ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0254 おんもでゆっくりしよう!①
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『おんもでゆっくりしよう!①』
「ゆっ、ゆっ」
林の中、一匹のまりさが跳ねている。
『かり』の成果は上々だったようで、
『おくち』と『おぼうし』にはそれなりに『ごはん』が詰め込まれていた。
今は帰り道。見据える先は林の斜面に掘られた穴。
愛する家族の待つ『おうち』である。
「ゆっくりただいまなんだぜ!」
「まりさ、ゆっくりおかえりなさい!」
「おとーしゃんおきゃえりなしゃい!」
「ゆっ! おきゃえりなんだじぇ~!」
「ゆんゆっ、ぽんぽんぺこぺこだよ!」
『ゆっくりしていってね!!!』
お勤めを終えた一家の大黒饅頭を、
満面の笑顔でゆっくり家族が出迎えてくれた。
まりさ・れいむ一家
親まりさ(父役)
親れいむ(胎生にんッしん!中/胎ゆ3)
子まりさ 3
子れいむ 5
赤まりさ 5
赤れいむ 6
ココは広大な緑に囲まれた自然公園、
通称『ゆっくり自然公園』。
遊歩道や展望台等が敷設され、
丘陵地帯にある敷地の手付かずの自然を満喫できる。
そこにどこからともなくゆっくりが流れ着いてきたのはいつからだったのか…。
今は春も半ば、絶好の観察日和が続いていた。
「ゆっくちおいちきゃっちゃよ!」
「ぽんぽんゆっくりできたよ!!」
どうやら食事が終わったようだ。
大した量でも無いのにモタモタ食ってるところがゆっくりである。
ちなみに親ゆっくり(バスケットボール大)、
子ゆっくり(軟球ボール大)、赤ゆっくり(ピンポン玉大)が主なサイズだ。
表記は球技形式が判り易くて良いよね!(※球種によっては、
用途に応じて様々なサイズが用意されてモノもあります)
子ゆっくり、赤ゆっくりは食後の運動なのか巣穴の中をコロコロ転がっている。
食後の運動は内部の『あんこ』の撹拌を助長して健康や発育に良し、とされている。らしい。
「こ~ろこ~ろ!」
「ゆゆっ! かわいいおちびちゃんのこ~ろこ~ろはゆっくりできるのぜ!」
「そうだね! かわいいかわいいおちびちゃんのこ~ろこ~ろはゆっくりできるね!」
「かわいいまりちゃもこ~ろこ~ろしゅりゅよ!」
食後は『おうた』を歌ったり、親ゆっくりに登ったりと、皆が皆『ゆっくり』した。
自然公園に来たゆっくりは少し変わった『しんか』を遂げていた。
ゆっくりの皮膚は肌色の饅頭皮であるのだが、
稀によく青筋を立てたり目が餡走っていたりする個体がいる。
この自然公園ゆの饅頭皮下には通常の個体より『餡管』が
ビッシリと這っており、この機構により細部にまで
『あんこ』が行き渡り、ソレに起因するゆっくり的な能力が向上していた。
それでも所詮ゆっくりなのだが。
ちなみに、ゆっくりが力んだりすると、
体表面にブワッと餡管が浮き出てきてキモさも格段に向上している。
だが、そんな特徴も体の未成熟な幼体ゆっくりの場合、
小さな傷で出餡多量→失餡死コンボの可能性を孕む。
この一帯の幼ゆっくりは、せめて子ゆ程度の大きさになるまではと
巣から出されずに大切に育てられていた。
「ゆっ! おちびちゃん、こ~ろこ~ろもいいけれど、もうす~やす~やのじかんだよ!」
「ゆっゆっ! まりさまだす~やす~やしないよ!
ゆっくりあそぶよ!」
「だめだぜ! あしたははじめておんもにぴくにっくにいくやくそくなんだぜ! よふかしさんはつれていかないのぜ!」
「ゆ? ゆ゛ううっ? や゛めてね! まり゛さもぴくにっくにつれていってね゛! す~やす~や゛する゛からね!?」
『おんも』はどんな世界なのだろうか。
とてもゆっくりしたところに違いない。
おとーさんがいつも美味しい『ごはん』を
獲ってきてくれるところなのだから。
とてもゆっくりしたおかーさんとおとーさんが
出会ったのもおんもなのだから。
家族以外のゆっくりとも出会えるだろうか?
おともだちも出来るかもしれない。
ゆっくりしたおともだちをいっぱいつくろう。
なかよくなっていっぱい遊ぼう。
すりすりしたり一緒に『おうた』を歌おう。
疲れるまでおいかけっこもしよう。
ゆっくりしよう。
ぽかぽかおんもでみんなでいっぱいいっぱいゆっくりしよう。
…とか考えてるんだろうか。
「ゆっゆっ! はじめておんもにでられるよ! たのしみだよ!!」
そして翌日。快晴。
「ゆ~ん! ぽかぽかさんだね!」
一家は自然公園が一望できる丘の上までやってきた。
巣の傍の茂みを抜ければスグの来れるような場所ではあるが
体の小さな子供達にしてみれば大冒険である。
緑の丘をキラキラした目で見渡していた。
そこには堅牢な造りの展望台もあり、
人間ならコンクリートの階段を登ってより良い絶景を堪能できる。
ちなみに昇降口には『ゆっくりがえし』が
設えて(しつらえて)あるので、ゆっくりには登頂不可能。
階段に饅頭が転がっていたら危ないからね。
あと、子まりさのはじめてのおんもの感想もカットした。
「ここのくささんならやわらかいから、
あかちゃんがぴょんぴょんしてもだいじょうぶそうだね!」
「ゆっ! あかちゃんたち、あわてないで、
ゆっくりおとーさんのおぼうしからでてくるんだぜ!」
ココに来るまでの道中で、
赤まりさ『ひとり』赤れいむ『ふたり』がはぐれてしまっていた。
道中は危険だからと、親まりさがおぼうしに入れて
運んでいたにもかかわらず・・・である。
そして道中で美味しそうな『あまあま』さんを
みつけたのでおべんとうに加えることにした。
だが、このしあわせ家族は気付かなかったご様子。
残った赤ゆっくりは図らずとも4匹ずつ。
3以上の数を論理的・視覚的に『いっぱい』としか
認識できない一般的な通常ゆっくり種には
赤ちゃんが『いっぱい』いるので違和感すら感じていない。
(ここでの個体同士の数え方は
『ひとり』『ふたり』『さんにん』『いっぱい』
人間が数える場合には4から『匹』を使う。)
人間では判別の付かない飾りの違いを識別できるのに、
この場合、個々の個体の個性はどういう風に捉えられているのやら…
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっくりしていってね!!! ゆゆっ!?』
いかんいかん。観察が疎かになっていた。
どうやら一家がゆっくりしていたところに、
別の家族が挨拶しに来たようだ。
「とってもとかいはなおてんきね!」
「れいむとありすとかわいいおちびちゃんたちも
ぴくにっくにきたんだよ!
いっしょにゆっくりしようね!」
「あそぼうね!」
「あしょびょーにぇ!」
れいむ・ありす一家
親れいむ(父役)
親ありす(植物型にんっしん!/実ゆっくり6)
子れいむ 6
子ありす 3
赤れいむ 6
赤ありす 3
明るく大きな声で定例文をシャウトしたこちらも、
実ゆっくりも含めれば負けず劣らず大家族。
きっと道中にれいむ種辺りの赤・子ゆっくりが消えていることは想像に難くない。
ちなみにサイズの内訳は先の家族と同じ位だ。
「ゆっくちー!」
「れいみゅはれいみゅだよ!」
「まりちゃはまりちゃなんだじぇ!」
「ありすはありすよ!」
「いっしょにあそぼうね!」
「おいかけっこしようね!」
「かわいいおちびちゃんたちにもゆっくりしたおともだちができたね!」
「ゆっくりできてるね!」
「とってもとかいはね!」
「まりさたちもゆっくりするのぜ!!」
『『ゆっくりしていってね!!!』』
緑の丘で瞬時に意気投合する肌色饅頭。
春風が吹いていた。柔らかな陽光は燦々とゆっくり達を包んでいた。
緑が萌えている。
ゆっくり。
みんなみんな、ゆっくりしていた。
「しゅ~り、しゅ~り」
「ゆ~~ん! くすぐっちゃいにぇ!」
あかちゃんたちはおかーさん達のスグ傍、
柔らかい草の上に寄り集まって、各々の肌の感触を楽しんでいた。
「ゆっ! ゆっ! ちょうちょさん、ゆっくりかわいいれいむたちにつかまってね!」
「ゆー! そっちにいったんだぜ! まわりこむんだぜ! ゆんしょ! ゆんしょ!」
「まりさがいちばんにつかまえるよ! ゆっ、ちょうちょさんゆっくりしないでね!」
「ゆゆゆ~~~♪ ゆんゆゆ~♪ ゆ~、ゆ~♪ ゆゆゆんゆ~♪」
「ゆっゆっゆ♪ ゆん♪ ゆん♪ ゆん♪ ゆんゆんゆんゆんゆ♪」
「ゆ~~~っくり~~~~♪ ゆゆん♪ ゆゆっゆっゆゆゅゆっ♪」
「このとかいはなおはなさんであくせさりーさんをつくりましょう!」
「おきゃーしゃんにぴゅりぇじぇんとしゅるんだにぇ! ゆゆ~ん!」
活発な一部の子ゆっくり達は子まりさを中心に『かりごっこ』。
獲物は先ほど目の前を横切ったちょうちょさん(蛾)。
見失わないように懸命に跳ね回っている。開きっぱなしだからか
食意地がはってるのか口からは涎が駄々漏れであった。
子れいむ達はおうた。なにも語るまい。しかと聴きたまへ。
子ありす達は、おはなでアクセサリー製作に勤しんでいる。
「れいむのぽんぽんゆっくりしているわね!」
「ゆん! もうにんっしんゆんかげつなんだよ! もうすぐかわいいあかちゃんにあえるよ!」
「ゆ! れいむのありすもにんっしんゆんかげつなんだよ! はやくかわいいあかちゃんにあいたいね!」
『ゆ~~~♪ ゆゆゆ~~~♪ あかちゃ~ん~♪ ゆっく~り~していってね~♪ ゆんゆっゆゆ~♪』
『ゆっ♪ ゆっ♪ ゆっ♪ ゆっゆゅん♪ ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆ~~~♪ ゆっ♪ ゆんゆっゆっ♪』
「ゆすぅゆすぅ・・・だぜぇ・・・おちびちゃん・・・れいむぅ」
こちらは親ゆっくり達。またにてぃっ! な話題に花が咲いている。
つーか、なんだよ『ゆんかげつ』って。
ゆっくりなんぞ早けりゃそれこそ一瞬で産まれるだろうがぁ。
いいかげん、なんでもかんでも『ゆ』に関連付けるのはやめろよな。
ウゼーんだよクソが(ごめんなさい!)
一方、親まりさは日々の疲れがでたのか、
妻達の美声(笑)と陽光の心地よさに抗えず眠ってしまっていた。
唐突だけど、ゆっくりが『あかちゃん』とかのたまうと、
教育番組とかで『星の赤ちゃん』とか『鍾乳石の赤ちゃん』
とかいう表現を目の当たりにしたときに感じる、
なんともいえない気分になってしまうよね!
