ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0640 ラストれいむロストホープ
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ankoss
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※独自設定垂れ流し
あるところに、とてもとてもゆっくりとした群があった。
それは人里離れた山の中、谷の奥にあった。
「ゆっくりしていってね!」
朝になれば穏やかなゆっくりたちの声が響く。
れいむはのどかに歌い、まりさは狩りにいそしみ、ありすはおうちをとかいはにコーディ
ネートし、ぱちゅりーはその知識でみんなを導いた。
自分勝手にひとりじめしようとするゆっくりはいない。人間に無謀な挑戦を試みるゆっく
りもいない。
みんなみんな、ひとりだけゆっくりするのだけなく、みんながゆっくりすることを望み、
願い、励んでいた。
そんな群れに転機が訪れる。
ある時、ぱちゅりーが気がついた画期的なごはんの入手方法。
「むきゅ! にがいくさも、むーしゃむーしゃしてからはきだせば、おちびちゃんもおい
しくたべられるわ!」
ゆっくりは食べたものを餡子に変えることができる。むーしゃむーしゃして呑み込む手前
でうまく吐き出せば、まずい草も少しだけ甘みを含んだ「おいしいごはん」へと変わるの
だ。
群の食糧事情は劇的に改善された。山の草花、ほとんどあらゆるものがおいしく食べられ
るようになったのだ。つらい冬ごもりも生存率が飛躍的にあがった。
群はどんどん大きくなり、みんなの笑顔も広がった。
しあわせで、ゆっくりとした時間。それがいつまでも続く。そう、誰もが信じていた。
そんなある日のことだった。
「むきゅ……ぱちゅはとってもゆっくりできたわ……」
群で一番長生きしていたぱちゅりーが、永遠にゆっくりした。野生には珍しい、寿命を迎
えての大往生だった。
それを皮切りに、一匹、また一匹と群のゆっくり達は永遠にゆっくりしてしまった。
そして。
気づけば、あれだけ大きかった群れはなくなっていた。
たた一匹生き残ったのは、ゆっくりれいむ。
れいむは絶望していた。あれだけゆっくりした群れ。その多くの死を看取り、墓を作り続
けて磨耗したれいむはすっかり荒んでしまっていた。
「みんないなくなっちゃったよ……だからもう、れいむはどうなってもいいよ……」
そう言って、れいむは群れについての話を締めくくった。
「……ゆっくりしにしては、ずいぶんと潔く達観したものだね」
加工場工場長はつぶやいた。
ここは加工場の工場長室。透明な箱に収められ、群れ最後のれいむは抵抗する様子もその
気さえも見せず、ただただ絶望していた。
ラストれいむロストホープ
「さて。どうだい、我が加工場は?」
れいむは答えない。反応すらしない。
工場長はため息を吐く。普通のゆっくりならおびえてもいいはずの状況なのだ。
れいむは今、透明の箱に入れられたまま工場長に運ばれている。
一人と一匹がいるのは、加工場の生産セクションだ。
「んほおおおおおおお!」
「やべでええええ! もうあがぢゃんうみだぐないいいいい!」
れいぱーありすの嬌声とれいむの悲鳴。ぬちゃぬちゃという卑猥でおぞましい交尾の音色。
茎に生る赤ゆっくりは誕生の挨拶をする間もなく、ベルトコンベアの上に落ち加工施設へ
と運ばれていく。れいぱーとれいむにはそれぞれオレンジジュース注入用のチューブが刺
さっており、力つきることはない。
あたりを占める光景も騒音も、加工場ではありふれたものだ。
そしてそれを見て、恐怖しないゆっくりなどまずいない。
防音加工も施されていない透明な箱の中、周囲の狂騒をれいむは目と耳で存分に味わって
いるはずだ。それなのに、虚ろな瞳は何も写していないかのよう。その身をぴくりと動か
しもしない。
だが、
「君の群れの滅んだ理由を当ててみせようか?」
工場長のその言葉には反応した。
透明な箱の中、れいむはゆっくりと向きを変え、工場長の目を見る。
なにも写していないかに見える漆黒の瞳に、今は疑問の光が揺れている。
工場長は満足げにうなずくと、あたりをぐるりと見回してから答えた。
「君の群れでは新しいゆっくりが産まれなくなった。だからゆっくりと衰退した。そうだ
ね?」
「そ、そうだよ! あかちゃんがうまれなくなっちゃったんだよ……」
れいむはうなだれる。
ゆっくりした群れだった。通常なら大量のゆっくりが死滅する冬ごもりでもその数を減ら
さず、食料の不安もまるでない。争いもなければ人間の領域を侵すような無謀なゆっくり
もいない。
穏やかな群れだった。
そんな群れの中、積極的にすっきりーしようとするものが減っていった。そして、すっき
りーしても赤ちゃんが生らないことが相次いだ。その原因は不明だった。それゆえにどう
しようもなかった。
完璧に思える群れを滅ぼしたのは、新しい命が産まれないことだったのだ。
「どうして群れには赤ゆっくりが産まれなくなったかわかるかい?」
「ゆうう……わからないよ……」
「まわりを見てごらん」
辺りではあいかわらず、無数のれいぱーありすが無数のれいむを犯し続けている。
次から次へ絶えることなく赤ゆっくりが産まれ続けている。
れいむの群れにはもたらされなかった命。それが無造作に、機械的に、しかし大量に発生
し続けている。
だが、そんな光景を見てゆっくりの抱く想いは同じ。
「ぜんぜんゆっくりしてないよ……」
れいむは当然の答えを返した。
工場長は笑みで答えた。
「そう。君の群れと違ってこいつらはぜんぜんゆっくりしていないね!」
