10話「勇者(?)の旅立ち」
さて、俺、
リック・ゼラルスはいつものように家で寝たはずなんだが。
目が覚めたら幼馴染のガンナー、
レイ・ブランチャードと一緒に、この
殺し合いに参加させられていた。
主催者である
セイファートという狼獣人の女は、噂は少し聞いた事がある。
確か元々はどこかの王国の高名かつ非常に優秀な魔導師だったらしいが、
次第に悪の心に染まっていき、その王国を滅ぼし、賛同する人間達、獣人達や魔獣達を従えて、
異世界に居を構えて度々様々な王国にテロ行為を仕掛けているとか何とか。
一体あいつが何を考えているのかは知らないが全くはた迷惑な話だ。
逆らったり無理矢理外そうとしたり逃げようとしたりすれば爆発するという物騒な首輪や、
広大なバトルフィールドまで用意してまでこの殺し合いを開催する目的。
「面白そうだったから」「ゲーム感覚」……そんな感じだろうなきっと。
別にセイファートについて詳しく知っている訳じゃ無いが、あの開催式の時のセイファートの様子から、
大体そんな感じだろうとは予想がついた。
そして今俺がいるのは、周囲に民家らしい建物が軒を連ねる市街地。
地面の作りといい、建物の外見といい、俺が生きる世界のそれとは随分違うな。
ここも異世界なんだろうか? 有り得るな。
街灯らしい明かりもほとんどが消えているが、夜空に浮かぶ満月の光で視界に困る程暗くは無い。
エンカウントモンスターでもいるかと思ったがどうやらそれは無いようだ。
参加者同士で殺し合わせないと意味が無いと思ったのだろう。
デイパックの中身は確認済だ。
デバイスとか言う見た事も無い機械には驚いた。コンパスと時計の役割の他に現在位置まで分かるとは。
しかしそれと同時に水と食糧の淡白さ、少なさには呆れた。
透明の見た事も無い素材の容器に入れられた水二本はいいとして、
食糧がコッペパン四個しか無いとは……ふざけている。悪意を感じるな。
まあ確かに「無くなったら自弁しろ」みたいな事はセイファートは言っていたが。
こんな食糧ではどう考えても身が持たないからな。食糧調達も視野に入れないと。
そしてランダム支給品は……一振りの日本刀だった。
説明書にはこの刀が「焔薙」という銘である事しか書かれていなかった。
よく見ると鍔の部分に漢字の「生」の字を逆さまにしたような謎の紋様が透かし彫りにされている。
この刀の由来が少し気になるが、何にせよ剣が得意の俺にとって、アタリを引いた事は間違い無い。
出来ればいつも愛用している自分の剣が良かったが、贅沢は言ってられないな。
夜の住宅街を歩きながらまず俺は考える。
この殺し合いの中、俺はどう動くべきか――やはり、殺し合いに抗い、脱出する術を探す事だろう。
別に俺は邪悪な魔王から世界を救う勇者では決して無い。
生活の糧を得るためにモンスターを倒したりしている一介の剣士だ。
だが、無抵抗な奴を殺してまで生き延びようとは思わない。そこまで外道じゃないと自分では思っている。
脱出するには――まず首輪を何とかしないといけないな。
何しろこの首輪で俺達参加者はセイファートに命を握られてる訳だから。
だが俺には機械知識なんてまるで無いしそもそもこの首輪の内部構造が謎。
更に無理に外そうとすれば、開催式の夢野カケラとかいう男のように首輪が爆発して死ぬ。
それに仮に首輪を解除出来たとしても、セイファートが逃げる事を許さないだろう。
これだけの大規模なゲームなのだから恐らく敵陣営にはセイファートだけでなく、
側近や私兵団もいるはずだ。
ゲームが続行不可能と判断するや、全力で皆殺しにかかる可能性も否めない。
……前途多難だな……ふう……。
まあとにかく考えていても始まらない。まずは仲間集めだな。
三人寄れば文殊の知恵とも言うし、複数人集まって考えれば何か思いつくかもしれない。
それに、俺と同じくこの殺し合いに呼ばれている幼馴染のレイ・ブランチャード。
クールでほとんど感情を露わにしない奴だけど、殺し合いに乗るような奴じゃない。
あいつとも合流したいな。どこにいるか皆目見当もつかないけど。
多分そう簡単には殺されはしないと思う。多分。
「さてと、行きますか……」
ここに俺は宣言しよう。
殺し合いはしない。必ずや脱出の糸口を見つける事を、な。
【一日目/深夜/D-3市街地住宅街】
【リック・ゼラルス@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:焔薙@SIREN
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:殺し合いからの脱出。首輪解除の手段を探す。
1:仲間を集める。
2:レイと合流する。
≪オリキャラ紹介≫
【名前】リック・ゼラルス
【年齢】17
【性別】男
【職業】剣士
【性格】お気楽主義だが、根は熱くなりやすい
【身体的特徴】地毛の茶髪で、同年代の男子より身長が低め
【服装】青い上着に白いズボン、軽装鎧を着用。白い鉢巻を頭に巻いている
【趣味】素振り
【特技】自己流の剣術
【経歴】物心がつく前に父親がモンスターとの戦いで負った傷が元で死亡し、
母親の手で育てられた
【備考】魔法は使えないが、剣術の腕は一級品
≪支給品紹介≫
【焔薙@SIREN】
羽生蛇村の旧家、神代家に代々伝わる家宝。「ほむらなぎ」と読む。
同村の秘祭を行う祭儀場である眞魚岩から採取した隕鉄を精錬して鍛えられた刀。
鍔の部分には同村独自の信仰の証である「マナ字架」が透かし彫りにされている。
ゲーム本編では最終戦の時に入手及び使用可能になる。
最終更新:2010年01月03日 10:15