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anko0366 町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~
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町人Aの憂鬱
【前書き】
* 初投稿。
* 幻想郷が舞台です。そこに住む"町人A"の物語。
* ゆっくりは割と標準設定に準拠ですが、ドスの設定が標準(?)と違います。(主にサイズ)
* 原作キャラがチョイ役で出てきます。
幻想郷の人里。
ここにAという名の男が居る。
歳は25、背丈は高く無愛想。
村はずれで果樹園と家庭菜園を営んでいる、農家である。
季節は秋の暮れ、初冬。
今年も男に仕事が舞い込んできた。
男は愛用のスコップを担ぎ、河童から買ったリュックを背負って山に行く。
それにしても今年は何だか憂鬱だ。
男はだるそうに山に入って行った。
Title : 町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~
Author: 旅人あき
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「Aは居るかい?」
白髪の老人が今年もやって来た。
見ると片腕が無い。珍しい人型だ。そんな人型を俺は一人知っている。
「じいさんか?何か用か?」
Aは無愛想に答える。
「何だ生きてたのか。ああ、今年も副業を頼みに来た」
「毎回言ってる気がするが、前置きがおかしくないか?」
先月顔を合わせたし、寿命はお前が先だろう、と思いながらも年寄りの話を聞き出した。
「そろそろ冬だから、森のゆっくり共を間引きして欲しいんだ」
そう、これがAの副業だ。
田畑を食い荒らす害獣であるゆっくりを、適正数まで間引く。
ゆっくりは数が増えると森から人里まで下りてくる。それが農家達の被害に繋がる訳だ。
だからこの農家達の元締めのじいさんが、有志や"そうで無い者"に依頼を行う。
畑に近い森に住むゆっくりを間引き、降りてこない様にする。
俺はじいさんに借りがあるから断われはしない。良い計算だ。
「まぁ別に構わんけどな」
「それは俺のセリフだ・・・」
このジジイは主語を抜く。略したのは"断わっても"だろう。
俺も主語を抜く。略したのは"受けても"。
時に無愛想に見える事もあるらしいが、気にしない。
日本語は美しい。
「で、報酬は?」
「米や味噌だ。お前の農園じゃ足りんだろう」
「ああ、それで良い」
これは毎年同じだ。俺の生活を把握している。だからまぁ農家の大将なんかやってられるんだが。
これで冬も寝て過ごせそうだ、と思っていたら後ろから誰か来た。
緑髪の女性で、巫女服を着ている。
「どちら様で?」
「初めまして。新しくこちらに越してきた守矢神社の者です」
そういえば妖怪の山に神社が出来た噂を聞いていた。
そこの巫女さんなんだろうか。変な髪飾りをしている。
「こちらがゆっくり仕置人のAです」
ジジイからの素敵な紹介を預かった俺を、守矢の使者はジロジロと見ている。なかなか可愛いと思う。
段々話が読めてきた。ジジイが連れて来たな。こんな村はずれに来るはずが無い。
「実は今日はAさんの家にも分社を建てて欲しくてお願いに来ました。守矢神社では2人の神を祭っており・・・」
なんか良く分からんが御利益の話を始め出した。面倒なのでああ良いですよと生返事をする。可愛いから許す。
「本当ですか?有難う御座います。機会があれば是非本社にお越しください」
「ああ、機会があればね」
「所で質問なんですが、ゆっくりを間引くというのはいつもしているんですか?」
「いや、秋と春だけしかやってないな」
「時間が掛かる物なんですか?」
「さぁなぁ、他は知らないが俺は1日で済ますから、そのぐらいじゃないかな」
「その日限りなんですか?」
「そうなるな」
「なるほど・・」
気のせいか緑巫女は俺を見下す様な憐れむ様な目で見初め
「つまりAさんは、"日雇い"さんなんですね(ニコッ)」
後で寺子屋の先生に聞いたが、日雇いというのは外の世界の蔑称らしい。思い出してもあの笑顔に腹が立つ。
あの巫女はいつか泣いたり笑ったりゆっくり出来なくしてやる。もとい○す。犯○。
だが俺は凡人。ただの町人。聞けば現人神な巫女に敵うはずは無い。
いっそ分社の前で祈ってみようか。願いが叶うかも知れない。
俺が今日憂鬱なのは、これが原因なのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
リュックを背負って山に入ったAは、紅葉が落ち始めた森を散策していた。
外の人間が忘れた森の原風景。紅葉落ちる終わりの秋。美しい。
だが今日探すのは景色では無く、ゆっくりの群れである。
村では秋と冬にゆっくりを間引いているが、これには理由がある。
ゆっくりは冬は穴や洞窟に籠る。籠ってその中で越冬をする。
冬の寒さに耐えれないからだ。
故に秋は越冬のための食糧を集める。つまり外に出ている時間が長い。見つけやすい訳だ。
また春も同様である。越冬を経て飢えているゆっくり達は、ここぞとばかりに餌を探しに行く。
秋と春は『狩り時』という訳だ。
森に入って30分、そうこうしている内に数匹のゆっくりれいむを見つけた。
もみじ色の落ち葉が多く木々が邪魔で見えにくいが、その中で動く肌色の物などゆっくりしかいない。
どうやら例年通り餌を探している様だ。近くに寄って行く。
「ゆ!? おきゃーしゃん!」
「ゆゆ? どうしたのおちびちゃん」
「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがいりゅよ!!」
赤ゆっくりが気付いた様だ。親れいむもこちらに気付いた。
「「「にんげんしゃん!! ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」
赤れいむ3、親れいむ1か。
まぁ個体数はどうでも良い。れいむ達に確認する。
「お前ら何してるんだ?」
「ゆゆ!? れいむちゃちは"かり"をしちぇるんだよ!」
「ふゆごもりにはくしゃしゃんがいっぴゃいいるんだよ!」
「おかあしゃんはかりのめいじんなんだよ!」
「ゆ! にんげんさんはあまあまをちょうだいね!!
れいむたちはかわいそうなんだよ!! むのうなにんげんさんだね!!」
最後のは親れいむだ。ああ良いだろう。
警戒心の無い親を持って哀れだな。
リュックサックを地面に置いて中に手を入れ、巾着袋を取り出す。
「よし あまあまをやろう」
干しぶどうを数個袋から取りだし、ゆっくりたちの前に撒く。
ゆっくりは見たこともない物を目にし、固まっている。
食い付かない所を不審に思っていると
「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがあまあまをくれちゃよ!」
「ゆあああ! おちびちゃんだめぇぇぇぇぇぇ!!
どくかもしれないでしょうぉぉぉぉ!
いつもいってるでしょぉぉぉぉぉ!
おかあさんがどくみするからゆっくりまっててね!!」
前言撤回だ。警戒心はあるらしい。人間が怖くないだけか。
地面の一粒を舌ですくい、咀嚼する親れいむ。
「むーしゃむーしゃ・・・ゆああ~~~~・・・
このまめさんとってもおいしいよ!!! うめ!! めっちゃうめ!!!」
うっとりしたと思ったら突然がっつきだす親れいむ。地面に落ちてた数個の干しぶどうを全て頬張る。
嫌悪感が全開で叩き潰したい衝動に駆られる。
この親れいむは全て食べやがったのだ。子供に残さずに。
「おきゃーしゃん・・・ れいむのぶんは?」
「おきゃーしゃんがじぇんぶたべちゃった」
「ゆゆ!? ごめんねおちびちゃんたち・・・おいしくてついぜんぶたべちゃったよ」
「おきゃーしゃんのびゃきゃぁぁぁぁぁ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」
「おきゃーしゃんだけじゅるいぃぃぃぃ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! おきゃーしゃんのくじゅぅぅ!! くじゅはしねぇぇぇ!!」
「どぼじでぞんなごどいぶのぉぉぉぉぉぉ!!! みんなのおがあざんでしょおおおおおおお!!!」
目の前で泣き喚きだすゆっくり共。私利私欲、雑言罵倒。
俺はこの光景を見ていつも思う。ゆっくりは神が作った人間の汚い部分の寄せ集めなんじゃないかと。
赤ゆに至ってはしーしーまでして悔しさを表している。人間の赤ん坊でもここまで醜悪じゃない。
地獄の縮図の様な光景を見て、毎度内心辟易する。
そんな中、俺は例年通り話を進める。
「泣くなゆっくり。まだ袋に一杯ある」
「ゆああ!! にんげんさんははやくおちびちゃんたちにあまあまをちょうだいね!!
あとれいむにもちょうだいね!!
ゆっくりしないではやくしてね!!」
「だが俺にも用がある。お前らが俺のお願いを聞いてくれたらな」
「おねがいをきくからはやくちょうだいね!!」
「約束は破るなよ。俺は鬼じゃないが約束を破る奴は嫌いだ」
そう言って袋の中から更に何個か取りだし、ゆっくり達に撒く。
それを見て親れいむと赤ゆ共は"まめ"を食い出す。
「ゆあああ!! おちびちゃん!! あまあまだよ!! ゆっくりたべてね!!
おかあさんにもちょうだいね!!」
「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」
干しぶどうなんか自然界に無い。普段虫や草を食ってるこいつらからしたらかなりのあまあまなんだろう。
赤ゆに至ってはうれしーしーをしている。潰したい。
もっととねだる馬鹿共を見て、ようやく本題に入る。ここまで仕込むのが大変だ。
俺に懐柔させるのが。
「そんじゃお願いを聞いてもらおうか」
「ゆゆ! なんでもいってねにんげんさん!!」
「じつはこの大きな袋(リュックサック)にはお野菜さんが入っててね。
クズ野菜で要らないから捨てる所を探してるんだ。
お前達の群れにやるから群れに案内してくれ」
「ゆゆ! そんなことならかんたんだよ!!
れいむのむれにあんないするよ!!
おやさいさんをくれるなんてにんげんさんはとってもゆっくりしてるね!!」
「ただ条件が有ってな。
ドスが居る大きな群れを探してるんだ。
お前の群れにドスは居るか?」
「れいむのむれにはドスがいるよ!!
あんないするからおやさいさんとあまあまをちょうだいね!!」
「よし案内してくれ」
俺の言葉尻がおかしい事に気付かない。面倒で雑になってしまったんだが、所詮餡子だ。
ぽよんぽよんと奇妙な音を出しながら跳ねて行く親れいむと赤ゆ共。
さて、いよいよ大詰めだ。
俺はこの重いリュックサックから解放される事を想像し、顔が緩んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
親れいむの後に続く赤ゆ達。その後に続く俺。
ガサガサと落ち葉を踏み敷く音がしていく。
が、何か音がおかしい。音が多い。
気配を感じ、後ろを振り向く。
「ゆぐ!!」
振り向くとそこにはゆっくりまりさが居た。
身体はデカイ。親だな。
帽子は膨らんでおり、どうやら餌が詰まっている用だ。
俺に見つかったまりさは俺の横をぴょんぴょんと急いで素通りし、先頭の親れいむを呼びとめる。
「れいむ!」
「ゆ?」
「「「おとーしゃん!」」」
親れいむの番の様だ。
「ゆゆ! どうしたのおとうさん」
「どうしたのじゃないのぜ! なんでにんげんさんといっしょにいるんだぜ!」
「このにんげんさんはあまあまさんをくれるんだよ! れいむのどれいなんだよ!!」
なるほどそういう認識か。これで憐れむ気もしなくて済む。
それにしてもこれはだぜまりさか。珍しい。
「なにいってるんだぜ! にんげんさんはどれいになんかならないのぜ!
ぎゃくにえいえんにゆっくりされちゃうんだぜ!
さっきのあまあまだってなにかのわななんだぜ!!」
どこかから覗いていたのか。それも最初の方から。
番のれいむが危ないというのに観察とは、ゲスなのかも知れないな。
だが頭は良い様だ。多少のゲス性は生きる上では必要だしな。
「まりさはしんぱいしょうだね! れいむはゆっくりしていてつよいんだよ!
にんげんさんはゆっくりできないくずだからよわいんだよ!
ゆっくりりかいしてね!!」
「れいむのほうこそゆっくりりかいするんだぜ!
それにこっちはむれのほうがくなんだぜ! どすにおこられるぜ!」
「ゆうう!!! れいむおこるよ!
にんげんさんはおやさいさんをくれるからつれていくんだよ!!
どすもれいむにかんしゃするにきまってるよ!!
これでれいむもむれのじゅうやくいりだよ!!!」
群れの重役か。
お花畑もここまで来ると羨ましい。このまりさに同情するよ。
「れいむはばかなんだぜ! どうなってもしらないのぜ!」
「まりさはばかだね! こんなおとーさんはいらないよ!」
「「「おとうしゃんはいりゃにゃいよ☆」」」
赤ゆの反応に驚いた。複雑な家庭の様だ。
結局親まりさが折れる形で、群れへの帰路に就いた。
俺に対してずっと警戒しているのか、一定の距離を保っているのは殊勝だ。
歩く事20分。
といってもゆっくりの速度だから、たいして離れていない。
どうやら群れに付いた様だ。
森の中、紅葉とその落ち葉が景色を覆っているが所々ゆっくりが見える。
親れいむに群れの中心まで案内させ、そこにリュックサックを置いて座り込み一息付いた。
中心は大きな木の様で、そこに続々と群れのゆっくり共が集まってくる。
また撒き餌の出番だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ゆゆ!むれについたよにんげんさん! はやくあまあまちょうだいね!!」
「「「ちょうだいにぇ!!」」」
クソ共が騒ぐ。野菜の事はもう頭に無いらしい。巾着袋からまた数個取りだし、その辺に撒く。
そうこうしているうちにゆっくり同士で会話が始まった。
「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」
「むーしゃむーしゃ、しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むきゅ、これはいったいどういうこと?」
「みてのとおりなんだぜ。れいむがにんげんさんをむれにつれてきたんだぜ」
「このにんげんさんはとかいはなの?」
「むきゅきゅ、にんげんさんはゆっくりできないっていったのに」
「なんでもおやさいさんをくれるらしいぜ」
「そうだよ!このどれいはおやさいさんをくれるからつれてきたんだよ!!
れいむのおかげだよ!!
これでれいむもむれのじゅうやくいりだね!!」
「「「おきゃーしゃんはえりゃいんだにぇ!! きゃわいきゅちぇごめんにぇ!!」」」
「むきゅう、あたまがいたくなってきたわ。にんげんさんはほんとうにおやさいさんをくれるの?」
「もりではおやさいさんはほとんどみないから、とかいはとしてはたべてみたいわ」
ああそうだろうよ。ただ中には野菜をたらふく食ったゆっくりもいるだろうが。
さて、そろそろ本題に入ろう。
「ああ、お前らに野菜をやるよ。ただ条件がある」
「むきゅ」
「じょうけん?」
「群れの数を確認したいから、全員を集めてくれ。当然ドスもな。
家にまだ野菜があるから、それを群れの数だけ持って来てやるかも知れん」
「むきゅ、おやさいさんはにんげんさんにとってもだいじなんでしょう?
