ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2065 ゆっくりシティの攻撃
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ankoss
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・「お受験あき」と命名させていただきましたので、ちょっと気合を入れて長編作品に挑戦してみました
・登場する団体等は全て架空又は作者オリジナルの設定です
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ある夏の日、町から野良ゆっくりが消えた。
町の人間はゆっくりの被害が無くなったと喜んだ。
しばらくして、野生のゆっくりも姿を消した。
山に入っても空の巣穴があるだけで、ゆっくりの姿はどこにも見えない。
人々は不思議に思った。
だが、数日でその疑問も忘れられた。
野生のゆっくりがいてもいなくても人間の生活に変わりはないから……
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日本一大きな山、富士山。
そのふもとに広がる樹海の中に、巨大な洞窟があった。
どこからともなくゆっくりが現れて、その洞窟へと入っていく。
ザワザワ
ガヤガヤ
洞窟の中には巨大な地下空間が広がっていて、大量のゆっくりが中を移動している。
「長旅ご苦労だった!一般ゆ民は奥の住居スペースへ!
戦闘ゆ隊は手前の通路を左へ!」
係りのゆっくりが入ってきた群れをさばいている。
その洞窟の奥の奥、最深層にぱちゅりー、ドスまりさ、みょんがいた。
それぞれ金色のバッヂをつけていたが、認定所や国の支給しているバッヂとは違う形である。
「むきゅ、現在の集合状況は?」
「みょん!移動状況ですが、東北が60%、関東が80%、中部が70%、中国が50%完了しています。
あと1ヶ月程でほぼ全ての群れの移動が終了すると思われます。
北海道、四国及び九州は和平路線を望む、武装蜂起には協力できない、との事です。」
「へんっ!あの腰抜けども、一生人間の飼い物で満足してるつもりなのか?」
「ドス、落ち着いて。人間に逆らえない彼らを解放するのも私達の役目なのよ。」
「わかってるぜ……。訓練の様子を見てくる。」
ドスまりさが部屋から出て行った。
「……なんだか落ち着かない様子でしたね。」
「ドスの気持ちもわかるわ。この計画に全ゆっくりの未来がかかってるんだもの。
ドスの事は攻めないであげて。」
「わかってますよ、ぱちゅりーさん。」
「…みょん、あなたがいてくれて本当に助かるわ。」
「わたしもですよ。」
ドスまりさはある部屋へと入った。
「状況はどうだ?」
入り口に立っていたちぇんが答える。
「訓練は順調です。4割程ならすぐに実戦へ投入できます。」
ドスまりさが部屋の奥にあるガラス窓を覗く。
《《《《 セイッ!!!!ハァッ!!!! 》》》》
ガラスの向こうでは、1000を超えるだろう大量のゆっくりが整列して、竹や木の枝を持って素振りをしている。
「ちゃんと休息もとらせているだろうな?」
「はい、健康管理はきっちりと行っています。」
「よし、春には全ての兵士を使えるようにしてくれ。」
「はい!」
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人間は、たまにゆっくりの集団失踪についてテレビ等で議論した。
「本州のゆっくりだけがいなくなった」
「生存能力が弱まって消滅した」
「飼いゆっくりの被害が減ったからいい事だ」
所詮はワイドショーの話のタネ。
ゆっくりが全国から消えた現象。
人々はこの怪現象をほとんど気にしなかった。
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「みょん!報告します!
群れの移動が98%完了しました!残り2%は事故等で到着できなかった数だと思われます。」
「むきゅ、現時点で移動作業を終了。
一般ゆ民には冬に備えて食料の調達作業を。」
「俺も報告するぜ。
通常戦闘ゆ隊は80%が使用可能。
特殊ゆ隊は即出動可能。でも、数が少ないから気をつけるんだぜ。
すぃーゆ隊は何も問題なく、いつでも出撃可能だぜ。
レンジャーゆ隊は装備の調達が遅れてるけど、実戦には出せるぜ。
コマンドーゆ隊は、熟練部隊は使用可能。新兵はまだまだ鍛える必要があるぜ。」
「わかったわ。春が来る頃には全勢力が使えるのね。
みょん!全てのゆっくりを広場に集めて!」
「了解しました!」
「…ついにこの時が来たんだな。」
「ええ、この戦いでゆっくりは真の自由を得るのよ。」
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広場にはとてつもない数のゆっくりが集まっていた。
その数は軽く見積もっても数万匹、いやそれ以上にいるかもしれない。
「むきゅ、みんな!今回の呼びかけに応えてくれてありがとう!
ぱちゅりーはとってもうれしいわ!
最近、ゆっくりを虐待する人間さんが増えて、ぱちゅりーはとっても悲しかったわ。
どうして何も悪い事をしてないゆっくりを一方的にいじめるの?
時には無差別に殺傷して群れを全滅させたりもする人間さんに、ぱちゅりーはとっても怒ってるわ!
ゆっくりがゆっくりしていて何がいけないの!
そんな人間さんとは一緒に暮らしていけないわ!
だから、ぱちゅりーは決めたの!
ゆっくりのゆっくりによるゆっくりの為の独立国家を設立する事を!
今回の作戦で、とっても多くのゆっくりが犠牲になるかも知れないわ。
でも、このままずっと人間さんの奴隷でいるのはいけないわ!
だから、みんな!ぱちゅりーと一緒に戦って!
ゆっくりできる未来を共に勝ち取るのよ!!