「ゆ~~~! おちびちゃんたち~~~! おべんとうのじかんだよ~~~!」
『ゆわぁ~~~~~い!』
正午過ぎ、両家とも昼飯を持参してきたようで一箇所に集まり始めた。
「きょうのおひるはしょうじょうばかまさんだよ! はなことばさんは『きぼう』だよ!」
「ゆっくりしているね! まりさたちにぴったりだね! でざーとにあまあまもあるよ!」
「ありすたちもおなじとかいはなおはなさんとゆっくりしたでざーとだわ! きぐうね!」
「おいちちょうだにぇ! れいみゅゆっきゅりたべりゅよ! きびょうをたべりゅよ!!」
『ゆっくりいただきます!!!』
『ゆっきゅりいちゃぢゃきまちゅ!!!』
あ~、こいつらウゼェな・・・マジで。希望でも奇病でも勝手に食ってくれ。
どっちも食っちまったら絶望しか残んねーぞ。
んで、まりさ一家の方はピンポン玉大の餡子玉3個、
ありす一家は軟球大2・ピンポン大3の『あまあま』を持参していた。
ココに来るまでに消えていた赤・子ゆっくりの成れの果てであろうか、
どちらにしろ一緒にぴくにっくに来れてよかったね!
ありす一家の餡子玉を見る限り、全部れいむ種であることが確認できた。
カスタード玉ではないので当然といえば当然だが。
ビュゴオオオォォォォーーーーーーーーーーッ!!!
春は強い風が吹くシーズンである。この丘陵地帯では、吹き降ろしの強い突風がよく吹く。
風は春の種子を運び、遠く離れた地にも芽吹きをもらたす。では、ゆっくりなら!?
『ゆわあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ??!!』
「ゆ゛ぅ~~~っ! ごはんがぁぁぁあああ!!」
「ゆわあぁぁ~! おめめにすなさんがあぁ!!」
ころころころころ…
「ゆゆ~ん! ころころしゅるよぉぉ~~~??」
「あ゛あ゛あ゛あがちゃんまづんだぜぇぇえええ?!」
突然の強風で花は舞い飛びあかちゃんころころ。緑の斜面に吸い込まれていく。
「ゆゆぅ~~~!? まりさのおぼうしがないよぉぉぉぉおおお??!」
「ゆわあああぁぁっ?! どこぉ?! どごい゛ったのおぉぉぉ??!」
「ゆびいいいいぃぃい!! まり゛ちゃのおびょうちぎゃぁぁぁっ!!」
「おぼうじいい!! おぼうじがないどゆっぐりでぎないいいい!!!」
「ゆびいいいい! ゆびいいいい! ゆびいいいい! ゆびいいいい!」
「おめめぇぇ! おめめいだいよおおぉおぉ! れいむのおめめぇえ!」
「ゆびいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいい!!」
どうやらまりさ種のおぼうしが今の風で軒並み吹き飛んでしまったようだ。
希望の薄紫の花びらと共に。
しあわせなぴくにっくモードから一転、おつやモードになってしまう生首饅頭達。
子ゆっくり達は、目に砂埃が入ってしまったり、
ゆっくりできない恐怖からほとんど泣き叫んでいた。
ありすの茎の実ゆっくりは無事だったようだ。
どうしてこんなことに… れいむたちゆっくりしていただけだよ…
こんなのとかいじゃあないわ… おぼうし… おぼうしがないと…
あまあま… おめめいちゃいよ… ゆっくり… ぽんぽんぺこぺこだよ…
おちびちゃん… ころころしゅりゅよ… あんよいたいよ…
「ぜぇ…ぜぇ…あがじゃんはぜんいんたすげだぜ…あぶながっだんだぜえ…」
親まりさは転がった赤ゆっくり救出にいち早く駆け出していたようで、
おぼうしと口に入れて帰ってきた。
驚くことに全ての赤ゆっくりは無事だった。外傷も無い。
なかなかやるじゃないか、まりさ。
目の前でおぼうしが飛んでいったこともあってか、
全員、個体の識別もできていた。
「ゆっゆっゆっ… ありすのおちびちゃんたちをたすけてくれてありがとうまりさ…」
「ゆぅぅぅん! こっわかっちゃよおおおおおぉぉぉぉ!! ゆぅぅぅ~~~ん!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おめめいだいよぼぉぉぉ… おべべぇぇ… れいむのおめめいだいよぼぉぉぉぉ…」
「ゆっ、おちびちゃんゆっくりこっちむいてね、ゆっくりぺ~ろぺ~ろするからね…」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆぅぅぅ、でもおちびちゃんたちのすてきなおぼうしがとんでいっちゃったよぉ…」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「あっちにおぼうしがとんでいくのをみたんだぜ! でもあっちはきけんなんだぜ…」
「ゆぐううう! さがしにいくよ! ゆっくりしないでまりささがしにくよぉおぉ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ま、まってね! おちびちゃんだけじゃきけんだよ! おかーさんたちもいくよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「いぞいでね! すてきなおぼうしがないどゆっぐりでぎないよ! いぞいでね゛!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
跳ねるのが総じて下手糞なゆっくり種。
子ゆっくりは更に下手糞だ。
まず跳ねる前の予備動作(溜め)に1秒。
スローモーな跳躍で1秒。
着地で1秒。
跳躍飛距離3センチ。
着地→溜め、で2~3秒使うのでスキだらけだ。
この公園のあんこが機能が発達した通常種子ゆっくり最速記録でコレである。
『鈍足』以前に『ゆんそく』。
『ゆっ(溜め)』→『ゆっ(跳び)』→『ゆっ(着地)』→『ゆっ(溜め)』→ …
また、跳ねながら喋ると舌を噛むからか発音する度に止まっている。
溜めが完了してもソコでなにか喋るとリセットだ。
『ゆっくりぴょんぴょんするよ!』『ゆっくりにげるよ!』
『ゆっくりこっちこないでね!』『ゆっ! ゆっ!』等々…
舌を突き出しながら跳ねると着地の衝撃で体が撓んだ時、
上顎と下顎に鋏まれた舌はその歯に容易く切断されてしまう。
高所の花や虫などを捕食するときは、跳躍の上昇中か
頂点付近で舌を素早く突き出さなければ間に合わないのであった。
ゆっくりは基本的に後退や横飛びなどしない。
這うか跳躍前進が常である。だから方向転換にもかなりの時間を要する。
今みたいに分散して追い立てないと、おぼうしを視界に入れることすら適わない。
非力なだけあって跳躍飛距離も短い。
動物の筋肉組織などと違い、鍛えるよりも『ゆっくり』することで饅頭的な質が向上し、
跳躍運動に適した構造になる。
それ以外の身体構造に個体差は無いに等しい。
ようは体の特性を理解することによる『慣れ』で運動能力が決まるのだ。
『あかちゃんことば』も口周りの動かし方の慣れで改善されていく。
亜完成体として生まれる割に発育はすこぶる遅い。
緩やかな斜面を転がれば麓までスグなのだが、
饅頭皮では死の危険が伴う。ここは子ゆっくりに歩をあわせるしかない。
焦っているのかその行軍は遅々としたものだった。
赤ゆっくりは親ゆっくりの頭の上に乗っかっている。今もうるさい。
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おちびちゃん、あぶないよ! ゆっくりだよ! ゆっくりすすもうね! ゆっくり!」
「おぼうしぃぃぃ!! まりさのすてきなおぼうしぃぃぃぃ!! おぼうしぃぃぃ!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆっゆっゆっ! ありすたちもおてつだいするわ! とかいははたすけあうのよ!!」
「おてつだいするよ!」
「しゅりゅよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
肌色の饅頭集団は麓を横切る道に向かっていた。
灰色の砂利道が、春の日差しが眩しい緑の斜面と対照的な
青黒い口を開けたような林とを分断していた。
遊歩道は林に隣接しており、
覆いかぶさるように茂った枝葉が陽を遮り、かなり薄暗い。
雨水などが流れる用水路が林側の木柵の足下にあり、
コンクリートのブロック板でフタがされている。
更に等間隔に金網のフタがされており、
中の様子が窺える。今は水は流れていないようだ。
内部が風の通り道になっているのか、
内部で『ュゥゥゥゥゥ…、ュゥゥゥゥゥ…』と音が反響している。
そして、その金網に吸い寄せられたおぼうしが幾つも引っかかっていた。
「おぼうし! おぼうし! あっだよおおぉぉ! まりざのすてきなおぼうしぃぃ!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ぴゅんぴゅん! きゃっちぇにどっきゃいっちゃうにゃんちぇにゃみゃいきだにぇ!」
「おぼうしもうはなさないんだぜ! まりさのすてきなおぼうしもうはなさないのぜ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「よがっだよぉぉ… れいむのおじびじゃんのおぼうじみづがっでよがっだよぼぉぉ…」
「ありすのおかげだよ! さすがとかいはなありすだね! れいむほれなおしたよ!!」
「ゆっゆっ、てれるわ!」
「しゃしゅがみゃみゃだわ!」
ここまで必死に跳ねてきた子ゆっくり達、
あんよは擦り傷だらけで少し黒ずんでいた。
それとありすはなんもしてねえだろ…。
ああ、そんなに金網に近づいたら
「おぼうし! おぼうし! ゆゆゆぅぅぅ~~~~?!」(ころころ)
体の軽い子ゆっくりではおぼうしと共に金網に吸い寄せられてしまう。
金網の目は軟球サイズの子まりさが側溝に転がり込む程ではないのだが、
柔肌が吸い込まれ押し付けられる苦痛に
底部であるあんよをぷるんぷるん振るわせる。
「だすけでね! たずげてね゛! いだいよ゛!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆゆっ! やめてあげてね! いたがってるよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ぷくぅぅぅっ!! まりさのかわいいおちびちゃんをはなすんだぜ!」
「れいむのかわいいおちびちゃんをはなせえええええええええええっ!」
「ぴゅっきゅううううう!! おにぇえちゃんをはにゃちちぇにぇ!!」
「このいなかもの! かわいいおちびちゃんをさっさとかえしなさい!」
「おぼうしどろぼうとはゆっくりできないよ! ぷくううううううう!」
「いだいよ゛! い゛だいよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
はい、金網に威嚇してもムダですね。
無駄な威嚇は風が止むまでの10分間続いた…
「ゆうぅぅぅぅ…かわいいまりさのびはだがぁ…」
「いたかったね、おちびちゃん。ぺ~ろぺ~ろ、ぺ~ろぺ~ろ」
「ゆっくりしてないかぜさんだったんだぜ! でもまりさにおそれをなしてどっかいっちゃったのぜ!」
全身に金網の跡が付いた子まりさをぺ~ろぺ~ろで癒す親れいむと
風を追っ払って興奮気味の親まりさ。
おぼうしも全部取り返し、ひとまず危機は去ったように思えたのだが…
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おちびちゃん、もうこわいこわいはどっかいっちゃたよ、なきやんでね?! なきやんでね?!」
さっきから超絶うるさい赤れいむ達が2家族を困らせていた。
「ゆゆゆ… そうだよ! れいむのおうたでゆっくりしてね! こもりうただよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「それはとかいはね! ありすもゆっくりうたうわ!」
