入った

「なに、あれ…?」

赤い女性のようなモノが宙に浮いている。
上半身はドレスを着ているようにも見えるが、下半身は芋虫のような形で一番下から目玉が覗いている。
顔は下半分しかなく、上には触手のようなものが生えていた。
超人的な力を持つとはいえ見た目は人のそれと変わらないAKYSやゼロと違い、あちらは完全な怪物だ。
突如現れた異形に凍りつく雪華綺晶を尻目に、事は進んでいく。
怪物の両手に赤黒く輝く玉が現れる。そしてゼロ達に当てるべく狙いを定めていた。
ゼロも胴着男も、この怪物の出現にはまだ気付いていない。

「どうしよう…このままじゃゼロさんが…!」

今外へ飛び出しても間に合いそうに無い。大声で危険を知らせようにもこの戦闘音では聞こえるかどうか怪しい。
焦りが募る中ふと支給品の存在を思い出した。
バッグから蝶ネクタイを取り出すと、音量のダイヤルを最大まで上げる。
そして息をすぅと吸い込み叫んだ。

『ゼロさん上です!逃げて!!』




ゼロとAKYSが見上げる先に居る謎の赤い怪物。

「ウェイ!」

そいつはこちら目掛けて、奇妙な声を発しながら光弾を撃ってきた。
ゼロはすかさず、羽ばたく鳥のような紋章を右手に光らせ、それを光弾へと向ける。
すると光が当たった瞬間光弾は消失した。
傍に居たAKYSも攻撃を免れる形となったが、別に意図してやった訳ではない。偶然だ。
怪物が一瞬驚いたような仕草を見せるが、直ぐにまた連続して光弾を発射する。
しかしまたしても、ゼロの掌から発せられる光に当たると全て消え失せる。
埒が明かないと判断したのか、怪物は標的をガソリンスタンドの方へと変える。
ゼロもそれを察し己の能力を発動する。

「っ!?え、え?」
「話は後だ。行くぞ」

黒い渦のようなものがいきなり現れ、そこからゼロが姿を見せる。
外に居た筈のゼロが突然目の前に現れたため、雪華綺晶は目を白黒させ困惑した。

「エ゛エ゛ーイ!」

だが移動する暇は無い。掛け声と共に無数の光弾がこちらへ発射された。
発射された光弾は給油機やハードボイルダーに着弾、大爆発を起こす。
その影響で、炎の波が辺り一面に大きく拡がった

「きゃっ」
「チィッ!」

雪華綺晶とゼロの姿は爆風に包まれ、あっという間に見えなくなった。


…………


燃え盛るガソリンスタンドを暫し見つめていた怪物だったが、やがて視線をAKYSの方へ移す。
しかし、既にAKYSの姿はどこにも無い。
ドサクサに紛れて逃げたか。短時間でそこまで遠くに行けるとは思えないが、何か支給品を使ったのだろうか。
まぁいい、次に会ったら確実に息の根を止めてやる。
浮遊していた異形は道路へ静かに降り立つと変身を解く。

「結構使えるな、これ」

その言葉と共に現れたのは青い服を着た茶髪の美少年。
彼の名は星君。
チャージマン研こと泉研の学校に転校してきたスポーツ万能の少年…というのは表向きの話で、その正体は地球侵略を目的とした宇宙人、ジュラル星人の一派である。
人気の無い場所に研を呼び出し抹殺しようと正体を明かした直後、この殺し合いに拉致された。
とりあえず現状把握に努めようと名簿を確認したところ、知っている名は宿敵の泉研ただ一人。
ジュラルの同胞が呼ばれていないのならば、優勝を目指すのに抵抗は無い。
それにあのロン毛はどんな願いも叶えてくれるらしい。正直半信半疑だがもし本当ならばその力で地球の完全征服も夢ではないかもしれない。

「早速二人殺せたし、幸先良いスタートだな」

星君に配られたタブーメモリという名の支給品。
これを使い変身したタブードーパントという異形の力は、ジュラル本来の姿の時よりも強力な力を持っていた
星君は知らない事だがタブーメモリはゴールドメモリと呼ばれる特別な代物であり、通常のメモリとは一線を画する力を秘めている。
想像以上のアタリ武器を手に入れられた事に星君はほくそ笑む。
とはいえいつまでもここでのんびりしているわけにもいかない。

「さぁ出発DA☆」

爆発に気付いた参加者が集まってくる可能性は十分にある。
やや駆け足気味で星君はその場から離れていった。


【星君@チャージマン研!】
[状態]:健康
[装備]:ガイアドライバー+タブーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:優勝する
1:この場から離れる
2:参加者を全て殺す
3:チャージマン研は優先的に殺す
4:胴着の男は次に会ったら確実に仕留める
[備考]
※参戦時期は研に正体を知られた後




「……そろそろいいか」

星君が去り、バチバチという燃え盛る音のみに支配されたガソリンスタンド付近。
蚊の鳴くような声がしたと同時にAKYSが姿を現す。
AKYSは逃げてはおらず、ずっと燃えるスタンドの付近にずっと居た。
手甲の他にもう一つバッグに入っていたもの。
とある世界の魔法少女が自分の体の大きさを変化させる際に用いたステッキ。
AKYSはあの怪物からは逃げ切れないと判断し、ステッキで体を小さくし、息を潜め星君が去るのを待っていたのだ。

「あいつらは死んだのか?」

自分を追い詰めた仮面の魔人と、一緒に居た白い少女。
爆発に巻き込まれ死んだのだろうか。とてもじゃないがあの爆発で生き残れるとは思えない。

「…」

負けるつもりは無かったがかなり苦戦を強いられた。
気味の悪い怪物に横槍を入れられ、無様に隠れる羽目になった。
自分自身を守るだけでも命がけなこの状況で、本当にあいつらを生き残らせることができるのだろうか。