ゆっくりできる未来を!!!」
《《《ゆっくりできるみらいをぉー!!!》》》
広場に集まったゆっくりは、ぱちゅりーの演説によって興奮していた。
やっと人間から開放されて、自由なゆっくりになれる。
もう人間におびえる事もないんだ、と。
みんな、思い思いに明るい未来を想像していた。
「これからゆっくり頑張ろうね!」
ガヤガヤ
「うん!もちろんだよ!!」
ガヤガヤ
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「お疲れさまだみょん。」
「むきゅ…もう後戻りはできないわ。このまま前に進むしかないわね。」
「途中で止まっちゃいけないぜ。絶対に勝って、自由を勝ち取るんだぜ。」
「むきゅ、ドスやみょんがいてくれると心強いわ。」
「……それで、行動はいつごろ開始しますか?」
「冬の終わり……春が来たら一斉に攻撃を開始するわ。
とにかくまず、一つでも人間の村を奪わないと…。」
「春…か。早く戦いを終わらせて、ゆっくりしたいぜ…。」
「そうなるように私達が行動するんですよ。」
「むきゅ、この作戦がここまで来るのにたくさんの時間がかかったわ。
何が何でも人間から自由を勝ち取って、ゆっくりできる世界を造るのよ。」
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野良ゆっくりが街から消えて半年。
加工所を初めとする対ゆっくり行政機関は予算が下りずに苦しんでいた。
彼らの主な事業である「”有害な”ゆっくりの一斉駆除」の仕事がここ半年、まるっきり無くなってしまったのだ。
メディアでは加工所への補正予算を打ち切れという声が上がり、職員は自分の首が切られる事を心配していた。
人間は、ゆっくりへの対処方法を少しずつ忘れていった。
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雪が溶け、春がやって来た。
洞窟の奥の部屋に、ぱちゅりーと数匹のゆっくりの姿があった。
「むきゅ、偵察ゆ隊からの報告を。」
「報告します。北にある人間の村についてですが…。
人間の数は多く見て50人以下、畑には野菜がたくさんあるとの事です。
天候ですが、これから数日は晴れが続くとの事です。
一斉攻撃を仕掛けるなら数日以内がよろしいかと。」
「一般ゆ民の状況は?」
「食料庫を荒らしていたグループを捕獲、処刑しました。
それ以外は問題はありません。」
「戦闘ゆ隊はどうなってるの?」
「全ゆ隊の出撃準備が完了。
いつでも出れるぜ。」
「むきゅ、わかったわ…。
明日の朝、北の村に一斉攻撃を仕掛けるわ!!」
「「「了解!!!」」」
集まっていたゆっくりが次々と部屋から出て行く。
「ついに始まるのですね。」
「ええ、明日がゆっくりにとって新たなる一日になるのよ。」
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富士山のふもとに広がる樹海。
その近くに小さな農村があった。
いや、正確には農村だった村だ。
ほとんどの住民は他の地域へと移り、残っているのは農家の住民と市役所の役員だけだ。
市役所の中に若い男性と中年の男性、2人の役人がいる。
『この村もほとんど人がいなくなりましたね。』
『今の時代、こんな何も無い村に住むメリットなんて無いからな。』
『加工所も取り壊し決まっちゃいましたしね……この村、あとどれ位で潰されちゃうんでしょうね。』
『まあそう言うな。おかげで俺達は座ってるだけで給料がもらえるんだからさ。』
『はは、そうですね…。』
と、一人の男性が役所に入ってきた。近所の農家の人だ。
『あいつらがまた畑を荒らして困ってるんですよ。急いで来てください。』
『またあいつらか。しつこいやつらだな……行くぞ。』
『はい。』
車で男性の畑へ向かう三人。
畑に着くと、数匹のゆっくりが作物を荒らしていた。
「ゆゆっ!にんげんさんがきたんだぜ!」
「さくせんどおりにこうどうするんだよ!」
「しくじるんじゃないぜ!」
人間に気づいたゆっくり達は近くに停めてあったすぃーに乗って逃げ始めた。
『最近どんどん調子に乗ってきてるな…。おい、ちょっとこらしめてやれ。』
『わかりました。』
逃げたゆっくりを車で追う若い役員。
「ちゃんとついてきてるよ!」
「よし、あそこまでにげきるんだぜ!」
林道に逃げ込むゆっくり達。
『日本中でゆっくりが消えてるのに、どうしてこの村には野良ゆっくりがいるんだ…。
今度加工所に一斉駆除を依頼しないとな…。』
役員が林道に差し掛かったその時
ズガガガガ…ドゴォ!!!
『!?』
走っていた道路に突然穴が開き、車が落ちてしまった。
エアバッグが作動し、役員を衝撃から守る。
突然の出来事に、一時思考が停止する役員。
『いってぇ…何が起きたんだ!?』
車から出ると、車が落とし穴に落ちていた。
この状態では車を動かす事はできない。
『なんだこの穴は……地盤か?』
役員が原因を考えていると
「警告する!人間さんはただちにこの村から出て行ってね!!」
と、どこからか声が聞こえてきた。
この声はゆっくりの声だ。
『お前らの仕業か!こんな事して、どうなるかわかってるんだろうな!』
「もう一度警告する!人間はすぐに村から出て行け!!」
『いい加減にしろ!あんまり調子に乗ってんじゃねーぞ!!』
「警告はした!これより攻撃を開始する!!ドススパーク、発射!!!」
ドススパークだと?
役員が辺りを見回す。
ゴオオォォォ……
横の方から空気が割れるような音が急速に近づいてくる。
何かヤバイ、
直感で役員は走って車から離れた
次の瞬間
キイィン
ドゴオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
レーザーのような強力な光が車に命中し、大爆発を起こした。
役員は爆風で数メートル吹き飛ばされた。
『……いってぇ……、…何なんだ!?』
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
起き上がって周囲を見回すと、林道の奥からゆっくりの大行進がやって来た。
4列に並んだ大部隊は、その隊列を崩さずにこちらへとやって来る。
その配列はテレビ等で見る軍隊の行進とよく似ていた。
『なんだあれ……あれがゆっくりだってのかよ………』
役員があっけに取られていると
「みょーーーん!!!」
木に紐をくくりつけたゆっくりが、ターザンのようにこちらへと飛んでくる。
口にはカッターの刃が加えられていた。
慌てて避けようとする役員。
スパッ
『っ…!!』
顔を切られる役員。
頬から血が流れているのがわかる。
「みょん!!」
「みょーん!」
「みょんっ!」
周囲から次々とカッターを加えたゆっくりが飛んでくる。
こいつら、本気で俺を殺しにかかってきてる…!
役員は慌てて村へと走っていった。
村では、先ほどの二人が待っていた。
『役人さんや、大丈夫かい!』
『おい、さっき爆発があったけどどうしたんだ!』
若い役員は息を切らしながら話す。
『武装したゆっくりの集団がこの村にやってきます!!警報を鳴らして、住民を避難させてください!!』
『ゆっくりだと!?そんな事で警報を鳴らすのか!』
『普通のゆっくりじゃないんです!!まるで軍隊のような…いや、ヤツらは軍隊そのものです!!』
走ってきた役員の顔からは血が流れている。
さっきの爆発といい、普通のゆっくりにここまで派手な攻撃はできない。
『……よし、俺は市役所に戻る!お前は住民を非難させろ!!』
中年の役員が市役所へと走り、警報を鳴らした。
《緊急事態です!武装した凶悪な集団がこの村にやってきます!ただちに避難してください!》
混乱する住民に、若い役員が非難を指示していく。
血を流す役員の必死な形相に、住民は次々と避難していった。
幸い、山中にあるこの村では、一家に最低一台は車があったので全住民が非難するのに時間はかからなかった。
そして全ての住民が避難した頃、林道の方からゆっくりの軍隊が姿を現した。
『ヤツらが来ました!住民は全員避難しましたから、早く逃げましょう!!』
若い役員が中年の役員をトラックに乗せて走り出す。
「ゆっ!まだ人間がいたか!石投ゆ隊、用意!!」
銀色のバッヂをつけたゆっくりが隊列に指示する。
「目標、前方の車!狙え!……打てぇーっ!」
銀バッヂの声で、一斉に石が投げつけられる。
ビシッ ガツッ パシッ
幾つか石がトラックに当たり、フロントガラスにヒビが入る。
『あれがゆっくりなのか!?なんだこの統率の良さは!!』
『だから言ったでしょう!アイツらは軍隊だって!!』
『とにかく逃げるんだ!』
アクセルを強く踏み込み、更に速度を上げる。
『只事じゃないぞこれは……県庁に連絡する必要がありそうだ。下手したら警察予備隊まで……』
ブロロロロロロ………
「投石、やめ!」
車が離れていくのを確認して、銀バッヂが指示を出す。
「人間は全ていなくなりました。指示を。」
銀バッヂが金バッジをつけたドスに指示を求める。
「一般ゆ隊は全部の家を調べろ。食料は見つけても食べるな。
もし食べたゆっくりがいた場合は、その場で制裁してかまわん。
司令部に伝達、人間の掃討に成功。本部からの指示を待つ、と。
周囲の警戒、怠るなよ。」
「了解。ちぇん、今の内容を本部に伝えてくれ。」
「りょうかいっ!」
銅バッヂをつけたゆっくりがすぃーに乗って森の奥へと走っていく。
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富士樹海の中にある洞窟。
その中に銅バッヂを付けたゆっくりが入ってきた。
「先攻ゆ隊より連絡!
