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ワタシガヤルベキコト

85話「ワタシガヤルベキコト」


「……!!」

私はふと意識を取り戻した。
そして、周囲を見渡すと、そこは森林地帯が眼下に広がる崖の上。
首には金属製の首輪。手にはM79グレネードランチャー。

「うあ……あ……」

そして、目の前には…怯えた表情で私の事を見ている猫族の幼馴染、ケトルがいた。

間違い無い、この光景は見覚えがある。
私が――あのセイファート主催の殺し合いに呼ばれる直前、この崖から落ちる前。
いなくなった英人の居場所を傍にいたケトルに問い詰めて、逃げ出したケトルを追い掛けていた時。
今、正にその瞬間に、私はいる。

――戻ってきたのだ。



ほとんど漁夫の利の形で優勝を収めた私は、あの後ホテルでセイファートからよこされた迎えの人達と合流し、
目隠しをさせられ、多分ヘリか何かに乗せられて、主催本部に連れて行かれた。

次に目隠しを取った時、私はどこかの城の応接間のような部屋にいた。
周りには西洋風の鎧に身を包んだ屈強そうな兵士達。
そして――。

「おめでとう、フラウさん」

この殺し合いの主催者である、黒い服を着た狼族の女性、セイファートが小さく拍手しながら立っていた。


そして、セイファートから「何か願いはある?」と聞かれ、私はこう答えた。

「私を、前回の殺し合いの、意識を失う直前の時に戻して欲しい」

それを聞いたセイファートは少し意外そうな顔をした。

「別にいいけど、いいの? 折角優勝したのにまた殺し合いなんて。
その殺し合いで死んだら今度こそ本当に終わりよ?」
「……やらなければならない事があるの」

私は、前回の、クラスメイトが全員参加させられていた殺し合いで、
大切なパートナーである、玉堤英人を信じる事が出来なかった。
それで、幼馴染で親友でもあるはずのケトルを追い詰めてしまって――。
だから、やり直したかった。自分の罪を償いたかった。
勿論、今度も生きて帰れる保証なんてどこにも無い。
でも、死はもう覚悟の上だ。私は恐らく、もう一回死んでいる。

今度こそ、英人や、由佳ちゃんや、ケトル、クラスのみんなの助けになりたかった。

「……どうやら決意は固いようね」

セイファートが少し呆れたような、しかし納得したかのような表情を私に向ける。

「……分かったわ。そこまで言うのなら。
でも、言っておくけど、私は戻してあげるだけ。その後はもう一切干渉しない。
もう二度と会う事も無いと思うけど、それで良い?」
「……」

私は黙って頷く。もう覚悟は決めた。
もうこの際、セイファートがこの殺し合いを始めた理由なんてどうでも良かった。
あの時に戻れるなら、やり直しが効くなら――!




そして、今、私は戻って来た。

「フ、フラウ……!」

ケトルが今にも泣き出しそうな顔で私の事を見詰めている。
それを見て、私は心臓が締め付けられるような思いに駆られた。
やはりあの時の私はどうかしていたんだ。
大切な幼馴染をこんなにも追い詰めて。こんなにも苦しめて。

――ああ、そうだ。私は知らない内に、ケトルの事を酷く傷付けていたのかもしれない。
思い起こせば、この殺し合いでケトルと英人に再会した時も、
その後、二人と色々話していた時も、そして、英人に気絶させられて、
目を覚ました時もその後も、私はケトルの事をずっと二の次にしていた。
ケトルも、英人や由佳ちゃんと同じぐらい、大切な存在だった、はずなのに。

でも、今は違う。

私はケトルに向けていたグレネードランチャーの銃口を下ろした。

「…え……?」

思いも寄らなかったのだろう。ケトルは何が起きたか分からないといった間抜けな声を出す。

「…ごめん、私、どうかしてたみたい」
「フラウ……?」
「私、馬鹿だよね。英人や由佳ちゃんの事ばっかりで、あなたの事ちっとも考えていなかった。
ケトルだって私にとっては大切な幼馴染なのに、私、私――」

次第に涙が溢れて来た。止める事が出来ない。
そして、とうとう私は地面に座り込んで泣き崩れてしまう。

「フラウ!」

ケトルが私に駆け寄ってきた。
こんな私でも、気遣ってくれるの?

「……ケトル、ごめんね……ごめんね……!」
「いいんだ、いいんだよフラウ……」

私はケトルの胸を借りて、しばらく泣いた。


数分ぐらいした後、やっと落ち着いてきた私は、涙を制服の裾で拭いながら立ち上がった。
いつまでも泣いてはいられない。
英人と、由佳ちゃんを捜さないと…そして、この殺し合いから逃れる手段を捜すんだ。
じゃないと、ここに戻って来た意味が無い。

「ケトル……行こう」
「……うん!」

私とケトルは禁止エリアが広がる森から離れ、崖を後にした。


(絶対……今度は、間違える訳にはいかない!)




これより、通称「自作キャラバトルロワイアル」は、本来のそれとはまったく別の結末に向かって動き出す事になる。
その最中、フラウやその知人達がどういった行動を取ったのか、どういった結末になったのか。

それはまた別のお話である。




【個人趣味バトルロワイアル  完】









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最終更新:2010年02月28日 22:51
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