「…チッ」

つい情けないことを考えてしまった自分に舌打ちをする。
そんな姿勢では教え子たちを守るなど無理に決まっている。
相手が誰だろうと関係ない。たとえどんな化け物がいようと全てを叩き潰す。
今一度決意を固めるように拳を握り締めると、激しく燃える建物を背にAKYSもその場を離れていった。


【AKYS@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)、両腕に若干の痺れ(徐々に回復)
[装備]:徳川家康の手甲@戦国BASARA
[道具]:共通支給品一式、スモーラージ・Mのステッキ@魔法少女オブ・ジ・エンド(体を小さくする魔法2時間使用不能)
[思考]
基本:野獣、MUR、KMRの三人を生き残らせる
1:ガソリンスタンドから離れる
2:誰が相手だろうと容赦せずに殺す
3:野獣たちには会いたくない
[備考]
※迫真空手部の師範代をしている設定です。遠野とも面識があります

※ガソリンスタンドで火災が発生中です
※ハードボイルダー@仮面ライダーWは大破しました




会場北部にある園咲邸。だがそれとはまた違う豪邸が、この会場には存在する。
日焼けをするには持って来いの屋上や、後輩を昏睡レイプするのに最適な地下室を兼ね備えた快適な空間。
「はえ^~」と思わず感嘆の声を出してしまいそうなその豪邸、名を野獣邸という。
本来ならばクッソ汚い野獣一家の住まいである場所だが、この地では会場にある一施設でしかない。
ひっそりと静まり返っている野獣邸だが、静寂を破るように玄関の扉が乱暴に開けられ、黒尽くめの男が押し入る。
男は邸内に人が居ないのを確認すると、抱きかかえていた少女をリビングのソファーに寝かせ、自分も近くの椅子に腰を落ち着ける。

「…散々だな」

男――ゼロはため息を吐くと、視線を天井へ浮かべつつ先程のガソリンスタンドでの一件を思い出す。
赤い怪物が攻撃の対象をガソリンスタンドへ変えた時、すぐさま瞬間移動で雪華綺晶の元へと移動。
給油機の爆発に巻き込まれる直前再び瞬間移動を使い、隣のエリアへと跳んだ。
本当はもう少し遠くへ移動しようとしたのだが、何故か隣のエリアで強制的に瞬間移動が解除されてしまった。
身体能力の不調といいつくづく面倒なことに巻き込まれたな思い、同時にあのロン毛が一筋縄ではいかない相手だと再認識する。

(ゲームに乗った者を二人、取り逃がしてしまったか)

優れた戦闘力を持つ胴着の男と赤い怪物。
元々の能力か支給品の効果かは不明だが、奴らを仕留めることはできなかった。
とはいえ、雪華綺晶を守りながら二人を同時に相手にしては流石にこちらが不利なので、撤退せざるを得なかったが。
だがバイクという貴重な移動手段を失ってしまったのは痛い。

「ん…」

と、雪華綺晶が小さく寝息を立てたのを聞き、ゼロは顔をそちらに向ける。
エリアを移動した時には呆然としてながらも起きていたが、やがてフッと意識を失った。
一般人が現実離れした戦闘を間近で目の当たりにし、そのうえ爆発で死に掛けたのだ。
緊張の糸が切れたのだろう。無理もない。
一先ず彼女を寝かせられる場所を探すことにしたゼロは周囲を探索し、野獣邸に辿り着いた。
眠り続ける雪華綺晶を見ながらゼロは今後の事考える。

このまま雪華綺晶を守り続ける義理など自分には無い――が、同時に見捨てる理由も無い。
会場に居る間は彼女に同行し、知人を探すのにある程度協力してやってもいい。
こんな選択をするのは魔王となった今でも良心を捨て切れていないからだろうか。

「ふん…」

浮かび上がった疑問を打ち消すように鼻を鳴らすと、雪華綺晶が目を覚ますまで邸内の探索でもしようかと思い立ち上がった。


【雪華綺晶@やる夫スレ】
[状態]:精神疲労(中)、気絶
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、FN ブローニング・ハイパワー(13/13)@現実、予備マガジン×4
[思考]
思考:姉さん達ややる夫さんに会いたい
0:気絶中
1:姉さんたちを探す
2:胴着の男(AKYS)と赤い怪物(星君)に恐怖
[備考]
※以下本ロワでの設定
  • 人間の女子高生で一般人
  • 水銀燈→雪華綺晶たち7人姉妹の長女
  • 翠星石→7人姉妹の三女
  • やる夫→二つ上の学年で幼い時から姉妹とは親交がある
  • やらない夫→やる夫の同級生で彼の親友。姉妹とは中学時代から知り合った
  • 伊藤誠→二つ上の学年。面識は無いが悪い噂は時々耳にする

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、両手に鈍い痛み、回復中
[装備]:無し
[道具]:共通支給品一式、篠崎咲世子のクナイ×10@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考]
基本:主催者の殲滅、元の世界で魔王の役割を果たす
1:野獣邸一階を探索する
2:雪華綺晶と行動し、互いの知り合いを探す
3:他の参加者を探し情報を集める
4:胴着男(AKYS)、赤い異形(星君)は殺す
5:首輪と能力の不調をどうにかしたい
[備考]
※参戦時期はLAST CODE『ゼロの魔王』終了時
※瞬間移動は最大で隣のエリアまで。また連続使用や移動距離が遠いほど疲労増加

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最終更新:2016年02月06日 02:35
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