夜の西洋の町並みの中のとある一つの家。その家の中のリビングにいる三人の男女。
この三人はどこか落ち着ける場所できちんとした情報交換をしようという提案のもとにとある家にお邪魔していた。
そして現在。三人の話をまとめた表を樹が書き出し、これからそれについて話しあおうとしているところである。
「さて、始めるか」
歩が情報交換の開始の狼煙を上げる。
「そうだなまずはお互いの知り合いの整理からだ。支給された紙とペンで一応の区分けはした。
各自見てくれ」
樹が整理した表を他の二人に回す。
人物表
,安全、絶対に乗っていない
鳴海歩、藤林杏、緑葉樹
,高確率で乗っていない
岡崎朋也、坂上智代、春原陽平、春原芽衣、土見稟、真弓=タイム、
,怪しい、もしかしたら……
結崎ひよの、アイズ・ラザフォード、浅月香介、竹内理緒、高町亮子、ミズシロ火澄、ネリネ、リシアンサス、芙蓉楓
, 高確率で乗る
今の所はなし
「ちょ!何よこれ!」
この表に不満があるのだろうか、杏は樹と歩にくいかかる。
「歩の知り合いほとんど怪しいじゃない!
歩!あんたさっき『この島では信じるってのは一番重要なんだ』とか言ってたじゃない!
仲間を信じてないの!?」
「どうなんだ鳴海、俺様の耳が正しかったら杏ちゃんの言ってることは正しいぜ」
「ああ、あれな。『この島では信じるってのは一番重要なんだ』、言葉通り一番重要だと思うぞ」
二人の問いかけに変わりない表情であっけらかんに答える歩に杏と樹はへ、と間の抜けたため息を吐いた。
「じゃあおかしいでしょ、知り合いが全員怪しいなんて。聞いた話によるとただの上級生じゃない」
杏は歩の答えに矛盾を感じたのか、ふるふると震え、怒りを顕にする。
「落ち着け、藤林。まだ話の途中だ。話は最後まで聞け。
信じるっていっても俺が信じるのは主催者でも他人でもない」
「へー、じゃあ自分とか?」
樹が何食わぬ顔で話に割り込み、答えを言い当てたとばっかりに歩に迫った。
「だから人の話を最後まで聞けって。それに残念だがハズレだ、緑葉」
「んじゃあなんだよ。もう思いつくのなんて何もねえぞ」
「俺が信じるのはな、論理だ」
「論理?それで?」
「俺はな、自分の存在すらも信じていない。それぐらいの覚悟じゃないと
殺し合いみたいな大きな『運命』には勝てないからな。
周りの全てを何も信じちゃあいない、むしろ全てを疑ってかかってる。
そんな中で俺を支えている論理を信じてお前らを『信用』しているんだ。
それに今ここで実際に話してもいるし、おまえらに嘘をついている様子は見受けられないしな。
その分どこで何をしているか分からない知り合いを俺は『信頼』こそしているが『信用』はしていない。
こんなところだ」
「何よそれ……わけわかんない」
「はいはい怒らない怒らない。とりあえずこの件についてはおいおい話すとしようぜ」
場を流し、次の議題に進めようと樹が杏を宥める。
「ちょっと樹!今のはあんたにも言えることよ。半分以上の知り合いが危ないって記してあるじゃない」
杏は歩から樹に矛先を変えて詰めよるが樹は曖昧に笑うだけ。
なかなか答えようとはしない。
「うーん、何と言うか……そのことについては次の議題で一緒に説明するからさ、今はスルーしてくれないか」
ごめんと頭を下げて謝る樹に毒が抜かれたのか、ちゃんと説明しなさいよ、と念を押して杏はしぶしぶと引き下がった。
「じゃあ次の議題だ。世界観の相違についてだ、よく聞いとけよ。
俺様の世界ではな、10年前ぐらいに遺跡から発見された2つの扉の解放により、神族が住う『神界』と魔族が住う『魔界』と呼ばれる二つの世界が現代の『人間界』と繋がったんだ。
それは後に『開門』と呼ばれた。
鳴海、杏ちゃん、聞き覚えはあるか?」
「ないな」
「聞いたことすらないわ」
「そうか、話を続けるぞ。
その『神界』と『魔界』はさ、人間界にとって空想上の存在だったはずの『魔法』によって支配された世界であり、
その事実は物理法則で支配された人間界に住まう人々を驚愕させたんだ。
その後は三世界との交流を経て最終的に"三種族共存"の道を歩むことになり、やがて『神界』と『魔界』の住人たちが人間界へと移り住むようになるということだ。
現に俺様が通うバーベナ学園では『神界』と『魔界』の奴が通っている」
説明を終えた樹はふうとため息を吐きちゃんと理解できたかと二人を見渡す。
「鳴海どうだ?」
「ああ、理解できたことは理解できたんだがな。今までの常識がさらに覆されたんでな。
流石にびっくりしている」
「杏ちゃんは?」
「信じられる訳ないでしょ!……といいたいところだけど、信じるしかないわね。
そもそも殺し合いに巻き込まれている時点で常識なんて歩の言うとおり、もうとっくに覆されてるわよ」
