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  • anko4662 ゆっくり村に春が来る

ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー

anko4662 ゆっくり村に春が来る

最終更新:2013年04月04日 13:33

ankoss

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管理者のみ編集可
『ゆっくり村に春が来る』 27KB
越冬 共食い 独自設定 超久しぶりの投稿。方言完全うそっこ。

<一>

お里はその日も爺やと一緒にお山へ入った。

秋のお山は色とりどりに力を蓄えてゆく命に溢れ、
しかし太陽の光はこれから確実に弱まるそぶりを見せていた。
爺やと茸や竹の子、ヨモギに薪、センブリにシソ、ナマズや鯉に鮎を取って
お里は一緒に暮らしている。


今の時期はナマズがよう肥えている、
茸(爺やは『なば』と言う)採りに苦労せんのも山の神さんのおかげじゃ、
ほんに感謝せにゃならん、神さんのお使いにはお礼ば毎日せにゃならん、
と爺やはお里に言って聞かせたものだ。

お里は小さいカゴしか持てなかったが、
それでも毒茸とおいしい茸の生え場所、魚の隠れ家も不思議と分かった。

「お里にはお山の神さんの精がついちょる」
村人たちは爺やに会うたびにそう褒める。

普段は笑いもせず、ただ鋭い目で山を歩く爺やも、
その時ばかりは顔がほころぶのを抑えきれず、
ついつい米と引き換えに渡す山菜の目方を増やしてしまう。

それでもお山のお恵みはいくらでもあるから、
年寄り一人と子供一人が食べていく分には困らない。


その日、お山を分け入っているとふいにお里は高く響く悲鳴を聞いた。
「爺や、ありゃ何と?」
「なんも聞こえんかったよ」
孫娘に甘い老人は、いつも突飛な事を言うこの子に少し困った声を出した。

「あっちじゃ」
言うが早いが、背の高い枯草の中へかすれたヨモギ染めのボロ着が転がるように潜り込む。
「お里ぉそっちは祠じゃぁ ばちぃあたるどぉ」
爺やも薪の詰まった背負い籠を降ろすが早いが、足馴れた様子で茂みに入った。

川岸では大きな岩が日の光に当たり、柔らかなススキと乾いた苔の甘い香りが広がる。
涼しい風に一瞬、自分が何をしに来たのか忘れかけた時、
濁ったような金臭さがお里を我に返らせた。



<二>

「ゆんやぁぁぁー!!」
ゆっくりれいむ! まだ子供だ!
見るだけでも酷い怪我だ。

その横の茂みにはお山には似つかわしくない、
凶暴な匂いをした茶色い山犬が牙を剥き、
今にも仔れいむに飛び掛らんばかりに唸っていた。

「何しょうとよ!」
思わず叫ぶと同時に、頭上に空を切る音がしたかと思うと、
山犬の鼻面にお里の当たった手のひらほどの石が思い切り嫌な音を立てた。
けたたましい悲鳴を上げ、山犬が姿を消す。

「ありゃ狂い犬じゃ。水をおとろしがっとった。怪我ぁしとらんか?」
裾に引っかかり付いた、いかにもしぶとそうな植物の種をとりながら茂みの中から爺やがひょっこり顔を出す。
「爺や、それどころじゃな、お山のお使いが泣いちょる」
屈みこむお里の横を、石を投げた手を重そうに振りながら爺やも覗き込んだ。

お山の意思を人間たちにも伝えると言われるゆっくり達は
明るい声と柔らかな色合い、そして一番滋養豊かで美味な食べごろから、特に春の使いとされている。
それと同時に、儚く散ってしまう花にも例えられるほどの生命力の弱さも持っていた。

お山の恵みで生きる者にとってゆっくりは滅多に出会えぬ何よりのご馳走であり、
また同時に、だからこそ何よりも尊ぶべきものであった。

「ゆ…ゆっきゅり…」
頬(お里にはどう見ても腹にしか見えなかったが)と髪飾りの端が欠け、もとは美しく光る髪も泥まみれになり、
皮も大きく破れて中身が見えてしまっている。
はぐれた親に助けを求める為に、今もまだ叫び続けているつもりなのだろう、
咽喉からは黒い血の泡を吹いている。

ゆっくりれいむの震える頬を撫でながら、落ち着いた口調で爺やが言った。
「こりゃいかん、ヌルデブシ持ってこい」
ヌルデブシとは字の通りヌルデの枝のコブにある附子(ぶす)、つまりは樹木の毒だが、
お里の村では酷い切り傷の薬や強心剤として使用される。

「あい」
小さな草色の塊がさっき降りてきた茂みを駆け上る。
残された爺やは、仔ゆっくりとどこにいるやも知れぬお山の神様に軽く拝んだ後、
さらさら響く清流に、仔ゆっくりを溺れさせないよう、ふやけさせぬようにさっと浸けた。

