はわ……、なんだか凄く大変な事になってる。
戦いが終わって、日常に戻った私達は突然現れたベール=ゼファーに拉致され、殺し合えって言われた。
その後、人…、半機械人間って事は人造人間、もしくは灯ちゃんみたいな強化人間って感じなのかな? とにかくその人の首輪が爆発して、アランって呼ばれた人は氏んだ。
ウィザードとしての戦いの中、人が氏ぬのも見てきたし、自分だって何度か……、というか一回氏んだ事もあるけど、やはり誰かが氏ぬのは慣れないし慣れちゃいけない物だと思う、命は大切な物だから。
だから、ベール=ゼファーのやってる事は絶対に許せない。あの場には私の知り合いの灯ちゃんにエリスちゃん、
ナイトメアさん、そして柊がいた。皆こんな
殺し合いに乗る人ではない。勿論私もだ。
今頃アンゼロットさんも動いてくれてると思う。なら私のする事は皆と助け合って生きること。
絶対に乗るもんか、浮遊感に包まれながら、私はそう心に誓った。
会場に飛ばされた私がまずしたことは自分の装備の確認。私の支給品は片面に傷の付いたコイン、竹刀、……そして銃とスペアの弾丸。
武器の説明書には、日本の警察の人が使うニューナンブM60という種類と書いてある。そのずっしりとした重量が、嫌が応にも私にその存在を認識させる。
本来、私達ウィザードやベール達侵魔は、月衣(カグヤ)によって科学という名の常識により生み出された兵器の類は一切通用しない。だけど、こういう物が支給されているなら私達の月衣にも何か細工が施されているのかもしれない。
こっちの状況は圧倒的不利、でも諦めるつもりはない。私も柊も、いや、私の知り合い皆にとってそんな状況はよくあることで、そんな状況から世界を守って来たんだから。今回も、必ずベール=ゼファーの企みは阻止してみせる。
デイパックから取り出した地図で私のいる場所を確認するとD-7のお土産売り場街にいる事がわかった。お店は閉まっていて、中心部に向かう大通りと横に逸れる小道が何本かあるくらいだ。
とりあえず私は、大通りを抜けた先にあるフードコートへと足を進める事にした。
そんな時だった、その男の人にあったのは。
「こんばんわ、お嬢さん」
突然後ろから聞こえたその声に、私は驚いて振り向く。
そこにいたのは、右が白で左が黒の左右対称になったスーツを着込んだ、左顔が醜く変形したおじさんだった。
「は、はわっ・・・・・・!」
「いや、すまない。驚かせるつもりは無かったんだが」
突然の光景に驚いて、私は思わず後ずさる。
そんな私に対して目の前のおじさんはちょっとだけ寂しそうに微笑みながら私に謝ってきた。
うう、なんか罪悪感が……。
「い、いえ、こっちこそいきなり驚いちゃってすみません。あの、それで私に何か……?」
慌てて頭を下げた後、私はおじさんに何の用かを尋ねる。
おじさんの紳士的な態度のせいか、私のおじさんに対する警戒心は殆どなかった。
私が尋ねると、おじさんは深刻そうな顔をして私に打ち明けてくれた。
「実は私が肌身はなさずに持ち歩いていた、言わば宝物の様な物が無くなってしまってね。片面に傷の付いたコインなんだが心当たりはないだろうか? あれがないと私はとても困るんだ」
おじさんの深刻そうな表情から、おじさんにとってそれがどれだけ大切な物かがわかる。
……片面に傷の付いた銀貨? それってもしかして……。
私がデイパックから支給品を取り出す、デイパックの中から出したのは片面に傷の付いた銀貨。
「もしかして、これですか? 私の支給品だったんですけど」
「おお、それだよ! それを私に譲ってもらえないだろうか? タダではやれないというのなら私の持っている支給品と交換もしよう。私に支給された物はこの2つくらいしかないが……」
そう言っておじさんがデイパックから取り出したのは紙と書かれた玉とナイフの2つ。
この2つだけということはおじさんは支給品にはあまり恵まれてはいないようだった。もっとも銀貨一枚に比べたらまだ使えるとは思うけど。
そして銀貨一枚と交換するにはどうしても割にあわない2つを私は貰う気はない。
「はわ!別にいいですよ、おじさんの大切な物なら返します。だからその2つもしまっていただいていいですから」
「本当かね!いやーすまないねお嬢さん、恩に着るよ。これで――」
私の言葉に破顔して、銀貨を受け取って喜ぶおじさんに、私もつい笑顔になる。
あ、そうだ。いい人そうだし一緒に行動してくれるか聞いてみようかな、無理でも情報交換くらい……。
「――これでやっと、このゲームに乗るかどうかが決められる」
……へ?
予想外の発言で固まっている私の顔の真正面に、おじさんの左腕が移動する、いつの間にかその左手には小さな銃。
映画とかでよくある、動けば撃つという状況だ。
なに、これ?