「そうだよ……ゆっくりしていないのに、どうしてあかちゃんがうまれるの……?」
「れいむ。そこが勘違いの元だ。ゆっくりしてないからこそ、たくさん赤ゆっくりが産ま
れるるんだよ!」
「ゆううっ!?」
れいむは混乱した。
ゆっくりというナマモノにとって、ゆっくりすることこそ至上にして最優先の命題。それ
を果たせない方が「ゆっくりできることの象徴」とも言える赤ゆっくりをたくさん授かる
などあり得ない。
それが、ゆっくりにとっての常識。
だが、加工場での常識は違った。
「君たちゆっくりはよく言うね。『赤ちゃんはゆっくりできる』、と」
「そ、そうだよ! あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!」
「こいつらはゆっくりしていないね?」
「ぜんぜんゆっくりしていないよ!」
「その通り。したがって、こいつらはゆっくりしたがっている。ゆっくりできる赤ゆっく
りを強烈に望んでいる。だからこんなに産まれるんだ」
「ゆううううっ!?」
ゆっくりできないからたくさん赤ゆっくりが生まれる。
それはゆっくりには全くなかった発想だった。
「で、でもみんな! あかちゃんほしくないっていってるよ!」
れいむの指摘通り、れいぱーにおそわれているれいむはいずれもあかちゃんを産みたくな
いと言っている。
「やべでえええ! もううみだぐないいいい!」
「すっきりはもういやああああああ!」
「あがぢゃん……ゆっぐ……あがぢゃんとおわかれするの、もうやだよおおおお!」
大嫌いなれいぱーに無理矢理生まされるのだから当然だ。しかも生まれた赤ゆっくりは産
まれたそばからベルトコンベアで運ばれ、ろくに顔を見ることすらできない。赤ゆっくり
達が生き残ることなどないことは、さすがの餡子脳でも想像しているしている。
「君は恵まれた群れにいたからわからないかもしれないけどね。ゆっくりっていうのは、
本来わがままなんだよ。苦しい。つらい。ゆっくりしたい。口では赤ちゃんは生みたくな
いと思っていても、産まれた子がどんな運命をたどるか知っていても……自分がゆっくり
したいと願いの方を優先する。だから産む。赤ちゃんはゆっくりできるものだからね」
れいむは見た。
どの母れいむも、にんっしんした瞬間だけほんの少しゆっくりした顔をするのだ。
そして直後、赤ゆっくりが生まれ落ちた瞬間に絶望する。
そんな愚かな繰り返しがまわりでずっと起きている。
「そんな……みんなゆっくりしていたから、あかちゃんうまれなかったの……そんなのっ
て、ないよ……」
れいむはうなだれた。滅んだ群れへの絶望をさらに深くしたようだ。
「君の群れが滅んだ理由はそれだけじゃないよ」
れいむの顔にさらに深く影が差す。そんなれいむを、工場長はにっこり笑って眺めていた。
*
*
*
「ゆわあ……」
次に運ばれた施設で、れいむは感嘆の声を上げた。
先ほどの生産セクションとは打って変わって静かな部屋だった。
幅は人間二人が余裕をもってすれ違えるほどの細長い作りだ。長い壁の片面はガラス張り
になっており、ガラスの向こうは格子状に仕切られている。そして格子のマス目ひとつひ
とつに、穏やかな笑みを浮かべて眠る赤ゆっくりがいるのだ。
「どうだい、れいむ。この赤ゆっくりたちは?」
「とってもゆっくりしてるよ! でも……ちょっといたそうだよ」
赤ゆっくりの頭にはビニール性のチューブが突き刺さっているのだ。れいむが見咎めたの
はそれだった。
「ああ、それは痛くないんだ。そこから栄養と高濃度の『ゆんどるふぃん』がそそぎ込ま
れている」
「ゆんどるふぃん?」
「ゆっくりがしあわせを感じたときに検出される餡子脳内物質。それを科学的に合成して
作り出したものだ」
「ゆ? ゆゆ?」
「れいむにもわかるように言えば……とてもゆっくりできるものがあの管から出てるんだ。
つまりあれは親ゆっくりの茎のようなものだよ」
れいむは納得がいかないようだったが、赤ゆっくりの穏やかな笑顔を見ているうちに気に
ならなくなってきたようだ。
「ゆゆ~ん……この子たち、いつうまれるの?」
「いや、産まれない」
「ゆゆ?」
「『ゆんどるふぃん』を一定期間赤ゆっくりに注ぐと、赤ゆっくりは『さあ、おたべなさ
い』をしたゆっくりにきわめて近い味になる。その状態になった時点で真空パックして出
荷だ。加工場の新製品『ゆんどるふぃん赤ゆ』として、ね」
「む、むずかしくてわからないよ!」
「あの赤ゆっくりは、あとでむーしゃむーしゃされるんだ」
工場長は口を大きく開いて閉じて、食べるまねをした。
れいむは震えた。
「どぼじでぞんなごどずるのおおおお!?」
「ここが加工場だからだよ」
簡潔かつ明快すぎる答えにれいむは絶句した。
「さて、さきほどの話の続きだ。ゆっくりはゆっくりを求める。親ゆっくりはゆっくりを
求める。だから赤ゆっくりを産む。だが、赤ゆっくりの方はどうだろう? どこに産まれ
たがると思う?」
「ゆ、ゆっくりできるところだよ!」
「そうだね。だから加工場でたくさん産まれる」
「か、かこうじょうはゆっくりできないよ!」
「その通りだ。でもね、見てごらん? この部屋の赤ゆっくり達は実にゆっくりしている
だろう?」
れいむは言葉に詰まってしまう。
赤ゆっくりの穏やかな笑顔は、ゆっくりしていることのなによりの証明。
理屈ではなく本能が工場長の言葉を肯定していた。
「人間には、『子供は親を選べない』なんて言葉がある。だが、思いこみのナマモノであ
るゆっくりは違う。赤ゆっくりは産まれる場所を選ぶことができる。よりゆっくりできる
場所に産まれ落ちようとするんだ」