「これでもう血ぃは出んですけ、ご安心なすってくだせぇ」
そう言うと辺りで一番日当たりの良い平たい石の上にれいむを置き、
素早くこそげ取ったススキの穂で傷口を覆う。
林の中からすぐに戻ってきたお里も、奇妙に曲がった木の枝を携えてその手伝いをする。

「爺や、ヌルデブシばもろうてきた」
「神さんに礼ゆうたか、いや今んええ、お使い様ばしっかり押さえちょってくれ」

爺やがブシをすり潰す間に、お里はそっと小さなれいむを小さな手で押さえた。
それに応じるように、不確かな柔らかさと消え入りそうな温かみが伝わってくる。

(ああ、ああ、うちの手が冷たいけ、お使い様がのうなってしもう)
思わず泣きそうになったのをぐっと堪え、
爺やの熱い大きな手が、コブの汁と滓を仔れいむにすり付けるのをじっと見る。

「ゆぁぎゃああああああ!!!?」
仔れいむは、どこにまだこんな余力があったかと思われるほどの長く悲痛な、
お山中に響く叫び声と共に、その身を跳ね上げては石に打ちつけた。

「しっかり押さえちょれゆうたが!」
仔れいむが暴れて石に当たるたびに、傷口から新たな餡子が漏れ、白穂が染まってゆく。
口から出る温かな粘液状の血の泡が、お里の腕に伝ってゆく。
涙と恐怖で顔をぐしゃぐしゃにさせながら、
しかし泣き声は上げずに、お里は必死で自分の手の倍はある暴れ玉を押さえた。
柔らかな丸い体は、お里の力の加減でさえ潰れてしまいそうなほど頼りないのに、
どうしてこれほどまでの力で暴れる事が出来るのだろう。

次第に仔れいむの叫び声は小さくなり、代わりに洞の前の蔦が立てるようなどこか不安な音の息をし始めた。
「お使い様は気ぃのうなってしもうた、これでもうお暴れになる事はなか」
爺やがほっとしたように言うが、お里は心配でならない。
ゆっくり様は本当に簡単にその命を手放してしまう。

お里はそっと裾にしがみつき、爺やを見上げる。
「のうならん?もうええのん?」
「まだお治りになっちゅうわけじゃなかぞ。
 ワシらが家にお留まりになられんといかん」
「ほんと?したら……」

すと、とお里が倒れた。
体中から一斉に血の気が引いて、爺やはその軽い体を抱き上げる。
「おお、ええ、ええ、なんもゆうな。少し神さんに触りすぎたんよぅ」

震える孫娘をなで、ぐんにゃりした仔れいむをそっとお里の手に抱かせ
爺やは大きな声でお山に礼を言った。

「お山の神さん、こんたびはわたくしの孫がお使い様ばお助け申しやした、
 お山で採れた茸も菜も置いて行き申す、
 なにとぞお使い様と孫娘ばわたくしの村に連れ帰り申すの儀をお許しくだしゃんせ」
長い人生でもほとんど使わなかったうやうやしい文句を必死で述べると
川上から一陣の柔風が吹いた。

落ちかけた日の中を、
どこか泣きたいほどに懐かしい薫りに包まれながら、
お里を抱いた爺やは村へ走り帰った。



<三>

お里は幸い、何の傷もなく1日で精気が戻った。
幸いと言えば仔れいむも、毎日お里が水を汲み、焼き魚を与えたせいか
あっという間に元気に動けるようになった。

ただ山犬に食い千切られたと思われる髪飾りと頬は治らなかった。
頬の傷はもはや傷口から腐っており、二度と生えることは無いと見え、
爺やが焼き木で頬の毒をふさいだ。

その時は、つたを丸めたものをぎゅうぎゅうと口に押し込んだために
仔れいむの声はお山に響く事は無かったが、
脂汗を流し、顔を歪め幾たびも痙攣する仔れいむは痛ましかった。
可哀想に思ったお里は、せめて破れた南天色の髪飾りを繕ってやった。

「人の村にいらっしゃったお山のお使いじゃ、少しくらい他と違うほうがありがたみがある」
そう言って村人たちはお里の家に来ては供え物を置いていってくれる。
「ゆっへん! もっとたっくさんでいいよ!」
すっかり元気になった仔れいむも、胸(お里にはどうしてもお腹にしか見えなかったが)を張って笑う。

普通、ゆっくり達はまず人里へ降りてこない。
不心得者にあっという間に食べられてしまうという理由もあるが、
お山の方がよっぽど水も食べ物も旨いし、
何より神さんのお膝元で安心するのだろうとお里は考えている。