『ゆゆゆ~♪ ゆっゆっ♪ ゆ~ゆんゅっゆ~♪ ゆっんっゆ~♪ ゆゅゅんゆ~♪ ゆゆんゆっゆ~♪』
『と~かいは~♪ ゆっゆんっゆっっゆゆゆゆ~♪ ゆゆゆゆんゆゅゆ~♪ ゆゆゆっゆっゆゅゅゆっ♪』
「ゆびいいぃぃいぃ! ゆびぃぃ…っゆ? きゃっきゃっ♪」
「ゆふふ、おちびちゃん、ゆっくりしていってね!!!」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
はあ、よかったね。なきやんだね。
「みゃみゃのおうちゃはゆっきゅりできりゅわにぇ!」
「ゆっきゅり~♪ ゆっゆっ♪ ゆゆゆゆ~~~~♪」
「じゃあ、みんなでおうたをうたいながらゆっくりかえろうね♪」
そうだね、はやくかえろうね。
『ゆゆゆ~♪ ゆんゆゆゆゅ~~~♪ ゆゆ~ゆゆ~ゆ~♪ ゆゆんゆ~~~♪』
プワワァァ~~~~~~ン ウゥゥウゥ~~~~~~ン ワァァァ~~~~ンン
『ゆゆゆゅゅゅゅ~~~~ん♪ ゆゆゆ~~ん♪ ゆっ?』
上機嫌で踵を返す集団の背後からなにか黒い霧のような影が近づいてきた。
蚊柱である。
蚊柱はオスの蚊で構成されており、
メスの羽音を聴きつけるとそちらに向かい交尾する為に、固まって移動してくる。
メスの羽音は音階でいうところの「ラ」の音であるらしく、
奇しくも先ほどのおうたも「ラ」の音が主旋律であった。
「なんなのぉぉぉおおおお??!」
「ぷわんぷわんはゆっくりでぎないいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいい!!!」
このゆっくり達は蚊を見たことが無かったようだ。
ゆっくり出来ないと言っている割に、目を剥いて蚊柱を凝視している。
蚊柱は忙しなく動くもの。その挙動はゆっくりしていない。
またまたパニックに陥るハメになってしまった。
黒い霧はゆっくり達を包み込む。
そして、そのなかにはメスの蚊も紛れていたようだ。
プゥゥゥ~~~~ン…ピタッ! チクッ! チュゥゥゥ…
「ゆぎぎぎぎいぃぃぃぃぃ!!! いじゃああ゛ああ゛!! いじゃい゛い゛い゛!!」
「ゆ゛ぅぅぅ!!? おじびじゃんどおじだの゛ぉぉぉおお゛お??!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛す゛わ゛れる゛うう゛う あんごっざんずわれでるう゛うやべでえ゛え゛え゛」
子れいむが突然苦しみだした。蚊に刺されてしまったらしい。
蚊のサイズは10ミリと大きめで、ゆっくりの体格から比較すると
決して小さくなく、むしろ巨大な昆虫といった風情である。
赤・子ゆっくりからすればなおさらだ。
そんな虫が、口吻を刺した。
饅頭皮下の餡管に到達した先で、あんこを吸い上げていく。
蚊の腹部が異常ともいえる大きさにまで、青黒く膨らむのが確認できる。
痛がり屋なゆっくり、それも子ゆっくり、しかもれいむ(笑)だ。
巨大注射針に刺された痛みで目を剥き歯軋り。声も出ないのか
子れいむは痛みに萎縮した身体が痙攣し、その場から動けない。
しーしー孔の左横を刺されたようで、
赤く腫れた傷口が圧迫して右曲がりにしーしーが噴出してしまっている。
メスは産卵の為に動物の血を吸い、たんぱく質などの栄養を摂取する。
オスは花の蜜や樹液などを吸い、吸血は行わない。
ゆっくりは甘味であり、どちらかというとオス好みの『食料』であるのだが、
構成成分に良質のでんぷん質も含んでいる。
今吸ったのはどうやらメスのようだ。
満足したのか重そうな体を持ち上げフラフラと飛翔する。
蚊は飛行が不得手である。
ゆっくりが虫に捕食されるようなことは稀であった。
ハチに刺されたり、死んだゆっくりにハエがたかる等はよく確認されている。
しかし、虫害によって大量死を招くような事例は少ない。
何故かゆっくりは虫に襲われにくいのだ。
だが現在、この状況はどういうことなのだろう…
さて、蚊に刺された子れいむの様子をしばらく見てみよう。
「いだいよぼぉぉおお… ぼがーだんん… いだいいぃぃぃ!」
「あづいよぼぉおぉおおごわいよおおおごわいいいゆっぐりじだいよぼぉぉぉぉ…」
「ぃゅぎっ?! あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ?!」
「あ゛っあ゛ぁっぼぉぐぅぅぅ! がゆいいいいいいい!! がゆいいいいいい!!」
子れいむが『かゆみ』にのた打ち回る。
メスの吸血は血液の凝固を防ぐために唾液を注入してから行われるのだが、
その唾液が曲者で、おなじみの『かゆみ』を引き起こす。
体の小さな子れいむにも当然、毒唾液は注入されていた。
「がゆいいいいいいい! いききぎぎいぎいいいい!!」
「おじびじゃんじっがりじでね! げいぶのおぎびぎゃん!」
「ぎっ! いぎっ! ゆぎっ! いぎいっ! ぎっ!」
おや!?
……これいむの ようすが……!?
刺された箇所は水ぶくれ状態、体は赤みを帯び、
全身の餡管は毒唾液が体中に巡っていることを示すように浮き出て
その周辺から赤黒いジンマシンが広がっていく。
そのおめめから、おくちから、しーしー孔、あにゃる、まむまむから
透明で粘性の高い液体が溢れ出す。
子れいむは、肌色のマスクメロンに赤黒い水玉がビッシリ張り付いた
ぬるぬるでグロテスクな姿になってしまった。
蚊過敏症(蚊アレルギー)。
蚊に刺されると、異常な腫れや発熱、ジンマシン等の症状を起こす人が稀にいる。
蚊の毒に免疫が無かったり、抗体が関係していたりと理由は様々であるのだが、
唯一ついえることはデフォルト状態のゆっくりには
抗体も免疫も無い。である。
飼いゆっくりならば予防接種等で人為的に免疫を授与できるのだが…。
饅頭皮のクセに、人間とほぼ同じ感覚や反応を示す肌質、
餡管の進化が仇になってしまったのか。
おめでとう! これいむは
キモこれいむに しんかした!
「がぎゃあああああっ!!」
今度は子ありすが刺されたようだ。痛みに叫び、転がり大忙し。
ころころころころぽちゃん!
側溝に落ちてしまった。
なにかに堰き止められて水が溜まっていたのか、小さな水音が聞こえた。
「ゆびゃあああぁぁ!! がゆいいい!! がゆううううう!! がゆいよおおお!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「じっがりずるんだぜ! おじびじゃんじっがりずるんだぜえええ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! でいぶのがわいいおじびじゃんがああああああ!!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「がゆいいいい!! が~りが~り! が~りが~り! じあわ゛ぢぇ!!」
「が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
赤ゆっくりも数匹刺されてしまったようで
しばらくはゆびゆび泣き叫んでいたのだが。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛どうじて゛ぇぇぇぇ?!!」
体の小ささ故に直に全身に毒がまわり、『ゆ゛篤状態』に陥ってしまった。
当然、水玉メロン状態である。
「が~りが~り! が~りが~り! ゆぎぎきききぎぃぃぃ!!」
「おぎびぎゃん!! が~りが~りはだべえええ!!」
赤黒水玉マスクメロン状態の子れいむが体を掻き毟るために、
ぶぬりぶぬりと地面に体をこすり付ける。
柔らかい肌と浮き出た餡管が硬い地面に擦れ、破裂、
小さな傷口が広がりあんこが漏れ出してしまった。
砂利や落ち葉のかけらが体中に張り付き、
もともと子汚い体がより茶褐色に汚れていく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛! ぢびじゃんのあんござんぎゃ! あんごじゃんぎゃ!」
「がゆうう!! ぎゃゆうううう!! ぎゃ~り! ぎゃ~り!」
プゥゥ~~~~ン、チクッ!
「ゆぐっ?!」
突然の出来事に泣き叫ぶ親まりさ。
そして目の前にいる最愛の妻、親れいむのぽんぽんに蚊が張り付いた。
多少は皮の厚い成体ゆっくり、しかも奇跡的に餡管を逸れ、
饅頭皮の途中で口吻は止まっていた。
こいつだ! こいつがおぼうしをぬすんでおちびちゃんたちをぶつぶつーにしたくろまく~なんだ!
「ゆっ!」
親まりさは傍らでオロオロするだけの親れいむにぽんぽんを押し付ける。
「ゆゆっ! なにじてるのばりざああ! ずっきりじてるばあいじゃないでしょおおおおお!!!?」
「ち、ちがうんだぜ! まりさのぽんぽんをゆっくりよくみてみるんだぜ!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「?? ゆっ! むしさんがつぶれているよ! むしさんはれいむがたべるよ! ぺ~ろぺ~ろ!」
「そうなんだぜ! このむしさんがおちびちゃんたちをゆっくりさせなくしているくろまく~なんだぜ!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆゆぅぅーーー?! ばかなむしさんはさっさとどっかいってね! あとあまあまもってきてね!」
「みんなゆっくりしないでぺ~ろぺ~ろとす~りす~りをくりかえすんだぜ!」
さきほど潰した感触から、蚊の耐久度を推し量ったまりさは指示をだす。
そんなんより、さっさと逃げればいいのにね…
「ゆっ、しょうたいがわかればもうこわくないんだぜ!」
そういっておぼうしから取り出したるは、一本の棒切れ。
その棒は赤くツヤツヤしており、先端は赤く尖っていた。
まりさ自慢の一品『ゆーりんげん』である。
大仰な解説だったが、ようはただの色鉛筆。
地元の小学校で写生授業が行われた際に忘れ去られた
12色セットの内の一本である。
なお、他の11色も公園のいずれかのゆっくりが所持していた…
「ゆっくりしてないぷわんぷわんはまりさがころすよ! ゆっ! ゆっ! ゆゆーっ!」
なにを思ったのか赤ペンを咥えてぷるんぷるん振り回す親まりさ。
そのまま身体を寄せ合っている家族達の周りを跳ね回る。
「ゆっ! ゆっ! れいむたちはまりさがまもるんだぜ! ばかなぷわんぷわんにはゆびいっぽんふれさせないんだぜ!」
当たるわきゃねーだろ。牽制にもなんねーよ、カス。
「ず~り、ず~り、がゆいいいい!」
「おぢびじゃん! ごっぢぎてぼがーだんだでぃどいっじょにず~りず~りじようね゛! べ~ろ、べ~ろ!」
「おねえ゛じゃんゆっぐりじじぇね!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ありずのおぢびぎゃんぎゃびどりいないわ゛! どごぉ!? どごいったのぉぉ?!」
「ゆ゛っ! ありず、はなれじゃだべだよ! でいぶどいっしょにすりずりじでね!?」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あ゛あ゛あ゛! ざざれだぁぁ! でいぶざざれ゛だああ!! いや゛ぁぁぁ゛!!」
一塊となって蚊をすり潰してはいたが、それでも何匹かは刺されてしまう。
「ゆがぁぁあああああ゛あ゛あ゛ぁぁっっ!!」
「ぐるなっ! ぐるな゛ぁっ!! あっじいげえええぇぇっ!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あがぎゃんもごっぢぎでね! おがーざん゛のおぐぢに゛がくれでね!!」
ここにきてようやく、おくちがーど発動。遅い、遅いよれいむぅ。
「ゆぎぃ! きっきぎ! いがああああ゛あ゛!!」
一方、最初に刺された子れいむはというと…真っ黒になっていた。
べ、別に死んで黒ずんだわけじゃあ無いんだからね!
ただ、全身から漏れ出たあんこさんにオスの蚊が殺到して真っ黒に見えているだけなんだからね!
勘違いしないでね!
