「あいつら……人の命を何だと思っているんだ!!」
潮の香りがふんわりと辺りに漂う深夜の砂浜。
砂浜の向こうの海には月が映り幻想的な空間を醸し出している。
その幻想的な空間をぶち壊すように響く大きな憤りの声。
砂浜の向こうの海の果てまで届きそうなくらいだ。ここが
殺し合いの場だと理解しているのだろうか。
「俺は乗らない、こんなふざけたゲームに乗ってたまるか!!!」
先程の憤りの声の主である黒髪の少年、武藤カズキ。
今は故あって仲間であった『錬金の戦士』から追われる身である。
「斗貴子さん……剛太……どこにいるんだよ……」
名簿を確認し、自分の知り合いが二人も巻き込まれていることを知り焦るカズキ。
この島では安全な場所なんてないのだ。
自分の仲間が今こうしている間にも危険に晒されていることを考えると身震いがする。
油断ともいえるのだろうか。
端的に言うとカズキは動揺していた。仲間のことを考えて。
そのせいで気付くのが遅れた。後ろから放たれる強烈な殺気に。
ヒュッと風切り音が鳴った。そして数秒後に遅れてやってくる痛み。
カズキの右肩にナイフが突き刺さり、傷口からドクドクと赤い血が流れ、着ているTシャツを赤で汚す。
まだ小さなナイフであったためにこの程度で済んだ。
もしこれが大型のマチェットなどであったらどうなっていたであろうか。
きっと、肩を貫き、肩から抜くことさえも困難になっていたであろう。
「……痛っ……!」
痛みに顔をしかめているカズキだがいつまでも呆けていてはいられない。
カズキは素早くナイフを肩から引き抜く。
たったったっと砂を踏む音が聞こえる。襲撃者がカズキに迫っている証拠だ。
「武装錬金!」
カズキはサンライトハートを即座に出して振り向き様に横一閃に切りつける。
「っ……」
「受けた!?」
砂浜に甲高い金属音が鳴る。襲撃者が持つ刀とサンライトハートが火花を散らす。
カズキを襲った襲撃者の正体。
それは、鮮やかな銀髪に実直そうな顔立ちの制服を着た女子高校生であった。
自分と同じくらいの年齢だろうかとカズキは考える。
少女はカズキが虚空からサンライトハートを取り出したのよ後ろからの不意打ちを見事に受けたことに驚いたのか刀を握る手が一瞬緩まる。
その僅かな間に即座に後ろに後退し体勢を立て直す。
「どうして君はこんなふざけたゲームに乗る!乗る必要なんてない、皆で協力すれば!」
「……黙れ、答える必要など無い」
ボソッと呟く少女。カズキの問いかけに答える気はまったくない。
それでもカズキは諦めない。
誠心誠意説得すればわかってくれる、こんなふざけたゲームに進んで乗る人なんていない、そう信じて。
だが、相変わらず少女からの返答は無い。
「お願いだから話を聞いてくれ!」
呼びかけの返答代わりに少女は間髪入れずに、払い、籠手、振り下ろし、流れるような連撃をカズキに繰り出す。
カズキは最初の払いをサンライトハートで受け、次の籠手を手を素早く引っ込めることで躱す。
三つ目の振り下ろしの一撃を後ろに跳ぶことで躱す。
そして、カズキは刀の振り下ろした隙を狙って一気に迫り胴に切りつけようとするが、
カズキは少女を傷つけることが出来ずにサンライトハートを胴の寸前で止める。
カズキの信念が手に持つサンライトハートを鈍らせる。
(だめだ、この人だって何か理由があってやむなく乗ってるかもしれないんだ。
まだ……まだ諦めるには早い。殺すのは最終手段、どうにもならなくなった時。
助けるんだ、この人を!)