ところがお里と爺やが仔れいむを連れて来てからというもの、
村にもちらほらとお山のゆっくり様たちが顔を覗かせるようになった。

「きょうからここをぱちゅりーたちのゆっくりぷれいすにするわ!!」
「ゆんっ! どいなかだけどがまんしてあげるっ!」
「まりささまたちにひれふすのぜぇぇー!!」
基本的には人懐っこい彼らは、山の生き物だと言うのに人間にも牙を剥かずにこにことすり寄ってくる。

村人たちはこれも吉兆と喜び、ゆっくり達を家々に迎え入れた。
そして誰ともなく、この村をゆっくり村とめでたく改名しようということになり、
ゆっくり様達の歓喜の声で正式に決まったのだった。


「深山の使いとは言え人の村に降りてきたのだから
 人の村の流儀でお迎えするのがやはり礼というものであろう。
 恩名を付けさせて頂くのも礼じゃ。
 にしてもほんにこの子はお山の精がついちょる」
とお寺の和尚さんはそれらしくうなずき、お里と仔れいむに紙風船を持って来てくれた。

れいむは飛び上がって喜び、いきなり彩り豊かな紙の球に噛みついたが、
さすがに風船は食べられずぺっぺと砂糖水の唾を吐いた。
「くちょじじい!! あまあまじゃないでしょぉぉお! れいみゅはあまあまがたべたいのぉぉー!!」
赤く膨れて怒るれいむにお里はひやひやしたが、和尚さんは笑ってれいむとお里の頭を一緒に撫でるのだった。


それかられいむはずっとお里に甘え、そばを離れなかった。
というよりも、足の部分の皮膚がひきつったまま治ってしまったため這いずる事しか出来ず、
見かねたお里がいつも胸元に抱いていたのだ。
爺やはあまりいい顔をしなかったが、仔れいむの甘えぶりはお里を喜ばせた。

「れいむ、今日は爺やとお山へ行くと。
 れいむも来るん?」
「ゆっ…… ゆべええええええっっ!?
 どぼじでそんなごどゆうのぉおぉ!?」
お里の腕の中で無心に食べていた茹でむかごを器用にもみあげを使って投げつけ、
この仔れいむは目を見開き、暴れ、何故だか必死でお山に入る事を拒む。

「こられいむ、そんなに暴れちゅうたら落ちてしまうが。
 爺や、れいむは行きとうないゆうちょる」
「なら今日は行かん方がええ、お山の使いが嫌ごうとるんじゃ。
 なにか悪い事が起きにゃええが」
「あやぁ、ほしたら、じじ、今日は川で魚取ろうかや。よか? ねぇ、よか?」
飛び上がったお里の目は、既に川の光の網に輝いている。
これでは、山で遊びほうけて失くした籠の代わりの新しいかずら籠を作るから家にいろと言っても、
うわの空でどうしようもないザル籠が出来るだけだろう。

「あのねあのね! れいみゅもおねえさんとおなじことおもってたよ!
 れいみゅがかんがえたんだよぉ!!」
れいむも加勢する。
こうなると爺やには止められない。

結局その日は、というより、
秋の終わりのほとんどの日を川でボラやエビ、
鰻を釣って干物を作り過ごすのだった。



<四>

やがて来た冬はただひたすらに厳しかった。
お山の道どころか家々の間も雪で埋まり、どんなに戸締りをしても、
朝起きれば壁の片隅に雪が積もっている。
お日様は十夜以上も出ておられない。

櫓近くの若夫婦の赤ん坊は風邪をこじらせ亡くなったが、葬式も挙げられないほどに吹雪は容赦が無かった。
隣家に住む、お里より2つ下のお稲も、熱が治まらず
うわごとを繰り返しているという。
お里が可愛がっていた黒犬のケン坊も、ぷっつり姿を見せなくなった。

薄暗い家の中で、爺やがぽつぽつ話すお山の話を聞きながら、
小さな手編み籠を作るのがお里の仕事だった。

れいむは寒がっていつも震えているので、一番暖かい火の側、
そして壁から吹き込む風に当たらぬよう、お里の膝の上で藁にくるまっていた。
それでもあまり長い時間火に当たるとれいむが熱がるので、
爺やもお里も気を使う。
お山の恵みを一身に受ける生き物は、やはりお山の食べ物が恋しいと見えて、
時々高く大きな声で不満をわめく。

「とっととあまあまとあったかーいあまざけもってきてよね!
 なんでいわれるまえにもってこないの! ばかなの!? しぬの!?」
その度にお里は子守歌を唄い、
爺やは残り少ないたくわえを、仔れいむに差し出すのだった。