「ちびじゃん、ぢびぎゃんぎゃあああ…」
「おにぇぢゃんぎゃぁぁあああっ!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
同様に刺された赤ゆっくりも真っ黒。こちらはすでに死んでいる。
あんこの量もそれほど多くない上に大量の蚊に吸われまくった結果、
ふにゃふにゃに萎びてしまった。
絶望の表情のまま、べじゃぁ~、と、
ぬるぬるした体液の水溜りにその皮とおりぼんが広がっていった。
「ゆがああああ! ぐるな! ぐるな! ぐるなぁあああ!」
親ありすも身体を、ぽるんぶむん!と揺らし、蚊を回避しようと必死だ。
頭から延びている蔓もぷるんぷるんと撓る(しなる)。
実ゆっくりは苦悶の表情を浮かべ、眉が八の字になっていた。
「ゆはぁ、ゆはぁ、ゆっくりつかれたわ!」
だが、親ありすが動きを止めたその時を見計らったかのように、
先端の実に蚊が取り付いてしまう。メスだ。
「ゅ゛っ」
ちいさな、ちいさな声を上げる実ゆっくり。
蚊が飛び去った後、急激に痙攣を起こし始める。
「ゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っ」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あじずぅぅぅっ!! あぎゃぢゃん! あぎゃぢゃんがああ!!」
「ゆあ゛あ゛あ゛、やべでええ! ばだうばれでないのにいいいいい!!」
「ありずは”ゆんぷざん”だんだよ! やざじぐしないどいげないんだよ!!」
蔓を揺らし続けることで残りの実ゆっくりは守れそうだが、
親ありすの体力では難しいかもしれない。
それに…
「ゅ゛っ?! ゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っ」
「あ゛あ゛あ゛! だんでえええ! ざざれでだいどでぃいいい!!」
刺された実ゆっくりの隣の実が苦しみだしたのだ。
先端の実はすでに朽ちてしまっていて、落ちそうだ。
どうやら蚊の毒が蔓を伝播して、徐々に侵食していっているようだ。
内から外への餡圧が強いため、先端から本体側への浸行速度は遅い。
本体が刺されていた場合、毒は真っ先に蔓に経由されて、実は全滅していただろう。
この場合、どうして本体ではなく実に全ての毒がいってしまうのか。
ゆっくりは取り込んだ栄養などが優先的に胎児・実に受け渡される。
それは、あかちゃんにゆっくりしてもらうため。健康に生まれてきてもらうため。
だから、にんっしん中はゆっくりし、栄養のあるものを摂取する。
だが、毒などの異物もこれまた優先的に受け渡してしてしまうのだ。
とにかくにんっしん中に本体が取り込んだ成分は胎児・実ゆっくりを経由して、
残りカスを母体が受け取る。
ゆっくり的には『ふぃるたー』の役目を果たす驚きの機構。
子を宿した数だけ、命が増えているようなモノである。
だが、当のゆっくり達はそんなこと知らない。知る由も無い。
ただ、りゅうざんした我が子の変わり果てた姿に涙するだけ。
「ゆぎぎっぎいいい! ゆっ!!」
ぱくん! ブチィッ!!
毒が3個目の実に到達し、実が紫色になった瞬間、
ありすの伴侶の親れいむは毒に侵された部分の茎を噛み千切った。
本当は2個目で起こしたアクションなのだが、れいむだから、ほら。
「なにじでるのおおおおおお!! でいぶぅぅぅううううう???!」
「あがぎゃんごべんねええ!! ありずごべんねえええ!! ごうじないど、ぎっどあがちゃんぜんぶじんじゃうよ!!」
れいむの判断は正しかった。
母性(笑)の為せる業か、れいむ種にしては珍しく役に立った。
だが、くきさんが半分になり、残った実ゆっくりも3匹。
蔓の先端からもあんこ(かすたーど)がポタポタとしたたる。
「ぺ~ろ、ぺ~ろ、もうあかちゃんはころさせないよ…」
「ゆぐっ! ゆぐっ! ぶぐぐううううぅぅぅっ…!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
ビュゴゴゴオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!
『ゆ゛ぅぅぅうううううううーーーーーーーーーーーっっっ!!!!???』
またもや一陣の風。
強風だった。蚊柱は霧散し、一家にとりついた蚊も全て林に追いやった。
一団は寄り添うように固まっていたため、道の真ん中から転げることも、
おかざりが吹き飛ぶこともなく耐えることが出来た。
神風。一神の風だった。唯の一度で、黒い霧を祓ったのだ。
「ゆはぁ、ゆはぁ、な、なんとか”すたーらいとたいふーん”がまにあったんだぜ…」
ただの風だよ。
「ゆぅぅ! とかいはなゆっさつわざね!」
「れいむのまりさのゆ~りんげんのちからはこれだけじゃあないんだよ!」
ただの風だッつってんだろ。
「ゆゆゆ…、でもぎせいもおおきかったんだぜ…」
「しかたないよ…おおわざははつどうまでにじかんがかかるよ…」
見渡すとそこには転々と黒いしみ、黄色いしみ、塊、おかざり。ゆっぐり。
かわいいおちびちゃんたちの成れの果てが転がっていた。
「ゆぐぅぅっ! おぢぢびぢゃんが…、でいぶのおぢびぢゃんが…」
「ま、まりざのゆっぐりとしだおちびちゃんたちが…」
「ぱりすのとかいはなあかちゃんが…」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「れいむのかかわいいかわいいあかちゃんたちがぁぁ!」
「おぢびぢゃん、おめめあけてね…。おうちかえろうね、おかーさんとおうちかえろーね」
「れいむ、あかちゃんはもう…」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆぐぅぅぅぅっ! うぞだよ! ごんあ゛のうぞだよ! ゆっぐりぃ! ゆ゛っぐじじでいっでねぇぇぇ!!!」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
そして、改めて蚊に刺された者達を目の当たりにする。
「ゆぎがぁぁああ!! がゆいいいいい!! いぎひぃぃぃぃ!!」
「が~りが~り! ご~りご~り! じゃわじぇっ! いぎ!」
水玉メロンな子れいむ・子まりさ・子ありすが痒みにのたうつ。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
水玉メロンな赤れいむ・赤まりさ・赤ありすが痙攣している。泣き叫んでいる。
「ゆああああ、なにごれぇぇぇぇ!!」
「ぺ~ろぺ~ろ、あがちゃん、ゆっくりじでぇぇ!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいい、っゆ、もっちょ…ゆっきゅちちちゃきゃっちゃ…」
「ゆんやあああああああぁぁぁっ!!!! いやぁあああああああぁぁぁ!! あぎゃぢゃあああああああああ!!!!」
どうやら赤れいむが2匹、親れいむの目の前で死んだようだ。
ハッキリと嘆きの断末魔を口にして。
これには親れいむも発狂するかの如く大きな叫び声を上げる。
最愛の我が子の『もっちょゆっきゅちちちゃきゃっちゃ(赤ちゃんゆっくりバージョン「もっとゆっくりしたかった」)(爆笑)←わらいすぎwww』
を聞いてしまったのだ。ゆっくり的にコレは堪らない。
しかも別段外傷も無く、親れいむにはどうして死んでしまったのか理解すらできない。
赤れいむは、涙と涎と汗と尿を振りまきながら全力で泣き喚いていた。
丘にいたときから。
だから精神的な『ゆっくり不足』と、急激な『脱水症状』により死んでしまったのだ。
折角の蚊に殺させる為のSSなのにマヌケな死に方晒してんじゃあねーよ。
つくづく赤バエは無能すぎるは。でも、やっと静かになりそうで清々するね!
「でいぶのおぢびじゃんがじんじゃっだぁぁぁっ!!!」
「あ、ありずのとがいはなぢびじゃんがあああぁぁ! ゆお~いおいおい! ゅぉ~~ぃおいおい!」
「れいむのいもうとがぁぁぁぁ!!」
「ありしゅのおにぇちゃんぎゃぁぁぁぁっ!!」
「…れいむ、さされたところはだいじょうぶなのかだぜ?」
「すこしかゆかゆだけど、だいじょぶだよ…」
親まりさは伴侶のれいむがぽんぽんを刺されたところをみていた。
大丈夫なのだろうか、れいむになにかあったらまりさは…
赤く腫れたぽんぽんをぺ~ろぺ~ろして癒してあげる。その時
「ゆ゛っ! うばれるぅぅぅぅううう!!!」
「れ、れいむ! あかちゃんうまれそうなのぜ!?」
「うばれるよぉぉおお!! れいむのかわいいかわいいあがちゃんうばれるよぉぉおおお!!!」
「ゆゆっ! きっととかいはなあかちゃんだわ!!」
「おきゃーしゃんがんばっちぇ!」
「ゆっゆ、ふー! だよ! ゆっゆ、ふー! 」
「こんなときにおめでたいね! とってもゆっくりできるね!!」
まったくだ。
親れいむは刺されていた。そしてにんっしんしていた。
「ゆっゆ、ふぅうぅうう!! ゆっゆ、ふぅぅうぅう!!」
「でいぶううっ! あがちゃんがみえできだよ! あとすごしだよ!」
「ゆわ~い! まりしゃ、おねーしゃんになるんだね! ゆっくりー!」
まむまむがくぱぁと開き、そこから小さなゆっくりがメリメリ顔を出す。
ゆっくりって口から先に出てくるのな。
「まりさがうけとめるんだぜ!」
「れいむうたうよ♪ ゆ~ゆ~ゆ~んゆ~ん~♪ おーえんか♪だよ♪ ゆんゅゆゅんゆゆゆ~ゆんっ♪」
念のため、おぼうしを脱いでれいむの産道の前に構える。
背後でおぼうしを咥え『すぽーん!』の衝撃に備えるのだ。
『SUPOOOOON!! MARIASA』
STAGE1:おぼうしで赤ゆっくりを1匹受け止めよう!
すぽーん!
「ゆっ!」
おぼうし内左側面にグレイズ!(減点1)
赤ゆっくりに微ダメージ! (減点3)
おぼうしがよごれている! (減点1)
おうた (減点6)
補助アイテム未使用 (得点1)
0/10
GAMR OVER(ユックリシテイッテネ!!!)
上手く受け止められたようだ。
おぼうしをそっと傾けてあかちゃんをコロリと外に出す。
周りのゆっくりは黒ずんでいる家族のことなど
そっちのけでおぼうしを注視していた。
あかちゃんがうまれるところはなんてゆっくりしているんだろう!