どうしてわたしたちにくれるの?」
「人間が食べない様なクズ野菜だからだ。色が悪いとか、形が悪いとか。"食い残し"とか。
お前らなら食べるだろう。
このリュックサックに入ってるんだ」
「むきゅう、なるほどわかったわ。
いまはふゆごもりまえだからしょくりょうがほしいし、みんなをあつめるわ。
にんげんさん、ありがとう」
「おやさいさんはどんなあじなのかしら」
有難うか。確かに現世は地獄だしな。
森の重役らしいゆっくりぱちゅりーが群れの巣を周っている。
当然その位置を把握する。
ぞろぞろとゆっくりが集まってくる。
「とかいはのありすはぜんしゅるいたべたいわ」
「わかるよー、おやさいさんはゆっくりできるんだねー」
「おやさいさんがてにはいるのはたすかるみょん」
「むきゅ、にんげんさんみんなをよんできたわ」
ぱちゅりーに狩りに出ている奴がいないかを確認した所、今日はまりさ達のみだったらしい。
きけば今日は群れの全ゆっくりの休息日らしい。まりさの家は子供が多いため今日も出ていたそうだ。
ゆっくりにも休息日があるのに驚いた。作ったのはぱちゅ種だろう。
ざっと見渡して数は成体が40匹程。細かいのを入れれば100匹か。赤ゆ子ゆ親ゆの混成。上出来だ。
恐らくすっきり制限をしている群れだな。成体が多い。
「よし、それじゃあお野菜さんを渡す。
ただ一つお願いがある。
食べた事のある野菜があれば、それを教えてほしい。」
「むきゅ? どうしておしえるの?」
「気が向けば同じ野菜を持って来てやるからだ」
リュックサックから大きめの袋を取り出し、それを地面に向けて逆さまにする。
どさどさと落ちる野菜。
どれもこれも誰かの食い残しの様な野菜だ。
それを見て声が上がる。
「わかるよー、ちぇんはそのおやさいさんたべたことがあるよー」
「れいむもそのおやさいさんをたべたことがあるよ!」
「「「おいちかったにぇ!!」」」
「そうか、どこで食べたんだ?」
「やまをおりたところにはえてたよー、いっぱいはえてたよー」
「れいむもやまをおりたところでたべたよ!! とってもおいしかったよ!!
ぜんぶたべれなかったから、またいきたいよ!!」
「「「とっちぇもおいちかったにぇ!!」」」
そうか。
それとさっきのあまあまをもっとちょうだいね!!くちょじじぃ!!!とほざきやがる。
その食い残しは俺がジジイから証拠として引き取った物だ。
ジジイの話では、実際に被害が出たらしい。
そして一言付け加えた。「見つけたら制裁を頼む」と。
今年は念入りの方が良い様だ。
ふとだぜまりさを見ていたら、れいむが言うや否や顔を強張らせ巣の方へ走っていった。今回はあいつかな。
それを一瞥した後、今日最後の仕事を俺はやりだした。
「よし、こんだけだ」
「ゆゆ! ぜんぜんたりないよ!! ばかなの?しぬの?
はやくあまあまちょうだいね!!!!」
「「「あまあまよこちぇくちょじじぃ!!!!」」」
「これだけなんてとかいはじゃないわね。ぜんぜんたりないわ」
「むきゅ、たしかにこれだけじゃみんなにいきわたらないわ。」
「にんげんさんそのおおきなふくろはなんなんだみょん? ふくらんでるみょん」
「わかるよー、そのふくろにいっぱいはいってるんだねー。
ひとりじめはずるいねー」
ちぇんの一言で場が沸き立つ。なかなか勘が冴えてるな。
ああ、袋に"いっぱい"入ってるよ。
「ゆゆ! ぐずのどれいのにんげんさん!!ばかなの?しぬの?
はやくそのふくろからあまあまちょうだいね!!!!」
「そのふくろをひっくりかえせばいいんだねー、わかるよー」
「お前ら袋の中身が見たいのか?」
「みたいよー、なかみがほしいよー」
「とかいはならだしおしみせずにだすべきよ」
「はやくだすみょん!」
「分かった。お前らの選択だ。止めはせんよ」
元々俺がひっくり返す予定だったが、ご要望がある方がやりやすい。
俺はこれみよがしに立ち上がり、リュックサックを持ち上げ逆さにし、中身を地面に放り出す。
その様をゆっくり達が期待に満ちた目で見守る。
二つのバスケットボール程の大玉が地面に落ちる。
(ドサッ)
「いだっ!!」
「いだっ!!」
その瞬間、全ゆっくりが凍りついた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「う~~、いだいどぉ~~」
「う~~、いだいよ~~~」
中から出てきた2匹のゆっくり。それを見て周りのゆっくり達が悲鳴を上げる。
「「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」」」
「「「ゆぎぃぃぃぃ!! れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「ふらんもいるぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! わ"がら"な"い"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!」
「「「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」
外の世界で言うおーけすとらと言う奴だろうか。ゲスの悲鳴は心地良い。
顔がぐしゃぐしゃになっている様は心が踊る。
赤ゆ共は泣き喚き、おそろしーしーは当たり前。口から餡子を吐いている個体も居るな。
「んあああ!? あまあまだど~☆」
「あまあま~! ☆れみ☆りゃ☆うー!!」
「むきゅあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!どすぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
阿鼻叫喚。
ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんが宙を舞う。両方胴は無い。
どのゆっくりも逃げ出したいが、動いたら狙われそうで動けない様だ。蛇に睨まれた蛙か。
「あーあ、れみりゃとふらんに出くわすとは、お前ら永遠にゆっくりだな」
一人大きな声でつぶやく。ゆっくりによく分かる様、永遠にゆっくりと。
つまりお前らは今日死ぬのだと。
だが俺も鬼では無い。俺は"助け舟"を出してやった。
「よしお前ら、一人だけ助けてやる」
唖然とするゆっくり達。そのまま続けてやる。
「聞こえなかったか?
"生き残った奴"を一人だけ助けてやる。
さぁ頑張れ」
「にんげんさん、たすけるって?」
ゆっくり達は理解出来ていない様で、聞き返してくる。
聞き返したのはだぜまりさか、巣から戻ってきた様だ。
「まりさ、聞こえなかったか?
お前らのうち一人だけ助けてやる。
どのみちれみりゃとふらんが揃ったら、お前ら全員助からん。
中身の餡子を吸われてぽいぽいぽーいだ。
だけど偶然ここに俺が居るから、生き残った奴は"一人だけ"助けてやる」
「むきゅきゅ! もとはといえばにんげんさんのふくろからでてきたんでしょおぉぉぉぉ!
だいたいひとりだけってどういうことなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ざわめくゆっくりたち。ぱちゅ種が居るとやりにくいなやはり。
だが無視する。去年もそうだった。
「知らんよ。 言っただろ、逆さにしたのはお前らの選択だ。
それに俺は嘘は付かん。
生き残りたければ他のゆっくりを殺せば良いんじゃないか? 一人は助かるんだから。
そうだろうぱちゅりー?」
「むきゅうぅぅ!! ほ、ほかのゆっくりをころせるわけがないでしょおおおおお!!」
「じゃあ皆食われればいいんじゃないか。 お前らの選択だ。好きにしろ。
それとドス、お前も入ってるからな」
俺は目の前に居るゆっくり達のはるか後ろを見て、最後にそう言った。
ドスは驚いた顔でこちらを見、その後近寄って来た。
周りのゆっくりが間を空ける。
そしてちょうど、俺とドスは正対した。
「おどろいたよ。
にんげんさんにはどすがみえてるんだね。 ならゆっくりしてるんだね」
「そうだな。 俺はゆっくりしている」
「にんげんさんはどすすぱーくをしらないの?
れみりゃやふらんぐらいなら、どすすぱーくでたいじができるんだよ」
「ああそうなのか?なら好きにすればいい」
にへらにへら笑うドス。そういえば去年もこうだったな。
「ほんとうはぜんぶにんげんさんがしくんだんでしょ?
にんげんさん、あまりどすたちをおこらせないほうがいいよ。
どすはどすすぱーくをにんげんさんにうって、にんげんさんをたいじできるんだよ」
「ほう、そうなのか。なら好きにすればいい」
「・・・にんげんさんはばかなんだね。
どすはむれをまもらないといけないから、どすすぱーくをにんげんさんにうつよ!!」
みんなはなれてね、と続けるクソデブ饅頭。
ドスを支点にゆっくりたちが放射状に左右に分かれる。さしずめ俺を中心とした扇形だ。
俺を"たいじ"して、れみりゃとふらんも"たいじ"する算段か。
どおりでこの群れが成体が多い割に落ち着いている訳だ。普通は我先に逃げ出している。
「どすがにんげんさんをせいさいするよ! おちびちゃんはよくみていてね!!」
「「「ばかにゃにんげんしゃんはゆっくちちんじぇね!!!」」」
「わかるよー!! にんげんさんがもえるんだねーー!」
「こんだけしかおやさいさんをわたさないにんげんさんはせいさいしろみょん!!」
「みんなばかなんだぜ、にんげんさんにかなうはずがないんだぜ。
いなかものはこれだからいやなんだぜ・・・」
「ばかなんていうまりさはとかいはじゃないわね。 どすみたいなとかいはなゆっくりになりたいわ」
おのおの歓声が上がる。
よく見ると一部のゆっくりは枝を咥えている。臨戦態勢の様だ。
俺は必要事項を処理するため、相手を目測する。これが最後の作業だからな。
通常、ゆっくりは赤ゆがピンボール(直径3cm)程の大きさだ。
それが子ゆでソフトボール(直径10cm)程になり、成体でバレーボール大(直径25cm)程になる。
胎生妊娠中ならもう一回り大きくなる。
そしてドスと言われるまりさははまりさ種の変種だ。
体長が60cmほどを超えるとドスと呼ばれ出す。大体は最後は150cm辺りまで育つ。
それ以上の個体は殆ど居ない。越冬出来ずに死ぬからだ。
身体がでかい個体は、入る穴にも困る。1mの大穴など、掘れてもすぐに崩れてしまう。
ぱちゅ種指導による綿密な穴掘りか、大木を削って作った空洞に入るとかをしないと生き残れない。
育ち過ぎたドスの大半は冬に凍死する。
100cmを超えていたら、そいつは過酷なゆん生を乗り越えた、頭も回る大物という訳だ。
目の前のドスは体長およそ150cm。生存可能な最大クラスのサイズ。大物だ。
重量はおおよそ70kgぐらいか。成体ゆっくりの約100倍。跳躍も50cmは堅い。
普通のゆっくり達から見たらこのドスは文字通りバケモノだろう。
まず勝てるはずが無い。それは信頼もされる。お前らの世界ではな。
身長170cm後半のAとドスまりさが対峙する。
正対距離は約2m。とんがり帽子のせいでドスの方がAより全高が高い。
ドススパークはスパークキノコを使って熱線を放つドスまりさの魔法だ。
ゆっくりなら熱で燃えてしまう。捕食種も同じだ。
燃えると言うのはゆっくりにとっては致命傷であり、全身火傷の激痛のショックで即死もありえる。
人間でも大やけどを負う。場合によっては服が燃える。だが死にはしない。そこが大きく違う。
このデブは人間様と対峙した事が無いのだろう。哀れだ。
ふとさっきのだぜまりさを思い出したが、すぐに止めた。
俺は善意を持ってドスに一言伝える。
「ドス、先に言っておく。俺に攻撃しようとする度に片目を貰う」
「なにいってるの? どすのおめめはどすのものだよ。
にんげんさんはゆっくりどすすぱーくの"さび"になってね」
スパークには溜めがいるらしいが、俺の知っている個体で溜めの無い個体が居るから、無い物と考える。
俺はドスの動きだけを、ただだるそうに眺める。
ドスが帽子を動かし、中から何かを落とそうとする。
その瞬間、俺は"抜刀"した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
バズゥッ!!!!
「ゆぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
悲鳴を上げ、餡子を撒き散らしながらのたうち回るドス。
縦一文字に右目、顔面右部を大きく切り裂かれたドスは絶叫する。
ドスが帽子からきのこを落としたのが見えた瞬間、Aは背に担いだスコップを"抜刀"していた。
スコップ。
それは土を掘り起こす道具であり、またとても頑丈な"金属加工物"である。
薄く堅く、鋭利。
Aはこの道具が人間の首でも刎ね跳ばせる事を知っていた。
ドスの帽子には大きく切れ込みが入り、その様は真上からスコップに切られた事を表す。
一見ただのスコップだが、実は凶器。
文字通りAにとってスコップは"刀"なのである。
妖怪からの自衛目的にと練習を始めたこの"スコップ"は、今やゆっくり殺しの域にまで高められていた。
「ゆぎびぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"
い"だい"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」
「どすぅぅぅぅ!! すぱーくをうつのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
横からぱちゅりーが指示をする。顔面を切り開かれたドスに無茶を言う。
だがドスは涙を流し餡子を漏らし、のたうち回りながらもきのこを拾おうとする。
なかなかガッツがあるドスだが、顔中に変な汗と汁が出ていて気持ち悪い事この上無い。
俺は善意を持ってドスに一言伝える。
「いいのか? ドス」
「ゆふぅーーー! ゆふぅーーー! な"に"がっ"!!」
「いいのか? 両目を失ったら、生き残れないぞ」
「どずはぐずのにんげんざんをごろじで、ゆっぐりずるよ!!!」
「俺の動きが見えなかったんだろう?
なら次も見えない。
ゆっくりは人間には勝てないんだよ。
試したかったらそのきのこを拾えばいい。
次は左目を貰う」
ドスの動きが止まる。
人間に遭遇しなかっただけで、壮絶なゆん生を歩んできた筈だ。
こいつはもう分かっている。おそらくこいつに指示したぱちゅりーも。
まわりの成体ゆっくりも唖然としており、子ゆ赤ゆに至ってはドスの餡子を見てゆんゆん泣き喚いている。
俺は更に付け加える。
「ドス、俺は一人だけ助けてやる、と言った。
お前も含まれている」
「ゆふぅーー・・・ ゆふぅーー・・・ 」
「どすぅぅ!! きいちゃだめよ!!」
「ドス、死にたくないんだろう?」
「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」
「ドス、片目しかないお前じゃれみりゃはともかくふらんは無理だろう。 勿論俺を倒すのも無理だ。
だがもしお前が最後まで生き残れば、それで助かるんだ。
どうするかはお前の自由だ。
まぁ俺がこんなことを言うのもなんだが、
生き残る可能性が高い方に賭けた方が良いんじゃないのか? ドス。
"他人は他人"だろう?」
「う"~~~ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"~~~~!!!」
ドスは涙を流し涎を流し、左目を強く瞑って唸っている。葛藤しているんだろう。
一方のぱちゅりーは顔面が蒼白だ。もう悟ったのだろう。口に枝を咥えだした。笑いが出そうになる。
俺は上で旋回しながら待機していたれみりゃとふらんに合図をする。
あまあまが腹いっぱい食える、と1日断食させていたのだ。群れの一つ程度は食い荒らすだろう。
2匹の捕食者は急降下し、地面に群がる餌に飛びついて行った。
「(がぶがぶ)うう~~ あまい~~☆」
「ゆぴぃぃぃ!? ゆびっぎぃぎぎぎぎ・・・」
「ゆんああああぁぁぁぁぁ!! ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ゆああぁぁぁぁぁ!! きょわぃよぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆぅぅ! おちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の方に注目していたゆっくり共は、捕食者が降りてきた事に気付くのが遅れた。
まずはれみりゃが俺を案内したれいむの赤ゆの1匹に噛み付き、餡子を吸いだした。
ふらんは空を旋回し"品定め"をしている。
奇声を上げて白目を剥き痙攣する赤れいむ。それを見てしーしーを漏らしながら泣き喚く2匹の姉妹。
空を飛んでいたれみりゃが降りてきた事により、ドスの右手側のグループはパニックに陥っていた。
まぁどの道赤ゆが生き残る事は無い。せいぜい恐怖で震えて甘くなってくれ。
「みんな! ちがうほうこうににげるのよ!! そうすればたすかるわ!!」
「ゆゆ!! おちびちゃんたち!! ゆっくりついてきてね!!」
「ゆー!! ありすたちもにげるよ!!」
「「「みんな!! ゆっくりにげるよ!!」」」
ありすがゆっくり達に生存策を伝える。このありすは群れの重役かな?確かにそうだな。
それを聞いた一部のゆっくりの親子は逃げ始めた。良いぞその調子だ。
だから俺は付け加える。
「このふらんは俺から離れた奴を優先的に食う。
食われたい奴から逃げれば良い。お前らの自由だ。」
これは事実だ。そう仕込んだ。
案の定なんの命令もしていないのに、ふらんが逃げ出したゆっくりを追い出した。
「う~~~☆ ふらんもあまあまたべたいど~~☆ にげるやつはつまみぐいだど~~☆」
「じゃあこのおおきいのはれみりゃのぶんだど~~☆」
「ゆああああああああ!! こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ゆんあああああ!! にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
逃げ出したゆっくりと指示したありすが悲鳴を上げる。
だがもう遅い。四方に逃げたゆっくり達はみな"つまみ食い"をされ、足を無くすだろう。
成体ふらんが一匹居れば、どの道助からないのだ。食うのよりも嬲り殺すのが目的なのだから。
タックルされて身体を倒され、あんよを噛みちぎられ、それで一生が確定する。
ふらんは逃げる奴を食い荒らし、れみりゃは動いてない奴を食い荒らす。
ありすは自分の言った事で仲間が"つまみ食い"をされる様を見て、顔が青ざめていく。
ぱちゅりーはというと、えだを噛み締めて何かを観念した様だ。目が据わっている。
「ゆううううう!! ぱちゅりー!! なんとかしてね!!」
「ゆっくりしないではやくしてね!! れいむたちをたすけてね!!」
「ぱちゅりーはほんとにぐずだね!! ひとりでかりもできないしね!!」
「ありすのせいでふらんがきたよ!! ありすのせいでゆっくりできないよ!!」
「「「ありすとぱちゅりーはほんとゆっくりできないゆっくりだね!!」」」
「どぼじでそんなこというのぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ぱちぇもありすもがんばってるでしょぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」
「そうだみょん!! ぱちぇもありすもわるくないみょん!!」
ゆっくりに責められ泣き出すありす。質の悪い群れの様だ。みょんだけが味方をしている。こいつも重役か?