ドスドスドス、ワレ奇襲ニ成功セリ!」
「むきゅ!それは本当なのね!」
部屋に集まった幹部ゆっくり達の顔に笑顔が浮かぶ。
「はい!本部より指示を待つとの事です。」
「わかったわ。ちぇんは村に戻ってすぃーゆ隊をこっちに回して。
みょん!すぃーゆ隊到着と同時に一般ゆ民を村へ移動させるわ。準備させておいて。
私はちぇんと一緒に村へ行って向こうに本部を立てるわ。」
「わかりました。…やりましたね!ぱちゅりーさん!」
「ええ!…でもこれからが大変よ。」
「そうですね……。総員、ただちに一般ゆ民の移送準備にかかれ!」
みょんの掛け声と同時に、全てのゆっくりが部屋から出て行った。
総司令ぱちゅりーはちぇんのすぃーに乗って村へと向かった。
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『……つまり、高度に組織化されたゆっくりが村を襲った……と。』
『はい、その通りです。』
ザワザワ……
ゆっくりの攻撃に合った二人の役員は、県庁の会議室にいた。
その中には、県警のトップや県知事の顔まである。
『しかし、君が動揺していてただのゆっくりを大げさに捕らえたのではないのかね?』
70代と思われる県議会員が若い役員に対して疑問の声を上げた。
『いいえ、私は確かに見ました。あの統率されたゆっくりの集団は、通常のゆっくりとは明らかに異なります。』
『しかし、そんなゆっくりの話なんて聞いた事がない。
車で事故を起こした時の衝撃で、どこか頭を打ち付けたんじゃないかい?』
ハハハハハ……
会議室の数名が笑う。
『私は冗談など話していません!知事、警察あるいは警察予備隊の出動要請を提言します。』
『予備隊だと!?冗談を言うな!』
先ほどの県議会員が大声を上げる。
『落ち着きなさい。いきなり予備隊を動かすのには動機が不十分すぎる。
まず、県から職員をその村に派遣する。それから今後の対応を決めよう。何か異議は?』
県知事は落ち着いた口調で提案をした。
『……誰も異論は無いようだね。これで会議を終了とする。』
会議室から次々と人が出て行く。
若い役員は悔しそうな顔をしている。
『くそっ!いつも後手後手の対応をしやがって…!』
『落ち着け。知事の言う事ももっともだ。
普通、ゆっくりに襲われたなんて言っても誰も信じないだろ?』
『そうですけど……!』
『俺もあのゆっくりには危険性を感じてる。
知事はしっかりした人だ。冷静に状況を見てくれるだろう。』
『……。』
県庁の廊下で、二人は窓から空を見つめた。
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村は、すっかりと様変わりしていた。
ありす種によるゆっくり専用のコーディネートによって、村はゆっくり専用の村と化した。
廃屋はそれぞれのゆっくりが住める家に。
扉の付いている倉庫や空き家は食料庫として使われている。
村の周囲には武装したゆっくりが外敵を警戒している。
ゆっくりにとって、人間のいないこの村は楽園そのものだった。
村の市役所には、数千匹のゆっくりがつめかけていた。
広場の壇上に、ぱちゅりー、みょん、ドスまりさが立っている。
「まず、私からいいたい事があるわ!ありがとう!!
みんなが力を貸してくれたおかげで、遂に私達ゆっくりの町を手に入れる事ができたわ!
ここは、人間さんからいじめられたりする事もない、ゆっくりがゆっくりできる最高の場所よ!
宣言するわ!この町を、ゆっくり史上初の町”ゆっくりシティ”と命名するわ!」
キャーキャー ワーワー
「ありがとう!
でも、これからも人間さん達は私達のゆっくりプレイスを狙って攻撃してくるかも知れないわ。
だから、みんな一致団結してこの町を守りましょう!!」
《《《《賢将ぱちゅりーと共にあれーーー!!!!》》》》
ゆっくりシティに、ゆっくり達の歓喜の声が響いた。
「ドスからも話がある!
ぱちゅりーが言ったように、人間が攻めてくる可能性が大きい!
この町を守る為には、もっとたくさんのゆっくりの力が必要だ!
町を守ろうという勇気あるゆっくりは、是非戦闘ゆ隊に入隊してもらいたい!!」
《《《猛将ドスに忠誠をぉーーー!!!》》》
若いゆっくり達が雄叫びを上げる。
「むきゅ!みんな、明日からまた忙しい日が続くわ!
今日はゆっくり休んでちょうだい!
これでぱちゅりーのお話をおしまいにするわ!」
ガヤガヤ
「ぱちゅりーさんはすごいね!ほんとうににんげんにかったよ!」
ガヤガヤ
「これからずっとゆっくりできるね!!」
………
騒ぎが落ち着いたゆっくりシティの司令部(市役所)に、銀バッヂと金バッヂをつけたゆっくりが集まっていた。
「…幹部はみんな集まったわね。」
「俺から説明するぜ。
これから、人間による反撃行動が予想される。
人間はゆっくりを弱いと思ってるから、最初の反撃は少人数で来るだろう。
その人間を徹底的に打ちのめす!