「あかちゃん! ゆっくり…ゆ?」
「がゅぃぃぃぃぃぃ!!! がゆぃぃいぃぃいいいぃいぃ!! いぎぃぃぃいいい!!」
『ゆ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!! どぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』
転げ出てきたのはかわいいかわいいあかちゃんゆっくり。
ではなくて、赤黒水玉肌色マスクメロンまりさだった。
開幕からかゆかゆ宣言で転げまわり、ちいさなおぼうしが脱げ、その上を転がり、
泥とあんこが付着し、ゆーすい濡れの身体に砂利や落ち葉が張り付き、
おぼうしをひき潰し、泥とあんこが付着し、かゆかゆ宣言をし、
ぽんぽんが破け、泥とあんこが……
少量の毒も全て胎ゆに蓄積されてしまったようだ。
3匹胎ゆはいたが、長女であるこのまりさに全ての毒がまわったようだ。
体外に毒を排出するためか、異常事態に出産が促進されたのか、
未熟児の状態で生まれてきた。
「あかちゃん、ゆっくりしていってね…」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
今生まれた赤まりさから返事が返ってくることはなかった。
「ゆっ、そうだよ、ありすのおちびちゃんがひとりいなくなっちゃんだよ…」
「ゆっくりさがすよ…」
2番目に刺された子ありすは、側溝の中にいた。
そこには肌色のボウルが幾つも並び、その器の中に黒い水を湛えている。
半分になったゆっくりの半身が、雨水の受け皿になっていたのだ。
木の柵に張られた針金を通り抜けようとして、
横からスッパリ切断されたゆっくり達の成れの果てだった。
その饅頭皿の黒池に、子ありすが浮かんでいた。
「ちびちゃん! いまたすけるからねええええええ!!」
「れいむ! ゆっくりきをつけてね!」
側溝は幅が成体ゆ2匹分、深さ1匹分あり、
にんっしんした個体では昇降は少々困難であった。
それ以前にゆっくりの垂直跳躍高は成体でせいぜい5センチ程度。
これはゆっくりの『ちから』によるもので、
自然落下した方が遥かに大きなエネルギーを生むことができるのだが
ゆっくりが自らの膂力で跳ねるとその非力ゆえに全く力量エネルギーが得られないのであった。
ゆっくりが窓から侵入したり、3階のベランダにいたりするのは、
ピタゴラスイッチ的な要領で運良く、極稀に、
一家全員(または認識できない個体数を消費して)
ソコまで辿り着いていたからに過ぎない。
だから子ありすを救出しても、足場を確保しない限り親れいむは側溝から脱出できないのだ。
でも、そんなことはゆっくりにはわからない。今は子ありすを助けなければ。
「ゆゆ…、たかいよ…、ゆっくりできなさそうだよ…」
だが、そのあまりの高さ(笑)に躊躇してしまう親れいむ。
「れいむぅぅぅう!! はやくおちびちゃんをたすけてあげてねぇぇええ!!」
「みゃみゃぎゃんばりぇ~~~~~っ!!」
「しっかりするんだぜ! れいむ! れいむはおとーさんなのぜ!?」
側溝の縁で足踏みしていたれいむを皆が叱咤激励する。
「ゆゆゆ! そうだね! おちびちゃんまっててね! おとーさんがいまいくよ! ゆっくりたすけるよ!」
ゆっくりがおとーさんとか超ワケわからんがなんとか気を持ち直す親れいむ。
でも、降りたら二度と上がってこれないよ? わかってるの? わかってるの?
お情けで助けたりなんかしないよ? 絶対殺すよ? 惨めな死に方させるよ?
「ゆーーーーーーっ!!」
「れいむが! れいむがとんだのぜ!」
「っきゃっきょいいいいいい!!」
「すごいよ! おそらとんでるよ!」
「ゆー♪ れいむおそらを(ry」
ギャシャァ!
「ゆぎっ!」
側溝の対面の壁に顔面(とはいっても全身みたいなモノだが)を
こすり付けながら降下する親れいむ。
着地は上手くいかなかったようだ。
「ゆがぁぁ!!! いだいいいいいい!! いだいよぉぉぉおおおお!」
「れいむううう! だいじょうぶなのぉぉぉおおお?!」
たっぷり5分は転げまわった。
「ちびちゃん、ゆっくりがまんしてね」
親れいむは顔の右半分を沈めた赤ありすに近づき、その髪を咥えた。
赤ありすが動いていないのには気付いていない。
あんこの池に蠢く、無数のボウフラにも…
「ゆんしょ! ゆんしょ!」
「れいむうう! ゆっくりがんばってねえ!!」
「ゆーえす! うーえす!」
「おばさんがんばってね!」
「もうすぐなんだぜ!」
「ゆーーーーーっ!!」
池の端までなんとか引っ張り、そこから一気に身体を反らせ、
釣り上げるように引き揚げた。
「ゆ~~~っ!! やっとたすけられたよ! おちびちゃんだいじょう…ぶ?」
子ありすの右半分は無かった。池に浸かりすぎて融けてしまったからだ。
餡血の凝固を防ぐ蚊の唾液もそれを助けた。
残った半身は当然、アレルギーの症状が支配していた。
その表情は恐ろしく苦悶に満ちている。
「ゆげ! ゆげぇぇぇぇええっ!」
「びげぇぇぇえっ!」
「あびゃっ! ゆびゃばっ!」
「ゆっぐりでぎないよ…」
張力でその形を保っていた子ありすの半身も、
池から引き上げられるとその断面からどぼりとカスタードがこぼれ、
一瞬で皮だけになってしまった。
側溝の縁で上から見下ろしていた者達もそのあまりに凄惨な光景にあんこを吐き出してしまう。
「ど、どぼじでぇぇ… れいぶのおぢびぢゃん… ゆっぐ! ゆっぐぅぅ!」
「おぢびぢゃん、あんこさんはいたらだめだよ…ゆっくりもとにもどそうね」
「ゆぅぅ、まりさ、のどさんからからだよ! おみずさんご~くご~くしたいよ!」
「れいむもご~くご~くしたいよ!」
「ゆ! そういえば、なんだかさっきからのどさんがからからなのぜ」
昼から泣き通しのゆっくり達は水分不足の警告にやっと気が付いたようだ。
もっとはやく気が付いていれば、赤れいむ2匹は死ななかったかもしれない。
だが、この遊歩道に初めて訪れたゆっくり達には近くに水場があるかどうかも判らない。
展望台に水道が通っているが、ゆっくりは立ち入り禁止である。
おみず、おみず…
おみずがないとゆっくりできないよ…
どうして、いつから蚊がゆっくりを襲うようになったのか…
果たして、ゆっくり達の運命は…
続きます。
「ゆっ、ゆっ」
林の中、一匹のまりさが跳ねている。
『かり』の成果は上々だったようで、
『おくち』と『おぼうし』にはそれなりに『ごはん』が詰め込まれていた。
今は帰り道。見据える先は林の斜面に掘られた穴。
愛する家族の待つ『おうち』である。
「ゆっくりただいまなんだぜ!」
「まりさ、ゆっくりおかえりなさい!」
「おとーしゃんおきゃえりなしゃい!」
「ゆっ! おきゃえりなんだじぇ~!」
「ゆんゆっ、ぽんぽんぺこぺこだよ!」
『ゆっくりしていってね!!!』
お勤めを終えた一家の大黒饅頭を、
満面の笑顔でゆっくり家族が出迎えてくれた。
まりさ・れいむ一家
親まりさ(父役)
親れいむ(胎生にんッしん!中/胎ゆ3)
子まりさ 3
子れいむ 5
赤まりさ 5
赤れいむ 6
ココは広大な緑に囲まれた自然公園、
通称『ゆっくり自然公園』。
遊歩道や展望台等が敷設され、
丘陵地帯にある敷地の手付かずの自然を満喫できる。
そこにどこからともなくゆっくりが流れ着いてきたのはいつからだったのか…。
今は春も半ば、絶好の観察日和が続いていた。
「ゆっくちおいちきゃっちゃよ!」
「ぽんぽんゆっくりできたよ!!」
どうやら食事が終わったようだ。
大した量でも無いのにモタモタ食ってるところがゆっくりである。
ちなみに親ゆっくり(バスケットボール大)、
子ゆっくり(軟球ボール大)、赤ゆっくり(ピンポン玉大)が主なサイズだ。
表記は球技形式が判り易くて良いよね!(※球種によっては、
用途に応じて様々なサイズが用意されてモノもあります)
子ゆっくり、赤ゆっくりは食後の運動なのか巣穴の中をコロコロ転がっている。
食後の運動は内部の『あんこ』の撹拌を助長して健康や発育に良し、とされている。らしい。
「こ~ろこ~ろ!」
「ゆゆっ! かわいいおちびちゃんのこ~ろこ~ろはゆっくりできるのぜ!」
「そうだね! かわいいかわいいおちびちゃんのこ~ろこ~ろはゆっくりできるね!」
「かわいいまりちゃもこ~ろこ~ろしゅりゅよ!」
食後は『おうた』を歌ったり、親ゆっくりに登ったりと、皆が皆『ゆっくり』した。
自然公園に来たゆっくりは少し変わった『しんか』を遂げていた。
ゆっくりの皮膚は肌色の饅頭皮であるのだが、
稀によく青筋を立てたり目が餡走っていたりする個体がいる。
この自然公園ゆの饅頭皮下には通常の個体より『餡管』が
ビッシリと這っており、この機構により細部にまで
『あんこ』が行き渡り、ソレに起因するゆっくり的な能力が向上していた。
それでも所詮ゆっくりなのだが。
ちなみに、ゆっくりが力んだりすると、
体表面にブワッと餡管が浮き出てきてキモさも格段に向上している。
だが、そんな特徴も体の未成熟な幼体ゆっくりの場合、
小さな傷で出餡多量→失餡死コンボの可能性を孕む。
この一帯の幼ゆっくりは、せめて子ゆ程度の大きさになるまではと
巣から出されずに大切に育てられていた。
「ゆっ! おちびちゃん、こ~ろこ~ろもいいけれど、もうす~やす~やのじかんだよ!」
「ゆっゆっ! まりさまだす~やす~やしないよ!
ゆっくりあそぶよ!」
「だめだぜ! あしたははじめておんもにぴくにっくにいくやくそくなんだぜ! よふかしさんはつれていかないのぜ!」
「ゆ? ゆ゛ううっ? や゛めてね! まり゛さもぴくにっくにつれていってね゛! す~やす~や゛する゛からね!?」
『おんも』はどんな世界なのだろうか。
とてもゆっくりしたところに違いない。
おとーさんがいつも美味しい『ごはん』を
獲ってきてくれるところなのだから。
とてもゆっくりしたおかーさんとおとーさんが
出会ったのもおんもなのだから。
家族以外のゆっくりとも出会えるだろうか?
おともだちも出来るかもしれない。
ゆっくりしたおともだちをいっぱいつくろう。
なかよくなっていっぱい遊ぼう。
すりすりしたり一緒に『おうた』を歌おう。
疲れるまでおいかけっこもしよう。
ゆっくりしよう。
ぽかぽかおんもでみんなでいっぱいいっぱいゆっくりしよう。
…とか考えてるんだろうか。
「ゆっゆっ! はじめておんもにでられるよ! たのしみだよ!!」
そして翌日。快晴。
「ゆ~ん! ぽかぽかさんだね!」
一家は自然公園が一望できる丘の上までやってきた。
巣の傍の茂みを抜ければスグの来れるような場所ではあるが
体の小さな子供達にしてみれば大冒険である。
緑の丘をキラキラした目で見渡していた。
そこには堅牢な造りの展望台もあり、
人間ならコンクリートの階段を登ってより良い絶景を堪能できる。
ちなみに昇降口には『ゆっくりがえし』が
設えて(しつらえて)あるので、ゆっくりには登頂不可能。
階段に饅頭が転がっていたら危ないからね。
あと、子まりさのはじめてのおんもの感想もカットした。
「ここのくささんならやわらかいから、
あかちゃんがぴょんぴょんしてもだいじょうぶそうだね!」
「ゆっ! あかちゃんたち、あわてないで、
ゆっくりおとーさんのおぼうしからでてくるんだぜ!」
ココに来るまでの道中で、
赤まりさ『ひとり』赤れいむ『ふたり』がはぐれてしまっていた。
道中は危険だからと、親まりさがおぼうしに入れて
運んでいたにもかかわらず・・・である。
そして道中で美味しそうな『あまあま』さんを
みつけたのでおべんとうに加えることにした。
だが、このしあわせ家族は気付かなかったご様子。
残った赤ゆっくりは図らずとも4匹ずつ。
3以上の数を論理的・視覚的に『いっぱい』としか
認識できない一般的な通常ゆっくり種には
赤ちゃんが『いっぱい』いるので違和感すら感じていない。
(ここでの個体同士の数え方は
『ひとり』『ふたり』『さんにん』『いっぱい』
人間が数える場合には4から『匹』を使う。)
人間では判別の付かない飾りの違いを識別できるのに、
この場合、個々の個体の個性はどういう風に捉えられているのやら…
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっくりしていってね!!! ゆゆっ!?』
いかんいかん。観察が疎かになっていた。
どうやら一家がゆっくりしていたところに、
別の家族が挨拶しに来たようだ。
「とってもとかいはなおてんきね!」
「れいむとありすとかわいいおちびちゃんたちも
ぴくにっくにきたんだよ!