まぁゆっくりにとって「ゆっくりできないゆっくり」と言われるのはゲス以下、死に値するほどらしい。
そこまでこき下ろされたら泣き出すのも無理は無いか。ありす種はプライドが高い様だし。
まぁ俺には関係無い。
その一部始終を眺めた後、俺はドスを生温かい目で見つめていた。
ぱちゅりーと同じく目の据わったドスが満身創痍で動き出したからだ。
「(ブルブル)ゆ"ぅ"ぅ"~~ ・・・じにだぐないぃぃ・・・ どすは・・・」
『・・・!? どす!?』
「どすは、」
『だれか!! どすをとめて!』
「どすは、いきのこるよ!」
『みょん! どすをえださんでさしてぇぇぇ!! はやくぅぅぅぅ!』
「(パクツ)」
「!? わかったみょん!! どすうぅぅぅぅ!! ・・・!?」
ぱちゅりーが叫び、みょんが枝を咥えて突進する。異変に気付いた様だ。なかなか速い。
だが一歩早く、ドスはキノコを舌で取り口に含み、みょんの居るドスの左手側に向き直った。
ああ、位置が悪かったな。むしろ運か。
右手側に居れば、ドスには位置が分からなかったのにな。
カッ!
(ボッ)「「「「ゆぎぃぃぁぁああああああああ!!!!!」」」」
ドスはキノコを咥えると、身体を左手に半回転させ口元をみょんの正面に向けた。
予想通り溜めなど無かった。一瞬で眩い光が放たれ、みょんを含む左手のゆっくり達が燃え出す。
ドスから左手側のグループを牽き潰す様に、炎の軌跡が生まれていた。
「「ゆぎゅ"う"う"う"う"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!!!」」
「「あじゅい"い"い"い"い"い"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」
「「だずげでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」」
「「「「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」」」」
「「「「ぴぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」」」
赤ゆは即死。子ゆと成ゆは全身が炎に包まれ転げ回っている。
みょんも絶叫しながらのたうち回る。ぽよんぽよんという音では無く、バスンバスンと狂った様に。
ゆっくりの肌は人間よりも敏感らしい。ならばこの全身を包む炎は想像を絶する地獄だろう。
およそ左手側の9割が直撃、即死を免れた20匹程のゆっくりが独自のファイヤーダンスを踊りだす。
ゆっくりにとって火が付くと言うのは殆ど死を意味する。顔しかないゆっくりは自分で火を消せないからだ。
しーしーとうんうんを撒き散らしながら飛び跳ねるクソ共を見て、その様を楽しむ。
同時に山火事にならない様に、燃え出した枯れ葉を踏んで消火するのも忘れない。
そしてドスの右手側をAグループ、左手側をBグループとするなら、既に両方にパニックが起きていた。
A側はれみりゃが食い荒らし、B側は火炎地獄となっている。仲間割れも散見出来た。
もう終わりだろう。
A側に居た司令官と思われるぱちゅりー自身が、枝でありすを突き刺しているのだから。
(ザクゥッ!)
「ゆぎゅ"う"う"う"!! ぱちゅりーどぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」
「むきゅうぅぅぅぅぅ!! どすがいないいじょう、もうたすからないのよぉぉぉ!!!
ならぱちゅりーは、このえださんでみんなをころしていきのこるわぁぁぁぁ!!!
さいごのひとりになるのよぉぉぉぉぉぉ!!!」
むきゅきゅきゅきゅー、と笑いだすぱちゅりー。
そうだな。頑張れ。お前では無理そうだが。
「どぼじであ"り"ずな"の"お"ぉ"ぉ"ぉ"!!
ごうなっだのはでいぶのせきに"んでしょぉぉぉぉ!!
さぎにでいぶをさすべぎでしょぉ"ぉ"ぉ"!!」
流石成体、刺された程度ではまだ死なんか。言ってる事も一理ある。
まぁ言ってる事自体はゲスなんだが、この状況でゲス化しないゆっくりなどいない。
それを聞いたちぇん親子が枝を咥えてれいむに向きだした。
「「わかるよーー!! ぜんぶれいむのせきにんなんだよーー!!」」
「だれかぁぁぁぁ!! おちびちゃんをたずぶぎぃい!!」
まだ叫んでたのかお前。もう死んでるだろ。
2匹のちぇんの枝が左右かられいむの顔に突き刺さる。
引き抜かれた穴から餡子が漏れ、痛みで泣き喚くれいむ。
そしてそれをお構いなしに、付近のゆっくりがれいむに噛みつき出していった。
「れいむのせいだよ!! くずのれいむははやくしんでね!!」
「れいむがしねばたすかるんだよ!! ゆっくりしないでしんでね!!」
「「「くずのれいむ!! ゆっくりごろし!! ゆっくりできないれいむはゆっくりしないでしんでね!!」」」
「ゆぎぎぃぃぃぃ!! どぼじでこ"ん"な"こ"と"す"る"の"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!
や"べでぇぇぇぇぇ!! い"だい"い"い"い"い"い"い"い"!!!
ばでぃざばずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
皮を引っ張り引き千切り、中から餡子が漏れ出す。
逃げようと必死に飛び跳ねるが、飛び跳ねるごとに皮を噛みちぎられ餡子を撒き散らしている事に気付いていない。
すぐに飛べなくなり、顔の半分以上の皮を持って行かれたれいむが見えてきた。
「ゆ"べぇ"ぇ"!! だずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
口から残り少ない餡子を吐いて助けを求める親れいむ。
聞こえないかのごとく執拗に枝で殴る刺す噛みつく引き千切るをするまわりのゆっくり達。地獄絵図だ。
その様を見ていたれいむの赤ゆ2匹は、恐怖でうんうんとしーしーを垂れ流し、口から餡子を漏らして悶死していた。
ふとこいつの番のだぜまりさを探す。
少し離れた所で何かをしているが、よく見ると枯れ葉を集めてその中に隠れようとしていた。
無言で顔は必死だ。全然ゆっくりとしていないが、中々賢いな。
視線を戻すとB側はほぼ壊滅、生き残ったA側のゆっくりがドスを刺し殺そうと枝で突き刺しているのが見えた。
「むきゅうぅぅぅぅぅ!! みんなぁぁぁぁぁ!!
どすをころすのよぉぉぉぉ!!!
じゃないとどすにころされるわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「どすははやくしんでね!! れいむたちがいきのこるよ!!」(ザクッ!)
「いきのこるのはみょんだみょん!! みょんいがいはみんなしぬみょん!!」(ザクゥッ!)
「う~~☆ おっきなあまあまさんなんだど~☆」(ガブゥゥ・・・ブチィ!)
「い"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"」(ドスン!ドスン!)
「むきゅ!? どすぅぅぅぅ!! こっちこないでべぎゅ!!」(ブチャァ!)
「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサユサユサ)
「だずげでぇぇぇぇぇぇ!! だれがばでぃざをだずげでぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサ・・・)
いよいよ本当の地獄になってきた。
ドスを殺そうとするぱちゅりーがゆっくりを誘導し、れみりゃまでもがドスに噛みつき皮を剥いでいる。
痛みで飛び跳ねたドスがぱちゅりーを体半分踏み敷き、圧迫された生クリームが破裂してぱちゅを四散させた。
奥を見ると刺されてないありすがまりさをれいぷしている。すっきり制限で我慢もあったのだろう。
顔は恍惚、舌を大きく出してだらしなく涎を垂れ流すありす。
性欲全開でまりさを犯す様は反吐が出そうになる。しかも相手は子まりさだ。
「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」とありすが奇声を上げた後、まりさは餡子を吐きながら黒ずんで行った。
「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」
体力だけはあるクソデブが飛び跳ねる。だがもう身体の下半身は穴だらけだ。
飛び跳ねるだけで餡子が飛び出し、とうとう皮が裂け始めた。
裂けた状態で飛んだ瞬間、大きく皮が裂け餡子が盛大に飛び出した。
「い"ぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! たずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
「どすはしねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ザスッ!)
「ッッッばあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!! ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
もうあんよが裂かれ、飛べなくなったドスの左目にまりさが枝を突き刺す。
両目を失ったドスが絶叫する。この瞬間、ドスが生き残る可能性は消えた。
「おちびちゃん、ごめんねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「やべでおぎゃあしゃん"ん"ん"!! でいぶをがまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
甲高い悲鳴のする方を見ると、親れいむが子れいむを噛み潰そうとしていた。
すでに近くの赤ゆは誰かに噛み潰された様だ。無残に四散しており、誰の子で誰にされたかは容易に分かった。
ゆっくりは人間同様、子と親の体格差が大きい。子では勝てないだろう。
周辺では他人の子ゆっくりを殺し、また自分の子ゆっくりが他人に殺されるという光景が広がっていた。
殺しやすい相手から、赤の他人からという事なんだろう。
れみりゃはドスを食い荒らすのに夢中で、ふらんは逃げたゆっくりを嬲っている最中だ。
最後の一人になるべく、どのゆっくりも同族と殺しあっていた。笑いがこみ上げる。
そう、いつしか俺は、この光景を見ることだけが生き甲斐になっていた。
燃えさかるゆっくりたち。親子殺し、隣人殺し。強姦。暴行。罵倒。雑言。恐怖。苦悩。苦痛。諦観。
この地獄劇場が永遠に続けば良いと思いながら、俺は阿鼻叫喚を心行くまで堪能していた。
「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ガサガサガサガサ)
ありすのれいぷ宣誓が聞こえた。ふと見るとさっきぱちゅりーに刺されたありすだ。
カスタードを傷口から垂らしながら、枯れ葉の山にガサガサと突進していく。
狙いは隠れているだぜまりさの様だ。
まりさはというと心底嫌そうな顔をし、枯れ葉から出て枝を咥えて応戦しだした。
「どぼじでうけとめてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!」
「まりささまのつまはこのむれにくるまえにしんだれいむだけなんだぜ!!
れいぱーありすやげすのれいむはごめんなんだぜ!!」
「まりさはありすよりもれいむをえらんだぁぁぁぁぁぁ!!
ありすはむれのじゅうやくなのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「どすがわるいんだぜ!!
あのれいむがだんなをなくしたからつがいになってくれといってきたが、
きょひするならむれからでていけといったんだぜ!!
まりささまはしょうだくしたくなかったんだぜ!!」
「ならどうしてありすをえらばなかったのぉぉぉぉぉぉぉ!!
むれのおとなのゆっくりはつがいにならないとだめなのよぉぉぉぉ!!
まりさがれいむをえらんだからありすはいまだにひとりなのよぉぉぉぉぉぉ!!
ありすだってすっきりしたいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おまえみたいなげすなれいぱーといっしょになるくらいなら、
げすれいむとゆっくりのないゆっくりせいかつをおくるほうがましなんだぜ!!
おちびちゃんのきょういくにわるいんだぜ!!!」
「んはぁぁぁぁぁぁ!!