そうすれば人間はゆっくりの恐ろしさを知って、反撃をしなくなるはずだ。」
「そこで、今回は人間がこの村に入る前に攻撃を仕掛けます。
この村に入ってくるには、2ヶ所の道路を通るしかありません。
人間は南側の道からすぃーを使って侵入してくると予想されます。」
「この道には、両側が崖になった部分がある。
ここで人間のすぃーを止めて、一気に攻撃を仕掛けるんだ。
具体的に説明すると、まず落とし穴を作ってすぃーを動けなくする。
人間がすぃーから出てきたら投石ゆ隊の一斉攻撃。
崖があるから人間はこちらに攻撃をする事はできないだろう。
人間が来た道を逃げ始めたら、特殊ゆ隊による斬撃で、人間の体に深手を負わせる。
人間がボロボロになったら、攻撃をやめて人間の群れに逃がすんだ。
人間を永遠にゆっくりさせてはいけない。あくまでも深手を負わせるだけだ。」
「むきゅ、この作戦が成功すれば人間は私達を恐れて攻撃をしなくなるわ。
そうすればその先の村も、私達の町にできるわよ!!」
「絶対に成功させるんだぜ!!」
「「「「了解!」」」」
幹部ゆっくり達は自分の持ち場へと向かった。
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ブゥーーーン……
森の中を、一台の公用車が走り抜ける。
中には三人の人間が乗っていた。
『あと数分で目的地に着きます。』
『うむ。』
『しかし県知事、ご自身が視察に行かれるのは危険だと思うのですが…。』
『あの若者の訴え、県議会にはない純粋な気持ちに聞こえたんだよ。
それにそのゆっくりとやらをこの目で見たいもんでな。』
『ですが……』
『なあに、ワシだって体力には自信がある。そこらの若者にも負けんよ。』
運転手と調査員、そして県知事を乗せた車はゆっくりに占領された村へと向かう。
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…………………………
「警戒中のコマンドーゆ隊より連絡!
こちらに向かってくる人間のすぃーがあるとの事!」
「数はいくつだ。」
「…一台です!」
「ついに来たか。
総員、配置に着け!人間がこちらへやってくるぞ!」
《《《《りょうっかいっ!》》》》
山の中には数百のゆっくりがうごめいていた。
指示を出しているのは金バッヂを付けたドスまりさ。ゆっくりの中では”猛将”と呼ばれている。
「すぃーが落とし穴に落ちるまで…5、4、3、2、1…」
ガゴガゴゴッ!!
『!?』
車に異様な振動が走る。
『どうしたんだ?』
『道路が所々陥没しているようです。走行には影響ありませんので、ご安心を。』
落とし穴の上を通過して車は走り続ける。
どうしたことか、落とし穴がちゃんと作動しなかったのである。
「!?どういう事なんだぜ!!」
「むきゅう!?落とし穴に落ちなかったのね。これは想定外だわ…」
「ぱちゅりー、どうするんだぜ!!」
ドスまりさがぱちゅりーをせかす。
「落ち着いて!
私達の目的は”人間に深手を負わす”事よ!
ドス!あのすぃーをドススパークで撃って!」
「よし!わかったぜ!!」
ドスが何かを口に入れてモゴモゴすると、ドスの体が輝いてゆく。
「モグモグ……当たれぇーーーーー!!!!」
ドスが車の方向に向かって口を開いた
瞬間
カッ
ズガアアアアアアアァァァァァァ…………………
ドスの口から閃光が走り、県知事の乗る車に直撃した。
車は炎上し、灼熱の炎に包まれている。
ガギャッ
車の扉を蹴り飛ばして、中から人間が出てきた。
『知事!!しっかりしてください!!!』
『…ぅう……』
二人の男が、年老いた男性を担いで車外へと脱出する。
全員腕や頭から血を流しているが、特に老人はぐったりとしていて重傷のようだ。
『このままじゃ知事が危ない!早く病院に!!』
老人を担いで、二人の男が走り出す。
「ぱちゅりー、これで良かったのか……?」
「ええ、想定通りの結果よ。
これ以上攻撃する必要はもう無い。
このまま人間が群れに帰れば、全て予定通りになるわ。」
ぱちゅりーの話を聞いて、近くにいた幹部ゆっくりの顔が少し明るくなる。
「攻撃用意!!!」
少し離れた場所から、特殊ゆ隊隊長、銀バッヂみょんの声が聞こえた。
「ちょっと!もうあれ以上攻撃は……」
「かかれぇーーーーーッ!!!!」
ぱちゅりーの呼びかけが聞こえる前に、隊長みょんは命令を下した。
《《《みょーーーん!!!》》》
隊長の号令と共に、特殊ゆ隊が一斉に人間目掛けて攻撃を仕掛ける。
『なんだコイツら!!』
『刃物を加えてるぞ!!!気をつけろ!!』
みょんの攻撃で更に出血量が多くなる人間達。
『知事だけは何が何でもお守りするんだ!!』
二人の人間は老人をかばいながら必死に走る。
『逃がさないみょん!!!』
『ここはみょん達のゆっくりプレイスだみょん!』
『”ゆっくりシティ”を奪おうとする人間は…死ねぇ!!』
特殊ゆ隊の攻撃は止まない。
彼らは極度の興奮状態となり、すでに暴走しかけていた。
人間はどんどん傷つき、弱っていく。
『やめろォ!!!!』
森の中に、ドスの声が鳴り響く。
特殊ゆ隊をはじめ、その場にいた全てのゆっくりがドスの方を見た。
『目的を忘れるな!!
ゆっくりシティ防衛が最優先事項!!!
人間は生かして群れに帰す!!!
お前ら、わかったか!!!』
ドスの鬼気迫る怒鳴り声で、全てのゆっくりが平常心を取り戻した。
人間達はいつの間にかいなくなっている。おそらく群れへと帰ったのだろう。
『むきゅ、人間は帰ったわ。
現時点をもって作戦を終了。総員、速やかに撤収。』
ぱちゅりーをはじめ、幹部ゆっくりの顔には少し陰があった。
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ダンッ!!
『バカモン!!』
県庁の会議室に、怒鳴り声が響く。
『落ち着いてください、副知事。』
『知事をはじめ、全員命に別状はないと言っていたじゃないですか。』
『そうですよ、これは不幸中の幸い…』
『そういう事を言ってるのではないっ!!!』
なだめようとする連中に一括を浴びせる副知事。
『いいか!たかがゆっくりに車2台!人間が4人もケガを負わされているんだぞ!!
これが民間人だったらどうしていたんだ!!!
しかもヤツら、村を強奪して”ゆっくりシティ”などと名前まで付けてるそうじゃないか!
こんなバカげた事が今まであったか!!どうだ!!!!』
副知事が近くの連中を睨み付ける。誰も返事をする事ができない。
『本庁に警察予備隊の緊急出動を要請しろ!これ以上人的被害を増やすわけにはいかん!!』
その頃、病院では…
『知事!大丈夫でしたか!!』
『ああ、この通り元気だよ。』
ベッドの上で横たわる知事の姿を見て、若い役員が足早に駆け寄る。
『確かにあのゆっくり達は普通じゃなかったな。もっとも、被害を受けたのが私で良かったがね。』
『そんな、重傷なのに何言ってるんですか…!』
『はっはっは…。しかし、君の言った通りだ…。今の高齢化した議会では決断が遅すぎる…。
…いや、私が老いただけなのかも知れないな。』
『そんな事はありません!知事は危険な場所へ自ら赴きになられました。
そんな度胸のある人間が、この県議にたくさんいるとは思えません。知事は私達が誇れる知事です…。』
『若者にそう言ってもらえるとうれしいねぇ、はっはっは…。』
県知事まで重傷を負った今回の事件。
各メディアはこの事件を”ゆっくりシティの攻撃”としてトップニュースで取り扱った。
世論はゆっくりシティの攻撃、殲滅を支持した。
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・後編「ゆっくりシティの攻防」に続きます
・登場する団体等は全て架空又は作者オリジナルの設定です
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ある夏の日、町から野良ゆっくりが消えた。
町の人間はゆっくりの被害が無くなったと喜んだ。
しばらくして、野生のゆっくりも姿を消した。
山に入っても空の巣穴があるだけで、ゆっくりの姿はどこにも見えない。
人々は不思議に思った。
だが、数日でその疑問も忘れられた。
野生のゆっくりがいてもいなくても人間の生活に変わりはないから……
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日本一大きな山、富士山。
そのふもとに広がる樹海の中に、巨大な洞窟があった。
どこからともなくゆっくりが現れて、その洞窟へと入っていく。
ザワザワ
ガヤガヤ
洞窟の中には巨大な地下空間が広がっていて、大量のゆっくりが中を移動している。
「長旅ご苦労だった!一般ゆ民は奥の住居スペースへ!