突然の事態に私のはちょっとしたパニックに陥った。
「では運試しゲームをしようか、お嬢さん」
おじさんはさっきと同じ笑顔で私に話かけてくる。
さっきまでは安心をくれたその笑顔が、急激に薄ら寒い物に感じられた。
「え? な、なんで……」
「トゥーフェイス、という犯罪者に聞き覚えはあるかな?」
恐怖でまともに動かせない口で、やっとそれだけを言うと、質問に質問で返すようにおじさんが質問してきた。
トゥーフェイス? 私の記憶を総動員したが生憎とそんな犯罪者の名前は聞いた事がない。
私がゆっくりと首を横に振ると、おじさんは少しがっかりしたようだった。
「アメリカのゴッサムシティの犯罪者でね、元は検事だが裁判の途中で硫酸をかけられ、左顔が醜く変形、それは彼の精神まで蝕み、狂気の犯罪者となった。
世の中には裏と表が存在するというのが持論であり、彼は犯罪を起こすか否か、殺人を犯すか否かを全てコイントスで決める。それが彼のルールだ」
おじさんはその犯罪者についてとつとつと語り始めた。
どこか懐かしむような、それでいて狂気を孕んでいるような笑みで。
そしてそこまで言えば私にもわかる。つまりこのおじさんこそが……。
「おじさんが、トゥーフェイス……」
「その通りだぜ、嬢ちゃん!ま、外国人にはあまり知られてねえのかもしれねえけど、ちょっとばかしショックだったぜ!」
急に口調が荒くなって、心なしか焼けただれた左顔が喋っているように見える。
裏と表、トゥーフェイスさんの言葉でいうなら今までのが表の人格、これが裏の人格っていうことなんだろう。
引き金に指をかけながら楽しそうに笑うトゥーフェイスさんを相手に私は動く事もできなかった。
攻撃魔装であるヴォーテックスを撃とうにも、この状態では引き金を引く指の方が早い。まさに絶体絶命の状況だ。
「今更殺しに抵抗はねえ、かと言ってあんなガキのいい様にされるのは癪だ。だってのに一番大事な銀貨がねえから困ってた所だったぜ。まったくついてるもんだ」
「じゃあ運試しっていうのは……」
「そうだよ、お嬢さん。このコイントスで君の運命は決まる。コイントスの結果に忠実に従う。それが私のルールだからね」
柔和な笑顔を浮かべた表のトゥーフェイスさんが、右手に持った銀貨を親指で弾いた。
弾かれたコインが宙を何度も回り、トゥーフェイスさんの右掌に落ちる。
私の位置からはどちらの面になっているかは見えない。ただ、トゥーフェイスさんの口角がつり上がっていた。
どうなるのかわからず、恐怖と緊張に襲われる私を尻目に、トゥーフェイスさんが口を開いた。
「お嬢さん、どうやら運は君に味方をしているようだ」
私の顔の前から左手が離れて、銃が袖口に隠れた。そんな風に携帯してたんだ。
目の前から去った危機に、緊張が解けた私は崩れる様に尻餅をつき、倒れてしまった。
「さて、これで私はゲームに反逆する事になった。できれば乗っていない君とは手を組みたいのだが、まあさっきの事もある。私といるのが嫌なのであれば去ってくれても構わないが、せめて情報交換だけでもしてくれるとありがたいな」
柔和な笑みを浮かべて、私に手を差し伸べるトゥーフェイスさん。
犯罪者で今さっきまで私を殺そうかと考えていた人とは正直言ってあまり組みたいとは思いたくない。
それでも私とトゥーフェイスさんの目的は同じで、殺し合いの打倒だ。一人でも多くの人を助けるならこんなことで迷ってはいられない。
「本当に、殺し合いには乗らないんですね?」
「本当だとも、私にとってルールは絶対だ。それは何人にも、私であっても侵す事はできない」
そう言うとトゥーフェイスさんは私に傷のついていない銀貨の表面を見せた。つまりそっち側が乗ってないっていう証なんだろう。
自分のルールに従う、それを信じる事にする。
だから私はトゥーフェイスさんの手を取った。
「赤羽くれはといいます。これから宜しくお願いします、トゥーフェイスさん」
「……君はなかなか賢い判断ができるようだな。こちらこそよろしく頼むよ、アカバネ・
クレハさん。さて、どこか落ち着ける場所、この近くだと少し先にあるフードコートがいいな。そこで情報交換といこうじゃないか」
私の出した答えに満足そうに頷いたトゥーフェイスさんは、私がさっき目指そうとしたフードコートに向けて歩いていく。そして、それに私も続いた。
柊、そっちは大丈夫? 私はちょっと危険で変わった人だけど仲間ができたよ。
皆がいれば、今度もいつもみたいにベール=ゼファーの企みを阻止できる。
……だから信じてるよ、柊。柊は絶対に負けないって。
【一日目/深夜/D-7 大通り】
【赤羽くれは@ナイトウィザード The Animation】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ニューナンブM60(5/5)、予備弾丸(完全被甲弾×20) 虎竹刀@fate/staynight
[思考]基本思考:殺し合いには乗らない
1:トゥーフェイスと共にフードコートで情報交換。
2:他の乗っていない人物、及び、柊・灯・エリス・ナイトメアとの合流。
3:ベールを倒す。
【トゥーフェイス@バットマン】
[状態]健康、上機嫌
[装備]ハイスタンダード・デリンジャー(1/1)
[道具]支給品一式、魔道具『式紙』、ナイフ、片面に傷のついた1ドル銀貨@バットマン
[思考]基本思考:傷の無い方が出たのでゲームには乗らない。
1:アカバネ・クレハと情報交換
2:ゲームの打倒
3:バットマンについては……?
最終更新:2008年09月22日 16:14