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祭りが始まる時

男が気がついた時には、何時の間にかこんな薄暗いホールの中にいた。
あたりを何気なく見回してみると自分以外にもかなりの数の人間がいるようだったが、それはたいして気にも止めず鬱屈とした表情で地面へと視線を移した。
男にとってはそんな事はどうでも良かった。
今男の心は、どうしようも無い程の無力さと後悔、そして自己嫌悪で埋め尽くされていたからだ。

「全員、起きた?」

だがそんな男の心情など無視して、突如前側から無機質めいた少女の声が聞こえた。
億劫そうに顔を上げると、そこには一人の少女が壇上に立っていた。

その少女は奇妙な格好をしていた。
ボディスーツの様な薄そうな服一枚の上半身と、かなり短いミニスカートはやたら目立つ筈だが今はたいして気にならなかった。
その頭上に天使を表現する時に使われるような輪が浮かんでいることと、背中に見事なまでに真っ黒な翼がある事に比べれば。
最近流行のコスプレって奴か?それにしてもきわどい格好だな、等と適当なことを考えていると、その少女は再び口を開け
「貴方達をここに集めさせたのは、私達」
いきなりそんな事を抜かし始めた。
達っていってもお前以外はどこにいるんだよ、と心中で呟く男の思考を無視するかの様に少女は話を「カミュちー!」続け

いきなり誰かの声が聞こえた。
人の話は最期まで聞いてからにしろよと思いながら声の元に視線を移すと、壇上の目前に一人の少女が立っていた。
見た目は多めに見積もっても、十代の半ばといった所だろう少女もまた奇妙な格好をしていた。
和風の着物を着ている様だが、なぜかお尻の辺りからは尻尾のような物が出ており、耳もまた然り、獣の様な耳がピコピコ動いていた。

どうやら自分は仮装パーティーの会場に連れてこられてしまったらしい。
こんな所に自分を連れてきた黒幕は十中八九アイツだな、と呆れながらため息を吐く。
自分を元気付けようとしてくれているのだろうが、今の自分には何の意味も無かった。

その間もさっきの獣耳の少女は壇上の少女に話しかけているが、もう関心は殆ど無くなっていた。
さっさとこんな所からはおさらばして家でボーっとしてよう、そう思い男は少女に向かって声をかけた。

「で、なんで俺達をこんなところに集めたんだ?」
そう聞くと壇上の少女は男のほうを振り向いた。
その瞳を見た瞬間、どこか違和感を感じた。
その表情は、なぜか悲しそうに見えたからだ。

「貴方達に、ある事をさせる為に」
そう少女は応えると、再び無機質な表情に戻った。
あるいは自分の勘違いだったのかも知れないが、まぁどうせこの後あいつらが出てきて、「ドッキリでしたー」とか言いながらパーティーでも始めるんだろうからどうでもいいか。
そう適当に結論付けて少女の声に再び耳を傾ける。
そしてそんな男の心中に今度は応えるように、少女は

「ここにいる生命体全員で殺し合いをして欲しいの、最後の一人になるまで」

おぞましい殺人ゲームの開催を、宣言した。

「…は?」
それに対する男の返答は、この一言のみだった。

(殺し合い?なんでそんな単語が出てくるんだ?)
だがそれは危機感から来るものではなく、単純に予想と異なる回答に戸惑っているだけなのだが、追撃を放つように、少女は何かを小声で呟いた。
その直後、ボン、というコミカルとも取れる音がホール内に響いた。
音のした方を見ると、そこには―――
「え…すも…も…?」
顔と身体を真っ赤に染めた、呆然とした表情の女子高生ほどの少女と、

首から上を損失した、少女の身体があるだけだった。

一瞬の間をおいて上がる悲鳴。
絶叫しながら死体を抱きとめる先ほどの少女
あたりに漂い始める濃厚な血の匂いは、間違いなくそれが死体であると言う事を物語っていた。

「今のは貴方達の首に付いている首輪を爆破しただけだから、静かにして」
そう言われて首に触れると、堅く冷たい感触がある。
確かに首輪が付けられているようだ。
周りも自分の首を確認しているようで、騒ぎも少しだけ収まっている。