やがて薪もそろそろ尽きようか、
明日は雪を沸かしてセンブリ茶を飲んで、この空き腹をごまかそうかという頃、
村の会合が行われた。

「幸三んとこは嫁さんがのうなった」
「ワシとこは魚が釣れんけ、どうしょうもない」
そんな愚痴ばかりがぽつぽつと出る。

仔れいむに続いて人の村にやってきたゆっくりたちの中には、
それぞれ人家に住み着くものもいた。
例年ならば何の障りも無かったであろうが、この冬の下では
ゆっくり達の食べる分が人間の分を圧迫しているのは明らかだった。
部屋で撒き散らす糞便も、板や藁を駄目にする。

しかし皆、お山の神のお使いに文句をいう事などは一つも無い。

集まった所で何もない、この雪をかき分けて動いた分の力が無駄であった、
そんな空気が面々の顔を覆いだした時、
お山の和尚どのが苦しそうに口を開いた。
「ワシの寺と、長どのの蔵にも多少の備えはあるが、村の腹を満たすには
 合わせてせいぜいが十日といった所じゃろう……
 それで、じゃな、七十年前にもこういう冬があったと、寺の書きつけにある」

「加平どんも生まれる前じゃにゃぁか」
船渡しの吉兵衛が爺やに話しかけた。
爺やは無言で和尚に先を促す。

「うむ、それでじゃ、
 その折はゆっくり様たちが春を呼び寄せ、村を救ったとある」
依然として辛そうな顔で住職が話す。
「その方法ちゅうのはじゃな、春の神さんば起こす鳴き声を出すんじゃそうな」

「ほうてゆうと、つまりなんぞ、今年はお使い様が
 鳴くのがめんどうくそうて、春がきよらんと?」
村の男たちの目が吊り上がる。

「いやいやそうではのうて、春の神さんゆうのはおおかたが寝坊すけじゃ。
 普段はそれでも大慌てで起きなさるんじゃが、ときどきこういう年がある。
 その際にはお山のお使いどの達が、御命と引き換えに揃ってお山に響き渡るようおらび(叫び)、
 お山の底から春の神さんば連れてくるんじゃそうな」

ほぉ……という、感嘆の声があがった。
会合にはゆっくりは出ていないというのに拝み始めた婆さままでいる。

「ほいで、その……家のお使い様も、
 やはりお命を削らんとお鳴きになられんのじゃろうか?」
賢いぱちゅりー様を迎え入れた長どのが、おそるおそる尋ねる。

「うむ、お山のゆっくりどの達が鳴かれぬ以上、
 村の御ゆっくり方たちが呼ぶしかないじゃろう。
 思えばまず初めに、加平どんとお里のところにれいむ様が来たのも、縁あってのことやもしれぬ」

和尚さんが分かりやすい返答を避けたのは誰の目にも明らかであった。
ゆっくりたちを殺し、その断末魔で、春の神を起こそうというのだ。

村は追い詰められていた。



<五>

高く積もった雪をどかし、大きなかがり火を焚く。
腹に響く太鼓の音が、村も、川も、山をも越えて響いた。
吹雪は中休みと見えるが、太陽は相変わらず弱々しく、お山の芯から凍える風は絶え間ない。

おのおのの人家にいた様々な種類のゆっくりは、敷かれたゴザにぎっしりと集まっていた。
かがり火の側で温まり、盛られたお供え物に舌づつみを打つ。
「こんなにたっくさんあまあまをかくしていたなんて、のろまなにんげんさんにしてはいいおこないなのぜ!」
「やれやれ……ぱちゅりーならこのごちっそうっをひゃくばいにふやすほうほうだってしってるのよ?」
「とっととおかわりもってきてよねぇー!!」
「ちぇんたちにあげるためにとっておいたんだね、わかるよー」

人家に篭る間にひもじい思いをしたぶん、命を蓄えている。

村の女房たちは、温かい汁を配ったり、飯を炊いたり、秘蔵の酒を振舞っていた。

お里もちょこちょこと、
大人のゆっくりの食い散らかした干し芋などを拾っては、
腕の中のれいみゅに食べさせてやる。

「こんなんじゃぜんぜんたりないよ!
 たっくさんでいいよ!」
「あよぅ、もっと食べたいか。いくらでもあるけ、待っとき」

れいむとお里が微笑む様子に、隣の家の婆さまが目を細めて言う。
「お里、婆がひらうけ、れいむさまにようけ食べさせてやり。
 お前にもひらうてきてやるき」


「今日はお祭りのごたるなぁ、ばぁさま」
久しぶりのごちそうにお相伴させてもらったお里が、上気した顔ではしゃぐと
腕の中の仔れいむも我慢できずに尻を振った。
「はるさんがきたみたいだね!」