れいむはうなだれている。工場長の笑みは深くなった。
「『ゆんどるふぃん赤ゆ』を生産しはじめてから、加工場全体の生産効率は飛躍的に上が
ったよ」
そして、工場長はれいむをつれて次の部屋へ向かった。
*
*
*
次に訪れたのは殺風景な部屋だった。
コンクリートで打ちっぱなしの無機質な壁と天井。
床もまたコンクリートだったが、こちらはにぎやかだ。キリ、ハンマー、包丁にナイフに
アルコールランプ。様々な虐待道具が並べられている。
工場長はれいむを透明な箱から取り出すと、部屋の床へと落とした。
「ゆっ……!」
落とされた衝撃にうめきはしたものの、動こうとはしなかった。加工場で見てきたもの、
知ったことのショックが大きく、自失しているのだ
だが、
「さて、れいむ。それじゃあ最後に君の群れが滅んだ本当の理由を教えてあげよう」
工場長の言葉にれいむの瞳は輝きを取り戻した。
「ゆ、ゆゆ!? どうしてなの!? しってるの!?」
「知っているさ。もっとも、仮説に過ぎないけどね」
工場長は指を立て、得意げに語り出す。
「今まで見せてきたように、ゆっくりは親の『ゆっくりしたいという願い』と、赤ゆっく
りの『ゆっくりしたいという願い』、二つによって生まれる」
「れいむのむれだって、とってもゆっくりしていたし、みんなあかちゃんをほしがってた
よ!」
「そうだね。でも、親ゆっくりと赤ゆっくり、どちらの願いも加工場のゆっくりほど強く
ない」
「ゆ、ゆゆ! そ、それは……!」
れいむは反論できない。
群れはとてもゆっくりしていた。十分過ぎるほどゆっくりしていたのだから、加工場のゆ
っくりほどゆっくりを求めていない。
だから、加工場の親ゆっくりの願いが勝つ。
群れはゆっくりとしていた。だが、加工場のあの部屋で赤ゆっくりが見せた笑顔。あれほ
どゆっくりした笑顔は、群れでもなかなか見ることができなかった。
だから、赤ゆっくりは加工場に産まれることの方を望んでしまう。
「仮説に過ぎないが、一日あたりにゆっくりが産まれる総量は制限があるらしい。だから、
加工場でたくさん産まれる分、君の群れでは産まれなくなるわけだ」
「そんな……そんな……!」
「つまり、一言で言えば、だ。君の群れは、加工場に負けたんだよ」
「ゆわあああああああああ!!」
はれいむにとって到底受け入れらないことだった。
加工場。餡子脳の奥に刻まれた場所。ゆっくりにとってもっともゆっくりできない地獄。
そんなところにゆっくりできる赤ちゃんを、産まれる前から奪われてしまい、そのせいで
群れを失ったなんて。
「どぼじでぞんなごどずるのおおおお!? れいむたち、なんにもわるいことしてないの
にいいいいい!?」
あまりにも理不尽だった。不条理だった。不公平だった。
れいむの餡子の奥からの、魂の慟哭だった。
「悪いことをしていない? とんでもない。おまえ達みたいなゆっくりが一番迷惑なんだ
よ」
れいむの魂の叫びを、工場長は一笑に付した。
「おまえ等みたいに善良な面して増えるゆっくりが一番やっかいだ。ゲスはまだましだ。
人間に挑んでくるから場所の把握ができる。駆除もしやすい。勝手に自滅することだって
ある。だが善良な群れは別だ。人間に見つからず、ひっそりと暮らし、そのくせやたらと
増える。普通のゆっくりが食えないものまでどうにかして食べやがる。人間がその存在に
気がついた時には、大抵山の自然は取り返しもつかないくらい壊されている。数が多すぎ
て駆除も困難だ」
「ゆ、ゆぐぐ……れいむたちは、わるくない……わるくないのにぃ……!」
「難しい言葉が多くてよくわかってないみたいだな。わかるように言ってやる。おまえら
は存在しているだけで迷惑だ。善良かゲスかの区別なく邪魔だ。おまえらはこの加工場で
食べ物として存在する以外、居場所なんてないんだよ!」
れいむは人間の言うことがほとんど理解できなかった。
だが、その意図だけは伝わった。
「いらない」
そう言われたのだ。
それが悔しくて、悲しくて、でも言い返す言葉が思いつかない。
れいむは泣きながら工場長をにらむだけだった。
「その中でもおまえは特に許しがたい」
「れ、れいむはなにも……」
「ゆっくりってやつは絶滅しない。どれだけ駆除しても、半年もあれば前以上の数に戻り
やがる。その理由は最近になってようやくわかった」
突然、工場長はれいむを蹴りとばした。
「ゆぐううっ!?」
ものすごい勢いでれいむは飛び、コンクリートの壁に叩きつけられた。
普通のゆっくりなら間違いなく皮が破れ餡子が漏れだし、「永遠にゆっくり」してしまう
こと間違いない、容赦のない蹴りだった。
だが、れいむは、
「ゆぐうう……いだい……いだいよぉ……」
蹴られた場所とコンクリートの壁に激突した部分が内出餡で黒ずみはしたものの、その命
に別状は無かった。
「群れで最後に生き残ったゆっくりは、とても死ににくくなる。普通のゆっくりなら死ぬ
ようなダメージでも平気で回復しやがる」
「へいきじゃ……ないよお……ぐげえっ!?」
答える間もなくハンマーでたたきつぶされた。
今度こそ体が破れ、餡子が漏れ出す。目玉も飛び出した
だが、それなのに、
「いだい……いだい……いだいよお……」
れいむはゆっくりと回復していった。
漏れ出た餡子はひとりでに体内に戻り、小麦粉もオレンジジュースなしで皮もふさがって
いく。飛び出した目玉すらも戻っていく。れみりゃも及ばないほどの超回復だった。
「死なない。死なないなあ、お前は」
「やべぢぇ……やべぢぇええ……」
れいむはずりずりと治りきらない体を引きずり、工場長から離れようとする。
しかし閉ざされた部屋の中、逃げ場などない。