ならありすはまりさとまりさのこどもですっきりしてやるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすをこばんだばつなのよぉぉぉぉぉぉ!! んほぉぉぉぉぉぉぉ!!」
傷口からカスタードを垂れ流しながらもまりさを襲うありす。
顔は狂喜し舌を垂らして涎をふりまき、ぺにぺにを突き出して突進していく。
きっとまりさを気に入ってるんだろう。尋常じゃない執着ぶりだ。狂ってやがる。
このまままりさが負ければ、親子共々すっきりされてしまうだろう。
まあ俺には関係無いがな。
高みの見物をしていたら、逃げたゆっくりを食い終えたふらんが戻ってきた。
「う~~!! もっとあまあまくいたいど~~!!!」
「んほぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ゆぅぅ!? ゆううううううう!!!」
ふらんとありすに挟まれたまりさ。丁度一直線上だ。終わったな。
だが俺の期待と裏腹に、まりさは後ろのふらんの方に走り出した。
ふらんが慌てて急降下する。ありすもまりさを追い掛ける。
噛みつこうとするふらんの下を紙一重で滑り込み、そのまま枯れ葉に潜る。
ふらんはそのまま後ろにいたありすに激突する。
「ん"ほぉ"ぉ"ぉ"ぉ"んぶぎゅ!! い、いだい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
ありすに噛みつき、そのまま空高く舞い上がるふらん。
持ち上げたありすを空から落とす。俺が以前教えた「もっと甘くなる方法」をしている様だ。
「ゆ! おそらをとんでるみだばぎゃ!!」
べちゃぁ!!と墜落するありす。
あんよから地面に落ちた様で、傷口が裂けカスタードを撒き散らしていた。
悲鳴を上げるありす。それを見ていたれみりゃが、ちぇんを咥えながら寄って来た。
咥えているのは、どうやら畑を食い荒らしたちぇんの様だ。
しーしーを漏らしながら必死に牙から離れようともがいている。
「う~~☆ ふらんはなにをやってるんだど~~☆」
「う~~☆ そらからおとすとあまくなるんだど~~☆ おにいさんがいってたど~~☆」
「う~~☆ れみりゃもやるど~~☆」
「う~~☆ ふらんがおてほんをみせてやるど~~☆」
ちぇんとありすはそれぞれ上に持ち上げられ、何度も何度も執拗に地面に落とされた。
叩きつけられる度に中身を飛び散らせ、しーしーを漏らして痛みに身悶える。
ちぇんの方は泣き叫びながら「わからないよぉぉぉ」「らんしゃまぁぁぁぁ」と叫んでいる。
ありすの方は「やべでぇぇぇぇぇ」「ばでぃざぁぁぁぁぁぁ」と叫んでいる。
どちらも助けは見込めそうに無い。
ありすの方が可能性は大だが、そのまりさは枯れ葉の中でだんまりを決めているのだから。
「いだい"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ら"ん"じゃ"ま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
「までぃざぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ありずぼだずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
「う~~ そろそろあまあまになってるんだど~~☆」
「ならたべるど~~☆」
「いだび"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! かまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」
「やべでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!! すっぎり"し"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」
畑を荒らしたちぇんはれみりゃに。
最後まですっきりしたがっていたありすはふらんに食べられた。
周りを見ると、もう動いているゆっくりは数匹しか居ない。
俺はスコップを片手に、最初に見ていた巣穴に向けて動き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「・・・おまえ生きてるのか?」
「し、しんでるんだぜ。ほっといてほしいんだぜ」
枯れ葉を足でどかし、隠れているだぜまりさを見る。良い反応だ。
俺はまりさに一言伝える。
「もうゆっくりは皆死んだ。生き残ってるのはお前"だけ"だ」
「ゆ? ほ、ほんとに?」
「ああ、まわりを見てみると良い」
そういうとまりさが枯れ葉の山から出て行った。
辺り一面ゆっくりの死骸だらけ。
焼け焦げたゆっくり、中身が吸われしぼんでいるゆっくり、皮が裂け餡子が漏れ出ているゆっくり。
動いているゆっくりは無く、そこには死体と焼け焦げた匂いしか残っていなかった。
「どうだ? この焼け焦げた匂い。 俺は確信した。 勝利の香りだ」
「しょ、しょうり?」
「ああそうだ。 ゆっくりの神様はお前に味方したようだな」
「・・・・・・」
呆然と周りを見詰めるまりさ。
あのドスが。あのぱちゅりーが。あのありすやれいむ達が。皆変わり果てた姿で横たわっている。
まりさがいつこの群れに入ったのかは知らないが、思う所もあるのだろう。無言だった。
ふらんとれみりゃは中心の木で横になっている。よく食べたからな。
俺は構わずスコップで後始末をする。
「ゆ? にんげんさんなにしてるの?」
「ん? お前らの巣を埋めてるんだ。
残していたらまたここに群れが出来るからな。
人里に近い巣は全て埋める」
そう、スコップはこの為に持って来たのだ。ドスが居れば応戦に使うが、これが主な目的。
手際良く埋め立てて行くと、ある巣の前に来た時にまりさが血相を変えて飛びついて来た。
「やめてね!! にんげんさん!!」
「なにが? 巣ならもっと奥に作れ」
「ゆぐ! わかったからやめてね!! つちさんをかぶせないでね!」
「だからなんで?」
「ゆ・・・ す、すがなくなると、ふゆがこせなくなるよ!! やめてね!!」
「そこの野菜を持って他の群れに行けば、場所ぐらい貰えるだろう。
それにお前一人なら冬が越せるぐらいの量だろう、あの野菜は」
「ゆーー!! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだよ!! はやくはなれてね!!」
ぽよんぽよんと音を立て猛抗議をするまりさ。口調まで普通に戻っている。
よほど慌てているらしい。
生き残ったと言うのにここで喧嘩を売るとは、死にたいのか?
少し考えたあと、ある事を思い出してまりさに一つ質問する。
「まりさ、番のれいむとは同じ巣に住んでたのか?」
「ゆ! べつのすにすんでるよ!! わかったらはなれてね!!」
「そうか。まぁいい。他の巣は全部埋め立てた。そろそろ帰るよ」
それを聞いたまりさは安堵し、口調も戻った。
「ゆゆ、にんげんさんはゆっくりかえるんだぜ!!
まりささまももっともりのおくにいくんだぜ!!」
「ああ、そうした方が良いな」
寝ている2匹をリュックに入れ、帰路に付く。
その様子を凝視しているまりさを尻目に、俺は歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
20分後、俺は再び群れの中心に戻って来た。
もうお分かりだろう。
まりさの巣と思われるところにスコップを当て、土を掘り返す。
異変に気付いたまりさが巣から飛び出し、顔をぐしゃぐしゃに崩しながら問いかけて来た。
「にんげんさんんんん!! なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ああ、忘れ事をこなしにな」
そう言いながらもスコップで土を掘る手は止めない。
せっかく待ってやったのに、何をしてたんだか。
「にんげんさんんんん!! やめるんだぜ!!」
「それは出来ないな」
「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
泣き出して必死に俺の脚にぼすんぼすんと体当たりをしてくるまりさ。"うい奴"だ。
上から掘る事で巣が見え出し、真上から巣の全体が見えるまで掘った。
入口に木や石で堅牢なバリケードが敷かれているが、奥に部屋が二つある。
手前の入口側が食糧保管庫兼台所、後ろの部屋が寝室の様だ。
そして寝室には、子まりさが2匹と赤まりさが3匹居た。
「「ゆゆ!! にんげんしゃんだよ!!」」
「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」」」
そう、まりさは賢いまりさだった。
出会った時に帽子が膨らむ程食料を集めていたのは、家族が多いから。
それは休息日に活動する点からも分かる。
休息日に休息していないまりさは、さぞゆっくりしてないゆっくりに見えただろう。
番のれいむからも、その赤ゆからも馬鹿にされる訳だ。まぁもっともここはれいむもだが。
巣に急いで走って行ったのも、バリケードを塞いで子供を助けるため。
ありすを拒んだのも、まりさ種ばかりのため。
それなら別居で済むれいむの方が良い訳だ。れいぷの危険が無い。
ゆっくり如きがここまで頭が回る事に感心しながら、まりさに問いかける。
「さぁまりさ、続けようか」
「ゆう"う"う"う"う"う"!!! なにお"お"お"お"お"お"お"お"!!!?」
「決まってるだろう? 一人"だけ"助けてやる」
「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!
どぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!」
「まりさ、はやくしないと上のふらんが食い出すぞ?
隠れなくて良いのか?」
空を旋回するふらん。やはりれみりゃよりふらんの方が役に立つ。
ふらんはニヤニヤしながら今か今かと合図を待っている。
涙を流し涎を流し、哀願するまりさは愛おしくも思う。
「ま"り"ざの"お"お"お"お"お"お"お"お"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
どっ"でも"ゆ"っ"ぐり"じだゆ"っ"ぐり"な"ん"でずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ああそうなのか。まぁ俺には関係無いが」
「ま"り"ざば"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
何を言ってるのかさっぱり分からん。
まりさの子供は事態が飲み込めず、姉妹ですーりすーりしている者も居る。ふらんが見えて無いのだろう。
どう足掻いても、絶望。
「ゆっぐりのがみざばはあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ばでぃ"ざの"みがだじゃ"な"い"ん"でずがぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「いやぁ味方なんじゃないかな? 生き残ったのはお前の"家族"だけだ。
次は1人になるまで頑張れ」
「ぞん"な"の"い"や"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」
憐れなまりさ。親が泣くなよ。れみりゃに追われたか。
ゆっくりふらんが空から降りて来て、わざとまりさの横に座り穴を見た。
中の子ゆっくりと目が合い、合唱が始まる。
「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ごわ"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」」
「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」
中枢餡レベルに刻まれた捕食種への強烈な恐怖がゆっくりを襲う。
ガタガタ震えしーしーを漏らす赤ゆと子ゆっくり達。悪いがその様は興奮する。
親まりさの方は歯を食いしばり、歯と歯の間から涎を垂れ流している。勿論泣いているので汁塗れだ。
ゆっ、ゆっ、と子供が泣いた時の様にえづきながら泣いている。かわいそうに。
だが俺も鬼では無い。仕方が無いからまりさに"助け船"を出してやった。
「なぁまりさ、誰が生き残るのか決められないのか?」
「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
「じゃぁこうしよう。
まりさが死ぬか。子供が全員死ぬか。
これなら選べるだろう」
「ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「なら子供を殺すしかないな」
「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
優柔不断なゆっくりだ。譲歩したというのに。本来なら皆殺しなんだがな。
まぁ子ゆっくりも赤ゆを脱した程度の大きさだ。確かに越冬は無理だろう。
まりさがたまらず哀願を続ける。仕方がないので聞いてやる。
「おでばいじばずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「お前が生きれば良いだろう? 違うのか?」
「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ずでごなんでずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
お"や"がい"な"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「捨て子か? 別に珍しくも無い」
そうだ。この幻想郷では別に珍しくも無い。
人間でさえ、妖怪に親を食われる事があるのだからな。
「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ばでぃ"ざがお"や"がわりな"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
ばでぃ"ざもお"や"がい"な"がっ"だん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
だがら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"だげば"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
だずげだい"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!
だずげでぐだざい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」
親が居なかったこのまりさは、同じ境遇の親がいない他の子まりさを助けたい訳か。
なるほどな。
くだらん。俺が怖くないのか?
だがそうだな。子ゆ共はまだ小さい。親がいないと子は死ぬしか無いだろうな。ああそうだろう。
だから俺は、
"ゆっくりの神様"に決めて貰おうと思う。
「よしまりさ、これが見えるか?」
俺は一枚のコインを取りだす。幻想郷の外の世界の硬貨だ。
表に桜が、裏に数字が刻まれている。名前は100円玉という。古道具屋で仕入れた物だ。
まりさはぶるぶると震えながらそれを見る。
「いいかまりさ。この花が載っている方が表だ。花が無い方が裏だ。
このコインを投げて、出た方を殺す。
表が出たらまりさを殺す。
裏が出たらまりさの子供を全員殺す。
これでいいな?
出た方を殺す。
そして投げるのはお前だ。
分かったな?」
「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
「いいかまりさ。 お前はさっきゆっくりの神に味方された。
だから今回も味方されるのを祈れば良い。
早く咥えろ。
そして、それを高く放り投げろ」
「ゆ"う"う"う"う"う"!!! ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」
もはや思考もままならないのだろう。
言われるがままに咥えだす親まりさ。
「咥えたな? 思い切り上に放り投げろ。 神に祈りながらな」
「ゆ"う"う"う"う"う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
ヒュン。
顎を使い大きく上にコインを放つまりさ。
空を舞うコイン。時刻は夕暮れ。運命のコイントス。
真っ赤な陽光が俺とゆっくり達を包んでいる。幻想的な世界。まるであの日の様だ。
世界がスローで進んでいく。
光を反射し紅葉色に煌めくコインは、そのまま上昇が終わると弧を描きながら落下した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おぢびぢゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!!!
う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
「「「「「ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」
屋根の無くなった巣の外で身を寄せ合うまりさ親子。
まりさの投げたコインは、まりさの元妻の体に突き刺さっていた。
餡子に垂直に刺さったコインは、表も裏も表さない。
どうやらゆっくりの神というのは本当に居るのかも知れない。俺には分からないが。
俺は約束通り、"出た方"を殺して帰る事にした。出た方が無いのだから、殺す相手も居ないのだが。
コインを餡子から引き抜き、まりさに一言伝える。
「にんげんしゃんんん!! ゆっくりかえってね!! にどとこないでね!!」
「さぁな。 あとまりさ、これはやるよ」
俺は泣いているまりさにコインを投げる。
「ゆぐう!?」
「おまえは運命に打ち勝った。 それは記念に持っておけ」
「うんめい?」
「ああそうだ。 コイントスは人間の持つ、運命を試す方法の一つだ。 困った時に使うと良い」
コインを渡すと、俺は踵を返す。
安堵するゆっくり共の声が聞こえる。それが勘に障る。
そうだ。コインの代価を貰っておこう。
バチンッ!!