「ほうじゃ、お祭りじゃ、春呼ばいのおまつりじゃ」
婆さまが曲がった腰で焼き栗をひょいひょい取ってゆくのを眺めつつ、
お里は藁で巻かれた仔れいむを抱いてあやしていた。

爺やは出がけにただ一言、れいむ様と来い、と言っただけで、
その後は祭りの準備で忙しいのか姿も見せない。

どうした事じゃろう、今日のお祭りにはうち以外の子がいない。
みんな寝込んでしまっておるんじゃろうか。


突然、村の長どのが、蓑を着た大人達を引き連れて現れた。
藁叩きの杵なり鍬なりを手にしている者もある。
爺やも隅のほうにいた。
殺気立ったような、浮かれたような、苛だったような匂いに、
お里は思わず仔れいむを掻き抱いた。

ふと横を見れば、女衆は、うとうとし始めたゆっくり様たちを
そぅっとひとところに集め始めている。

「深山の御使いどの、なにとぞ、春の姫様ば、お起こし申してくだしゃんせ」
長どのがひざまずき、恭しく礼をする。
背後の一同も同じように腰をかがめた。
「なにとぞ、春の姫様によろしくお伝え申す」

「はっ、はるのおひめさま!? ……ぱ、ぱちゅりーのおともだちよ?
 ええ、おひめさまにはぱちゅりーからきちんとゆっておくわ!」
ぱちゅりーは聞きなれぬ言葉と、村人達の異様な雰囲気に圧倒されながらも
もてなしを受けた神の使いとして応えた。

怪訝な様子のゆっくりたちも何かを感じたのだろうか、
しかし、先ほどからのもてなしには満足している、といった様子で
手前の大きなまりさが伸びあがって村長たちに声をかける。


あまりの不吉さに、お里は少しずつ、分からぬように
大人たちの視界から逃げる。


最初は何が起こっているか分からなかった。
すぐに頭の奥をぶち叩くような悲鳴が、耳をつんざく。

「ゆ…… ゆっぴゃあぁぁぁぁーー!!!?」
長どのが片手で持ち上げた火箸の中ほどに、ぱちゅりーが刺さっている。
じゅぶじゅぶと、生きたまま焼かれる音がする。

お里は声も出せなかった。
横に串刺しされたゆっくりぱちゅりーの、わけの分からぬ絶叫が、
乾いた曇り空に届かんばかりの勢いで残響してゆく。
太鼓が、まるで調子をとるかのように打ち鳴らされる。

「どぼじでごんなごとしゅりゅのぉぉぉー!?」
ぱちゅりーの絶叫が灰色の空に響く。
まどろんでいた他のゆっくりたちも、何が起こっているのか分からないのか、
腰を抜かすもの、ふんを漏らすもの、我が仔を頭の上に乗せて背を向けるもの、
そしていち早く逃げるもの、と狂い騒ぐ。

「なにとぞぉ!!」
長どのが火箸を持って振り下ろすと、
冷たく硬い地べたに、饅頭の柔らかな体が叩き付けられる。
甘い肉の中で何か硬い物の砕かれる、腐った瓜のような嫌な音。

「ゆぎゃぴっ!?」
もはや普段の鳴き声を上げる事すら出来ない。
そのおかしな悲鳴を合図にしたかのように、大人達がすっと立ち上がった。

「すぐに殺めたらいけん!
 お可哀想じゃが、ようけようけお声を出してもらえ!!」
気を失ったぱちゅりーの目玉をえぐり、もう一度絶叫させて、長どのは叫んだ。

お達しも聞いてか聞こえずか、大人達は
「お許しを! お許しを!」
と叫びながら、ゆっくりたちを捕まえていった。

お山のお使いは滅多に捕まえられぬと言えど、
それはお山の話であって、人の村に下ったゆっくりを捕らえるのはあまりにもたやすかった。
逃げ惑っても、雪かきで作り上げられた道には、
女たちが、煮え湯を持って待ち構えていた。

