「ここは地図では、おそらくD-5かしら…」
結城ノナがこの会場に飛ばされて最初に行った事は、現在地の割り出しだった。
幸いにして、ここは地図内でも限られた場所にしか無い広大な草原だった為、すぐに現在地をいくつかのポイントに絞り込む事が出来た。
さらに地図上の地理やコンパスを頼りに、自らの現在地を物の3分程でおおよそ特定する事が出来た。
「次は、私に支給された道具の確認を…」
ポニーテールにしている水色に近い青髪を揺らしながらデイバッグに手を伸ばし、中の支給品を確認していきながらも、その心中は大きな混乱、怒りや悲しみがない交ぜになっていた。
そしてその原因の大半は、あのホールでの出来事だった。
彼女は普通の人間ではない。
人が空を飛んでいたり、水を操ったり、周囲の時間を遅くしたりする光景が日常の、いわゆる「ファンタジーな世界」からやって来た、異世界人である。
その異世界、『フィグラーレ』の住人達の中でも、彼女は家柄、素質、能力共に最高クラスの存在と呼ばれていた。
だがその才覚と、彼女自身のぶっきらぼうな性格もあいまって、尊敬の眼差しを向ける者はいても、友人になりたいと言う者は殆どいなかった。
しかし彼女はそれを寂しいと思った事は無かった。
別に友などいてもいなくても何も変わらないし、勉強の時間が減るだけ。
彼女は心からそう思っていた。
だがもう一つの世界に行き、その考えは大きく変わった。
ライバルとの昼の交友、夜の競い合いは理屈抜きに楽しいひと時だった。
彼女のライバルである少女は、類まれなる才能を持ちながらも自分と出会った時は全くの初心者で、
初期はわざわざ彼女が指導しながらも競い合う、という何ともおかしな物だった。
そんなひと時を思い出している内に、自分の特徴的な眼鏡にいくつか水滴が落ちている事に気付いた。
「…っ!駄目よ、私はまだ、泣かない…」
そう自分に言い聞かせ、目元に溜まっていた涙を拭う。
そう、まだ自分は立ち止まり、泣き喚く訳には行かない。
あの心優しい親友、秋姫すももを無残な形で殺したこのゲームの主催者を引きずり出し、この手で制裁を与えるまでは。
自らの決意を新たにし、気持ちを引き締めると視界は自然とクリアに戻っていった。
そして再び支給品の確認を行おうとしたのだが。
「殺す…。」
誰かの呟き声が聞こえた。
(…!)
この草原は草が長く伸びてるポイントがあり、今ノナはそこに隠れていたのだが絶対に見つからない保証等何処にも無い。
だが、今この場から動くのも、自分から居場所を知らせるのと同義。
先ほどの呟きからして、どう考えても友好的な人間とは思えない。
隠れているのを見つけられても、逃げて捕まっても、ロクな目に会わないだろう事は容易に想像できた。
どちらを選ぶも命がけ。
そしてノナは、
(…もうしばらくここに隠れていましょう。)
そう決断し、この殺気を出している存在を何とかやり過ごそうと息を潜めていると、また何かをぶつぶつと呟いている声が聞こえた。
「殺す…殺す……全て殺す………我を…この魔人ザビエルを封じた忌々しき日本人共も…大陸に住まう生き物も…我を助けに来なかった魔人達も…」
(日本人に封じられた?魔人?一体何を言って…)
そこまで考えた所で、ノナの思考は中断された。
「皆殺しだアアアアアァァァァアアァアアア!!」
凄まじい、この世全てを呪うかの様な怨嗟の叫びが響いた。
そして、
「まずは貴様から血祭りに挙げてやるうううぅぅぅ!!」
そう叫ぶと同時に、ノナの隠れていた草むらが、一瞬で切り裂かれた。
当然、その場にいたノナは見る影も無く、血と肉が巻き散らかされた凄惨な光景が―――――
無かった。
「ぬぅっ!?」
その一撃はノナの居た草むらのみならず、その周囲の地面にまで届き、その部分だけ小規模の地割れが起こったかの様な惨状となっていた。
だが、そこにあるべきノナの死体は存在しなかった。
予想外の光景に驚愕する
ザビエルの背後の草むらで、草を掻き分け移動する音が聞こえた。
「そこかああぁぁああ!!」
再び一閃。
だがそこにもノナの姿は無い。
そして今度は左側から草を掻き分ける音。
「ぐ、ウグガアアァァァァ!ちょこまかとおおおぉぉぉぉ!!!」
そう叫び、三度自らの拳を叩きつける。
そして、ミシィ、という音が響いた。
確かな手応えだ。
だが、肉にしては硬すぎる。
「ぬぅ…!?」
自分が叩き潰した物をよく見ると、それは何か、小人のような機械だった。
周りにはおそらくカツラだろう、金の毛らしき物が散乱していた。
そして、
『ギー…ナニスンネ……ガガー…』