「なぜ止める?このまま振りぬけばいいものを」
少女は刃が止まったことを不審に思ったのかいぶかしげに問う。
「そんなことできるわけないだろ!いきなり人を殺せと言われて殺すなんておかしいじゃないか。
君だって好きで殺しあってるわけじゃないだろ。俺は武藤カズキ、君の名前は?」
サンライトハートの構えを解いて自分は何もしないとアピールするカズキ。
殺し合いに乗ってる人物を前では自殺行為に等しい。
これを見た少女も呆れ返っている。
「答える必要はないと言ったはずだ」
「そんなこと言わずにさ、名前ぐらい教えてくれてもいいと思うけど」
お人よしが過ぎる――
少女はため息を深くつきながらそう考える。
「調子が狂う奴だ……坂上智代、これで満足か?」
「じゃあ、智代さん。改めて聞くけどどうして君はこんなゲームに乗る?」
「はぁ……そこまで答える必要はない。所詮お前と私は他人、敵同士だぞ?」
「そんなこと言わずにさ」
カズキのしつこい追求にうんざりする智代。
どうしてここまで私にかまう――
(このどうしようもないお人好しを見てると浮かぶな)
智代の脳裏に浮かぶのは大切な人。
そして大切なあの日々。
智代は唇を血が出るほどかみ締める。
(そうだ、自分は決めたはずだ。どんな外道なことでもやってみせると)
鈍ってはだめだ――
智代の顔から表情が消える。
「皆で協力すればきっと「黙れ、私は殺す。この島にいる全員を。それにそれが出来てれば苦労はしないさ……っ!」……智代さん!」
戦いが再開する。
キンキンと小刻みな金属音が静寂な砂浜に鳴り響く。
カズキは智代の攻撃を受け流すばかり。一向に攻撃する気配はない。
(智代さん、強い!甘く見たらやられる。切っ先を目から逸らさないで……集中し……ガッ!)
ほんの少し。ほんの少しの油断がカズキを甘くした。
「油断大敵だな」
カズキは刃の切っ先だけに視線が囚われすぎて全体を見ていなかった。致命的な隙である。
そんな大きな隙を智代は逃さない。
智代の体のバネを活かした渾身の蹴りがカズキの腹部に突き刺さる。
蹴りをまともに受けたカズキは宙を舞いドスンと音を立てながら砂浜に落ちた。
頭から落ちて脳震盪にでもなって気絶したのだろうか、カズキはそのまま動かない。
だがそんなこと智代はかまいはしない。
無慈悲にも、智代はカズキに迫り刃で貫こうと――
「そこまでだ」
凛とした声と同時に響く銃声。
放たれた銃弾は少女の持つ刀の中央部分に正確に当たり刀身は真っ二つに折ってしまった。
「何だ、新手か。もしかしてこいつの仲間か?」
智代は銃弾の飛んできた方向に視線を向けて問いかける。
自分の刀を正確に撃ちぬいた力量、只者ではない、と智代は考える。
視線の先にいるのは――
美少女。腰まで伸びた艶のある黒髪、露出癖があるのかと思われるくらい外にさらされた胸。
顔立ちも整っており街を歩けばたちまち注目の的となるだろう。
「ふっ……私の名前は黒神めだか。通りすがりの生徒会長さ」
威風堂々とした佇まいで言葉を放つめだか。
だが智代は怯まない。むしろ、カズキと対峙した時よりも殺気立っている。
「ふん、まあいい。どいつもこいつも皆殺しにするだけだからな」
そう吐き捨て先が折れた刀を捨ててめだかに襲いかかる。
「ステゴロか?おもしろい、その勝負受けようじゃないか!」
めだかは手に持った銃をデイバックに投げ捨て智代を迎え撃つようにファイティングポーズを構える。
先手はめだか。めだかの右手から振りぬかれたアッパーが智代の顎を正確に狙う。
常人ならここで終了。ダウン確定だが、
「ふん!!」
智代はアッパーを両手をクロスして受け止め、後ろに下がり勢いを殺す。
その下がった一瞬すらもめだかは逃さない。
追撃として間髪いれずに右ストレートを腹に叩き込もうとする。
だが智代とて中学のころは喧嘩で近隣の不良生徒に恐れられていた身。
こんな簡単にやられるわけにはいかない。
「舐めるなよ、黒神めだかぁ!!!」
智代はめだかのストレートを拳で撃ち落とし、そのまま流れるように回し蹴りを繰り出す。
「少女よ、それはこちらのセリフだぞ」
めだかは智代の回し蹴りをバックステップをぎりぎりのところで躱す。
「今の蹴りを躱すか、おもしろい」
智代は後退しためだかを追い込むように懐に瞬時に潜りこみ右フックを放つ。
めだかは掌で右フックを受けとめる。
二人の乱打が続く。拳が撃ち落とされ、蹴りが流される。
「甘い!甘いぞ……少女よ、お前はその程度か?」
不適にめだかは笑う。いや、嗤うというほうが正しいか。
明らかな挑発であろう。
「ほざけぇ!!!!らああああああああああ!!」
智代はただひたすらに蹴る、蹴る、蹴る。体に当たったら肉が飛び散るかのような。
当たったら臓器に多大な損傷が与えられることは間違いないだろう。
めだかもそれに答えるかのように智代の蹴りを紙一重で躱しながら拳を放つ。
「やるじゃないか、少女よ……!」
「少女じゃない、坂上智代だあああああああ!!!!!」
夜の砂浜で拳と蹴りの舞が続く。互いの一撃は必殺。一発当たったら即ダウン。
当たり所が悪かったら死ぬ可能性もある。それでも。
「はぁ!」
「そこっ!」
止まらない。拳も。蹴りも。勢いは増す一方だ。
だけど、ここはバトルロワイアル。何でもありの狂気の島。この勝負を邪魔する輩だって当然いる。