頭の中がバレルロールのように廻っているのだろうか、二人はうーんと唸り声をあげながら何かを考えているような様子だった。
「そういえば鳴海と杏ちゃんはどうなんだ、世界観?」
樹がふと思った疑問を口にだす。
この二人まで違っているとこんがらってしまうのではと危惧した質問だった。
「ないわね。聞いた限りによると普通の世界だわ」
「藤林と同意見だ。違いはないと思う」
そっかと安心した顔で呟く樹。
どうやらこれ以上の混乱は避けられたようである。
静寂な空気が辺りを冷やす。
何かを考えているのだろうか、沈黙が続く。
「あー!」
何を思ったのだろうか、杏が突然大きな声を出して立ち上がった。
樹と歩はびっくりした様子で杏の方へ視線を向ける。
「どったの?杏ちゃん」
「いきなり大声を出すな。耳が痛い」
半目で生暖かい視線を送る二人を意に介さずに杏はギンと樹に顔を向ける。
「そういえば樹の知り合いの半数が怪しいって理由をまだ聞いてないわよ」
「あれ覚えてたの?」
「当たり前よ!さあ、きっちり話してもらうわよ」
杏の剣呑な視線に負けたのか樹はやれやれといった感じでポツポツと話し始めた。
「そうだな、まずは俺様の親友である土見稟のことから話そうか。
こいつは昔にある二人の女の子を助けたんだ。何でもちょっと困っていたところを優しくな」
「それで?」
「その二人の女の子はそれがきっかけで稟に惚れて、俺様の通うバーベナ学園に転入してきた。
その二人の女の子、リシアンサスとネリネ。『神界』と『魔界』のお姫様さ。
それに加えて幼なじみの芙蓉楓。ああ、楓ちゃんも稟に惚れてんだよね」
流石に驚いたのか杏も口を開けてふぇ、と言葉もでない。
歩も同様に目を見開いてびっくりした表情だ。
「よくできた話だな。御伽話でも聞いてるみたいだ」
「だろ、俺様もそう思う。まるで運命にでも絡み取られているようだ。
たまたま助けた二人の女の子がお姫様でどっちも超可愛い。
さらに出来すぎた幼なじみ。
鳴海の言うとおり出来すぎた話――御伽話だ。
それによ、稟ときたらすごい朴念仁でな。
三人とも積極的にアタックしてんのに全くなびかないねえし。
こんなのを間近で見てちゃ妬みの一つや二つでてもおかしくはないだろ」
クックッと笑う二人をよそに杏は自分が蚊帳の外におかれているのに気づき、二人にカッと目を向ける。
「それとこれがどうしたら怪しいと関係するのよ」
「この三人は間違いなく稟を愛している。
だから、どんなことをしてでも稟を生かそうとするかもしれない。
早い話、土見稟以外を皆殺しにする可能性があるってことさ」
「大事な人を守るために皆殺し……ありそうだな。
他にもそんな考えの奴がいるかも知れないな」
再びの沈黙。誰も何もしゃべらない。
もし自分の知ってる人がそうなったら――
できれば考えたくないことだ。
「そういや、これからどうすんだ鳴海?何かプランはあるか」
「あることはあるんだが……なぁ緑葉。お前こそ何かあるのか」
静寂な空気に耐えられなくなったのか、唐突に樹はこれからの予定についてのことを切り出す。
同様に、歩もそう思っていたようで、議題はこれからの行動についてどうするかということに移る。
「これからって全員一緒に行動するんじゃないの?」
「いいや、できれば俺様は単独行動を願いたいね」
「緑葉、案があるんだな」
「まぁね。とりあえずみんな自分のデバイスの地図を見てくれ」
全員に地図を見るよう即し、樹はこれからのことについて一案を出す。
「この島には人が集まる集落的なものが三つある。
一つは俺様たちが今いる西洋街。二つ目は廃村。三つ目は普通の市街地。
それに島の下部には遊園地もある」
デバイスをカチカチといじりながら樹は順に説明をする。
「それで鳴海と杏ちゃんは島の下部、俺様は上部を回るということだ。
ようは二つのグループに別れて、片方は島の下部を、もう一つは上部をということだ」
「効率良く別れて島の全体を回るということだな」
「そゆこと。俺様はこの西洋街の上部と世界樹、廃村を回ろうと思ってる」
「じゃあ俺らは西洋街の下部、遊園地、洞窟辺りを回ろう。
集合場所はどうする?」
「山小屋はどうだ?場所的にも中央だ。集まるにはわかりやすい位置だ。
時間は……そうだな、三回目の放送ぐらいか」
「いいぜ。直ぐに出発か?」
「いや、黎明ぐらいでいいだろう。慌てることもない」
「あたしの意見は無視?」
「「ああ」」
「アンタ達……後で覚悟しときなさいよ……」
ギリギリと口をかみしめ睨む杏に何処吹く風といった顔をしている歩と樹。
殺し合いの島でも自分を見失わない空間がここにあった。
三人とも普段の調子が戻ってきているようだ。
「さてと」
「ん、どこ行くんだ」
「トイレだ」
「おいちょっと待て!逃げる気だな!」
「何のことかさっぱり」