戦闘ゆ隊は手前の通路を左へ!」
係りのゆっくりが入ってきた群れをさばいている。
その洞窟の奥の奥、最深層にぱちゅりー、ドスまりさ、みょんがいた。
それぞれ金色のバッヂをつけていたが、認定所や国の支給しているバッヂとは違う形である。
「むきゅ、現在の集合状況は?」
「みょん!移動状況ですが、東北が60%、関東が80%、中部が70%、中国が50%完了しています。
あと1ヶ月程でほぼ全ての群れの移動が終了すると思われます。
北海道、四国及び九州は和平路線を望む、武装蜂起には協力できない、との事です。」
「へんっ!あの腰抜けども、一生人間の飼い物で満足してるつもりなのか?」
「ドス、落ち着いて。人間に逆らえない彼らを解放するのも私達の役目なのよ。」
「わかってるぜ……。訓練の様子を見てくる。」
ドスまりさが部屋から出て行った。
「……なんだか落ち着かない様子でしたね。」
「ドスの気持ちもわかるわ。この計画に全ゆっくりの未来がかかってるんだもの。
ドスの事は攻めないであげて。」
「わかってますよ、ぱちゅりーさん。」
「…みょん、あなたがいてくれて本当に助かるわ。」
「わたしもですよ。」
ドスまりさはある部屋へと入った。
「状況はどうだ?」
入り口に立っていたちぇんが答える。
「訓練は順調です。4割程ならすぐに実戦へ投入できます。」
ドスまりさが部屋の奥にあるガラス窓を覗く。
《《《《 セイッ!!!!ハァッ!!!! 》》》》
ガラスの向こうでは、1000を超えるだろう大量のゆっくりが整列して、竹や木の枝を持って素振りをしている。
「ちゃんと休息もとらせているだろうな?」
「はい、健康管理はきっちりと行っています。」
「よし、春には全ての兵士を使えるようにしてくれ。」
「はい!」
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人間は、たまにゆっくりの集団失踪についてテレビ等で議論した。
「本州のゆっくりだけがいなくなった」
「生存能力が弱まって消滅した」
「飼いゆっくりの被害が減ったからいい事だ」
所詮はワイドショーの話のタネ。
ゆっくりが全国から消えた現象。
人々はこの怪現象をほとんど気にしなかった。
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「みょん!報告します!
群れの移動が98%完了しました!残り2%は事故等で到着できなかった数だと思われます。」
「むきゅ、現時点で移動作業を終了。
一般ゆ民には冬に備えて食料の調達作業を。」
「俺も報告するぜ。
通常戦闘ゆ隊は80%が使用可能。
特殊ゆ隊は即出動可能。でも、数が少ないから気をつけるんだぜ。
すぃーゆ隊は何も問題なく、いつでも出撃可能だぜ。
レンジャーゆ隊は装備の調達が遅れてるけど、実戦には出せるぜ。
コマンドーゆ隊は、熟練部隊は使用可能。新兵はまだまだ鍛える必要があるぜ。」
「わかったわ。春が来る頃には全勢力が使えるのね。
みょん!全てのゆっくりを広場に集めて!」
「了解しました!」
「…ついにこの時が来たんだな。」
「ええ、この戦いでゆっくりは真の自由を得るのよ。」
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広場にはとてつもない数のゆっくりが集まっていた。
その数は軽く見積もっても数万匹、いやそれ以上にいるかもしれない。
「むきゅ、みんな!今回の呼びかけに応えてくれてありがとう!
ぱちゅりーはとってもうれしいわ!
最近、ゆっくりを虐待する人間さんが増えて、ぱちゅりーはとっても悲しかったわ。
どうして何も悪い事をしてないゆっくりを一方的にいじめるの?
時には無差別に殺傷して群れを全滅させたりもする人間さんに、ぱちゅりーはとっても怒ってるわ!
ゆっくりがゆっくりしていて何がいけないの!
そんな人間さんとは一緒に暮らしていけないわ!
だから、ぱちゅりーは決めたの!
ゆっくりのゆっくりによるゆっくりの為の独立国家を設立する事を!
今回の作戦で、とっても多くのゆっくりが犠牲になるかも知れないわ。
でも、このままずっと人間さんの奴隷でいるのはいけないわ!
だから、みんな!ぱちゅりーと一緒に戦って!
ゆっくりできる未来を共に勝ち取るのよ!!