「みゃみゃぁー! たしゅけちぇー!」
「やべてね! やべてぇぇぇ!」
仔を取り上げられて、返せ、返せと地も震え泣く様に叫ぶ母親れいむ。

「ゆきゃああああああ!!!!!!!」」
ふくよかな腹を踏みつけられ、髪飾りを折られ、ぺにぺにに真っ赤な炭を押し付けられる雄ありす。

「呼んで下され! 春の神様を! 呼んで下され!!」

「やだああああ! まりしゃやだぁぁ!! はるのかみさまたしゅけてええ!!」
顔を真っ赤にして腹の底から泣き喚くまりさ。

「ありすわるくにゃいの! ありすわりゅくにゃいの!」
叫び、両手を上げ、狂ったように土下座をして、
何度も何度も頭を打ち付け、血を噴だし命乞いをするありす。

「ぷっきゃあああー!?」
やわい腹に鍬を振り下ろされ、己の下の体が飛んでゆくのを、
痛みと驚愕と恐怖の入り混じった絶叫で眺める小さなぱちゅりー。

「ゆえええ、ゆわぁぁ、ゆおおおー!!!」
仲間の恐慌ぶりを見て、咽喉を嗄らし、糞尿を漏らして泣き叫ぶ赤れいむ。


ただただ打ち鳴らされる大太鼓。


村はゆっくりの悲鳴で満たされた。
「お頼み申すっ!
 春の姫様っ! 姫神さまばっ!! お呼び下されっ!!」
大人達は同じ事を繰り返し叫ぶ。

「はっ、はるさん! ゆっくりしないでね! はやくれいみゅをたすけてね!
 はやっ」
必死に何かを叫んでいた成体れいむが踏みつぶされる。



「お里」
いきなり声をかけられ、お里は一瞬身を固めた。
急に力を込められた仔れいむが、ゆげぇと唸る。
「爺や! ……爺やぁ!!」
見慣れた姿に安堵したのもつかの間、
爺やの顔色と、その右の手が持つまりさの、
おかしな体の破れかたにお里が悲鳴を上げる。

「お山のお使い様じゃ、お役目ば果たして頂かんといかん。
 ワシが絞めりゃ、よう春を呼んでくださるうえに、
 村のもんのやるかごとう苦しみはせん。
 はよぅ、れいむ様ばくれろぃ」
土気色の顔で、お里の目を見ず、爺やはうわごとの様に呟く。
その服はゆっくり一匹どころの返り血ではなかった。

お里は初めて爺やを恐いと思った。
思わずれいむを爺やから遠ざけるようかばうと、
この仔ゆっくりが、爺やの手に持つまりさの残骸、いや、あたり全ての悲鳴を上げる同族を、もみあげを揺らして、
せわしなげに目玉を動かして楽しそうに見ている事に気付いた。

「ゆぷぷぷっ! れいみゅのまねして、にんげんさんのむらにくるからだよっ!
 ゆっくりはんっせいっしてね! ゆっぷぷぷぷー!!」

(れいむが笑うちょる。狂うてしもうたか)
そう思うと同時に、お里は本能的に走り出した。
「お里ぉっ!」
後ろで爺やが、悲痛な声音で呼ぶ。

「お許しを! お許しを!」
そう叫びながら、何度も柄杓で湯をすくっては
赤ん坊ありすにかけ、天に響く叫びを上げさせるおばさんを尻目に、
お里はれいむを抱いて走る。
先にお湯をかけられたありすの、
瑠璃よりも綺麗な両の目は、白濁していた。

ゆっくり村に太鼓の音が腹に響く。
(まちごうちょる、こげん春の呼び方はまちごうちょる)
「ゆんやぁー! おやまにいくのやだぁー!!」
仔れいむは次第にむずがって、お里の腕から抜けようとする。

爺や、それに2,3人の大人が追ってくる。
辺りは一面の雪壁で、子供の背ではどこに何があるかも見えない。
しかしお里には、仔れいむが嫌がれば嫌がるほどに
お山に近づいている事が分かっていた。
(お山の神さんにれいむを帰します、爺やの分も謝ります)

白い雪の中を、泣き叫ぶ小さなれいむを抱いた少女が流れてゆく。


お山に着いてしまえば、爺やと毎日潜っていたお里にとって大人たちを置いてゆくのは造作も無かった。

雪は村の倍ほども積もっていたが
所々に見える狐の道を頼りに、お里は確実に足場を見つけて動いた。
軽々としたお里ほどの体なら、雪に沈む事も無い。

しかし、ただ怒りわめく仔れいむは、
常に爺やたちにお里の居場所を教え続けた。
「ゆんやぁー!! くちょじじい!! はるのおひめさま! とっととれいみゅをたすけにきてね!!」
「こりゃ、おまえはお山のお使いじゃろう。
 お山でなんを嫌がることがある」 
「ばかぁぁぁー!! おねえしゃんのばかぁぁー!!」
「噛むな、痛いき、お山の神さんも見ておられる」

小声で仔れいむをなだめなだめ、着いた場所は、お山の祠だった。



<六>

ここへは決して入ってはならぬと爺やに教えられた。
秋にれいむを見つけたのは、ちょうどこの祠から
まっすぐ外に歩いた川岸であった事を思い出しながら、
ほんのり雪で明るい浅い洞の奥にある、小さな祠の前に小さなれいむを置く。
れいむを見つけたあの日は、あんなに何もかもが上手く行っていたのに。