無様だった。
滅んだ群れに絶望して達観したゆっくりは、もはやどこにもいない。
工場長はそんな哀れなれいむを追いもせず眺めていた。
「さてれいむ、今お前はゆっくりしたいと思ってるな?」
「ゆっぐじ……ゆっぐじじだいよお……ゆっぐじざぜでよおおお……!」
「さっき言ったことは覚えているか? 赤ゆっくりは、親のゆっくりしたいという願いと
子のゆっくりしたいという願いで産まれる。お前はゆっくりしたいと願い、ここはゆっく
りできる加工場だ。そして、お前は群れ最後のれいむだ。そうすると、おもしろいことが
起こる」
れいむは工場長の言葉など餡子脳に入ってこないでいた。
ただ、ひどくゆっくりできない予感にさいなまれていた。
そして、それは現実化した。
「ゆ、ゆゆううう!?」
突然、れいむの頭からにょきにょきと茎が生え、ぽんぽんが膨らんだ。
「どぼじであがぢゃんでぎぢゃうのおおおお!?」
れいむは植物型にんっしんと胎生型にんっしんを同時にしたのだ。
「最後に残ったゆっくりは限りなく不死になり、ゆっくりしたいと強烈に願うだけで赤ゆ
っくりを大量に生み出す。それがゆっくりが絶滅しない理由だ」
「あ、あかちゃん……ゆっくり、ゆっくりしていってね!」
産まれたばかりの新しい命に、れいむは自らの状況も忘れ心奪われる。
赤ゆっくりとは、ゆっくりにとって理屈抜きでゆっくりできるものなのだ。
だから、次に目に入った出来事は受け入れられなかった。
想像もできなかった。
赤ゆっくりの生った茎が、突然燃え出すなんて。
「ゆううう!? ひさん、ゆっくりしないできえてね! あかちゃんが! あかちゃんが
ああああ!!」
火を消そうとれいむはごろごろと転げ回る。
工場長はたった今れいむの茎を燃え上がらせたライターを捨てると、再びハンマーを持ち
上げた。
そして、じっくりとねらいを定め、れいむの膨らんだぽんぽんへと叩きつけた。
「ゆっぶぶぶぶうう!」
れいむのあにゃるから液状のあんこが吹き出した。うんうんだけではない。髪の毛とお飾
りが混じっている。砕かれた胎生型にんっしんの赤ゆっくりだ。
「れいむ。群れの最後の一匹の、特別なれいむ。残念ながら、加工場にとってお前は邪魔
者だ」
「ゆああ……あがぢゃん……あがぢゃん……」
「放っておけば野良や野生のゆっくりが増えてゆっくりの食品イメージが悪くなる。常識
を越えてゆっくりを生み出すが、生まれるのは生命力が強いだけで食品としての価値が低
いクズばかり。加工場では使いものにならない」
「はじめでの……ゆっぐじじああがぢゃんだっだのにぃ……!」
「だからお前の利用価値は、虐待されることだけ。お前のその特別な状態は、過去の例で
は約一ヶ月間続く。その間、楽しませてもらう。この愉悦は加工場の工場長だけの特権だ。
お前みたいのは稀少ではないが、見つけられるのは稀だからな」
「ゆぐあああ……」
泣きぬれるれいむを前に、工場長はあらたな虐待道具を手にする。
「絶望したな? ゆっくりすることを強烈に願ったな? また、生まれるぞ」
「ゆぶうっ!?」
再び、れいむのぽんぽんが膨らみ、頭から茎が生えて鈴なりに赤ゆっくりが生った。
間髪いれず、工場長はれいむのまむまむにロケット花火数本を突っ込むと火をつけた。
れいむが反応する間もなく、ロケット花火は炸裂した。
「ゆっ……ぶええええ!?」
今度は口からお飾り混じりの餡子が吐き出された。
普通のゆっくりなら間違いなく致命傷。だが、死なない。このれいむは決して死ぬことが
ない。そして子を宿す能力も失わない。その特殊性こそが、ゆっくりが滅びない理由。種
としてのしぶとさの証。
「どんどん絶望し、ゆっくりを望んで子を宿せ。そのためにわざわざ加工場を案内してや
ったんだからな」
工場長の笑みが深くなった。普段は厳密な製品管理のために思った通りの虐待など許され
ない。そもそも、こんなに死ににくいゆっくりなど他にいない。普通では不可能な虐待が
一ヶ月の間好きなだけ楽しめるのだ。
「ゆっくりしていってね!」
工場長はれいむの頭から茎をむしり取ると、赤ゆっくりごとれいむに叩きつけた。
「あがぢゃん! あがぢゃあああん!」
れいむの悲痛な叫びに酔いしれる。滅多に手に入らない、群れ最後のれいむ。
これから一ヶ月間の夢のように楽しい日々を想像し、工場長はゆっくりと微笑んだ。
了
by触発あき
・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 163 バトルゆ虐!
ふたば系ゆっくりいじめ 172 とてもゆっくりした蛇口
ふたば系ゆっくりいじめ 180 ゆっくりばけてでるよ!
ふたば系ゆっくりいじめ 181 ゆっくりばけてでるよ!後日談
ふたば系ゆっくりいじめ 199 ゆっくりたねをまいてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 201 ゆっくりはじけてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 204 餡小話の感想れいむ・その後
ふたば系ゆっくりいじめ 211 むかしなつかしゆーどろ遊び
ふたば系ゆっくりいじめ 213 制裁は誰がために
ふたば系ゆっくりいじめ 233 どすらりー
ふたば系ゆっくりいじめ 465 おぼうしをおいかけて
ふたば系ゆっくりいじめ 469 おぼうしをぶん投げて
ふたば系ゆっくりいじめ 478 おぼうしのなかにあったもの
ふたば系ゆっくりいじめ 513 ネリアン
上記以前の過去作品一覧は下記作品に収録
ふたば系ゆっくりいじめ 151 ゆっくりみわけてね!