ゆっくりできる未来を!!!」
《《《ゆっくりできるみらいをぉー!!!》》》
広場に集まったゆっくりは、ぱちゅりーの演説によって興奮していた。
やっと人間から開放されて、自由なゆっくりになれる。
もう人間におびえる事もないんだ、と。
みんな、思い思いに明るい未来を想像していた。
「これからゆっくり頑張ろうね!」
ガヤガヤ
「うん!もちろんだよ!!」
ガヤガヤ
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「お疲れさまだみょん。」
「むきゅ…もう後戻りはできないわ。このまま前に進むしかないわね。」
「途中で止まっちゃいけないぜ。絶対に勝って、自由を勝ち取るんだぜ。」
「むきゅ、ドスやみょんがいてくれると心強いわ。」
「……それで、行動はいつごろ開始しますか?」
「冬の終わり……春が来たら一斉に攻撃を開始するわ。
とにかくまず、一つでも人間の村を奪わないと…。」
「春…か。早く戦いを終わらせて、ゆっくりしたいぜ…。」
「そうなるように私達が行動するんですよ。」
「むきゅ、この作戦がここまで来るのにたくさんの時間がかかったわ。
何が何でも人間から自由を勝ち取って、ゆっくりできる世界を造るのよ。」
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野良ゆっくりが街から消えて半年。
加工所を初めとする対ゆっくり行政機関は予算が下りずに苦しんでいた。
彼らの主な事業である「”有害な”ゆっくりの一斉駆除」の仕事がここ半年、まるっきり無くなってしまったのだ。
メディアでは加工所への補正予算を打ち切れという声が上がり、職員は自分の首が切られる事を心配していた。
人間は、ゆっくりへの対処方法を少しずつ忘れていった。
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雪が溶け、春がやって来た。
洞窟の奥の部屋に、ぱちゅりーと数匹のゆっくりの姿があった。
「むきゅ、偵察ゆ隊からの報告を。」
「報告します。北にある人間の村についてですが…。
人間の数は多く見て50人以下、畑には野菜がたくさんあるとの事です。
天候ですが、これから数日は晴れが続くとの事です。
一斉攻撃を仕掛けるなら数日以内がよろしいかと。」
「一般ゆ民の状況は?」
「食料庫を荒らしていたグループを捕獲、処刑しました。
それ以外は問題はありません。」
「戦闘ゆ隊はどうなってるの?」
「全ゆ隊の出撃準備が完了。
いつでも出れるぜ。」
「むきゅ、わかったわ…。
明日の朝、北の村に一斉攻撃を仕掛けるわ!!」
「「「了解!!!」」」
集まっていたゆっくりが次々と部屋から出て行く。
「ついに始まるのですね。」
「ええ、明日がゆっくりにとって新たなる一日になるのよ。」
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富士山のふもとに広がる樹海。
その近くに小さな農村があった。
いや、正確には農村だった村だ。
ほとんどの住民は他の地域へと移り、残っているのは農家の住民と市役所の役員だけだ。
市役所の中に若い男性と中年の男性、2人の役人がいる。
『この村もほとんど人がいなくなりましたね。』
『今の時代、こんな何も無い村に住むメリットなんて無いからな。』
『加工所も取り壊し決まっちゃいましたしね……この村、あとどれ位で潰されちゃうんでしょうね。』
『まあそう言うな。おかげで俺達は座ってるだけで給料がもらえるんだからさ。』
『はは、そうですね…。』
と、一人の男性が役所に入ってきた。近所の農家の人だ。
『あいつらがまた畑を荒らして困ってるんですよ。急いで来てください。』
『またあいつらか。しつこいやつらだな……行くぞ。』
『はい。』
車で男性の畑へ向かう三人。
畑に着くと、数匹のゆっくりが作物を荒らしていた。
「ゆゆっ!にんげんさんがきたんだぜ!」
「さくせんどおりにこうどうするんだよ!」
「しくじるんじゃないぜ!」
人間に気づいたゆっくり達は近くに停めてあったすぃーに乗って逃げ始めた。
『最近どんどん調子に乗ってきてるな…。おい、ちょっとこらしめてやれ。』
『わかりました。』
逃げたゆっくりを車で追う若い役員。
「ちゃんとついてきてるよ!」
「よし、あそこまでにげきるんだぜ!」
林道に逃げ込むゆっくり達。
『日本中でゆっくりが消えてるのに、どうしてこの村には野良ゆっくりがいるんだ…。
今度加工所に一斉駆除を依頼しないとな…。』
役員が林道に差し掛かったその時
ズガガガガ…ドゴォ!!!
『!?』
走っていた道路に突然穴が開き、車が落ちてしまった。
エアバッグが作動し、役員を衝撃から守る。
突然の出来事に、一時思考が停止する役員。
『いってぇ…何が起きたんだ!?』
車から出ると、車が落とし穴に落ちていた。
この状態では車を動かす事はできない。
『なんだこの穴は……地盤か?』
役員が原因を考えていると
「警告する!人間さんはただちにこの村から出て行ってね!!」
と、どこからか声が聞こえてきた。
この声はゆっくりの声だ。
『お前らの仕業か!こんな事して、どうなるかわかってるんだろうな!』
「もう一度警告する!人間はすぐに村から出て行け!!」
『いい加減にしろ!あんまり調子に乗ってんじゃねーぞ!!』
「警告はした!これより攻撃を開始する!!ドススパーク、発射!!!」
ドススパークだと?
役員が辺りを見回す。
ゴオオォォォ……
横の方から空気が割れるような音が急速に近づいてくる。
何かヤバイ、
直感で役員は走って車から離れた
次の瞬間
キイィン
ドゴオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
レーザーのような強力な光が車に命中し、大爆発を起こした。
役員は爆風で数メートル吹き飛ばされた。
『……いってぇ……、…何なんだ!?』
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
起き上がって周囲を見回すと、林道の奥からゆっくりの大行進がやって来た。
4列に並んだ大部隊は、その隊列を崩さずにこちらへとやって来る。
その配列はテレビ等で見る軍隊の行進とよく似ていた。
『なんだあれ……あれがゆっくりだってのかよ………』
役員があっけに取られていると
「みょーーーん!!!」
木に紐をくくりつけたゆっくりが、ターザンのようにこちらへと飛んでくる。
口にはカッターの刃が加えられていた。
慌てて避けようとする役員。
スパッ
『っ…!!』
顔を切られる役員。
頬から血が流れているのがわかる。
「みょん!!」
「みょーん!」
「みょんっ!」
周囲から次々とカッターを加えたゆっくりが飛んでくる。
こいつら、本気で俺を殺しにかかってきてる…!
役員は慌てて村へと走っていった。
村では、先ほどの二人が待っていた。
『役人さんや、大丈夫かい!』
『おい、さっき爆発があったけどどうしたんだ!』
若い役員は息を切らしながら話す。
『武装したゆっくりの集団がこの村にやってきます!!警報を鳴らして、住民を避難させてください!!』
『ゆっくりだと!?そんな事で警報を鳴らすのか!』
『普通のゆっくりじゃないんです!!まるで軍隊のような…いや、ヤツらは軍隊そのものです!!』
走ってきた役員の顔からは血が流れている。
さっきの爆発といい、普通のゆっくりにここまで派手な攻撃はできない。
『……よし、俺は市役所に戻る!お前は住民を非難させろ!!』
中年の役員が市役所へと走り、警報を鳴らした。
《緊急事態です!武装した凶悪な集団がこの村にやってきます!ただちに避難してください!》
混乱する住民に、若い役員が非難を指示していく。
血を流す役員の必死な形相に、住民は次々と避難していった。
幸い、山中にあるこの村では、一家に最低一台は車があったので全住民が非難するのに時間はかからなかった。
そして全ての住民が避難した頃、林道の方からゆっくりの軍隊が姿を現した。
『ヤツらが来ました!住民は全員避難しましたから、早く逃げましょう!!』
若い役員が中年の役員をトラックに乗せて走り出す。
「ゆっ!まだ人間がいたか!石投ゆ隊、用意!!」
銀色のバッヂをつけたゆっくりが隊列に指示する。
「目標、前方の車!狙え!……打てぇーっ!」
銀バッヂの声で、一斉に石が投げつけられる。
ビシッ ガツッ パシッ
幾つか石がトラックに当たり、フロントガラスにヒビが入る。
『あれがゆっくりなのか!?なんだこの統率の良さは!!』
『だから言ったでしょう!アイツらは軍隊だって!!』
『とにかく逃げるんだ!』
アクセルを強く踏み込み、更に速度を上げる。
『只事じゃないぞこれは……県庁に連絡する必要がありそうだ。下手したら警察予備隊まで……』
ブロロロロロロ………
「投石、やめ!」
車が離れていくのを確認して、銀バッヂが指示を出す。
「人間は全ていなくなりました。指示を。」
銀バッヂが金バッジをつけたドスに指示を求める。
「一般ゆ隊は全部の家を調べろ。食料は見つけても食べるな。
もし食べたゆっくりがいた場合は、その場で制裁してかまわん。
司令部に伝達、人間の掃討に成功。本部からの指示を待つ、と。
周囲の警戒、怠るなよ。」
「了解。ちぇん、今の内容を本部に伝えてくれ。」
「りょうかいっ!」
銅バッヂをつけたゆっくりがすぃーに乗って森の奥へと走っていく。
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富士樹海の中にある洞窟。
その中に銅バッヂを付けたゆっくりが入ってきた。
「先攻ゆ隊より連絡!