いっしょにゆっくりしようね!」
「あそぼうね!」
「あしょびょーにぇ!」
れいむ・ありす一家
親れいむ(父役)
親ありす(植物型にんっしん!/実ゆっくり6)
子れいむ 6
子ありす 3
赤れいむ 6
赤ありす 3
明るく大きな声で定例文をシャウトしたこちらも、
実ゆっくりも含めれば負けず劣らず大家族。
きっと道中にれいむ種辺りの赤・子ゆっくりが消えていることは想像に難くない。
ちなみにサイズの内訳は先の家族と同じ位だ。
「ゆっくちー!」
「れいみゅはれいみゅだよ!」
「まりちゃはまりちゃなんだじぇ!」
「ありすはありすよ!」
「いっしょにあそぼうね!」
「おいかけっこしようね!」
「かわいいおちびちゃんたちにもゆっくりしたおともだちができたね!」
「ゆっくりできてるね!」
「とってもとかいはね!」
「まりさたちもゆっくりするのぜ!!」
『『ゆっくりしていってね!!!』』
緑の丘で瞬時に意気投合する肌色饅頭。
春風が吹いていた。柔らかな陽光は燦々とゆっくり達を包んでいた。
緑が萌えている。
ゆっくり。
みんなみんな、ゆっくりしていた。
「しゅ~り、しゅ~り」
「ゆ~~ん! くすぐっちゃいにぇ!」
あかちゃんたちはおかーさん達のスグ傍、
柔らかい草の上に寄り集まって、各々の肌の感触を楽しんでいた。
「ゆっ! ゆっ! ちょうちょさん、ゆっくりかわいいれいむたちにつかまってね!」
「ゆー! そっちにいったんだぜ! まわりこむんだぜ! ゆんしょ! ゆんしょ!」
「まりさがいちばんにつかまえるよ! ゆっ、ちょうちょさんゆっくりしないでね!」
「ゆゆゆ~~~♪ ゆんゆゆ~♪ ゆ~、ゆ~♪ ゆゆゆんゆ~♪」
「ゆっゆっゆ♪ ゆん♪ ゆん♪ ゆん♪ ゆんゆんゆんゆんゆ♪」
「ゆ~~~っくり~~~~♪ ゆゆん♪ ゆゆっゆっゆゆゅゆっ♪」
「このとかいはなおはなさんであくせさりーさんをつくりましょう!」
「おきゃーしゃんにぴゅりぇじぇんとしゅるんだにぇ! ゆゆ~ん!」
活発な一部の子ゆっくり達は子まりさを中心に『かりごっこ』。
獲物は先ほど目の前を横切ったちょうちょさん(蛾)。
見失わないように懸命に跳ね回っている。開きっぱなしだからか
食意地がはってるのか口からは涎が駄々漏れであった。
子れいむ達はおうた。なにも語るまい。しかと聴きたまへ。
子ありす達は、おはなでアクセサリー製作に勤しんでいる。
「れいむのぽんぽんゆっくりしているわね!」
「ゆん! もうにんっしんゆんかげつなんだよ! もうすぐかわいいあかちゃんにあえるよ!」
「ゆ! れいむのありすもにんっしんゆんかげつなんだよ! はやくかわいいあかちゃんにあいたいね!」
『ゆ~~~♪ ゆゆゆ~~~♪ あかちゃ~ん~♪ ゆっく~り~していってね~♪ ゆんゆっゆゆ~♪』
『ゆっ♪ ゆっ♪ ゆっ♪ ゆっゆゅん♪ ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆ~~~♪ ゆっ♪ ゆんゆっゆっ♪』
「ゆすぅゆすぅ・・・だぜぇ・・・おちびちゃん・・・れいむぅ」
こちらは親ゆっくり達。またにてぃっ! な話題に花が咲いている。
つーか、なんだよ『ゆんかげつ』って。
ゆっくりなんぞ早けりゃそれこそ一瞬で産まれるだろうがぁ。
いいかげん、なんでもかんでも『ゆ』に関連付けるのはやめろよな。
ウゼーんだよクソが(ごめんなさい!)
一方、親まりさは日々の疲れがでたのか、
妻達の美声(笑)と陽光の心地よさに抗えず眠ってしまっていた。
唐突だけど、ゆっくりが『あかちゃん』とかのたまうと、
教育番組とかで『星の赤ちゃん』とか『鍾乳石の赤ちゃん』
とかいう表現を目の当たりにしたときに感じる、
なんともいえない気分になってしまうよね!
「ゆ~~~! おちびちゃんたち~~~! おべんとうのじかんだよ~~~!」
『ゆわぁ~~~~~い!』
正午過ぎ、両家とも昼飯を持参してきたようで一箇所に集まり始めた。
「きょうのおひるはしょうじょうばかまさんだよ! はなことばさんは『きぼう』だよ!」
「ゆっくりしているね! まりさたちにぴったりだね! でざーとにあまあまもあるよ!」
「ありすたちもおなじとかいはなおはなさんとゆっくりしたでざーとだわ! きぐうね!」
「おいちちょうだにぇ! れいみゅゆっきゅりたべりゅよ! きびょうをたべりゅよ!!」
『ゆっくりいただきます!!!』
『ゆっきゅりいちゃぢゃきまちゅ!!!』
あ~、こいつらウゼェな・・・マジで。希望でも奇病でも勝手に食ってくれ。
どっちも食っちまったら絶望しか残んねーぞ。
んで、まりさ一家の方はピンポン玉大の餡子玉3個、
ありす一家は軟球大2・ピンポン大3の『あまあま』を持参していた。
ココに来るまでに消えていた赤・子ゆっくりの成れの果てであろうか、
どちらにしろ一緒にぴくにっくに来れてよかったね!
ありす一家の餡子玉を見る限り、全部れいむ種であることが確認できた。
カスタード玉ではないので当然といえば当然だが。
ビュゴオオオォォォォーーーーーーーーーーッ!!!
春は強い風が吹くシーズンである。この丘陵地帯では、吹き降ろしの強い突風がよく吹く。
風は春の種子を運び、遠く離れた地にも芽吹きをもらたす。では、ゆっくりなら!?
『ゆわあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ??!!』
「ゆ゛ぅ~~~っ! ごはんがぁぁぁあああ!!」
「ゆわあぁぁ~! おめめにすなさんがあぁ!!」
ころころころころ…
「ゆゆ~ん! ころころしゅるよぉぉ~~~??」
「あ゛あ゛あ゛あがちゃんまづんだぜぇぇえええ?!」
突然の強風で花は舞い飛びあかちゃんころころ。緑の斜面に吸い込まれていく。
「ゆゆぅ~~~!? まりさのおぼうしがないよぉぉぉぉおおお??!」
「ゆわあああぁぁっ?! どこぉ?! どごい゛ったのおぉぉぉ??!」
「ゆびいいいいぃぃい!! まり゛ちゃのおびょうちぎゃぁぁぁっ!!」
「おぼうじいい!! おぼうじがないどゆっぐりでぎないいいい!!!」
「ゆびいいいい! ゆびいいいい! ゆびいいいい! ゆびいいいい!」
「おめめぇぇ! おめめいだいよおおぉおぉ! れいむのおめめぇえ!」
「ゆびいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいい!!」
どうやらまりさ種のおぼうしが今の風で軒並み吹き飛んでしまったようだ。
希望の薄紫の花びらと共に。
しあわせなぴくにっくモードから一転、おつやモードになってしまう生首饅頭達。
子ゆっくり達は、目に砂埃が入ってしまったり、
ゆっくりできない恐怖からほとんど泣き叫んでいた。
ありすの茎の実ゆっくりは無事だったようだ。
どうしてこんなことに… れいむたちゆっくりしていただけだよ…
こんなのとかいじゃあないわ… おぼうし… おぼうしがないと…
あまあま… おめめいちゃいよ… ゆっくり… ぽんぽんぺこぺこだよ…
おちびちゃん… ころころしゅりゅよ… あんよいたいよ…
「ぜぇ…ぜぇ…あがじゃんはぜんいんたすげだぜ…あぶながっだんだぜえ…」
親まりさは転がった赤ゆっくり救出にいち早く駆け出していたようで、
おぼうしと口に入れて帰ってきた。
驚くことに全ての赤ゆっくりは無事だった。外傷も無い。
なかなかやるじゃないか、まりさ。
目の前でおぼうしが飛んでいったこともあってか、
全員、個体の識別もできていた。
「ゆっゆっゆっ… ありすのおちびちゃんたちをたすけてくれてありがとうまりさ…」
「ゆぅぅぅん! こっわかっちゃよおおおおおぉぉぉぉ!! ゆぅぅぅ~~~ん!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おめめいだいよぼぉぉぉ… おべべぇぇ… れいむのおめめいだいよぼぉぉぉぉ…」
「ゆっ、おちびちゃんゆっくりこっちむいてね、ゆっくりぺ~ろぺ~ろするからね…」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆぅぅぅ、でもおちびちゃんたちのすてきなおぼうしがとんでいっちゃったよぉ…」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「あっちにおぼうしがとんでいくのをみたんだぜ! でもあっちはきけんなんだぜ…」
「ゆぐううう! さがしにいくよ! ゆっくりしないでまりささがしにくよぉおぉ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ま、まってね! おちびちゃんだけじゃきけんだよ! おかーさんたちもいくよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「いぞいでね! すてきなおぼうしがないどゆっぐりでぎないよ! いぞいでね゛!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
跳ねるのが総じて下手糞なゆっくり種。
子ゆっくりは更に下手糞だ。
まず跳ねる前の予備動作(溜め)に1秒。
スローモーな跳躍で1秒。
着地で1秒。
跳躍飛距離3センチ。
着地→溜め、で2~3秒使うのでスキだらけだ。
この公園のあんこが機能が発達した通常種子ゆっくり最速記録でコレである。
『鈍足』以前に『ゆんそく』。
『ゆっ(溜め)』→『ゆっ(跳び)』→『ゆっ(着地)』→『ゆっ(溜め)』→ …
また、跳ねながら喋ると舌を噛むからか発音する度に止まっている。
溜めが完了してもソコでなにか喋るとリセットだ。
『ゆっくりぴょんぴょんするよ!』『ゆっくりにげるよ!』
『ゆっくりこっちこないでね!』『ゆっ! ゆっ!』等々…
舌を突き出しながら跳ねると着地の衝撃で体が撓んだ時、
上顎と下顎に鋏まれた舌はその歯に容易く切断されてしまう。
高所の花や虫などを捕食するときは、跳躍の上昇中か
頂点付近で舌を素早く突き出さなければ間に合わないのであった。
ゆっくりは基本的に後退や横飛びなどしない。
這うか跳躍前進が常である。だから方向転換にもかなりの時間を要する。
今みたいに分散して追い立てないと、おぼうしを視界に入れることすら適わない。
非力なだけあって跳躍飛距離も短い。
動物の筋肉組織などと違い、鍛えるよりも『ゆっくり』することで饅頭的な質が向上し、
跳躍運動に適した構造になる。
それ以外の身体構造に個体差は無いに等しい。
ようは体の特性を理解することによる『慣れ』で運動能力が決まるのだ。
『あかちゃんことば』も口周りの動かし方の慣れで改善されていく。
亜完成体として生まれる割に発育はすこぶる遅い。
緩やかな斜面を転がれば麓までスグなのだが、
饅頭皮では死の危険が伴う。ここは子ゆっくりに歩をあわせるしかない。
焦っているのかその行軍は遅々としたものだった。
赤ゆっくりは親ゆっくりの頭の上に乗っかっている。今もうるさい。
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おちびちゃん、あぶないよ! ゆっくりだよ! ゆっくりすすもうね! ゆっくり!」
「おぼうしぃぃぃ!! まりさのすてきなおぼうしぃぃぃぃ!! おぼうしぃぃぃ!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆっゆっゆっ! ありすたちもおてつだいするわ! とかいははたすけあうのよ!!」
「おてつだいするよ!」
「しゅりゅよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
肌色の饅頭集団は麓を横切る道に向かっていた。
灰色の砂利道が、春の日差しが眩しい緑の斜面と対照的な
青黒い口を開けたような林とを分断していた。
遊歩道は林に隣接しており、
覆いかぶさるように茂った枝葉が陽を遮り、かなり薄暗い。