「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ま"り"ざの"おぼうじがあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
親まりさの帽子の"つば"を、仕事用の果樹園用はさみで盛大に切る。
右目の上の部分に切れ込みが入り、人間視点でなかなか"りりしく"なった。
「助かっただけ有り難いと思え」
ただの八つ当たりには違いない。
命よりも大事な帽子に切れ込みが入り、以後のゆん生は難儀するだろう。
命を張ってまで助けた相手が、それほどの価値があるのか。俺が知る事は無いだろうがな。
ふらんは自分でリュックの中に入り、そのまま眠りに付いた。
まりさ親子は助かった事に涙し、俺は仕事を終えて帰路に付く。
もう会う事も無いだろう。まぁ俺には関係無い。
太陽はもう殆ど落ちていた。もうすぐ妖怪の時間だ。
助かった事に安堵する声を後ろに、俺は自宅へと歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
* Epilogue -
「ふああああ あやちゃんのぱんつみたい」
夏。炎天下。
男は一人つぶやく。叶う筈が無いんだが。
唯一の楽しみである"文々。新聞"を読みながら、ため息を付く。
今回の記事の内容はゆっくり特集。
山の奥に居る希少種などについて書かれていた。
最近はドスの亜種に面白いゆっくりが出てきたらしい。
体長60cmほど、まだ若いドスまりさが人里の果樹園に近い森に居る。
ドスの帽子には大きな切れ込みがあり、あまりゆっくりできていなさそうだ。
だが本人はとてもゆっくりしているらしい。
このドスは一人で生活しており、群れには属していない。
子供が居たが既に独立し、今は悠々自適に生活しているとの事だ。たまに子供が会いに来るらしい。
一人立ちした子供の元気な姿を見てはゆっくりしているらしく、ゆっくりにしては素晴らしい家族関係だ。
そして出会う捕食種やゲスゆっくりに対して、このドスはある"ゲーム"を仕掛けるそうだ。
それはコインを投げるゲーム。
表が出ればドススパークで焼き殺し、裏が出れば帽子を奪う。
どちらにしてもゆっくり的にはゆっくり出来ない、恐ろしい結果だ。
だが回避方法もあるらしい。
どちらの目も出さなければ良いのだ。
そんな事は不可能だと思うが、このドスは昔どちらの目も出さなかったらしい。
曰く「ゆっくりの神が味方した」との事。そんな神が居るのだろうか。
ただ例え回避出来ても、帽子はずたずたにされるらしい。だが取られるよりはマシだろう。
真相は闇の中だが、今回はこの辺で終わりたいとする。次回は町ゆに焦点を絞り・・・
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+
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森の中。
ゆっくり達の悲鳴が木霊する。
あるゆっくりが溜めこんでいる食糧を奪おうと、ゆっくり達が徒党を組んでやって来たのだ。
しかし結果は返り討ち。ゲス共の命運はここに尽きた。
襲われたゆっくりが声を掛ける。
「さぁ、まりささまはせつめいしたんだぜ。 はやくそのこいんさんをくわえるんだぜ。
そしてそれをたかくほうりなげるんだぜ。
"かみにいのりながらな"」
帽子に切れ込みのあるドスまりさは、そういって目の前のゆっくりの「運命」を試しだした。
陽光煌めく幻想的な、あの日の様に。
森の中の切れ込みまりさ
種族:ドスまりさ
能力:ゆっくりの運命を試す程度の能力
おしまい
【後書き】
ゆっくりの重さに散々悩んだ結果、成ゆで700g(バスケットボール7号球とほぼ同じ)という事に。
ただ餡子が詰まってるのなら、直径25cmの球体ならもっと重いはず。
*
o
+ とかスーパーに行って餡子の缶詰見ながら思った今日この頃。重いと蹴りにくいので軽めに設定。
「さぁ続けようか」
「地獄じゃ! 神はなぜ弱者に自由を与えて下さらん」
【前書き】
* 初投稿。
* 幻想郷が舞台です。そこに住む"町人A"の物語。
* ゆっくりは割と標準設定に準拠ですが、ドスの設定が標準(?)と違います。(主にサイズ)
* 原作キャラがチョイ役で出てきます。
幻想郷の人里。
ここにAという名の男が居る。
歳は25、背丈は高く無愛想。
村はずれで果樹園と家庭菜園を営んでいる、農家である。
季節は秋の暮れ、初冬。
今年も男に仕事が舞い込んできた。
男は愛用のスコップを担ぎ、河童から買ったリュックを背負って山に行く。
それにしても今年は何だか憂鬱だ。
男はだるそうに山に入って行った。
Title : 町人Aの憂鬱 ~森の中の切れ込みまりさ~
Author: 旅人あき
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「Aは居るかい?」
白髪の老人が今年もやって来た。
見ると片腕が無い。珍しい人型だ。そんな人型を俺は一人知っている。
「じいさんか?何か用か?」
Aは無愛想に答える。
「何だ生きてたのか。ああ、今年も副業を頼みに来た」
「毎回言ってる気がするが、前置きがおかしくないか?」
先月顔を合わせたし、寿命はお前が先だろう、と思いながらも年寄りの話を聞き出した。
「そろそろ冬だから、森のゆっくり共を間引きして欲しいんだ」
そう、これがAの副業だ。
田畑を食い荒らす害獣であるゆっくりを、適正数まで間引く。
ゆっくりは数が増えると森から人里まで下りてくる。それが農家達の被害に繋がる訳だ。
だからこの農家達の元締めのじいさんが、有志や"そうで無い者"に依頼を行う。
畑に近い森に住むゆっくりを間引き、降りてこない様にする。
俺はじいさんに借りがあるから断われはしない。良い計算だ。
「まぁ別に構わんけどな」
「それは俺のセリフだ・・・」
このジジイは主語を抜く。略したのは"断わっても"だろう。
俺も主語を抜く。略したのは"受けても"。
時に無愛想に見える事もあるらしいが、気にしない。
日本語は美しい。
「で、報酬は?」
「米や味噌だ。お前の農園じゃ足りんだろう」
「ああ、それで良い」
これは毎年同じだ。俺の生活を把握している。だからまぁ農家の大将なんかやってられるんだが。
これで冬も寝て過ごせそうだ、と思っていたら後ろから誰か来た。
緑髪の女性で、巫女服を着ている。
「どちら様で?」
「初めまして。新しくこちらに越してきた守矢神社の者です」
そういえば妖怪の山に神社が出来た噂を聞いていた。
そこの巫女さんなんだろうか。変な髪飾りをしている。
「こちらがゆっくり仕置人のAです」
ジジイからの素敵な紹介を預かった俺を、守矢の使者はジロジロと見ている。なかなか可愛いと思う。
段々話が読めてきた。ジジイが連れて来たな。こんな村はずれに来るはずが無い。
「実は今日はAさんの家にも分社を建てて欲しくてお願いに来ました。守矢神社では2人の神を祭っており・・・」
なんか良く分からんが御利益の話を始め出した。面倒なのでああ良いですよと生返事をする。可愛いから許す。
「本当ですか?有難う御座います。機会があれば是非本社にお越しください」
「ああ、機会があればね」
「所で質問なんですが、ゆっくりを間引くというのはいつもしているんですか?」
「いや、秋と春だけしかやってないな」
「時間が掛かる物なんですか?」
「さぁなぁ、他は知らないが俺は1日で済ますから、そのぐらいじゃないかな」
「その日限りなんですか?」
「そうなるな」
「なるほど・・」
気のせいか緑巫女は俺を見下す様な憐れむ様な目で見初め
「つまりAさんは、"日雇い"さんなんですね(ニコッ)」
後で寺子屋の先生に聞いたが、日雇いというのは外の世界の蔑称らしい。思い出してもあの笑顔に腹が立つ。
あの巫女はいつか泣いたり笑ったりゆっくり出来なくしてやる。もとい○す。犯○。
だが俺は凡人。ただの町人。聞けば現人神な巫女に敵うはずは無い。
いっそ分社の前で祈ってみようか。願いが叶うかも知れない。
俺が今日憂鬱なのは、これが原因なのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
リュックを背負って山に入ったAは、紅葉が落ち始めた森を散策していた。
外の人間が忘れた森の原風景。紅葉落ちる終わりの秋。美しい。
だが今日探すのは景色では無く、ゆっくりの群れである。
村では秋と冬にゆっくりを間引いているが、これには理由がある。
ゆっくりは冬は穴や洞窟に籠る。籠ってその中で越冬をする。
冬の寒さに耐えれないからだ。
故に秋は越冬のための食糧を集める。つまり外に出ている時間が長い。見つけやすい訳だ。
また春も同様である。越冬を経て飢えているゆっくり達は、ここぞとばかりに餌を探しに行く。
秋と春は『狩り時』という訳だ。
森に入って30分、そうこうしている内に数匹のゆっくりれいむを見つけた。
もみじ色の落ち葉が多く木々が邪魔で見えにくいが、その中で動く肌色の物などゆっくりしかいない。
どうやら例年通り餌を探している様だ。近くに寄って行く。
「ゆ!? おきゃーしゃん!」
「ゆゆ? どうしたのおちびちゃん」
「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがいりゅよ!!」
赤ゆっくりが気付いた様だ。親れいむもこちらに気付いた。
「「「にんげんしゃん!! ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」
赤れいむ3、親れいむ1か。
まぁ個体数はどうでも良い。れいむ達に確認する。
「お前ら何してるんだ?」
「ゆゆ!? れいむちゃちは"かり"をしちぇるんだよ!」
「ふゆごもりにはくしゃしゃんがいっぴゃいいるんだよ!」
「おかあしゃんはかりのめいじんなんだよ!」
「ゆ! にんげんさんはあまあまをちょうだいね!!
れいむたちはかわいそうなんだよ!! むのうなにんげんさんだね!!」
最後のは親れいむだ。ああ良いだろう。
警戒心の無い親を持って哀れだな。
リュックサックを地面に置いて中に手を入れ、巾着袋を取り出す。
「よし あまあまをやろう」
干しぶどうを数個袋から取りだし、ゆっくりたちの前に撒く。
ゆっくりは見たこともない物を目にし、固まっている。
食い付かない所を不審に思っていると
「おきゃーしゃん! にんげんしゃんがあまあまをくれちゃよ!」
「ゆあああ! おちびちゃんだめぇぇぇぇぇぇ!!
どくかもしれないでしょうぉぉぉぉ!
いつもいってるでしょぉぉぉぉぉ!
おかあさんがどくみするからゆっくりまっててね!!」
前言撤回だ。警戒心はあるらしい。人間が怖くないだけか。
地面の一粒を舌ですくい、咀嚼する親れいむ。
「むーしゃむーしゃ・・・ゆああ~~~~・・・
このまめさんとってもおいしいよ!!! うめ!! めっちゃうめ!!!」
うっとりしたと思ったら突然がっつきだす親れいむ。地面に落ちてた数個の干しぶどうを全て頬張る。
嫌悪感が全開で叩き潰したい衝動に駆られる。
この親れいむは全て食べやがったのだ。子供に残さずに。
「おきゃーしゃん・・・ れいむのぶんは?」
「おきゃーしゃんがじぇんぶたべちゃった」
「ゆゆ!? ごめんねおちびちゃんたち・・・おいしくてついぜんぶたべちゃったよ」
「おきゃーしゃんのびゃきゃぁぁぁぁぁ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」
「おきゃーしゃんだけじゅるいぃぃぃぃ!! れいむもたべちゃいぃぃぃぃ!! ゆぴぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! おきゃーしゃんのくじゅぅぅ!! くじゅはしねぇぇぇ!!」
「どぼじでぞんなごどいぶのぉぉぉぉぉぉ!!! みんなのおがあざんでしょおおおおおおお!!!」
目の前で泣き喚きだすゆっくり共。私利私欲、雑言罵倒。
俺はこの光景を見ていつも思う。ゆっくりは神が作った人間の汚い部分の寄せ集めなんじゃないかと。
赤ゆに至ってはしーしーまでして悔しさを表している。人間の赤ん坊でもここまで醜悪じゃない。
地獄の縮図の様な光景を見て、毎度内心辟易する。
そんな中、俺は例年通り話を進める。
「泣くなゆっくり。まだ袋に一杯ある」
「ゆああ!! にんげんさんははやくおちびちゃんたちにあまあまをちょうだいね!!
あとれいむにもちょうだいね!!
ゆっくりしないではやくしてね!!」
「だが俺にも用がある。お前らが俺のお願いを聞いてくれたらな」
「おねがいをきくからはやくちょうだいね!!」
「約束は破るなよ。俺は鬼じゃないが約束を破る奴は嫌いだ」
そう言って袋の中から更に何個か取りだし、ゆっくり達に撒く。
それを見て親れいむと赤ゆ共は"まめ"を食い出す。
「ゆあああ!! おちびちゃん!! あまあまだよ!! ゆっくりたべてね!!
おかあさんにもちょうだいね!!」
「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」
干しぶどうなんか自然界に無い。普段虫や草を食ってるこいつらからしたらかなりのあまあまなんだろう。
赤ゆに至ってはうれしーしーをしている。潰したい。
もっととねだる馬鹿共を見て、ようやく本題に入る。ここまで仕込むのが大変だ。
俺に懐柔させるのが。
「そんじゃお願いを聞いてもらおうか」
「ゆゆ! なんでもいってねにんげんさん!!」
「じつはこの大きな袋(リュックサック)にはお野菜さんが入っててね。
クズ野菜で要らないから捨てる所を探してるんだ。
お前達の群れにやるから群れに案内してくれ」
「ゆゆ! そんなことならかんたんだよ!!
れいむのむれにあんないするよ!!
おやさいさんをくれるなんてにんげんさんはとってもゆっくりしてるね!!」
「ただ条件が有ってな。
ドスが居る大きな群れを探してるんだ。
お前の群れにドスは居るか?」
「れいむのむれにはドスがいるよ!!
あんないするからおやさいさんとあまあまをちょうだいね!!」
「よし案内してくれ」
俺の言葉尻がおかしい事に気付かない。面倒で雑になってしまったんだが、所詮餡子だ。
ぽよんぽよんと奇妙な音を出しながら跳ねて行く親れいむと赤ゆ共。
さて、いよいよ大詰めだ。
俺はこの重いリュックサックから解放される事を想像し、顔が緩んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
親れいむの後に続く赤ゆ達。その後に続く俺。
ガサガサと落ち葉を踏み敷く音がしていく。
が、何か音がおかしい。音が多い。
気配を感じ、後ろを振り向く。
「ゆぐ!!」
振り向くとそこにはゆっくりまりさが居た。
身体はデカイ。親だな。
帽子は膨らんでおり、どうやら餌が詰まっている用だ。
俺に見つかったまりさは俺の横をぴょんぴょんと急いで素通りし、先頭の親れいむを呼びとめる。
「れいむ!」
「ゆ?」
「「「おとーしゃん!」」」
親れいむの番の様だ。
「ゆゆ! どうしたのおとうさん」
「どうしたのじゃないのぜ! なんでにんげんさんといっしょにいるんだぜ!」
「このにんげんさんはあまあまさんをくれるんだよ! れいむのどれいなんだよ!!」
なるほどそういう認識か。これで憐れむ気もしなくて済む。
それにしてもこれはだぜまりさか。珍しい。
「なにいってるんだぜ! にんげんさんはどれいになんかならないのぜ!
ぎゃくにえいえんにゆっくりされちゃうんだぜ!
さっきのあまあまだってなにかのわななんだぜ!!」
どこかから覗いていたのか。それも最初の方から。
番のれいむが危ないというのに観察とは、ゲスなのかも知れないな。
だが頭は良い様だ。多少のゲス性は生きる上では必要だしな。
「まりさはしんぱいしょうだね! れいむはゆっくりしていてつよいんだよ!
にんげんさんはゆっくりできないくずだからよわいんだよ!
ゆっくりりかいしてね!!」
「れいむのほうこそゆっくりりかいするんだぜ!
それにこっちはむれのほうがくなんだぜ! どすにおこられるぜ!」
「ゆうう!!! れいむおこるよ!
にんげんさんはおやさいさんをくれるからつれていくんだよ!!
どすもれいむにかんしゃするにきまってるよ!!
これでれいむもむれのじゅうやくいりだよ!!!」
群れの重役か。
お花畑もここまで来ると羨ましい。このまりさに同情するよ。
「れいむはばかなんだぜ! どうなってもしらないのぜ!」
「まりさはばかだね! こんなおとーさんはいらないよ!」
「「「おとうしゃんはいりゃにゃいよ☆」」」
赤ゆの反応に驚いた。複雑な家庭の様だ。
結局親まりさが折れる形で、群れへの帰路に就いた。
俺に対してずっと警戒しているのか、一定の距離を保っているのは殊勝だ。
歩く事20分。
といってもゆっくりの速度だから、たいして離れていない。
どうやら群れに付いた様だ。
森の中、紅葉とその落ち葉が景色を覆っているが所々ゆっくりが見える。
親れいむに群れの中心まで案内させ、そこにリュックサックを置いて座り込み一息付いた。
中心は大きな木の様で、そこに続々と群れのゆっくり共が集まってくる。
また撒き餌の出番だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ゆゆ!むれについたよにんげんさん! はやくあまあまちょうだいね!!」
「「「ちょうだいにぇ!!」」」
クソ共が騒ぐ。野菜の事はもう頭に無いらしい。巾着袋からまた数個取りだし、その辺に撒く。
そうこうしているうちにゆっくり同士で会話が始まった。
「「「むーちゃむーちゃ・・・ちちち、ちあわちぇ~~~!!!!!!」」」
「むーしゃむーしゃ、しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むきゅ、これはいったいどういうこと?」
「みてのとおりなんだぜ。れいむがにんげんさんをむれにつれてきたんだぜ」
「このにんげんさんはとかいはなの?」
「むきゅきゅ、にんげんさんはゆっくりできないっていったのに」
「なんでもおやさいさんをくれるらしいぜ」
「そうだよ!このどれいはおやさいさんをくれるからつれてきたんだよ!!
れいむのおかげだよ!!
これでれいむもむれのじゅうやくいりだね!!」
「「「おきゃーしゃんはえりゃいんだにぇ!! きゃわいきゅちぇごめんにぇ!!」」」
「むきゅう、あたまがいたくなってきたわ。にんげんさんはほんとうにおやさいさんをくれるの?」
「もりではおやさいさんはほとんどみないから、とかいはとしてはたべてみたいわ」
ああそうだろうよ。ただ中には野菜をたらふく食ったゆっくりもいるだろうが。
さて、そろそろ本題に入ろう。
「ああ、お前らに野菜をやるよ。ただ条件がある」
「むきゅ」
「じょうけん?」
「群れの数を確認したいから、全員を集めてくれ。当然ドスもな。
家にまだ野菜があるから、それを群れの数だけ持って来てやるかも知れん」
「むきゅ、おやさいさんはにんげんさんにとってもだいじなんでしょう?