「無理に取ろうとしても、爆発するから」
そう少女が呟くと同時に、それまで首輪に手を触れていた者達が一斉に首輪から手を放すのを確認した少女は、この殺し合いについてのルール説明を始めた。
その間も死体を抱きとめていた少女は泣き続け、壇上の少女をカミュちーと呼んだ少女は話しかけ続けていたが、翼の少女はそちらに目も合わせなかった…。








「…以上でルールの説明は終わり、参加者間での反則行為等は無いわ、忘れた際にはデイバッグに入ってる――」
ルールの説明が終わったが、聞けば聞くほど気にいらねぇ。
なんでこのケイブリス様があんな小娘の指図を受けなきゃなんねーんだ、あぁ?
………というか、魔人最強であるこの俺様が、あんな爆弾なんかで死ぬと思ってんのか?
こんなふざけた説明聞いてやんねーで、あの小娘の首をへし折ってそれを教えてやればいいか。

だがこのゲーム自体は面白そうだしな…よし、俺様が主催者になってこのゲームを運営してやろう、グガガガガガガ!
つーわけで…
「死ねえ!!」






「死ねえ!!」
急に叫び声が聞こえ、男がそちらに視線を向けると、なんとそこには化け物がいた。
化け物とはひどい言い草かもしれないが、
4,5メートル程はあるだろう巨体に何本もの腕や触手のような物を生やしていて、明らかに人外の身体をしている存在に対してそれ以外に表す言葉が見つからなかった。
その化け物は腕を振り回しながら、壇上の少女に今まさに飛びかからんとしていた。

グシャァァ!!、という音が響いた。
化け物の体当たりで、少女のいた壇上がぐしゃぐしゃに破壊されたのだ。
飛び散る破片に怒号、悲鳴。
だが少女は壇上にはいなかった。
男が何とか周辺を見回してみるが、少女の姿は見当たらない。
もしかしたら今の体当たりで、どこかに吹き飛ばされたんだろうか。
(一体どこに行ったんだ?)
「んー?、なんだなんだぁ、俺様に恐れをなして逃げたのか?グガガガガガァ!!」
そう男が思い、同時に化け物が勝利の咆哮を揚げ始めて、

「魔人ケイブリス…予想通りの動き」
化け物の頭上から声が聞こえた。
その声を聞き、化け物が、男が、参加者達が上を見上げた時には、もう全てが終わっていた。

何か、キラキラと輝く物が無数に化け物に向かって降り注いだ。
それは剣に見え、槍に見え、杖に見え、盾にも見えた。
その光の流星群に飲み込まれた化け物は、見る間に小さくなっていった。


先の化け物のそれとは比較にならない破壊の嵐が止んだとき、そこにあったのはクレーターと化したホールの壇と、下半身と全ての腕を損失しながらも、まだ息をしていた化け物だけだった。
「グ…ゲガ……な、なんで…」
息も絶え絶えに声を出す化け物。
そして翼を羽ばたかせ空に君臨する少女
「あなた、説明聞いてなかったの?」
無機質めいた声で少女は答える
「能力の制限、それは貴方達魔人最強の由縁、無敵結界に関しても例外じゃないわ。」
そう応えた後、少女は先程首輪を爆破したのと同じように、小声で何かを呟いた。
「ま…まってく」
命乞いの言葉を言い終える前に、ボンと言う音と共に化け物の首は吹き飛んだ。
それを冷たい目で見下ろしながら、少女は再び口を開く。

「それと、優勝者にはどんな願いも叶えてもらえる、という褒美があるから」

その言葉の意味が、一瞬男には分からなかった。

「異能の力や理想の恋人、人生のやり直し、死者の蘇生」

本来こんな事を言われたところで、誰もが嘘り、でまかせ、嘘八百だと断じるだろう。
だが、今目の前で起こった出来事、息絶えた化け物、空を飛ぶ翼の少女。
目の前で起きた信じがたい、だが紛れも無い現実に加え、大切なものを無くした直後の男にとってこの発言は…余りにも甘い誘惑だった。

「…なんでも、叶えてもらえるわ」

そう、男は思う

「それじゃあ」

深く思う

「ゲーム」

(もし本当に…汐と渚を生き返らせられるなら…俺は……)

スタート

岡崎朋也は、強く思いを巡らせながら、光に飲まれていった。


【秋姫すもも@ななついろ★ドロップス 死亡】
【ケイブリス@ランスシリーズ 死亡】



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最終更新:2010年03月06日 01:48
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