雨水などが流れる用水路が林側の木柵の足下にあり、
コンクリートのブロック板でフタがされている。
更に等間隔に金網のフタがされており、
中の様子が窺える。今は水は流れていないようだ。
内部が風の通り道になっているのか、
内部で『ュゥゥゥゥゥ…、ュゥゥゥゥゥ…』と音が反響している。
そして、その金網に吸い寄せられたおぼうしが幾つも引っかかっていた。
「おぼうし! おぼうし! あっだよおおぉぉ! まりざのすてきなおぼうしぃぃ!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ぴゅんぴゅん! きゃっちぇにどっきゃいっちゃうにゃんちぇにゃみゃいきだにぇ!」
「おぼうしもうはなさないんだぜ! まりさのすてきなおぼうしもうはなさないのぜ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「よがっだよぉぉ… れいむのおじびじゃんのおぼうじみづがっでよがっだよぼぉぉ…」
「ありすのおかげだよ! さすがとかいはなありすだね! れいむほれなおしたよ!!」
「ゆっゆっ、てれるわ!」
「しゃしゅがみゃみゃだわ!」
ここまで必死に跳ねてきた子ゆっくり達、
あんよは擦り傷だらけで少し黒ずんでいた。
それとありすはなんもしてねえだろ…。
ああ、そんなに金網に近づいたら
「おぼうし! おぼうし! ゆゆゆぅぅぅ~~~~?!」(ころころ)
体の軽い子ゆっくりではおぼうしと共に金網に吸い寄せられてしまう。
金網の目は軟球サイズの子まりさが側溝に転がり込む程ではないのだが、
柔肌が吸い込まれ押し付けられる苦痛に
底部であるあんよをぷるんぷるん振るわせる。
「だすけでね! たずげてね゛! いだいよ゛!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆゆっ! やめてあげてね! いたがってるよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ぷくぅぅぅっ!! まりさのかわいいおちびちゃんをはなすんだぜ!」
「れいむのかわいいおちびちゃんをはなせえええええええええええっ!」
「ぴゅっきゅううううう!! おにぇえちゃんをはにゃちちぇにぇ!!」
「このいなかもの! かわいいおちびちゃんをさっさとかえしなさい!」
「おぼうしどろぼうとはゆっくりできないよ! ぷくううううううう!」
「いだいよ゛! い゛だいよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
はい、金網に威嚇してもムダですね。
無駄な威嚇は風が止むまでの10分間続いた…
「ゆうぅぅぅぅ…かわいいまりさのびはだがぁ…」
「いたかったね、おちびちゃん。ぺ~ろぺ~ろ、ぺ~ろぺ~ろ」
「ゆっくりしてないかぜさんだったんだぜ! でもまりさにおそれをなしてどっかいっちゃったのぜ!」
全身に金網の跡が付いた子まりさをぺ~ろぺ~ろで癒す親れいむと
風を追っ払って興奮気味の親まりさ。
おぼうしも全部取り返し、ひとまず危機は去ったように思えたのだが…
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「おちびちゃん、もうこわいこわいはどっかいっちゃたよ、なきやんでね?! なきやんでね?!」
さっきから超絶うるさい赤れいむ達が2家族を困らせていた。
「ゆゆゆ… そうだよ! れいむのおうたでゆっくりしてね! こもりうただよ!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「それはとかいはね! ありすもゆっくりうたうわ!」
『ゆゆゆ~♪ ゆっゆっ♪ ゆ~ゆんゅっゆ~♪ ゆっんっゆ~♪ ゆゅゅんゆ~♪ ゆゆんゆっゆ~♪』
『と~かいは~♪ ゆっゆんっゆっっゆゆゆゆ~♪ ゆゆゆゆんゆゅゆ~♪ ゆゆゆっゆっゆゅゅゆっ♪』
「ゆびいいぃぃいぃ! ゆびぃぃ…っゆ? きゃっきゃっ♪」
「ゆふふ、おちびちゃん、ゆっくりしていってね!!!」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
はあ、よかったね。なきやんだね。
「みゃみゃのおうちゃはゆっきゅりできりゅわにぇ!」
「ゆっきゅり~♪ ゆっゆっ♪ ゆゆゆゆ~~~~♪」
「じゃあ、みんなでおうたをうたいながらゆっくりかえろうね♪」
そうだね、はやくかえろうね。
『ゆゆゆ~♪ ゆんゆゆゆゅ~~~♪ ゆゆ~ゆゆ~ゆ~♪ ゆゆんゆ~~~♪』
プワワァァ~~~~~~ン ウゥゥウゥ~~~~~~ン ワァァァ~~~~ンン
『ゆゆゆゅゅゅゅ~~~~ん♪ ゆゆゆ~~ん♪ ゆっ?』
上機嫌で踵を返す集団の背後からなにか黒い霧のような影が近づいてきた。
蚊柱である。
蚊柱はオスの蚊で構成されており、
メスの羽音を聴きつけるとそちらに向かい交尾する為に、固まって移動してくる。
メスの羽音は音階でいうところの「ラ」の音であるらしく、
奇しくも先ほどのおうたも「ラ」の音が主旋律であった。
「なんなのぉぉぉおおおお??!」
「ぷわんぷわんはゆっくりでぎないいい!!」
「ゆびいいいいいいいいいいい!!!」
このゆっくり達は蚊を見たことが無かったようだ。
ゆっくり出来ないと言っている割に、目を剥いて蚊柱を凝視している。
蚊柱は忙しなく動くもの。その挙動はゆっくりしていない。
またまたパニックに陥るハメになってしまった。
黒い霧はゆっくり達を包み込む。
そして、そのなかにはメスの蚊も紛れていたようだ。
プゥゥゥ~~~~ン…ピタッ! チクッ! チュゥゥゥ…
「ゆぎぎぎぎいぃぃぃぃぃ!!! いじゃああ゛ああ゛!! いじゃい゛い゛い゛!!」
「ゆ゛ぅぅぅ!!? おじびじゃんどおじだの゛ぉぉぉおお゛お??!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛す゛わ゛れる゛うう゛う あんごっざんずわれでるう゛うやべでえ゛え゛え゛」
子れいむが突然苦しみだした。蚊に刺されてしまったらしい。
蚊のサイズは10ミリと大きめで、ゆっくりの体格から比較すると
決して小さくなく、むしろ巨大な昆虫といった風情である。
赤・子ゆっくりからすればなおさらだ。
そんな虫が、口吻を刺した。
饅頭皮下の餡管に到達した先で、あんこを吸い上げていく。
蚊の腹部が異常ともいえる大きさにまで、青黒く膨らむのが確認できる。
痛がり屋なゆっくり、それも子ゆっくり、しかもれいむ(笑)だ。
巨大注射針に刺された痛みで目を剥き歯軋り。声も出ないのか
子れいむは痛みに萎縮した身体が痙攣し、その場から動けない。
しーしー孔の左横を刺されたようで、
赤く腫れた傷口が圧迫して右曲がりにしーしーが噴出してしまっている。
メスは産卵の為に動物の血を吸い、たんぱく質などの栄養を摂取する。
オスは花の蜜や樹液などを吸い、吸血は行わない。
ゆっくりは甘味であり、どちらかというとオス好みの『食料』であるのだが、
構成成分に良質のでんぷん質も含んでいる。
今吸ったのはどうやらメスのようだ。
満足したのか重そうな体を持ち上げフラフラと飛翔する。
蚊は飛行が不得手である。
ゆっくりが虫に捕食されるようなことは稀であった。
ハチに刺されたり、死んだゆっくりにハエがたかる等はよく確認されている。
しかし、虫害によって大量死を招くような事例は少ない。
何故かゆっくりは虫に襲われにくいのだ。
だが現在、この状況はどういうことなのだろう…
さて、蚊に刺された子れいむの様子をしばらく見てみよう。
「いだいよぼぉぉおお… ぼがーだんん… いだいいぃぃぃ!」
「あづいよぼぉおぉおおごわいよおおおごわいいいゆっぐりじだいよぼぉぉぉぉ…」
「ぃゅぎっ?! あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛っ?!」
「あ゛っあ゛ぁっぼぉぐぅぅぅ! がゆいいいいいいい!! がゆいいいいいい!!」
子れいむが『かゆみ』にのた打ち回る。
メスの吸血は血液の凝固を防ぐために唾液を注入してから行われるのだが、
その唾液が曲者で、おなじみの『かゆみ』を引き起こす。
体の小さな子れいむにも当然、毒唾液は注入されていた。
「がゆいいいいいいい! いききぎぎいぎいいいい!!」
「おじびじゃんじっがりじでね! げいぶのおぎびぎゃん!」
「ぎっ! いぎっ! ゆぎっ! いぎいっ! ぎっ!」
おや!?
……これいむの ようすが……!?
刺された箇所は水ぶくれ状態、体は赤みを帯び、
全身の餡管は毒唾液が体中に巡っていることを示すように浮き出て
その周辺から赤黒いジンマシンが広がっていく。
そのおめめから、おくちから、しーしー孔、あにゃる、まむまむから
透明で粘性の高い液体が溢れ出す。
子れいむは、肌色のマスクメロンに赤黒い水玉がビッシリ張り付いた
ぬるぬるでグロテスクな姿になってしまった。
蚊過敏症(蚊アレルギー)。
蚊に刺されると、異常な腫れや発熱、ジンマシン等の症状を起こす人が稀にいる。
蚊の毒に免疫が無かったり、抗体が関係していたりと理由は様々であるのだが、
唯一ついえることはデフォルト状態のゆっくりには
抗体も免疫も無い。である。
飼いゆっくりならば予防接種等で人為的に免疫を授与できるのだが…。
饅頭皮のクセに、人間とほぼ同じ感覚や反応を示す肌質、
餡管の進化が仇になってしまったのか。
おめでとう! これいむは
キモこれいむに しんかした!
「がぎゃあああああっ!!」
今度は子ありすが刺されたようだ。痛みに叫び、転がり大忙し。
ころころころころぽちゃん!
側溝に落ちてしまった。
なにかに堰き止められて水が溜まっていたのか、小さな水音が聞こえた。
「ゆびゃあああぁぁ!! がゆいいい!! がゆううううう!! がゆいよおおお!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「じっがりずるんだぜ! おじびじゃんじっがりずるんだぜえええ!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! でいぶのがわいいおじびじゃんがああああああ!!!」
「ゆびいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「がゆいいいい!! が~りが~り! が~りが~り! じあわ゛ぢぇ!!」
「が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛が~り゛!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
赤ゆっくりも数匹刺されてしまったようで
しばらくはゆびゆび泣き叫んでいたのだが。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛どうじて゛ぇぇぇぇ?!!」
体の小ささ故に直に全身に毒がまわり、『ゆ゛篤状態』に陥ってしまった。
当然、水玉メロン状態である。
「が~りが~り! が~りが~り! ゆぎぎきききぎぃぃぃ!!」
「おぎびぎゃん!! が~りが~りはだべえええ!!」
赤黒水玉マスクメロン状態の子れいむが体を掻き毟るために、
ぶぬりぶぬりと地面に体をこすり付ける。
柔らかい肌と浮き出た餡管が硬い地面に擦れ、破裂、
小さな傷口が広がりあんこが漏れ出してしまった。
砂利や落ち葉のかけらが体中に張り付き、
もともと子汚い体がより茶褐色に汚れていく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛! ぢびじゃんのあんござんぎゃ! あんごじゃんぎゃ!」
「がゆうう!! ぎゃゆうううう!! ぎゃ~り! ぎゃ~り!」
プゥゥ~~~~ン、チクッ!