「お山の神さん、こんたびはお山のお使い様に村の人が
 申し開きののうござります事ばし申し上げやした、
 れいむだけでもお山にお帰し致します、
 なにとぞ、なにとぞ爺やの儀ば許してくだしゃんせ」
お里が一心に、よく覚えぬ言葉で拝むと、
左の壁下の石が乾いた音を立てて動いた。


「ゆっくりしていってね!!」
「……ゆっくりさま?」
石の下の空間から、お里の腰まで程もある大きなゆっくりまりさが、挨拶するかのように顔を出した。
その後に続いて、巨大なれいむよりやや小さめの、しかし十分巨大なれいむが3匹現れ、お里を囲んだ。
顔にかかる風からすると、石の下はもっと大きな空洞があるようだ。

お里はとてもびっくりしたが、しかし大きなゆっくり達の笑顔は今まで見たゆっくり達の笑顔と何も変わらない
心の底からの笑顔である事に安心した。
「ああ、ようござり申した、こちらがお預かり申しておりゃした
 お使いさまの仔です、お山にお帰しいたします」

祠の隅にちょこなんと腰掛け、
騒ぎ疲れて荒い息をついている仔れいむを抱き上げ、
膝を付いて大きなまりさに渡す。

「ゆぷぷぷぷっ! ちょーどあまあま…… いやおちびちゃんにあいたかったのぜぇ~~ん」
「ゆっくりさんどばっ…… ゆっくりいっしょにあそぼうね!」
「ゆぅ~ん? おかざりがないよ~?」
にこやかに、大きなまりさとれいむ達は仔れいむに近づく。

「ゆぴぎゃああー!! やぎゃあー!! にんげんさんとっととたすけてぇー!!」
仔れいむが祠に響き渡る叫び声をあげる。

「れいむ、なぜに暴れる。
 大きなお使いさまも喜んでおられる」
仔れいむは首をふりふり、柔らかく小さなもみあげで強くお里の手を叩く。
歯を食いしばり、激昂して暴れ泣く姿が、
先ほどお湯をかけられていたありすと重なり、お里は嫌な予感がした。

背伸びしたまりさがれいむを受け取った。
途端に肉の弾ける音と、いやと言うほど聞いた悲鳴が乾いた洞に響く。


お使い様がれいむを喰った。
「ゆんぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

やっと治りかけていたれいむのあんよが、無残にも引き千切られていた。
「ゆっふぅ~! はるさんがくるまでは このあじにかぎるのぜぇ~い」
音を立ててのれいむの小さな足を何度も噛んでいる。

それを見た他の3匹の大れいむ様たちは地団太を踏み、
その仔をよこせと言わんばかりにゆんゆんと鳴いた。
仔れいむの足を喰った大まりさは、金色のもみあげ手に持つ仔の髪飾りを、音を立てて食いちぎった。
お里がつたないながらも一生懸命につくろった髪飾りが、唾液と共に汚れた地面に吐き捨てられる。

「れいみゅのかわゆいかわゆいおかざりぃー!!」
「ゆぷぷぷぷっ! にんげんさんからおくりものなんてなまっいきっだよ!」
「これでたべやすくなったねっ!」

ひどく嬉しそうな声を上げ、大人のゆっくりたちは仔に襲い掛かる。
「えーえんにゆっきゅりしたくなかったら、とっととはるさんよんでね!」
「ふゆさんがいなくなったら、あまあまたいむをかんがえなおしてあげてもいいよっ!」

「おねえしゃぁぁーん! たしゅけてえええ!!」
洞が割れそうなほどの絶叫がもう一度響き渡ったとき、
呆然としていたお里はようやく我にかえった。


(……お使い様もれいむで春ぅ呼びなさるか)
言いようの無い怒りがお里の胸に沸いた。

そばにある石ころを持つと、後先考えずに
背中を向けた巨大れいむの背に突き刺す。

不意の衝撃に、どう、と転がり、もんどりうって悲鳴を上げる大きなれいむ。
それを呆然と見ていた右端のれいむの口はしに、
繕い跡が残った服の切れ端、祠の中でもつややかに光る黒髪を見て、
お里は更に激昂した。

「ゆんっ?」
不思議そうに見上げたその顔に思い切り石を投げつけると、熟れ柿を踏むような音がした。
同時にこのれいむは聞いた事の無いような大きな悲鳴を上げ痙攣する。
残るまりさともう一匹のれいむはあっという間に石の下に潜ってしまった。

後には熱く荒い息をつく少女と、延々と春を呼び続ける1匹のお使い、
お山の底へ帰ったお使い。
そして横腹と両足のえぐりとられた、頭の毛の無い仔れいむが残された。


頬をすりよせ抱き上げた仔れいむは半狂乱になり、目の前にあるお里の顔に
何度も頭をぶつけた。
鼻に思い切り、でこが当たって、思わず涙が出る。
ごめんよう、ごめんようと仔れいむに謝る。