ドスドスドス、ワレ奇襲ニ成功セリ!」
「むきゅ!それは本当なのね!」
部屋に集まった幹部ゆっくり達の顔に笑顔が浮かぶ。
「はい!本部より指示を待つとの事です。」
「わかったわ。ちぇんは村に戻ってすぃーゆ隊をこっちに回して。
みょん!すぃーゆ隊到着と同時に一般ゆ民を村へ移動させるわ。準備させておいて。
私はちぇんと一緒に村へ行って向こうに本部を立てるわ。」
「わかりました。…やりましたね!ぱちゅりーさん!」
「ええ!…でもこれからが大変よ。」
「そうですね……。総員、ただちに一般ゆ民の移送準備にかかれ!」
みょんの掛け声と同時に、全てのゆっくりが部屋から出て行った。
総司令ぱちゅりーはちぇんのすぃーに乗って村へと向かった。
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『……つまり、高度に組織化されたゆっくりが村を襲った……と。』
『はい、その通りです。』
ザワザワ……
ゆっくりの攻撃に合った二人の役員は、県庁の会議室にいた。
その中には、県警のトップや県知事の顔まである。
『しかし、君が動揺していてただのゆっくりを大げさに捕らえたのではないのかね?』
70代と思われる県議会員が若い役員に対して疑問の声を上げた。
『いいえ、私は確かに見ました。あの統率されたゆっくりの集団は、通常のゆっくりとは明らかに異なります。』
『しかし、そんなゆっくりの話なんて聞いた事がない。
車で事故を起こした時の衝撃で、どこか頭を打ち付けたんじゃないかい?』
ハハハハハ……
会議室の数名が笑う。
『私は冗談など話していません!知事、警察あるいは警察予備隊の出動要請を提言します。』
『予備隊だと!?冗談を言うな!』
先ほどの県議会員が大声を上げる。
『落ち着きなさい。いきなり予備隊を動かすのには動機が不十分すぎる。
まず、県から職員をその村に派遣する。それから今後の対応を決めよう。何か異議は?』
県知事は落ち着いた口調で提案をした。
『……誰も異論は無いようだね。これで会議を終了とする。』
会議室から次々と人が出て行く。
若い役員は悔しそうな顔をしている。
『くそっ!いつも後手後手の対応をしやがって…!』
『落ち着け。知事の言う事ももっともだ。
普通、ゆっくりに襲われたなんて言っても誰も信じないだろ?』
『そうですけど……!』
『俺もあのゆっくりには危険性を感じてる。
知事はしっかりした人だ。冷静に状況を見てくれるだろう。』
『……。』
県庁の廊下で、二人は窓から空を見つめた。
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村は、すっかりと様変わりしていた。
ありす種によるゆっくり専用のコーディネートによって、村はゆっくり専用の村と化した。
廃屋はそれぞれのゆっくりが住める家に。
扉の付いている倉庫や空き家は食料庫として使われている。
村の周囲には武装したゆっくりが外敵を警戒している。
ゆっくりにとって、人間のいないこの村は楽園そのものだった。
村の市役所には、数千匹のゆっくりがつめかけていた。
広場の壇上に、ぱちゅりー、みょん、ドスまりさが立っている。
「まず、私からいいたい事があるわ!ありがとう!!
みんなが力を貸してくれたおかげで、遂に私達ゆっくりの町を手に入れる事ができたわ!
ここは、人間さんからいじめられたりする事もない、ゆっくりがゆっくりできる最高の場所よ!
宣言するわ!この町を、ゆっくり史上初の町”ゆっくりシティ”と命名するわ!」
キャーキャー ワーワー
「ありがとう!
でも、これからも人間さん達は私達のゆっくりプレイスを狙って攻撃してくるかも知れないわ。
だから、みんな一致団結してこの町を守りましょう!!」
《《《《賢将ぱちゅりーと共にあれーーー!!!!》》》》
ゆっくりシティに、ゆっくり達の歓喜の声が響いた。
「ドスからも話がある!
ぱちゅりーが言ったように、人間が攻めてくる可能性が大きい!
この町を守る為には、もっとたくさんのゆっくりの力が必要だ!
町を守ろうという勇気あるゆっくりは、是非戦闘ゆ隊に入隊してもらいたい!!」
《《《猛将ドスに忠誠をぉーーー!!!》》》
若いゆっくり達が雄叫びを上げる。
「むきゅ!みんな、明日からまた忙しい日が続くわ!
今日はゆっくり休んでちょうだい!
これでぱちゅりーのお話をおしまいにするわ!」
ガヤガヤ
「ぱちゅりーさんはすごいね!ほんとうににんげんにかったよ!」
ガヤガヤ
「これからずっとゆっくりできるね!!」
………
騒ぎが落ち着いたゆっくりシティの司令部(市役所)に、銀バッヂと金バッヂをつけたゆっくりが集まっていた。
「…幹部はみんな集まったわね。」
「俺から説明するぜ。
これから、人間による反撃行動が予想される。
人間はゆっくりを弱いと思ってるから、最初の反撃は少人数で来るだろう。
その人間を徹底的に打ちのめす!
そうすれば人間はゆっくりの恐ろしさを知って、反撃をしなくなるはずだ。」
「そこで、今回は人間がこの村に入る前に攻撃を仕掛けます。
この村に入ってくるには、2ヶ所の道路を通るしかありません。
人間は南側の道からすぃーを使って侵入してくると予想されます。」
「この道には、両側が崖になった部分がある。
ここで人間のすぃーを止めて、一気に攻撃を仕掛けるんだ。
具体的に説明すると、まず落とし穴を作ってすぃーを動けなくする。
人間がすぃーから出てきたら投石ゆ隊の一斉攻撃。
崖があるから人間はこちらに攻撃をする事はできないだろう。
人間が来た道を逃げ始めたら、特殊ゆ隊による斬撃で、人間の体に深手を負わせる。
人間がボロボロになったら、攻撃をやめて人間の群れに逃がすんだ。
人間を永遠にゆっくりさせてはいけない。あくまでも深手を負わせるだけだ。」
「むきゅ、この作戦が成功すれば人間は私達を恐れて攻撃をしなくなるわ。
そうすればその先の村も、私達の町にできるわよ!!」
「絶対に成功させるんだぜ!!」
「「「「了解!」」」」
幹部ゆっくり達は自分の持ち場へと向かった。
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ブゥーーーン……
森の中を、一台の公用車が走り抜ける。
中には三人の人間が乗っていた。
『あと数分で目的地に着きます。』
『うむ。』
『しかし県知事、ご自身が視察に行かれるのは危険だと思うのですが…。』
『あの若者の訴え、県議会にはない純粋な気持ちに聞こえたんだよ。
それにそのゆっくりとやらをこの目で見たいもんでな。』
『ですが……』
『なあに、ワシだって体力には自信がある。そこらの若者にも負けんよ。』
運転手と調査員、そして県知事を乗せた車はゆっくりに占領された村へと向かう。
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…………………………
「警戒中のコマンドーゆ隊より連絡!