「え?」
「ん?」
力の限り戦っている二人の間をころころと転がる黒いナニカ。
「これは、まさか……!」
その言葉より一秒後、黒いナニカによる爆炎が轟いた。
◇ ◇ ◇
手榴弾の燃え残りで砂浜に微かな明かりが灯される。
そこに派手なアロハシャツを着た青年、中村剛太は立っていた。
先の手榴弾をめだかと智代に放った張本人である。
「まさか、ここまであっけねえとは思わなかったぜ、武藤」
目の前で気絶しているカズキを見て忌々しげに呟く。
(敵に情けを掛けて、それでやられちゃ世話ねえな。そんな様で先輩を守れるのかよ)
失望の表情を顔いっぱいに浮かべ、剛太は考える。
剛太の基本思考は津村斗貴子の無事を確保すること。
確保後は、この島からの脱出。もしそれができなかったら津村斗貴子を優勝へと導く。
それ以外にこのゲームに乗っている参加者、生きていく上での足手まといの排除。
そのためなら他の参加者を犠牲にすることも厭わない。
ゲーム開始直後に考えたこれからの方針である。
(先輩以外はどうなってもいい。そして、その先輩を他の参加者から守るには俺独りでは荷が重い。
他の参加者なんざ信用できない。いつ寝首をかくかわかったものではないしな。
その点こいつはわかりやすい。この島に来る前、少しの間一緒に行動してわかったがこの御人好しは絶対に先輩を裏切らない。
それに先輩もこいつを……好いているし。こいつだけは信用してもいいんじゃねえかとも思ったが……こんなんで大丈夫なのかよ)
剛太は自分のデイバックから支給品であった応急処置セットを取り出し、カズキのナイフが刺さった痕の治療をする。一応の処置をしておいても損はないだろうと考えた上でのことである。
「それよりも、さっき殺した二人……」
剛太は手榴弾の爆心地の跡を見て顔をしかめる。
そこには――
「どうして死体がないんだ?」
【J-5砂浜/1日目・深夜】
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]:気絶、腹部にダメージ、右肩に刺突痕(応急処置済み)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本:ゲームには乗らない
1 他の参加者と協力して情報交換。
2 知り合いとの合流
※7巻62話からの参戦。
※近くに投げナイフ1本、折れた打刀が落ちています。
【中村剛太@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、応急処置セット、M24型柄付手榴弾×4、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:津村斗貴子との合流
1津村斗貴子と共にこの島からの脱出。武藤カズキもついでに。
2乗っている参加者、生きていく上での足手まといの参加者の排除。そのためなら手段は問わない。
3脱出ができなかったら津村斗貴子を優勝へと導く
4死体がない!?
※7巻62話からの参戦。
※黒神めだか、坂上智代を殺したと思っています。
【????/????】
【坂上智代@CLANNAD】
[状態]:????
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、投げナイフ×9、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る。
1 ????
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]:????
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、トンプソンコンデンダー(0/1)、予備弾49、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:????
1????
2????
【応急処置セット】
包帯、消毒液など応急処置に役立つ物の詰め合わせ。
【M24型柄付手榴弾】
第一次世界大戦にドイツで開発された柄付き手榴弾の後継型である。小さい缶詰型の炸薬に木製の棒をつけた形状から、ポテトマッシャー(じゃがいも潰し)という俗称がついた。第一次世界大戦から使用されていたヘアブラシ型手榴弾M1915の改良型で、大量の炸薬を発火させる事により起こる爆圧で相手を殺傷する。有効範囲は約10m。攻撃型手榴弾に分類される。発火方式は摩擦発火式。木製の柄の中に弾殻に繋がる紐が付いており、柄のねじ込み式安全キャップ(ボトルキャップの様な形状)を外し、中の紐に繋げた握り玉を引っ張ることによって摩擦で(マッチの様に)導火線部に着火させ、3~4秒で爆発する。一般的な仕様は、指や手首に紐を巻きつけたまま投げる事で、発火と同時に投擲を行う。
【投げナイフ】
10本セット。何の変哲もない。
【トンプソンコンデンダー】
1967年にアメリカのトンプソン/センター・アームズが開発した、狩猟用のシングルショット・ピストル。小口径弾でのプリンキングから、大口径弾によるビッグ・ゲーム・ハンティングまでをフォローするという変わり種。
最終更新:2010年02月10日 20:38