あるところに、とてもとてもゆっくりとした群があった。
それは人里離れた山の中、谷の奥にあった。
「ゆっくりしていってね!」
朝になれば穏やかなゆっくりたちの声が響く。
れいむはのどかに歌い、まりさは狩りにいそしみ、ありすはおうちをとかいはにコーディ
ネートし、ぱちゅりーはその知識でみんなを導いた。
自分勝手にひとりじめしようとするゆっくりはいない。人間に無謀な挑戦を試みるゆっく
りもいない。
みんなみんな、ひとりだけゆっくりするのだけなく、みんながゆっくりすることを望み、
願い、励んでいた。
そんな群れに転機が訪れる。
ある時、ぱちゅりーが気がついた画期的なごはんの入手方法。
「むきゅ! にがいくさも、むーしゃむーしゃしてからはきだせば、おちびちゃんもおい
しくたべられるわ!」
ゆっくりは食べたものを餡子に変えることができる。むーしゃむーしゃして呑み込む手前
でうまく吐き出せば、まずい草も少しだけ甘みを含んだ「おいしいごはん」へと変わるの
だ。
群の食糧事情は劇的に改善された。山の草花、ほとんどあらゆるものがおいしく食べられ
るようになったのだ。つらい冬ごもりも生存率が飛躍的にあがった。
群はどんどん大きくなり、みんなの笑顔も広がった。
しあわせで、ゆっくりとした時間。それがいつまでも続く。そう、誰もが信じていた。
そんなある日のことだった。
「むきゅ……ぱちゅはとってもゆっくりできたわ……」
群で一番長生きしていたぱちゅりーが、永遠にゆっくりした。野生には珍しい、寿命を迎
えての大往生だった。
それを皮切りに、一匹、また一匹と群のゆっくり達は永遠にゆっくりしてしまった。
そして。
気づけば、あれだけ大きかった群れはなくなっていた。
たた一匹生き残ったのは、ゆっくりれいむ。
れいむは絶望していた。あれだけゆっくりした群れ。その多くの死を看取り、墓を作り続
けて磨耗したれいむはすっかり荒んでしまっていた。
「みんないなくなっちゃったよ……だからもう、れいむはどうなってもいいよ……」
そう言って、れいむは群れについての話を締めくくった。
「……ゆっくりしにしては、ずいぶんと潔く達観したものだね」
加工場工場長はつぶやいた。
ここは加工場の工場長室。透明な箱に収められ、群れ最後のれいむは抵抗する様子もその
気さえも見せず、ただただ絶望していた。
ラストれいむロストホープ
「さて。どうだい、我が加工場は?」
れいむは答えない。反応すらしない。
工場長はため息を吐く。普通のゆっくりならおびえてもいいはずの状況なのだ。
れいむは今、透明の箱に入れられたまま工場長に運ばれている。
一人と一匹がいるのは、加工場の生産セクションだ。
「んほおおおおおおお!」
「やべでええええ! もうあがぢゃんうみだぐないいいいい!」
れいぱーありすの嬌声とれいむの悲鳴。ぬちゃぬちゃという卑猥でおぞましい交尾の音色。
茎に生る赤ゆっくりは誕生の挨拶をする間もなく、ベルトコンベアの上に落ち加工施設へ
と運ばれていく。れいぱーとれいむにはそれぞれオレンジジュース注入用のチューブが刺
さっており、力つきることはない。
あたりを占める光景も騒音も、加工場ではありふれたものだ。
そしてそれを見て、恐怖しないゆっくりなどまずいない。
防音加工も施されていない透明な箱の中、周囲の狂騒をれいむは目と耳で存分に味わって
いるはずだ。それなのに、虚ろな瞳は何も写していないかのよう。その身をぴくりと動か
しもしない。
だが、
「君の群れの滅んだ理由を当ててみせようか?」
工場長のその言葉には反応した。
透明な箱の中、れいむはゆっくりと向きを変え、工場長の目を見る。
なにも写していないかに見える漆黒の瞳に、今は疑問の光が揺れている。
工場長は満足げにうなずくと、あたりをぐるりと見回してから答えた。
「君の群れでは新しいゆっくりが産まれなくなった。だからゆっくりと衰退した。そうだ
ね?」
「そ、そうだよ! あかちゃんがうまれなくなっちゃったんだよ……」
れいむはうなだれる。
ゆっくりした群れだった。通常なら大量のゆっくりが死滅する冬ごもりでもその数を減ら
さず、食料の不安もまるでない。争いもなければ人間の領域を侵すような無謀なゆっくり
もいない。
穏やかな群れだった。
そんな群れの中、積極的にすっきりーしようとするものが減っていった。そして、すっき
りーしても赤ちゃんが生らないことが相次いだ。その原因は不明だった。それゆえにどう
しようもなかった。
完璧に思える群れを滅ぼしたのは、新しい命が産まれないことだったのだ。
「どうして群れには赤ゆっくりが産まれなくなったかわかるかい?」
「ゆうう……わからないよ……」
「まわりを見てごらん」
辺りではあいかわらず、無数のれいぱーありすが無数のれいむを犯し続けている。
次から次へ絶えることなく赤ゆっくりが産まれ続けている。
れいむの群れにはもたらされなかった命。それが無造作に、機械的に、しかし大量に発生
し続けている。
だが、そんな光景を見てゆっくりの抱く想いは同じ。
「ぜんぜんゆっくりしてないよ……」
れいむは当然の答えを返した。
工場長は笑みで答えた。
「そう。君の群れと違ってこいつらはぜんぜんゆっくりしていないね!」
「そうだよ……ゆっくりしていないのに、どうしてあかちゃんがうまれるの……?」
「れいむ。そこが勘違いの元だ。ゆっくりしてないからこそ、たくさん赤ゆっくりが産ま
れるるんだよ!」
「ゆううっ!?」
れいむは混乱した。