こちらに向かってくる人間のすぃーがあるとの事!」
「数はいくつだ。」
「…一台です!」
「ついに来たか。
総員、配置に着け!人間がこちらへやってくるぞ!」
《《《《りょうっかいっ!》》》》
山の中には数百のゆっくりがうごめいていた。
指示を出しているのは金バッヂを付けたドスまりさ。ゆっくりの中では”猛将”と呼ばれている。
「すぃーが落とし穴に落ちるまで…5、4、3、2、1…」
ガゴガゴゴッ!!
『!?』
車に異様な振動が走る。
『どうしたんだ?』
『道路が所々陥没しているようです。走行には影響ありませんので、ご安心を。』
落とし穴の上を通過して車は走り続ける。
どうしたことか、落とし穴がちゃんと作動しなかったのである。
「!?どういう事なんだぜ!!」
「むきゅう!?落とし穴に落ちなかったのね。これは想定外だわ…」
「ぱちゅりー、どうするんだぜ!!」
ドスまりさがぱちゅりーをせかす。
「落ち着いて!
私達の目的は”人間に深手を負わす”事よ!
ドス!あのすぃーをドススパークで撃って!」
「よし!わかったぜ!!」
ドスが何かを口に入れてモゴモゴすると、ドスの体が輝いてゆく。
「モグモグ……当たれぇーーーーー!!!!」
ドスが車の方向に向かって口を開いた
瞬間
カッ
ズガアアアアアアアァァァァァァ…………………
ドスの口から閃光が走り、県知事の乗る車に直撃した。
車は炎上し、灼熱の炎に包まれている。
ガギャッ
車の扉を蹴り飛ばして、中から人間が出てきた。
『知事!!しっかりしてください!!!』
『…ぅう……』
二人の男が、年老いた男性を担いで車外へと脱出する。
全員腕や頭から血を流しているが、特に老人はぐったりとしていて重傷のようだ。
『このままじゃ知事が危ない!早く病院に!!』
老人を担いで、二人の男が走り出す。
「ぱちゅりー、これで良かったのか……?」
「ええ、想定通りの結果よ。
これ以上攻撃する必要はもう無い。
このまま人間が群れに帰れば、全て予定通りになるわ。」
ぱちゅりーの話を聞いて、近くにいた幹部ゆっくりの顔が少し明るくなる。
「攻撃用意!!!」
少し離れた場所から、特殊ゆ隊隊長、銀バッヂみょんの声が聞こえた。
「ちょっと!もうあれ以上攻撃は……」
「かかれぇーーーーーッ!!!!」
ぱちゅりーの呼びかけが聞こえる前に、隊長みょんは命令を下した。
《《《みょーーーん!!!》》》
隊長の号令と共に、特殊ゆ隊が一斉に人間目掛けて攻撃を仕掛ける。
『なんだコイツら!!』
『刃物を加えてるぞ!!!気をつけろ!!』
みょんの攻撃で更に出血量が多くなる人間達。
『知事だけは何が何でもお守りするんだ!!』
二人の人間は老人をかばいながら必死に走る。
『逃がさないみょん!!!』
『ここはみょん達のゆっくりプレイスだみょん!』
『”ゆっくりシティ”を奪おうとする人間は…死ねぇ!!』
特殊ゆ隊の攻撃は止まない。
彼らは極度の興奮状態となり、すでに暴走しかけていた。
人間はどんどん傷つき、弱っていく。
『やめろォ!!!!』
森の中に、ドスの声が鳴り響く。
特殊ゆ隊をはじめ、その場にいた全てのゆっくりがドスの方を見た。
『目的を忘れるな!!
ゆっくりシティ防衛が最優先事項!!!
人間は生かして群れに帰す!!!
お前ら、わかったか!!!』
ドスの鬼気迫る怒鳴り声で、全てのゆっくりが平常心を取り戻した。
人間達はいつの間にかいなくなっている。おそらく群れへと帰ったのだろう。
『むきゅ、人間は帰ったわ。
現時点をもって作戦を終了。総員、速やかに撤収。』
ぱちゅりーをはじめ、幹部ゆっくりの顔には少し陰があった。
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ダンッ!!
『バカモン!!』
県庁の会議室に、怒鳴り声が響く。
『落ち着いてください、副知事。』
『知事をはじめ、全員命に別状はないと言っていたじゃないですか。』
『そうですよ、これは不幸中の幸い…』
『そういう事を言ってるのではないっ!!!』
なだめようとする連中に一括を浴びせる副知事。
『いいか!たかがゆっくりに車2台!人間が4人もケガを負わされているんだぞ!!
これが民間人だったらどうしていたんだ!!!
しかもヤツら、村を強奪して”ゆっくりシティ”などと名前まで付けてるそうじゃないか!
こんなバカげた事が今まであったか!!どうだ!!!!』
副知事が近くの連中を睨み付ける。誰も返事をする事ができない。
『本庁に警察予備隊の緊急出動を要請しろ!これ以上人的被害を増やすわけにはいかん!!』
その頃、病院では…
『知事!大丈夫でしたか!!』
『ああ、この通り元気だよ。』
ベッドの上で横たわる知事の姿を見て、若い役員が足早に駆け寄る。
『確かにあのゆっくり達は普通じゃなかったな。もっとも、被害を受けたのが私で良かったがね。』
『そんな、重傷なのに何言ってるんですか…!』
『はっはっは…。しかし、君の言った通りだ…。今の高齢化した議会では決断が遅すぎる…。
…いや、私が老いただけなのかも知れないな。』
『そんな事はありません!知事は危険な場所へ自ら赴きになられました。
そんな度胸のある人間が、この県議にたくさんいるとは思えません。知事は私達が誇れる知事です…。』
『若者にそう言ってもらえるとうれしいねぇ、はっはっは…。』
県知事まで重傷を負った今回の事件。
各メディアはこの事件を”ゆっくりシティの攻撃”としてトップニュースで取り扱った。
世論はゆっくりシティの攻撃、殲滅を支持した。
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・後編「ゆっくりシティの攻防」に続きます