足早にリビングから出て行く歩にだんだんと顔が青ざめて良く樹。
後ろでは杏がポキポキと指を鳴らしている。
それはまるで般若の様。怖い怖い。女は怖い。
「おい、鳴海~置いてかないでくれ~」
「覚悟はできてるわね」
「絶対にノゥ!」
この後、リビングにひとりの男の悲鳴が轟いたのである。
◆ ◆ ◆
疲れた。
「でも、俺は運がいいんだろうな。最初にあったのが緑葉や藤林だったから」
これで殺し合いに乗ってた奴だったら早々にこの島から退場してかもしれない。
命をかけたゲームが初めてではないとはいえ、あまり慣れたくないものだな。
一応、ブレードチルドレンについては話すのをやめておいた。
下手に不安を煽ってもしょうがない。
手の平のかすかな震えが俺に伝わってくる。
「……情けない」
でも、頭はまだ働く。論理も紡げる。
その論理が俺に囁いている。
この殺し合いとやらにはきっと穴がある、と。いや、なくてはならない。
「そうだろ、兄貴……!」
鳴海清隆。あらゆる卓越した才能を持つ『神』のような存在。
そして、俺の全てを奪い去った男。
「いるんだろ、裏で嗤いながら」
全てが自分の手の平で踊ってるとも思っているんだろう。
「生憎と俺はそんな簡単に兄貴の策に踊ってなんかやんないぜ。
俺は俺のやり方で論理を紡ぎ、主催者と――兄貴を止める」
「例え、」
兄貴、あんたも踊り場へ引き込んでやる。
「俺の存在の全てを失うとしても」
どんなに辛くてもな。
◆ ◆ ◆
はぁ、疲れた。杏ちゃんはもっとお淑やかになるべきだね。
今はトイレへ逃げた歩に文句を言うためにトイレの前で待機している。
このリビングには今は俺ひとりということだ。
プリムラちゃん。最初のあのホールで頭が吹っ飛んだ。
付き合いは稟達よりは薄いけどそれでも知った顔だった。
無駄な心配をかけられたくないから二人には言ってないけど。
ショックも大きいだろう。楓ちゃんなんかは特に。一緒に暮らしていたらしいし。
俺様以外はもしかしたら……全員もう。
狂ってるのかもしれない。
その反面、信用もある。稟なんかは我慢強さだけは誰にも負けないとまで言ってるし。
真弓もそうだ。十年来の腐れ縁なんだ。信用してもいいだろう。
ただのほかの三人は……。
できれば考えたくないことだが、もしこの殺し合いに乗っていたら。
殺すって選択肢もあるだろう。
辛気くさいことだがな。だけど稟はちがうんだろうな。
稟にはそんなことできねぇだろうし。あいつはたぶん全部を救おうなんて考えるんだろう。
でも俺は稟じゃない。そこまで優しくもない。
覚悟は出来ている。
「殺すんだろうな」
デイバッグに入っていたこの銃で。
「例え、」
生きて帰るために。
「俺の周りの存在の全てを失うとしても」
どんなに辛くてもね。
【D-01民家/一日目・深夜】
【鳴海歩@スパイラル ~推理の絆~】
[状態]:健康
[装備]:S&WM686 Plus(7/7)
[道具]:支給品一式、ソードサムライX @武装錬金、ハヤブサ号@スパイラル・アライヴ
357Magnum予備弾63 、樹お手製の人物表
[思考・状況]
基本:この島からの脱出
1 脱出の方法を探る。
2藤林と一緒に島の下部の調査。第三放送時に山小屋で集合。
※ブレードチルドレンについて詳しく語っていません
【緑葉樹@SHUFFLE!】
[状態]:健康
[装備]:USSR スチェッキン APS(21/20+1)
[道具]:支給品一式、予備マガジン×2、樹お手製の人物表、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本:この島からの脱出
1島の上部を調査する。脱出の方法も同時に探る。
2知り合いとの合流?
3もし自分以外が乗っていたら……
※プリムラが自分の知り合いだと話していません
【藤林杏@CLANNAD】
[状態]:健康 、かなりイライラ
[装備]:LAR Grizzly(8/7+1)
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2、予備マガジン×4 、樹お手製の人物表
[思考・状況]
基本:この島からの脱出
1 歩をとっちめる!
2歩と一緒に島の下部の調査。第三放送時に山小屋で集合。
【USSR スチェッキン APS】
前線下士官や特殊部隊向けにソビエト軍が1951年に制式採用した機関拳銃。
連続発射が可能で、レートリデューサーのお陰で連射時のコントロールが難しくないという。
すごい拳銃。連射可能がすばらしい。ロシア警察や内務省の治安維持部隊を現役で使用中らしいです。特殊部隊も愛用しています。
だがその分、重くて片手撃ちが難しいという欠点も。
最終更新:2010年03月25日 14:42