ゆっくりというナマモノにとって、ゆっくりすることこそ至上にして最優先の命題。それ
を果たせない方が「ゆっくりできることの象徴」とも言える赤ゆっくりをたくさん授かる
などあり得ない。
それが、ゆっくりにとっての常識。
だが、加工場での常識は違った。
「君たちゆっくりはよく言うね。『赤ちゃんはゆっくりできる』、と」
「そ、そうだよ! あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!」
「こいつらはゆっくりしていないね?」
「ぜんぜんゆっくりしていないよ!」
「その通り。したがって、こいつらはゆっくりしたがっている。ゆっくりできる赤ゆっく
りを強烈に望んでいる。だからこんなに産まれるんだ」
「ゆううううっ!?」
ゆっくりできないからたくさん赤ゆっくりが生まれる。
それはゆっくりには全くなかった発想だった。
「で、でもみんな! あかちゃんほしくないっていってるよ!」
れいむの指摘通り、れいぱーにおそわれているれいむはいずれもあかちゃんを産みたくな
いと言っている。
「やべでえええ! もううみだぐないいいい!」
「すっきりはもういやああああああ!」
「あがぢゃん……ゆっぐ……あがぢゃんとおわかれするの、もうやだよおおおお!」
大嫌いなれいぱーに無理矢理生まされるのだから当然だ。しかも生まれた赤ゆっくりは産
まれたそばからベルトコンベアで運ばれ、ろくに顔を見ることすらできない。赤ゆっくり
達が生き残ることなどないことは、さすがの餡子脳でも想像しているしている。
「君は恵まれた群れにいたからわからないかもしれないけどね。ゆっくりっていうのは、
本来わがままなんだよ。苦しい。つらい。ゆっくりしたい。口では赤ちゃんは生みたくな
いと思っていても、産まれた子がどんな運命をたどるか知っていても……自分がゆっくり
したいと願いの方を優先する。だから産む。赤ちゃんはゆっくりできるものだからね」
れいむは見た。
どの母れいむも、にんっしんした瞬間だけほんの少しゆっくりした顔をするのだ。
そして直後、赤ゆっくりが生まれ落ちた瞬間に絶望する。
そんな愚かな繰り返しがまわりでずっと起きている。
「そんな……みんなゆっくりしていたから、あかちゃんうまれなかったの……そんなのっ
て、ないよ……」
れいむはうなだれた。滅んだ群れへの絶望をさらに深くしたようだ。
「君の群れが滅んだ理由はそれだけじゃないよ」
れいむの顔にさらに深く影が差す。そんなれいむを、工場長はにっこり笑って眺めていた。
*
*
*
「ゆわあ……」
次に運ばれた施設で、れいむは感嘆の声を上げた。
先ほどの生産セクションとは打って変わって静かな部屋だった。
幅は人間二人が余裕をもってすれ違えるほどの細長い作りだ。長い壁の片面はガラス張り
になっており、ガラスの向こうは格子状に仕切られている。そして格子のマス目ひとつひ
とつに、穏やかな笑みを浮かべて眠る赤ゆっくりがいるのだ。
「どうだい、れいむ。この赤ゆっくりたちは?」
「とってもゆっくりしてるよ! でも……ちょっといたそうだよ」
赤ゆっくりの頭にはビニール性のチューブが突き刺さっているのだ。れいむが見咎めたの
はそれだった。
「ああ、それは痛くないんだ。そこから栄養と高濃度の『ゆんどるふぃん』がそそぎ込ま
れている」
「ゆんどるふぃん?」
「ゆっくりがしあわせを感じたときに検出される餡子脳内物質。それを科学的に合成して
作り出したものだ」
「ゆ? ゆゆ?」
「れいむにもわかるように言えば……とてもゆっくりできるものがあの管から出てるんだ。
つまりあれは親ゆっくりの茎のようなものだよ」
れいむは納得がいかないようだったが、赤ゆっくりの穏やかな笑顔を見ているうちに気に
ならなくなってきたようだ。
「ゆゆ~ん……この子たち、いつうまれるの?」
「いや、産まれない」
「ゆゆ?」
「『ゆんどるふぃん』を一定期間赤ゆっくりに注ぐと、赤ゆっくりは『さあ、おたべなさ
い』をしたゆっくりにきわめて近い味になる。その状態になった時点で真空パックして出
荷だ。加工場の新製品『ゆんどるふぃん赤ゆ』として、ね」
「む、むずかしくてわからないよ!」
「あの赤ゆっくりは、あとでむーしゃむーしゃされるんだ」
工場長は口を大きく開いて閉じて、食べるまねをした。
れいむは震えた。
「どぼじでぞんなごどずるのおおおお!?」
「ここが加工場だからだよ」
簡潔かつ明快すぎる答えにれいむは絶句した。
「さて、さきほどの話の続きだ。ゆっくりはゆっくりを求める。親ゆっくりはゆっくりを
求める。だから赤ゆっくりを産む。だが、赤ゆっくりの方はどうだろう? どこに産まれ
たがると思う?」
「ゆ、ゆっくりできるところだよ!」
「そうだね。だから加工場でたくさん産まれる」
「か、かこうじょうはゆっくりできないよ!」
「その通りだ。でもね、見てごらん? この部屋の赤ゆっくり達は実にゆっくりしている
だろう?」
れいむは言葉に詰まってしまう。
赤ゆっくりの穏やかな笑顔は、ゆっくりしていることのなによりの証明。
理屈ではなく本能が工場長の言葉を肯定していた。
「人間には、『子供は親を選べない』なんて言葉がある。だが、思いこみのナマモノであ
るゆっくりは違う。赤ゆっくりは産まれる場所を選ぶことができる。よりゆっくりできる
場所に産まれ落ちようとするんだ」
れいむはうなだれている。工場長の笑みは深くなった。
「『ゆんどるふぃん赤ゆ』を生産しはじめてから、加工場全体の生産効率は飛躍的に上が
ったよ」