祠のそばに置いていれば、れいむは殺められてしまう。
それでも村には今さら戻れぬ。
それでもこのままではれいむはのうなってしまう。

お山の寒さは静かにお里と仔れいむの温かみを奪っていった。


混乱する頭で、とにかく洞の中にいれば、
少しは寒さがしのげると考え、お里は祠のそばに座った。
震える仔れいむを抱きしめ、声の限りに子守歌を唄い、
傍でのた打ち回るお使い様たちの鳴き声を聞かないようにする。

ふと、影が差す。
懐かしい、それでも聞きたくない声がする。
爺やが来た。

「お里や、一人でここにきちゃぁいかんゆうたろうがぃ」
爺やがつとめて、怯える少女に優しく話しかける。
後ろの2人は、祠と、洞の中の惨状に気後れしてか、
入り口のあたりで戸惑っている。

爺やがゆっくりと近づいてくる。
「れぇ、れぇむ、れいむと一緒じゃった」
お里が顔をくしゃくしゃにして、恐怖と安心のない交ぜになった声を出す。
「ほうかほうか、お使いさまと一緒じゃったか。
 そりゃ大丈夫じゃ。
 おまけにもうお二方も春をお呼びになられとる。
 立派なもんじゃ、じきに春の神さんの目ぇもお覚めになる」

静かな爺やの声に、お里は大声をあげた。
「ちがぁぁぁぁう!! ちがぁぁぁう!!」
「なんが違うか!!」

初めて聞く爺やの怒った声に、泣きじゃくっていたお里はひしと固まった。
静まり返った洞に、痛みで呻く仔れいむと、大きなれいむ達の泣き声、
お里のぼろ着をれいむのもみあげが力なく叩く音が響く。

恐ろしいほど静かな声が、背後の二人の名を呼ぶ。
「吉兵衛どん、良吉どん、うちの孫は一人で祠までゆき、
 お山の神さんの見ておられる前で、
 立派にお使いさま方のお役目ば手伝うた。
 けしてお山を怒らせることはしちょらん。
 村のもんにも迷惑はかけとらん。
 ええか?」

「お、おおよ、たいしたもんじゃ」
「うむ、立派じゃ、ささ、お里坊も村へ帰ろ」
急いでうなずいた大人たちは、少しずつお里たちに近づいてゆく。

皮は剥かれ、顔は醜く歪み、腹の中身が漏れ出ている、お山の小さなお使い。
爺やが、自分の強張った指をそうっと震えるまんじゅうから外していくのを感じながら、
お里はどこかこっけいに禿げた仔ゆっくりの顔だけを見続けていた。


仔れいむが何かを必死に叫んでいるが、何も聞こえない。
吉兵衛どんも何か声をかけてくるが、何も聞こえない。
良吉どのは、息も絶え絶えに倒れていた大きなゆっくりさまの背中の傷を、
力を込めて押し広げていたが、気にも留めなかった。
ただ、手に残ったれいむの暖かさと、
爺やの手からこちらに注がれるれいむの目しか、お里には分からなかった。

「れいむ、すまなんだ」
ほとんど口も動かせずに呟いた言葉は仔れいむに届いたのだろうか。
咽喉の潰れた仔ゆっくりは、何の加減か、うるんだ目でお里を見据え、
絞められる間際に、よく響くかぼそい声を出した。
「ばいばい」
騒ぐ事も泣き叫ぶ事も無かった。



<七>

お里が村に帰ってきてから3日が立つ。
お山の祠の一件以来、お里は何も口にしていない。
爺やは何度も孫娘に話しかけたが、
ただお山の向こうをうつろに見る目は応えなかった。

あの祭りを経ても命を奪う鋭い風は未だに強く、
太陽の光はどうしようもないほどに弱く、
村にはただ、暗い暗い澱みがあった。


ふと、いつも吹き込む氷混じりの空気とは違う匂いを感じ、
お里は立ち上がった。
爺やは3日3晩の寝ずの看病にも疲れ、
孫娘の横でうとうとしている。
爺やを起こさぬように、音を立てずに家を出る。
夜が明ける前の深い藍色が村を包んでいる。

また、違う風が吹いた。
柔らかく暖かで、生まれたての草の匂いのする風。
どこかで山犬が高らかに鳴く。
ゆるゆるとお月さまが沈む。
静かに、力強く、薄桃色の太陽が雲をかき分けて登ってくる。
あちらこちらの家から人の起きだす気配がする。
お山のどこかで生き物たちのうごめく感じがする。
大きな風が、お山の上から巻き起こった。




春だ。

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