どうしてわたしたちにくれるの?」
「人間が食べない様なクズ野菜だからだ。色が悪いとか、形が悪いとか。"食い残し"とか。
お前らなら食べるだろう。
このリュックサックに入ってるんだ」
「むきゅう、なるほどわかったわ。
いまはふゆごもりまえだからしょくりょうがほしいし、みんなをあつめるわ。
にんげんさん、ありがとう」
「おやさいさんはどんなあじなのかしら」
有難うか。確かに現世は地獄だしな。
森の重役らしいゆっくりぱちゅりーが群れの巣を周っている。
当然その位置を把握する。
ぞろぞろとゆっくりが集まってくる。
「とかいはのありすはぜんしゅるいたべたいわ」
「わかるよー、おやさいさんはゆっくりできるんだねー」
「おやさいさんがてにはいるのはたすかるみょん」
「むきゅ、にんげんさんみんなをよんできたわ」
ぱちゅりーに狩りに出ている奴がいないかを確認した所、今日はまりさ達のみだったらしい。
きけば今日は群れの全ゆっくりの休息日らしい。まりさの家は子供が多いため今日も出ていたそうだ。
ゆっくりにも休息日があるのに驚いた。作ったのはぱちゅ種だろう。
ざっと見渡して数は成体が40匹程。細かいのを入れれば100匹か。赤ゆ子ゆ親ゆの混成。上出来だ。
恐らくすっきり制限をしている群れだな。成体が多い。
「よし、それじゃあお野菜さんを渡す。
ただ一つお願いがある。
食べた事のある野菜があれば、それを教えてほしい。」
「むきゅ? どうしておしえるの?」
「気が向けば同じ野菜を持って来てやるからだ」
リュックサックから大きめの袋を取り出し、それを地面に向けて逆さまにする。
どさどさと落ちる野菜。
どれもこれも誰かの食い残しの様な野菜だ。
それを見て声が上がる。
「わかるよー、ちぇんはそのおやさいさんたべたことがあるよー」
「れいむもそのおやさいさんをたべたことがあるよ!」
「「「おいちかったにぇ!!」」」
「そうか、どこで食べたんだ?」
「やまをおりたところにはえてたよー、いっぱいはえてたよー」
「れいむもやまをおりたところでたべたよ!! とってもおいしかったよ!!
ぜんぶたべれなかったから、またいきたいよ!!」
「「「とっちぇもおいちかったにぇ!!」」」
そうか。
それとさっきのあまあまをもっとちょうだいね!!くちょじじぃ!!!とほざきやがる。
その食い残しは俺がジジイから証拠として引き取った物だ。
ジジイの話では、実際に被害が出たらしい。
そして一言付け加えた。「見つけたら制裁を頼む」と。
今年は念入りの方が良い様だ。
ふとだぜまりさを見ていたら、れいむが言うや否や顔を強張らせ巣の方へ走っていった。今回はあいつかな。
それを一瞥した後、今日最後の仕事を俺はやりだした。
「よし、こんだけだ」
「ゆゆ! ぜんぜんたりないよ!! ばかなの?しぬの?
はやくあまあまちょうだいね!!!!」
「「「あまあまよこちぇくちょじじぃ!!!!」」」
「これだけなんてとかいはじゃないわね。ぜんぜんたりないわ」
「むきゅ、たしかにこれだけじゃみんなにいきわたらないわ。」
「にんげんさんそのおおきなふくろはなんなんだみょん? ふくらんでるみょん」
「わかるよー、そのふくろにいっぱいはいってるんだねー。
ひとりじめはずるいねー」
ちぇんの一言で場が沸き立つ。なかなか勘が冴えてるな。
ああ、袋に"いっぱい"入ってるよ。
「ゆゆ! ぐずのどれいのにんげんさん!!ばかなの?しぬの?
はやくそのふくろからあまあまちょうだいね!!!!」
「そのふくろをひっくりかえせばいいんだねー、わかるよー」
「お前ら袋の中身が見たいのか?」
「みたいよー、なかみがほしいよー」
「とかいはならだしおしみせずにだすべきよ」
「はやくだすみょん!」
「分かった。お前らの選択だ。止めはせんよ」
元々俺がひっくり返す予定だったが、ご要望がある方がやりやすい。
俺はこれみよがしに立ち上がり、リュックサックを持ち上げ逆さにし、中身を地面に放り出す。
その様をゆっくり達が期待に満ちた目で見守る。
二つのバスケットボール程の大玉が地面に落ちる。
(ドサッ)
「いだっ!!」
「いだっ!!」
その瞬間、全ゆっくりが凍りついた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「う~~、いだいどぉ~~」
「う~~、いだいよ~~~」
中から出てきた2匹のゆっくり。それを見て周りのゆっくり達が悲鳴を上げる。
「「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」」」
「「「ゆぎぃぃぃぃ!! れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「ふらんもいるぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! わ"がら"な"い"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!」
「「「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」
外の世界で言うおーけすとらと言う奴だろうか。ゲスの悲鳴は心地良い。
顔がぐしゃぐしゃになっている様は心が踊る。
赤ゆ共は泣き喚き、おそろしーしーは当たり前。口から餡子を吐いている個体も居るな。
「んあああ!? あまあまだど~☆」
「あまあま~! ☆れみ☆りゃ☆うー!!」
「むきゅあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!どすぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
阿鼻叫喚。
ゆっくりれみりゃとゆっくりふらんが宙を舞う。両方胴は無い。
どのゆっくりも逃げ出したいが、動いたら狙われそうで動けない様だ。蛇に睨まれた蛙か。
「あーあ、れみりゃとふらんに出くわすとは、お前ら永遠にゆっくりだな」
一人大きな声でつぶやく。ゆっくりによく分かる様、永遠にゆっくりと。
つまりお前らは今日死ぬのだと。
だが俺も鬼では無い。俺は"助け舟"を出してやった。
「よしお前ら、一人だけ助けてやる」
唖然とするゆっくり達。そのまま続けてやる。
「聞こえなかったか?
"生き残った奴"を一人だけ助けてやる。
さぁ頑張れ」
「にんげんさん、たすけるって?」
ゆっくり達は理解出来ていない様で、聞き返してくる。
聞き返したのはだぜまりさか、巣から戻ってきた様だ。
「まりさ、聞こえなかったか?
お前らのうち一人だけ助けてやる。
どのみちれみりゃとふらんが揃ったら、お前ら全員助からん。
中身の餡子を吸われてぽいぽいぽーいだ。
だけど偶然ここに俺が居るから、生き残った奴は"一人だけ"助けてやる」
「むきゅきゅ! もとはといえばにんげんさんのふくろからでてきたんでしょおぉぉぉぉ!
だいたいひとりだけってどういうことなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ざわめくゆっくりたち。ぱちゅ種が居るとやりにくいなやはり。
だが無視する。去年もそうだった。
「知らんよ。 言っただろ、逆さにしたのはお前らの選択だ。
それに俺は嘘は付かん。
生き残りたければ他のゆっくりを殺せば良いんじゃないか? 一人は助かるんだから。
そうだろうぱちゅりー?」
「むきゅうぅぅ!! ほ、ほかのゆっくりをころせるわけがないでしょおおおおお!!」
「じゃあ皆食われればいいんじゃないか。 お前らの選択だ。好きにしろ。
それとドス、お前も入ってるからな」
俺は目の前に居るゆっくり達のはるか後ろを見て、最後にそう言った。
ドスは驚いた顔でこちらを見、その後近寄って来た。
周りのゆっくりが間を空ける。
そしてちょうど、俺とドスは正対した。
「おどろいたよ。
にんげんさんにはどすがみえてるんだね。 ならゆっくりしてるんだね」
「そうだな。 俺はゆっくりしている」
「にんげんさんはどすすぱーくをしらないの?
れみりゃやふらんぐらいなら、どすすぱーくでたいじができるんだよ」
「ああそうなのか?なら好きにすればいい」
にへらにへら笑うドス。そういえば去年もこうだったな。
「ほんとうはぜんぶにんげんさんがしくんだんでしょ?
にんげんさん、あまりどすたちをおこらせないほうがいいよ。
どすはどすすぱーくをにんげんさんにうって、にんげんさんをたいじできるんだよ」
「ほう、そうなのか。なら好きにすればいい」
「・・・にんげんさんはばかなんだね。
どすはむれをまもらないといけないから、どすすぱーくをにんげんさんにうつよ!!」
みんなはなれてね、と続けるクソデブ饅頭。
ドスを支点にゆっくりたちが放射状に左右に分かれる。さしずめ俺を中心とした扇形だ。
俺を"たいじ"して、れみりゃとふらんも"たいじ"する算段か。
どおりでこの群れが成体が多い割に落ち着いている訳だ。普通は我先に逃げ出している。
「どすがにんげんさんをせいさいするよ! おちびちゃんはよくみていてね!!」
「「「ばかにゃにんげんしゃんはゆっくちちんじぇね!!!」」」
「わかるよー!! にんげんさんがもえるんだねーー!」
「こんだけしかおやさいさんをわたさないにんげんさんはせいさいしろみょん!!」
「みんなばかなんだぜ、にんげんさんにかなうはずがないんだぜ。
いなかものはこれだからいやなんだぜ・・・」
「ばかなんていうまりさはとかいはじゃないわね。 どすみたいなとかいはなゆっくりになりたいわ」
おのおの歓声が上がる。
よく見ると一部のゆっくりは枝を咥えている。臨戦態勢の様だ。
俺は必要事項を処理するため、相手を目測する。これが最後の作業だからな。
通常、ゆっくりは赤ゆがピンボール(直径3cm)程の大きさだ。
それが子ゆでソフトボール(直径10cm)程になり、成体でバレーボール大(直径25cm)程になる。
胎生妊娠中ならもう一回り大きくなる。
そしてドスと言われるまりさははまりさ種の変種だ。
体長が60cmほどを超えるとドスと呼ばれ出す。大体は最後は150cm辺りまで育つ。
それ以上の個体は殆ど居ない。越冬出来ずに死ぬからだ。
身体がでかい個体は、入る穴にも困る。1mの大穴など、掘れてもすぐに崩れてしまう。
ぱちゅ種指導による綿密な穴掘りか、大木を削って作った空洞に入るとかをしないと生き残れない。
育ち過ぎたドスの大半は冬に凍死する。
100cmを超えていたら、そいつは過酷なゆん生を乗り越えた、頭も回る大物という訳だ。
目の前のドスは体長およそ150cm。生存可能な最大クラスのサイズ。大物だ。
重量はおおよそ70kgぐらいか。成体ゆっくりの約100倍。跳躍も50cmは堅い。
普通のゆっくり達から見たらこのドスは文字通りバケモノだろう。
まず勝てるはずが無い。それは信頼もされる。お前らの世界ではな。
身長170cm後半のAとドスまりさが対峙する。
正対距離は約2m。とんがり帽子のせいでドスの方がAより全高が高い。
ドススパークはスパークキノコを使って熱線を放つドスまりさの魔法だ。
ゆっくりなら熱で燃えてしまう。捕食種も同じだ。
燃えると言うのはゆっくりにとっては致命傷であり、全身火傷の激痛のショックで即死もありえる。
人間でも大やけどを負う。場合によっては服が燃える。だが死にはしない。そこが大きく違う。
このデブは人間様と対峙した事が無いのだろう。哀れだ。
ふとさっきのだぜまりさを思い出したが、すぐに止めた。
俺は善意を持ってドスに一言伝える。
「ドス、先に言っておく。俺に攻撃しようとする度に片目を貰う」
「なにいってるの? どすのおめめはどすのものだよ。
にんげんさんはゆっくりどすすぱーくの"さび"になってね」
スパークには溜めがいるらしいが、俺の知っている個体で溜めの無い個体が居るから、無い物と考える。
俺はドスの動きだけを、ただだるそうに眺める。
ドスが帽子を動かし、中から何かを落とそうとする。
その瞬間、俺は"抜刀"した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
バズゥッ!!!!
「ゆぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
悲鳴を上げ、餡子を撒き散らしながらのたうち回るドス。
縦一文字に右目、顔面右部を大きく切り裂かれたドスは絶叫する。
ドスが帽子からきのこを落としたのが見えた瞬間、Aは背に担いだスコップを"抜刀"していた。
スコップ。
それは土を掘り起こす道具であり、またとても頑丈な"金属加工物"である。
薄く堅く、鋭利。
Aはこの道具が人間の首でも刎ね跳ばせる事を知っていた。
ドスの帽子には大きく切れ込みが入り、その様は真上からスコップに切られた事を表す。
一見ただのスコップだが、実は凶器。
文字通りAにとってスコップは"刀"なのである。
妖怪からの自衛目的にと練習を始めたこの"スコップ"は、今やゆっくり殺しの域にまで高められていた。
「ゆぎびぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"
い"だい"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」
「どすぅぅぅぅ!! すぱーくをうつのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
横からぱちゅりーが指示をする。顔面を切り開かれたドスに無茶を言う。
だがドスは涙を流し餡子を漏らし、のたうち回りながらもきのこを拾おうとする。
なかなかガッツがあるドスだが、顔中に変な汗と汁が出ていて気持ち悪い事この上無い。
俺は善意を持ってドスに一言伝える。
「いいのか? ドス」
「ゆふぅーーー! ゆふぅーーー! な"に"がっ"!!」
「いいのか? 両目を失ったら、生き残れないぞ」
「どずはぐずのにんげんざんをごろじで、ゆっぐりずるよ!!!」
「俺の動きが見えなかったんだろう?
なら次も見えない。
ゆっくりは人間には勝てないんだよ。
試したかったらそのきのこを拾えばいい。
次は左目を貰う」
ドスの動きが止まる。
人間に遭遇しなかっただけで、壮絶なゆん生を歩んできた筈だ。
こいつはもう分かっている。おそらくこいつに指示したぱちゅりーも。
まわりの成体ゆっくりも唖然としており、子ゆ赤ゆに至ってはドスの餡子を見てゆんゆん泣き喚いている。
俺は更に付け加える。
「ドス、俺は一人だけ助けてやる、と言った。
お前も含まれている」
「ゆふぅーー・・・ ゆふぅーー・・・ 」
「どすぅぅ!! きいちゃだめよ!!」
「ドス、死にたくないんだろう?」
「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」
「ドス、片目しかないお前じゃれみりゃはともかくふらんは無理だろう。 勿論俺を倒すのも無理だ。
だがもしお前が最後まで生き残れば、それで助かるんだ。
どうするかはお前の自由だ。
まぁ俺がこんなことを言うのもなんだが、
生き残る可能性が高い方に賭けた方が良いんじゃないのか? ドス。
"他人は他人"だろう?」
「う"~~~ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"~~~~!!!」
ドスは涙を流し涎を流し、左目を強く瞑って唸っている。葛藤しているんだろう。
一方のぱちゅりーは顔面が蒼白だ。もう悟ったのだろう。口に枝を咥えだした。笑いが出そうになる。
俺は上で旋回しながら待機していたれみりゃとふらんに合図をする。
あまあまが腹いっぱい食える、と1日断食させていたのだ。群れの一つ程度は食い荒らすだろう。
2匹の捕食者は急降下し、地面に群がる餌に飛びついて行った。
「(がぶがぶ)うう~~ あまい~~☆」
「ゆぴぃぃぃ!? ゆびっぎぃぎぎぎぎ・・・」
「ゆんああああぁぁぁぁぁ!! ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ゆああぁぁぁぁぁ!! きょわぃよぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆぅぅ! おちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の方に注目していたゆっくり共は、捕食者が降りてきた事に気付くのが遅れた。
まずはれみりゃが俺を案内したれいむの赤ゆの1匹に噛み付き、餡子を吸いだした。
ふらんは空を旋回し"品定め"をしている。
奇声を上げて白目を剥き痙攣する赤れいむ。それを見てしーしーを漏らしながら泣き喚く2匹の姉妹。
空を飛んでいたれみりゃが降りてきた事により、ドスの右手側のグループはパニックに陥っていた。
まぁどの道赤ゆが生き残る事は無い。せいぜい恐怖で震えて甘くなってくれ。
「みんな! ちがうほうこうににげるのよ!! そうすればたすかるわ!!」
「ゆゆ!! おちびちゃんたち!! ゆっくりついてきてね!!」
「ゆー!! ありすたちもにげるよ!!」
「「「みんな!! ゆっくりにげるよ!!」」」
ありすがゆっくり達に生存策を伝える。このありすは群れの重役かな?確かにそうだな。
それを聞いた一部のゆっくりの親子は逃げ始めた。良いぞその調子だ。
だから俺は付け加える。
「このふらんは俺から離れた奴を優先的に食う。
食われたい奴から逃げれば良い。お前らの自由だ。」
これは事実だ。そう仕込んだ。
案の定なんの命令もしていないのに、ふらんが逃げ出したゆっくりを追い出した。
「う~~~☆ ふらんもあまあまたべたいど~~☆ にげるやつはつまみぐいだど~~☆」
「じゃあこのおおきいのはれみりゃのぶんだど~~☆」
「ゆああああああああ!! こっちこないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ゆんあああああ!! にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
逃げ出したゆっくりと指示したありすが悲鳴を上げる。
だがもう遅い。四方に逃げたゆっくり達はみな"つまみ食い"をされ、足を無くすだろう。
成体ふらんが一匹居れば、どの道助からないのだ。食うのよりも嬲り殺すのが目的なのだから。
タックルされて身体を倒され、あんよを噛みちぎられ、それで一生が確定する。
ふらんは逃げる奴を食い荒らし、れみりゃは動いてない奴を食い荒らす。
ありすは自分の言った事で仲間が"つまみ食い"をされる様を見て、顔が青ざめていく。
ぱちゅりーはというと、えだを噛み締めて何かを観念した様だ。目が据わっている。
「ゆううううう!! ぱちゅりー!! なんとかしてね!!」
「ゆっくりしないではやくしてね!! れいむたちをたすけてね!!」
「ぱちゅりーはほんとにぐずだね!! ひとりでかりもできないしね!!」
「ありすのせいでふらんがきたよ!! ありすのせいでゆっくりできないよ!!」
「「「ありすとぱちゅりーはほんとゆっくりできないゆっくりだね!!」」」
「どぼじでそんなこというのぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ぱちぇもありすもがんばってるでしょぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」
「そうだみょん!! ぱちぇもありすもわるくないみょん!!」
ゆっくりに責められ泣き出すありす。質の悪い群れの様だ。みょんだけが味方をしている。こいつも重役か?