そして、工場長はれいむをつれて次の部屋へ向かった。
*
*
*
次に訪れたのは殺風景な部屋だった。
コンクリートで打ちっぱなしの無機質な壁と天井。
床もまたコンクリートだったが、こちらはにぎやかだ。キリ、ハンマー、包丁にナイフに
アルコールランプ。様々な虐待道具が並べられている。
工場長はれいむを透明な箱から取り出すと、部屋の床へと落とした。
「ゆっ……!」
落とされた衝撃にうめきはしたものの、動こうとはしなかった。加工場で見てきたもの、
知ったことのショックが大きく、自失しているのだ
だが、
「さて、れいむ。それじゃあ最後に君の群れが滅んだ本当の理由を教えてあげよう」
工場長の言葉にれいむの瞳は輝きを取り戻した。
「ゆ、ゆゆ!? どうしてなの!? しってるの!?」
「知っているさ。もっとも、仮説に過ぎないけどね」
工場長は指を立て、得意げに語り出す。
「今まで見せてきたように、ゆっくりは親の『ゆっくりしたいという願い』と、赤ゆっく
りの『ゆっくりしたいという願い』、二つによって生まれる」
「れいむのむれだって、とってもゆっくりしていたし、みんなあかちゃんをほしがってた
よ!」
「そうだね。でも、親ゆっくりと赤ゆっくり、どちらの願いも加工場のゆっくりほど強く
ない」
「ゆ、ゆゆ! そ、それは……!」
れいむは反論できない。
群れはとてもゆっくりしていた。十分過ぎるほどゆっくりしていたのだから、加工場のゆ
っくりほどゆっくりを求めていない。
だから、加工場の親ゆっくりの願いが勝つ。
群れはゆっくりとしていた。だが、加工場のあの部屋で赤ゆっくりが見せた笑顔。あれほ
どゆっくりした笑顔は、群れでもなかなか見ることができなかった。
だから、赤ゆっくりは加工場に産まれることの方を望んでしまう。
「仮説に過ぎないが、一日あたりにゆっくりが産まれる総量は制限があるらしい。だから、
加工場でたくさん産まれる分、君の群れでは産まれなくなるわけだ」
「そんな……そんな……!」
「つまり、一言で言えば、だ。君の群れは、加工場に負けたんだよ」
「ゆわあああああああああ!!」
はれいむにとって到底受け入れらないことだった。
加工場。餡子脳の奥に刻まれた場所。ゆっくりにとってもっともゆっくりできない地獄。
そんなところにゆっくりできる赤ちゃんを、産まれる前から奪われてしまい、そのせいで
群れを失ったなんて。
「どぼじでぞんなごどずるのおおおお!? れいむたち、なんにもわるいことしてないの
にいいいいい!?」
あまりにも理不尽だった。不条理だった。不公平だった。
れいむの餡子の奥からの、魂の慟哭だった。
「悪いことをしていない? とんでもない。おまえ達みたいなゆっくりが一番迷惑なんだ
よ」
れいむの魂の叫びを、工場長は一笑に付した。
「おまえ等みたいに善良な面して増えるゆっくりが一番やっかいだ。ゲスはまだましだ。
人間に挑んでくるから場所の把握ができる。駆除もしやすい。勝手に自滅することだって
ある。だが善良な群れは別だ。人間に見つからず、ひっそりと暮らし、そのくせやたらと
増える。普通のゆっくりが食えないものまでどうにかして食べやがる。人間がその存在に
気がついた時には、大抵山の自然は取り返しもつかないくらい壊されている。数が多すぎ
て駆除も困難だ」
「ゆ、ゆぐぐ……れいむたちは、わるくない……わるくないのにぃ……!」
「難しい言葉が多くてよくわかってないみたいだな。わかるように言ってやる。おまえら
は存在しているだけで迷惑だ。善良かゲスかの区別なく邪魔だ。おまえらはこの加工場で
食べ物として存在する以外、居場所なんてないんだよ!」
れいむは人間の言うことがほとんど理解できなかった。
だが、その意図だけは伝わった。
「いらない」
そう言われたのだ。
それが悔しくて、悲しくて、でも言い返す言葉が思いつかない。
れいむは泣きながら工場長をにらむだけだった。
「その中でもおまえは特に許しがたい」
「れ、れいむはなにも……」
「ゆっくりってやつは絶滅しない。どれだけ駆除しても、半年もあれば前以上の数に戻り
やがる。その理由は最近になってようやくわかった」
突然、工場長はれいむを蹴りとばした。
「ゆぐううっ!?」
ものすごい勢いでれいむは飛び、コンクリートの壁に叩きつけられた。
普通のゆっくりなら間違いなく皮が破れ餡子が漏れだし、「永遠にゆっくり」してしまう
こと間違いない、容赦のない蹴りだった。
だが、れいむは、
「ゆぐうう……いだい……いだいよぉ……」
蹴られた場所とコンクリートの壁に激突した部分が内出餡で黒ずみはしたものの、その命
に別状は無かった。
「群れで最後に生き残ったゆっくりは、とても死ににくくなる。普通のゆっくりなら死ぬ
ようなダメージでも平気で回復しやがる」
「へいきじゃ……ないよお……ぐげえっ!?」
答える間もなくハンマーでたたきつぶされた。
今度こそ体が破れ、餡子が漏れ出す。目玉も飛び出した
だが、それなのに、
「いだい……いだい……いだいよお……」
れいむはゆっくりと回復していった。
漏れ出た餡子はひとりでに体内に戻り、小麦粉もオレンジジュースなしで皮もふさがって
いく。飛び出した目玉すらも戻っていく。れみりゃも及ばないほどの超回復だった。
「死なない。死なないなあ、お前は」
「やべぢぇ……やべぢぇええ……」
れいむはずりずりと治りきらない体を引きずり、工場長から離れようとする。
しかし閉ざされた部屋の中、逃げ場などない。
無様だった。
滅んだ群れに絶望して達観したゆっくりは、もはやどこにもいない。