等と声を発したと思った次の瞬間、周りから同じ様な機械が2体出て来た。
そして3体の機械は一斉に光を放ち―――
「どうやら引っ掛かってくれたみたいね…」
爆発音の響いた地点からやや離れた地点から、ノナは一部始終の光景をミニモニター越しに見ていた。
ノナに支給されていた支給品【ミニロボカイ×3&映像モニター】、これの動作テストをしていた所、今の人間が襲ってきたのだ。
(いえ…正しくは違うわね。)
モニター越しに確認できた襲撃者の風体を思い出しながら、ノナはその場から離れていく。
それは明らかに人間ではなかった。
身体の周りから黒いオーラの様な物を放出し、下半身が無い状態で浮遊しながら移動していたその姿、そしてあの異形の顔立ち。
あれを人間だと言える人間は精神科に行ったほうがいいだろうと思いながらノナは草原地帯から離脱して行く。
(あんなのが他にもいるのかも知れないと思うと、気が滅入ってくるわね。)
あの爆発ではおそらく助からないだろう。
ならば今の音を聞きつけた他の襲撃者が来る前にここから離脱するしかない。
明らかに
殺し合いに乗っていたザビエルに対して、ノナは一切謝罪の気持ちを抱かなかった。
「…それにしても、こんな早くから失っちゃうとは思わなかったわ。」
内心歯噛みしながら呟いた。
あの支給品があれば偵察、人相の把握、他参加者の動向調査等に使う事もできたろうに。
あれは間違いなく、『当たり』の支給品だった。
それを始まってすぐに失う事になり、ノナは落胆の気持ちを隠せないでいた。
「それに、指輪…」
そう呟き、自分の指に視線を移す。
そこには常に肌身離さず持っていた指輪が無くなっていた。
「…この会場に、あるかしら…?」
祈るような気持ちで呟きながら、ノナはこのエリアから脱出していった。
【D-5/草原/一日目/深夜】
【結城ノナ@ななついろ★ドロップス】
[状態]: 健康
[服装]: 私服
[装備]: 無し
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×2(確認済み)
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊
0: 別エリアへの移動
1: 主催者に対抗できる力を持つ人間を集める。
2: 撫子が心配(二重の意味で)
3: 指輪の捜索
3体のミニロボカイが爆発した跡地。
そこに怪物――魔人ザビエルは何事も無かったかのように存在していた。
否。先程と違うことが一つだけあった。
ザビエルの形相が、先程よりも一段と激しく憎しみの色を増していた。
「お、のれ…我を謀ったな……ク、ククククク…」
ザビエルは、殆どダメージを受けていなかった。
その原因は、この魔人が身に包んでいる、あるバリアが爆発のダメージを抑えたのだ。
無敵結界。
ある特定の存在が無い限り、あらゆるダメージを全て無効化する最強のバリア。
制限により弱体化されてはいる物の、その防御力は凄まじい。
あの程度の爆発等、寄せ付けるはずも無い。
「逃げられると思うのか、人間風情が…」
やや離れた所でここから離れていく人間がいたのを、この化け物は気付いていた。
「この我を、ここまでコケにしておいて…逃げられると思っているのかアアァァァ!!」
絶叫し、疾走する魔人。
間にいる者は全て殺す。
目指すは今逃げた人間。
捕まえた暁には嬲り、弄び、四肢を切断し、絶望に絶望を重ねてから殺す。
「フハハハハハハ、アーハハハハハハー!!!」
全てを憎む魔人は、ただ全てを殺す為に夜の草原を駆ける。
なぜ日本人とランス達に封印された自分が此処にこうして存在しているのか、などという疑問すら持たず。
【魔人ザビエル@ランスシリーズ】
[状態]: 憎悪、無敵結界展開中
[服装]: ザビエルの服
[装備]: 無し
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×3
[思考]
基本:皆殺し
0: あの人間を捕まえる。
1: 日本人は特にいたぶってから殺す
2: 同じ魔人だろうが殺す。
[備考]
※参戦時期は、戦国ランス謙信ルートED後からとなります。
※名簿を確認していません。(というよりデイバッグを背負っている事に気付いていません)
※転送される直前まで魔血魂状態で
オープニングホールにはいませんでした。その為見せしめのケイブリスの事を知りません。
※B-6/草原の一部に、ミニロボカイの残骸が散乱しています。
※B-6周辺に爆発音が響きました。
最終更新:2010年03月06日 01:19