まぁゆっくりにとって「ゆっくりできないゆっくり」と言われるのはゲス以下、死に値するほどらしい。
そこまでこき下ろされたら泣き出すのも無理は無いか。ありす種はプライドが高い様だし。
まぁ俺には関係無い。
その一部始終を眺めた後、俺はドスを生温かい目で見つめていた。
ぱちゅりーと同じく目の据わったドスが満身創痍で動き出したからだ。
「(ブルブル)ゆ"ぅ"ぅ"~~ ・・・じにだぐないぃぃ・・・ どすは・・・」
『・・・!? どす!?』
「どすは、」
『だれか!! どすをとめて!』
「どすは、いきのこるよ!」
『みょん! どすをえださんでさしてぇぇぇ!! はやくぅぅぅぅ!』
「(パクツ)」
「!? わかったみょん!! どすうぅぅぅぅ!! ・・・!?」
ぱちゅりーが叫び、みょんが枝を咥えて突進する。異変に気付いた様だ。なかなか速い。
だが一歩早く、ドスはキノコを舌で取り口に含み、みょんの居るドスの左手側に向き直った。
ああ、位置が悪かったな。むしろ運か。
右手側に居れば、ドスには位置が分からなかったのにな。
カッ!
(ボッ)「「「「ゆぎぃぃぁぁああああああああ!!!!!」」」」
ドスはキノコを咥えると、身体を左手に半回転させ口元をみょんの正面に向けた。
予想通り溜めなど無かった。一瞬で眩い光が放たれ、みょんを含む左手のゆっくり達が燃え出す。
ドスから左手側のグループを牽き潰す様に、炎の軌跡が生まれていた。
「「ゆぎゅ"う"う"う"う"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!!!」」
「「あじゅい"い"い"い"い"い"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」
「「だずげでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」」
「「「「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」」」」
「「「「ぴぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」」」」
赤ゆは即死。子ゆと成ゆは全身が炎に包まれ転げ回っている。
みょんも絶叫しながらのたうち回る。ぽよんぽよんという音では無く、バスンバスンと狂った様に。
ゆっくりの肌は人間よりも敏感らしい。ならばこの全身を包む炎は想像を絶する地獄だろう。
およそ左手側の9割が直撃、即死を免れた20匹程のゆっくりが独自のファイヤーダンスを踊りだす。
ゆっくりにとって火が付くと言うのは殆ど死を意味する。顔しかないゆっくりは自分で火を消せないからだ。
しーしーとうんうんを撒き散らしながら飛び跳ねるクソ共を見て、その様を楽しむ。
同時に山火事にならない様に、燃え出した枯れ葉を踏んで消火するのも忘れない。
そしてドスの右手側をAグループ、左手側をBグループとするなら、既に両方にパニックが起きていた。
A側はれみりゃが食い荒らし、B側は火炎地獄となっている。仲間割れも散見出来た。
もう終わりだろう。
A側に居た司令官と思われるぱちゅりー自身が、枝でありすを突き刺しているのだから。
(ザクゥッ!)
「ゆぎゅ"う"う"う"!! ぱちゅりーどぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!!」
「むきゅうぅぅぅぅぅ!! どすがいないいじょう、もうたすからないのよぉぉぉ!!!
ならぱちゅりーは、このえださんでみんなをころしていきのこるわぁぁぁぁ!!!
さいごのひとりになるのよぉぉぉぉぉぉ!!!」
むきゅきゅきゅきゅー、と笑いだすぱちゅりー。
そうだな。頑張れ。お前では無理そうだが。
「どぼじであ"り"ずな"の"お"ぉ"ぉ"ぉ"!!
ごうなっだのはでいぶのせきに"んでしょぉぉぉぉ!!
さぎにでいぶをさすべぎでしょぉ"ぉ"ぉ"!!」
流石成体、刺された程度ではまだ死なんか。言ってる事も一理ある。
まぁ言ってる事自体はゲスなんだが、この状況でゲス化しないゆっくりなどいない。
それを聞いたちぇん親子が枝を咥えてれいむに向きだした。
「「わかるよーー!! ぜんぶれいむのせきにんなんだよーー!!」」
「だれかぁぁぁぁ!! おちびちゃんをたずぶぎぃい!!」
まだ叫んでたのかお前。もう死んでるだろ。
2匹のちぇんの枝が左右かられいむの顔に突き刺さる。
引き抜かれた穴から餡子が漏れ、痛みで泣き喚くれいむ。
そしてそれをお構いなしに、付近のゆっくりがれいむに噛みつき出していった。
「れいむのせいだよ!! くずのれいむははやくしんでね!!」
「れいむがしねばたすかるんだよ!! ゆっくりしないでしんでね!!」
「「「くずのれいむ!! ゆっくりごろし!! ゆっくりできないれいむはゆっくりしないでしんでね!!」」」
「ゆぎぎぃぃぃぃ!! どぼじでこ"ん"な"こ"と"す"る"の"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!
や"べでぇぇぇぇぇ!! い"だい"い"い"い"い"い"い"い"!!!
ばでぃざばずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
皮を引っ張り引き千切り、中から餡子が漏れ出す。
逃げようと必死に飛び跳ねるが、飛び跳ねるごとに皮を噛みちぎられ餡子を撒き散らしている事に気付いていない。
すぐに飛べなくなり、顔の半分以上の皮を持って行かれたれいむが見えてきた。
「ゆ"べぇ"ぇ"!! だずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
口から残り少ない餡子を吐いて助けを求める親れいむ。
聞こえないかのごとく執拗に枝で殴る刺す噛みつく引き千切るをするまわりのゆっくり達。地獄絵図だ。
その様を見ていたれいむの赤ゆ2匹は、恐怖でうんうんとしーしーを垂れ流し、口から餡子を漏らして悶死していた。
ふとこいつの番のだぜまりさを探す。
少し離れた所で何かをしているが、よく見ると枯れ葉を集めてその中に隠れようとしていた。
無言で顔は必死だ。全然ゆっくりとしていないが、中々賢いな。
視線を戻すとB側はほぼ壊滅、生き残ったA側のゆっくりがドスを刺し殺そうと枝で突き刺しているのが見えた。
「むきゅうぅぅぅぅぅ!! みんなぁぁぁぁぁ!!
どすをころすのよぉぉぉぉ!!!
じゃないとどすにころされるわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「どすははやくしんでね!! れいむたちがいきのこるよ!!」(ザクッ!)
「いきのこるのはみょんだみょん!! みょんいがいはみんなしぬみょん!!」(ザクゥッ!)
「う~~☆ おっきなあまあまさんなんだど~☆」(ガブゥゥ・・・ブチィ!)
「い"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"」(ドスン!ドスン!)
「むきゅ!? どすぅぅぅぅ!! こっちこないでべぎゅ!!」(ブチャァ!)
「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサユサユサ)
「だずげでぇぇぇぇぇぇ!! だれがばでぃざをだずげでぇぇぇぇぇ!!」(ユサユサ・・・)
いよいよ本当の地獄になってきた。
ドスを殺そうとするぱちゅりーがゆっくりを誘導し、れみりゃまでもがドスに噛みつき皮を剥いでいる。
痛みで飛び跳ねたドスがぱちゅりーを体半分踏み敷き、圧迫された生クリームが破裂してぱちゅを四散させた。
奥を見ると刺されてないありすがまりさをれいぷしている。すっきり制限で我慢もあったのだろう。
顔は恍惚、舌を大きく出してだらしなく涎を垂れ流すありす。
性欲全開でまりさを犯す様は反吐が出そうになる。しかも相手は子まりさだ。
「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」とありすが奇声を上げた後、まりさは餡子を吐きながら黒ずんで行った。
「ゆふぅーー! じにだぐないぃぃ!」
体力だけはあるクソデブが飛び跳ねる。だがもう身体の下半身は穴だらけだ。
飛び跳ねるだけで餡子が飛び出し、とうとう皮が裂け始めた。
裂けた状態で飛んだ瞬間、大きく皮が裂け餡子が盛大に飛び出した。
「い"ぎぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! たずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
「どすはしねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ザスッ!)
「ッッッばあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!! ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
もうあんよが裂かれ、飛べなくなったドスの左目にまりさが枝を突き刺す。
両目を失ったドスが絶叫する。この瞬間、ドスが生き残る可能性は消えた。
「おちびちゃん、ごめんねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「やべでおぎゃあしゃん"ん"ん"!! でいぶをがまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
甲高い悲鳴のする方を見ると、親れいむが子れいむを噛み潰そうとしていた。
すでに近くの赤ゆは誰かに噛み潰された様だ。無残に四散しており、誰の子で誰にされたかは容易に分かった。
ゆっくりは人間同様、子と親の体格差が大きい。子では勝てないだろう。
周辺では他人の子ゆっくりを殺し、また自分の子ゆっくりが他人に殺されるという光景が広がっていた。
殺しやすい相手から、赤の他人からという事なんだろう。
れみりゃはドスを食い荒らすのに夢中で、ふらんは逃げたゆっくりを嬲っている最中だ。
最後の一人になるべく、どのゆっくりも同族と殺しあっていた。笑いがこみ上げる。
そう、いつしか俺は、この光景を見ることだけが生き甲斐になっていた。
燃えさかるゆっくりたち。親子殺し、隣人殺し。強姦。暴行。罵倒。雑言。恐怖。苦悩。苦痛。諦観。
この地獄劇場が永遠に続けば良いと思いながら、俺は阿鼻叫喚を心行くまで堪能していた。
「んほぉぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすのあいをうけとめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」(ガサガサガサガサ)
ありすのれいぷ宣誓が聞こえた。ふと見るとさっきぱちゅりーに刺されたありすだ。
カスタードを傷口から垂らしながら、枯れ葉の山にガサガサと突進していく。
狙いは隠れているだぜまりさの様だ。
まりさはというと心底嫌そうな顔をし、枯れ葉から出て枝を咥えて応戦しだした。
「どぼじでうけとめてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!」
「まりささまのつまはこのむれにくるまえにしんだれいむだけなんだぜ!!
れいぱーありすやげすのれいむはごめんなんだぜ!!」
「まりさはありすよりもれいむをえらんだぁぁぁぁぁぁ!!
ありすはむれのじゅうやくなのよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「どすがわるいんだぜ!!
あのれいむがだんなをなくしたからつがいになってくれといってきたが、
きょひするならむれからでていけといったんだぜ!!
まりささまはしょうだくしたくなかったんだぜ!!」
「ならどうしてありすをえらばなかったのぉぉぉぉぉぉぉ!!
むれのおとなのゆっくりはつがいにならないとだめなのよぉぉぉぉ!!
まりさがれいむをえらんだからありすはいまだにひとりなのよぉぉぉぉぉぉ!!
ありすだってすっきりしたいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おまえみたいなげすなれいぱーといっしょになるくらいなら、
げすれいむとゆっくりのないゆっくりせいかつをおくるほうがましなんだぜ!!
おちびちゃんのきょういくにわるいんだぜ!!!」
「んはぁぁぁぁぁぁ!!