工場長はそんな哀れなれいむを追いもせず眺めていた。
「さてれいむ、今お前はゆっくりしたいと思ってるな?」
「ゆっぐじ……ゆっぐじじだいよお……ゆっぐじざぜでよおおお……!」
「さっき言ったことは覚えているか? 赤ゆっくりは、親のゆっくりしたいという願いと
子のゆっくりしたいという願いで産まれる。お前はゆっくりしたいと願い、ここはゆっく
りできる加工場だ。そして、お前は群れ最後のれいむだ。そうすると、おもしろいことが
起こる」
れいむは工場長の言葉など餡子脳に入ってこないでいた。
ただ、ひどくゆっくりできない予感にさいなまれていた。
そして、それは現実化した。
「ゆ、ゆゆううう!?」
突然、れいむの頭からにょきにょきと茎が生え、ぽんぽんが膨らんだ。
「どぼじであがぢゃんでぎぢゃうのおおおお!?」
れいむは植物型にんっしんと胎生型にんっしんを同時にしたのだ。
「最後に残ったゆっくりは限りなく不死になり、ゆっくりしたいと強烈に願うだけで赤ゆ
っくりを大量に生み出す。それがゆっくりが絶滅しない理由だ」
「あ、あかちゃん……ゆっくり、ゆっくりしていってね!」
産まれたばかりの新しい命に、れいむは自らの状況も忘れ心奪われる。
赤ゆっくりとは、ゆっくりにとって理屈抜きでゆっくりできるものなのだ。
だから、次に目に入った出来事は受け入れられなかった。
想像もできなかった。
赤ゆっくりの生った茎が、突然燃え出すなんて。
「ゆううう!? ひさん、ゆっくりしないできえてね! あかちゃんが! あかちゃんが
ああああ!!」
火を消そうとれいむはごろごろと転げ回る。
工場長はたった今れいむの茎を燃え上がらせたライターを捨てると、再びハンマーを持ち
上げた。
そして、じっくりとねらいを定め、れいむの膨らんだぽんぽんへと叩きつけた。
「ゆっぶぶぶぶうう!」
れいむのあにゃるから液状のあんこが吹き出した。うんうんだけではない。髪の毛とお飾
りが混じっている。砕かれた胎生型にんっしんの赤ゆっくりだ。
「れいむ。群れの最後の一匹の、特別なれいむ。残念ながら、加工場にとってお前は邪魔
者だ」
「ゆああ……あがぢゃん……あがぢゃん……」
「放っておけば野良や野生のゆっくりが増えてゆっくりの食品イメージが悪くなる。常識
を越えてゆっくりを生み出すが、生まれるのは生命力が強いだけで食品としての価値が低
いクズばかり。加工場では使いものにならない」
「はじめでの……ゆっぐじじああがぢゃんだっだのにぃ……!」
「だからお前の利用価値は、虐待されることだけ。お前のその特別な状態は、過去の例で
は約一ヶ月間続く。その間、楽しませてもらう。この愉悦は加工場の工場長だけの特権だ。
お前みたいのは稀少ではないが、見つけられるのは稀だからな」
「ゆぐあああ……」
泣きぬれるれいむを前に、工場長はあらたな虐待道具を手にする。
「絶望したな? ゆっくりすることを強烈に願ったな? また、生まれるぞ」
「ゆぶうっ!?」
再び、れいむのぽんぽんが膨らみ、頭から茎が生えて鈴なりに赤ゆっくりが生った。
間髪いれず、工場長はれいむのまむまむにロケット花火数本を突っ込むと火をつけた。
れいむが反応する間もなく、ロケット花火は炸裂した。
「ゆっ……ぶええええ!?」
今度は口からお飾り混じりの餡子が吐き出された。
普通のゆっくりなら間違いなく致命傷。だが、死なない。このれいむは決して死ぬことが
ない。そして子を宿す能力も失わない。その特殊性こそが、ゆっくりが滅びない理由。種
としてのしぶとさの証。
「どんどん絶望し、ゆっくりを望んで子を宿せ。そのためにわざわざ加工場を案内してや
ったんだからな」
工場長の笑みが深くなった。普段は厳密な製品管理のために思った通りの虐待など許され
ない。そもそも、こんなに死ににくいゆっくりなど他にいない。普通では不可能な虐待が
一ヶ月の間好きなだけ楽しめるのだ。
「ゆっくりしていってね!」
工場長はれいむの頭から茎をむしり取ると、赤ゆっくりごとれいむに叩きつけた。
「あがぢゃん! あがぢゃあああん!」
れいむの悲痛な叫びに酔いしれる。滅多に手に入らない、群れ最後のれいむ。
これから一ヶ月間の夢のように楽しい日々を想像し、工場長はゆっくりと微笑んだ。
了
by触発あき
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ふたば系ゆっくりいじめ 163 バトルゆ虐!
ふたば系ゆっくりいじめ 172 とてもゆっくりした蛇口
ふたば系ゆっくりいじめ 180 ゆっくりばけてでるよ!
ふたば系ゆっくりいじめ 181 ゆっくりばけてでるよ!後日談
ふたば系ゆっくりいじめ 199 ゆっくりたねをまいてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 201 ゆっくりはじけてね!
ふたば系ゆっくりいじめ 204 餡小話の感想れいむ・その後
ふたば系ゆっくりいじめ 211 むかしなつかしゆーどろ遊び
ふたば系ゆっくりいじめ 213 制裁は誰がために
ふたば系ゆっくりいじめ 233 どすらりー
ふたば系ゆっくりいじめ 465 おぼうしをおいかけて
ふたば系ゆっくりいじめ 469 おぼうしをぶん投げて
ふたば系ゆっくりいじめ 478 おぼうしのなかにあったもの
ふたば系ゆっくりいじめ 513 ネリアン
上記以前の過去作品一覧は下記作品に収録
ふたば系ゆっくりいじめ 151 ゆっくりみわけてね!