ならありすはまりさとまりさのこどもですっきりしてやるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ありすをこばんだばつなのよぉぉぉぉぉぉ!! んほぉぉぉぉぉぉぉ!!」
傷口からカスタードを垂れ流しながらもまりさを襲うありす。
顔は狂喜し舌を垂らして涎をふりまき、ぺにぺにを突き出して突進していく。
きっとまりさを気に入ってるんだろう。尋常じゃない執着ぶりだ。狂ってやがる。
このまままりさが負ければ、親子共々すっきりされてしまうだろう。
まあ俺には関係無いがな。
高みの見物をしていたら、逃げたゆっくりを食い終えたふらんが戻ってきた。
「う~~!! もっとあまあまくいたいど~~!!!」
「んほぉぉぉぉぉ!! まりさぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ゆぅぅ!? ゆううううううう!!!」
ふらんとありすに挟まれたまりさ。丁度一直線上だ。終わったな。
だが俺の期待と裏腹に、まりさは後ろのふらんの方に走り出した。
ふらんが慌てて急降下する。ありすもまりさを追い掛ける。
噛みつこうとするふらんの下を紙一重で滑り込み、そのまま枯れ葉に潜る。
ふらんはそのまま後ろにいたありすに激突する。
「ん"ほぉ"ぉ"ぉ"ぉ"んぶぎゅ!! い、いだい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
ありすに噛みつき、そのまま空高く舞い上がるふらん。
持ち上げたありすを空から落とす。俺が以前教えた「もっと甘くなる方法」をしている様だ。
「ゆ! おそらをとんでるみだばぎゃ!!」
べちゃぁ!!と墜落するありす。
あんよから地面に落ちた様で、傷口が裂けカスタードを撒き散らしていた。
悲鳴を上げるありす。それを見ていたれみりゃが、ちぇんを咥えながら寄って来た。
咥えているのは、どうやら畑を食い荒らしたちぇんの様だ。
しーしーを漏らしながら必死に牙から離れようともがいている。
「う~~☆ ふらんはなにをやってるんだど~~☆」
「う~~☆ そらからおとすとあまくなるんだど~~☆ おにいさんがいってたど~~☆」
「う~~☆ れみりゃもやるど~~☆」
「う~~☆ ふらんがおてほんをみせてやるど~~☆」
ちぇんとありすはそれぞれ上に持ち上げられ、何度も何度も執拗に地面に落とされた。
叩きつけられる度に中身を飛び散らせ、しーしーを漏らして痛みに身悶える。
ちぇんの方は泣き叫びながら「わからないよぉぉぉ」「らんしゃまぁぁぁぁ」と叫んでいる。
ありすの方は「やべでぇぇぇぇぇ」「ばでぃざぁぁぁぁぁぁ」と叫んでいる。
どちらも助けは見込めそうに無い。
ありすの方が可能性は大だが、そのまりさは枯れ葉の中でだんまりを決めているのだから。
「いだい"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! ら"ん"じゃ"ま"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
「までぃざぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! ありずぼだずげべぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
「う~~ そろそろあまあまになってるんだど~~☆」
「ならたべるど~~☆」
「いだび"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!! かまないでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」
「やべでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!! すっぎり"し"だい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」
畑を荒らしたちぇんはれみりゃに。
最後まですっきりしたがっていたありすはふらんに食べられた。
周りを見ると、もう動いているゆっくりは数匹しか居ない。
俺はスコップを片手に、最初に見ていた巣穴に向けて動き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「・・・おまえ生きてるのか?」
「し、しんでるんだぜ。ほっといてほしいんだぜ」
枯れ葉を足でどかし、隠れているだぜまりさを見る。良い反応だ。
俺はまりさに一言伝える。
「もうゆっくりは皆死んだ。生き残ってるのはお前"だけ"だ」
「ゆ? ほ、ほんとに?」
「ああ、まわりを見てみると良い」
そういうとまりさが枯れ葉の山から出て行った。
辺り一面ゆっくりの死骸だらけ。
焼け焦げたゆっくり、中身が吸われしぼんでいるゆっくり、皮が裂け餡子が漏れ出ているゆっくり。
動いているゆっくりは無く、そこには死体と焼け焦げた匂いしか残っていなかった。
「どうだ? この焼け焦げた匂い。 俺は確信した。 勝利の香りだ」
「しょ、しょうり?」
「ああそうだ。 ゆっくりの神様はお前に味方したようだな」
「・・・・・・」
呆然と周りを見詰めるまりさ。
あのドスが。あのぱちゅりーが。あのありすやれいむ達が。皆変わり果てた姿で横たわっている。
まりさがいつこの群れに入ったのかは知らないが、思う所もあるのだろう。無言だった。
ふらんとれみりゃは中心の木で横になっている。よく食べたからな。
俺は構わずスコップで後始末をする。
「ゆ? にんげんさんなにしてるの?」
「ん? お前らの巣を埋めてるんだ。
残していたらまたここに群れが出来るからな。
人里に近い巣は全て埋める」
そう、スコップはこの為に持って来たのだ。ドスが居れば応戦に使うが、これが主な目的。
手際良く埋め立てて行くと、ある巣の前に来た時にまりさが血相を変えて飛びついて来た。
「やめてね!! にんげんさん!!」
「なにが? 巣ならもっと奥に作れ」
「ゆぐ! わかったからやめてね!! つちさんをかぶせないでね!」
「だからなんで?」
「ゆ・・・ す、すがなくなると、ふゆがこせなくなるよ!! やめてね!!」
「そこの野菜を持って他の群れに行けば、場所ぐらい貰えるだろう。
それにお前一人なら冬が越せるぐらいの量だろう、あの野菜は」
「ゆーー!! ここはまりさのゆっくりぷれいすなんだよ!! はやくはなれてね!!」
ぽよんぽよんと音を立て猛抗議をするまりさ。口調まで普通に戻っている。
よほど慌てているらしい。
生き残ったと言うのにここで喧嘩を売るとは、死にたいのか?
少し考えたあと、ある事を思い出してまりさに一つ質問する。
「まりさ、番のれいむとは同じ巣に住んでたのか?」
「ゆ! べつのすにすんでるよ!! わかったらはなれてね!!」
「そうか。まぁいい。他の巣は全部埋め立てた。そろそろ帰るよ」
それを聞いたまりさは安堵し、口調も戻った。
「ゆゆ、にんげんさんはゆっくりかえるんだぜ!!
まりささまももっともりのおくにいくんだぜ!!」
「ああ、そうした方が良いな」
寝ている2匹をリュックに入れ、帰路に付く。
その様子を凝視しているまりさを尻目に、俺は歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
20分後、俺は再び群れの中心に戻って来た。
もうお分かりだろう。
まりさの巣と思われるところにスコップを当て、土を掘り返す。
異変に気付いたまりさが巣から飛び出し、顔をぐしゃぐしゃに崩しながら問いかけて来た。
「にんげんさんんんん!! なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ああ、忘れ事をこなしにな」
そう言いながらもスコップで土を掘る手は止めない。
せっかく待ってやったのに、何をしてたんだか。
「にんげんさんんんん!! やめるんだぜ!!」
「それは出来ないな」
「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
泣き出して必死に俺の脚にぼすんぼすんと体当たりをしてくるまりさ。"うい奴"だ。
上から掘る事で巣が見え出し、真上から巣の全体が見えるまで掘った。
入口に木や石で堅牢なバリケードが敷かれているが、奥に部屋が二つある。
手前の入口側が食糧保管庫兼台所、後ろの部屋が寝室の様だ。
そして寝室には、子まりさが2匹と赤まりさが3匹居た。
「「ゆゆ!! にんげんしゃんだよ!!」」
「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」」」
そう、まりさは賢いまりさだった。
出会った時に帽子が膨らむ程食料を集めていたのは、家族が多いから。
それは休息日に活動する点からも分かる。
休息日に休息していないまりさは、さぞゆっくりしてないゆっくりに見えただろう。
番のれいむからも、その赤ゆからも馬鹿にされる訳だ。まぁもっともここはれいむもだが。
巣に急いで走って行ったのも、バリケードを塞いで子供を助けるため。
ありすを拒んだのも、まりさ種ばかりのため。
それなら別居で済むれいむの方が良い訳だ。れいぷの危険が無い。
ゆっくり如きがここまで頭が回る事に感心しながら、まりさに問いかける。
「さぁまりさ、続けようか」
「ゆう"う"う"う"う"う"!!! なにお"お"お"お"お"お"お"お"!!!?」
「決まってるだろう? 一人"だけ"助けてやる」
「ゆ"ん"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!
どぼじでぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!!」
「まりさ、はやくしないと上のふらんが食い出すぞ?
隠れなくて良いのか?」
空を旋回するふらん。やはりれみりゃよりふらんの方が役に立つ。
ふらんはニヤニヤしながら今か今かと合図を待っている。
涙を流し涎を流し、哀願するまりさは愛おしくも思う。
「ま"り"ざの"お"お"お"お"お"お"お"お"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
どっ"でも"ゆ"っ"ぐり"じだゆ"っ"ぐり"な"ん"でずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ああそうなのか。まぁ俺には関係無いが」
「ま"り"ざば"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!! おぢびぢゃ"ん"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
何を言ってるのかさっぱり分からん。
まりさの子供は事態が飲み込めず、姉妹ですーりすーりしている者も居る。ふらんが見えて無いのだろう。
どう足掻いても、絶望。
「ゆっぐりのがみざばはあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ばでぃ"ざの"みがだじゃ"な"い"ん"でずがぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「いやぁ味方なんじゃないかな? 生き残ったのはお前の"家族"だけだ。
次は1人になるまで頑張れ」
「ぞん"な"の"い"や"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」
憐れなまりさ。親が泣くなよ。れみりゃに追われたか。
ゆっくりふらんが空から降りて来て、わざとまりさの横に座り穴を見た。
中の子ゆっくりと目が合い、合唱が始まる。
「「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ごわ"い"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」」
「「「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」
中枢餡レベルに刻まれた捕食種への強烈な恐怖がゆっくりを襲う。
ガタガタ震えしーしーを漏らす赤ゆと子ゆっくり達。悪いがその様は興奮する。
親まりさの方は歯を食いしばり、歯と歯の間から涎を垂れ流している。勿論泣いているので汁塗れだ。
ゆっ、ゆっ、と子供が泣いた時の様にえづきながら泣いている。かわいそうに。
だが俺も鬼では無い。仕方が無いからまりさに"助け船"を出してやった。
「なぁまりさ、誰が生き残るのか決められないのか?」
「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
「じゃぁこうしよう。
まりさが死ぬか。子供が全員死ぬか。
これなら選べるだろう」
「ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「なら子供を殺すしかないな」
「ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
優柔不断なゆっくりだ。譲歩したというのに。本来なら皆殺しなんだがな。
まぁ子ゆっくりも赤ゆを脱した程度の大きさだ。確かに越冬は無理だろう。
まりさがたまらず哀願を続ける。仕方がないので聞いてやる。
「おでばいじばずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
ばでぃ"ざがじんだら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"ばいぎでいげな"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「お前が生きれば良いだろう? 違うのか?」
「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ずでごなんでずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
お"や"がい"な"い"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!」
「捨て子か? 別に珍しくも無い」
そうだ。この幻想郷では別に珍しくも無い。
人間でさえ、妖怪に親を食われる事があるのだからな。
「ごのごだぢばぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
ばでぃ"ざがお"や"がわりな"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
ばでぃ"ざもお"や"がい"な"がっ"だん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
だがら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
おぢびぢゃ"ん"だげば"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!
だずげだい"ん"でずぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!!
だずげでぐだざい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!!」
親が居なかったこのまりさは、同じ境遇の親がいない他の子まりさを助けたい訳か。
なるほどな。
くだらん。俺が怖くないのか?
だがそうだな。子ゆ共はまだ小さい。親がいないと子は死ぬしか無いだろうな。ああそうだろう。
だから俺は、
"ゆっくりの神様"に決めて貰おうと思う。
「よしまりさ、これが見えるか?」
俺は一枚のコインを取りだす。幻想郷の外の世界の硬貨だ。
表に桜が、裏に数字が刻まれている。名前は100円玉という。古道具屋で仕入れた物だ。
まりさはぶるぶると震えながらそれを見る。
「いいかまりさ。この花が載っている方が表だ。花が無い方が裏だ。
このコインを投げて、出た方を殺す。
表が出たらまりさを殺す。
裏が出たらまりさの子供を全員殺す。
これでいいな?
出た方を殺す。
そして投げるのはお前だ。
分かったな?」
「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ぞん"な"の"む"り"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!」
「いいかまりさ。 お前はさっきゆっくりの神に味方された。
だから今回も味方されるのを祈れば良い。
早く咥えろ。
そして、それを高く放り投げろ」
「ゆ"う"う"う"う"う"!!! ゆ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」
もはや思考もままならないのだろう。
言われるがままに咥えだす親まりさ。
「咥えたな? 思い切り上に放り投げろ。 神に祈りながらな」
「ゆ"う"う"う"う"う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
ヒュン。
顎を使い大きく上にコインを放つまりさ。
空を舞うコイン。時刻は夕暮れ。運命のコイントス。
真っ赤な陽光が俺とゆっくり達を包んでいる。幻想的な世界。まるであの日の様だ。
世界がスローで進んでいく。
光を反射し紅葉色に煌めくコインは、そのまま上昇が終わると弧を描きながら落下した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おぢびぢゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!!!
う"ばあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
「「「「「ゆびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」」
屋根の無くなった巣の外で身を寄せ合うまりさ親子。
まりさの投げたコインは、まりさの元妻の体に突き刺さっていた。
餡子に垂直に刺さったコインは、表も裏も表さない。
どうやらゆっくりの神というのは本当に居るのかも知れない。俺には分からないが。
俺は約束通り、"出た方"を殺して帰る事にした。出た方が無いのだから、殺す相手も居ないのだが。
コインを餡子から引き抜き、まりさに一言伝える。
「にんげんしゃんんん!! ゆっくりかえってね!! にどとこないでね!!」
「さぁな。 あとまりさ、これはやるよ」
俺は泣いているまりさにコインを投げる。
「ゆぐう!?」
「おまえは運命に打ち勝った。 それは記念に持っておけ」
「うんめい?」
「ああそうだ。 コイントスは人間の持つ、運命を試す方法の一つだ。 困った時に使うと良い」
コインを渡すと、俺は踵を返す。
安堵するゆっくり共の声が聞こえる。それが勘に障る。
そうだ。コインの代価を貰っておこう。
バチンッ!!
「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! ま"り"ざの"おぼうじがあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
親まりさの帽子の"つば"を、仕事用の果樹園用はさみで盛大に切る。
右目の上の部分に切れ込みが入り、人間視点でなかなか"りりしく"なった。
「助かっただけ有り難いと思え」
ただの八つ当たりには違いない。
命よりも大事な帽子に切れ込みが入り、以後のゆん生は難儀するだろう。
命を張ってまで助けた相手が、それほどの価値があるのか。俺が知る事は無いだろうがな。
ふらんは自分でリュックの中に入り、そのまま眠りに付いた。
まりさ親子は助かった事に涙し、俺は仕事を終えて帰路に付く。
もう会う事も無いだろう。まぁ俺には関係無い。
太陽はもう殆ど落ちていた。もうすぐ妖怪の時間だ。
助かった事に安堵する声を後ろに、俺は自宅へと歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
* Epilogue -
「ふああああ あやちゃんのぱんつみたい」
夏。炎天下。
男は一人つぶやく。叶う筈が無いんだが。
唯一の楽しみである"文々。新聞"を読みながら、ため息を付く。
今回の記事の内容はゆっくり特集。
山の奥に居る希少種などについて書かれていた。
最近はドスの亜種に面白いゆっくりが出てきたらしい。
体長60cmほど、まだ若いドスまりさが人里の果樹園に近い森に居る。
ドスの帽子には大きな切れ込みがあり、あまりゆっくりできていなさそうだ。
だが本人はとてもゆっくりしているらしい。
このドスは一人で生活しており、群れには属していない。
子供が居たが既に独立し、今は悠々自適に生活しているとの事だ。たまに子供が会いに来るらしい。
一人立ちした子供の元気な姿を見てはゆっくりしているらしく、ゆっくりにしては素晴らしい家族関係だ。
そして出会う捕食種やゲスゆっくりに対して、このドスはある"ゲーム"を仕掛けるそうだ。
それはコインを投げるゲーム。
表が出ればドススパークで焼き殺し、裏が出れば帽子を奪う。
どちらにしてもゆっくり的にはゆっくり出来ない、恐ろしい結果だ。
だが回避方法もあるらしい。
どちらの目も出さなければ良いのだ。
そんな事は不可能だと思うが、このドスは昔どちらの目も出さなかったらしい。
曰く「ゆっくりの神が味方した」との事。そんな神が居るのだろうか。
ただ例え回避出来ても、帽子はずたずたにされるらしい。だが取られるよりはマシだろう。
真相は闇の中だが、今回はこの辺で終わりたいとする。次回は町ゆに焦点を絞り・・・
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森の中。
ゆっくり達の悲鳴が木霊する。
あるゆっくりが溜めこんでいる食糧を奪おうと、ゆっくり達が徒党を組んでやって来たのだ。
しかし結果は返り討ち。ゲス共の命運はここに尽きた。
襲われたゆっくりが声を掛ける。
「さぁ、まりささまはせつめいしたんだぜ。 はやくそのこいんさんをくわえるんだぜ。
そしてそれをたかくほうりなげるんだぜ。
"かみにいのりながらな"」
帽子に切れ込みのあるドスまりさは、そういって目の前のゆっくりの「運命」を試しだした。
陽光煌めく幻想的な、あの日の様に。
森の中の切れ込みまりさ
種族:ドスまりさ
能力:ゆっくりの運命を試す程度の能力
おしまい
【後書き】
ゆっくりの重さに散々悩んだ結果、成ゆで700g(バスケットボール7号球とほぼ同じ)という事に。
ただ餡子が詰まってるのなら、直径25cmの球体ならもっと重いはず。
*
o
+ とかスーパーに行って餡子の缶詰見ながら思った今日この頃。重いと蹴りにくいので軽めに設定。
「さぁ続けようか」
「地獄じゃ! 神はなぜ弱者に自由を与えて下さらん」