「ゆぐっ?!」
突然の出来事に泣き叫ぶ親まりさ。
そして目の前にいる最愛の妻、親れいむのぽんぽんに蚊が張り付いた。
多少は皮の厚い成体ゆっくり、しかも奇跡的に餡管を逸れ、
饅頭皮の途中で口吻は止まっていた。
こいつだ! こいつがおぼうしをぬすんでおちびちゃんたちをぶつぶつーにしたくろまく~なんだ!
「ゆっ!」
親まりさは傍らでオロオロするだけの親れいむにぽんぽんを押し付ける。
「ゆゆっ! なにじてるのばりざああ! ずっきりじてるばあいじゃないでしょおおおおお!!!?」
「ち、ちがうんだぜ! まりさのぽんぽんをゆっくりよくみてみるんだぜ!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「?? ゆっ! むしさんがつぶれているよ! むしさんはれいむがたべるよ! ぺ~ろぺ~ろ!」
「そうなんだぜ! このむしさんがおちびちゃんたちをゆっくりさせなくしているくろまく~なんだぜ!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆゆぅぅーーー?! ばかなむしさんはさっさとどっかいってね! あとあまあまもってきてね!」
「みんなゆっくりしないでぺ~ろぺ~ろとす~りす~りをくりかえすんだぜ!」
さきほど潰した感触から、蚊の耐久度を推し量ったまりさは指示をだす。
そんなんより、さっさと逃げればいいのにね…
「ゆっ、しょうたいがわかればもうこわくないんだぜ!」
そういっておぼうしから取り出したるは、一本の棒切れ。
その棒は赤くツヤツヤしており、先端は赤く尖っていた。
まりさ自慢の一品『ゆーりんげん』である。
大仰な解説だったが、ようはただの色鉛筆。
地元の小学校で写生授業が行われた際に忘れ去られた
12色セットの内の一本である。
なお、他の11色も公園のいずれかのゆっくりが所持していた…
「ゆっくりしてないぷわんぷわんはまりさがころすよ! ゆっ! ゆっ! ゆゆーっ!」
なにを思ったのか赤ペンを咥えてぷるんぷるん振り回す親まりさ。
そのまま身体を寄せ合っている家族達の周りを跳ね回る。
「ゆっ! ゆっ! れいむたちはまりさがまもるんだぜ! ばかなぷわんぷわんにはゆびいっぽんふれさせないんだぜ!」
当たるわきゃねーだろ。牽制にもなんねーよ、カス。
「ず~り、ず~り、がゆいいいい!」
「おぢびじゃん! ごっぢぎてぼがーだんだでぃどいっじょにず~りず~りじようね゛! べ~ろ、べ~ろ!」
「おねえ゛じゃんゆっぐりじじぇね!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ありずのおぢびぎゃんぎゃびどりいないわ゛! どごぉ!? どごいったのぉぉ?!」
「ゆ゛っ! ありず、はなれじゃだべだよ! でいぶどいっしょにすりずりじでね!?」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あ゛あ゛あ゛! ざざれだぁぁ! でいぶざざれ゛だああ!! いや゛ぁぁぁ゛!!」
一塊となって蚊をすり潰してはいたが、それでも何匹かは刺されてしまう。
「ゆがぁぁあああああ゛あ゛あ゛ぁぁっっ!!」
「ぐるなっ! ぐるな゛ぁっ!! あっじいげえええぇぇっ!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あがぎゃんもごっぢぎでね! おがーざん゛のおぐぢに゛がくれでね!!」
ここにきてようやく、おくちがーど発動。遅い、遅いよれいむぅ。
「ゆぎぃ! きっきぎ! いがああああ゛あ゛!!」
一方、最初に刺された子れいむはというと…真っ黒になっていた。
べ、別に死んで黒ずんだわけじゃあ無いんだからね!
ただ、全身から漏れ出たあんこさんにオスの蚊が殺到して真っ黒に見えているだけなんだからね!
勘違いしないでね!
「ちびじゃん、ぢびぎゃんぎゃあああ…」
「おにぇぢゃんぎゃぁぁあああっ!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
同様に刺された赤ゆっくりも真っ黒。こちらはすでに死んでいる。
あんこの量もそれほど多くない上に大量の蚊に吸われまくった結果、
ふにゃふにゃに萎びてしまった。
絶望の表情のまま、べじゃぁ~、と、
ぬるぬるした体液の水溜りにその皮とおりぼんが広がっていった。
「ゆがああああ! ぐるな! ぐるな! ぐるなぁあああ!」
親ありすも身体を、ぽるんぶむん!と揺らし、蚊を回避しようと必死だ。
頭から延びている蔓もぷるんぷるんと撓る(しなる)。
実ゆっくりは苦悶の表情を浮かべ、眉が八の字になっていた。
「ゆはぁ、ゆはぁ、ゆっくりつかれたわ!」
だが、親ありすが動きを止めたその時を見計らったかのように、
先端の実に蚊が取り付いてしまう。メスだ。
「ゅ゛っ」
ちいさな、ちいさな声を上げる実ゆっくり。
蚊が飛び去った後、急激に痙攣を起こし始める。
「ゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っ」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「あじずぅぅぅっ!! あぎゃぢゃん! あぎゃぢゃんがああ!!」
「ゆあ゛あ゛あ゛、やべでええ! ばだうばれでないのにいいいいい!!」
「ありずは”ゆんぷざん”だんだよ! やざじぐしないどいげないんだよ!!」
蔓を揺らし続けることで残りの実ゆっくりは守れそうだが、
親ありすの体力では難しいかもしれない。
それに…
「ゅ゛っ?! ゅ゛っゅ゛っゅ゛っゅ゛っ」
「あ゛あ゛あ゛! だんでえええ! ざざれでだいどでぃいいい!!」
刺された実ゆっくりの隣の実が苦しみだしたのだ。
先端の実はすでに朽ちてしまっていて、落ちそうだ。
どうやら蚊の毒が蔓を伝播して、徐々に侵食していっているようだ。
内から外への餡圧が強いため、先端から本体側への浸行速度は遅い。
本体が刺されていた場合、毒は真っ先に蔓に経由されて、実は全滅していただろう。
この場合、どうして本体ではなく実に全ての毒がいってしまうのか。
ゆっくりは取り込んだ栄養などが優先的に胎児・実に受け渡される。
それは、あかちゃんにゆっくりしてもらうため。健康に生まれてきてもらうため。
だから、にんっしん中はゆっくりし、栄養のあるものを摂取する。
だが、毒などの異物もこれまた優先的に受け渡してしてしまうのだ。
とにかくにんっしん中に本体が取り込んだ成分は胎児・実ゆっくりを経由して、
残りカスを母体が受け取る。
ゆっくり的には『ふぃるたー』の役目を果たす驚きの機構。
子を宿した数だけ、命が増えているようなモノである。
だが、当のゆっくり達はそんなこと知らない。知る由も無い。
ただ、りゅうざんした我が子の変わり果てた姿に涙するだけ。
「ゆぎぎっぎいいい! ゆっ!!」
ぱくん! ブチィッ!!
毒が3個目の実に到達し、実が紫色になった瞬間、
ありすの伴侶の親れいむは毒に侵された部分の茎を噛み千切った。
本当は2個目で起こしたアクションなのだが、れいむだから、ほら。
「なにじでるのおおおおおお!! でいぶぅぅぅううううう???!」
「あがぎゃんごべんねええ!! ありずごべんねえええ!! ごうじないど、ぎっどあがちゃんぜんぶじんじゃうよ!!」
れいむの判断は正しかった。
母性(笑)の為せる業か、れいむ種にしては珍しく役に立った。
だが、くきさんが半分になり、残った実ゆっくりも3匹。
蔓の先端からもあんこ(かすたーど)がポタポタとしたたる。
「ぺ~ろ、ぺ~ろ、もうあかちゃんはころさせないよ…」
「ゆぐっ! ゆぐっ! ぶぐぐううううぅぅぅっ…!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
ビュゴゴゴオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!
『ゆ゛ぅぅぅうううううううーーーーーーーーーーーっっっ!!!!???』
またもや一陣の風。
強風だった。蚊柱は霧散し、一家にとりついた蚊も全て林に追いやった。
一団は寄り添うように固まっていたため、道の真ん中から転げることも、
おかざりが吹き飛ぶこともなく耐えることが出来た。
神風。一神の風だった。唯の一度で、黒い霧を祓ったのだ。
「ゆはぁ、ゆはぁ、な、なんとか”すたーらいとたいふーん”がまにあったんだぜ…」
ただの風だよ。
「ゆぅぅ! とかいはなゆっさつわざね!」
「れいむのまりさのゆ~りんげんのちからはこれだけじゃあないんだよ!」
ただの風だッつってんだろ。
「ゆゆゆ…、でもぎせいもおおきかったんだぜ…」
「しかたないよ…おおわざははつどうまでにじかんがかかるよ…」
見渡すとそこには転々と黒いしみ、黄色いしみ、塊、おかざり。ゆっぐり。
かわいいおちびちゃんたちの成れの果てが転がっていた。
「ゆぐぅぅっ! おぢぢびぢゃんが…、でいぶのおぢびぢゃんが…」
「ま、まりざのゆっぐりとしだおちびちゃんたちが…」
「ぱりすのとかいはなあかちゃんが…」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「れいむのかかわいいかわいいあかちゃんたちがぁぁ!」
「おぢびぢゃん、おめめあけてね…。おうちかえろうね、おかーさんとおうちかえろーね」
「れいむ、あかちゃんはもう…」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆぐぅぅぅぅっ! うぞだよ! ごんあ゛のうぞだよ! ゆっぐりぃ! ゆ゛っぐじじでいっでねぇぇぇ!!!」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
そして、改めて蚊に刺された者達を目の当たりにする。
「ゆぎがぁぁああ!! がゆいいいいい!! いぎひぃぃぃぃ!!」
「が~りが~り! ご~りご~り! じゃわじぇっ! いぎ!」
水玉メロンな子れいむ・子まりさ・子ありすが痒みにのたうつ。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいいいいい!!!」
水玉メロンな赤れいむ・赤まりさ・赤ありすが痙攣している。泣き叫んでいる。
「ゆああああ、なにごれぇぇぇぇ!!」
「ぺ~ろぺ~ろ、あがちゃん、ゆっくりじでぇぇ!!」
「ゆびいいいいいいい!!! ゆびいいいい、っゆ、もっちょ…ゆっきゅちちちゃきゃっちゃ…」
「ゆんやあああああああぁぁぁっ!!!! いやぁあああああああぁぁぁ!! あぎゃぢゃあああああああああ!!!!」
どうやら赤れいむが2匹、親れいむの目の前で死んだようだ。
ハッキリと嘆きの断末魔を口にして。
これには親れいむも発狂するかの如く大きな叫び声を上げる。
最愛の我が子の『もっちょゆっきゅちちちゃきゃっちゃ(赤ちゃんゆっくりバージョン「もっとゆっくりしたかった」)(爆笑)←わらいすぎwww』
を聞いてしまったのだ。ゆっくり的にコレは堪らない。
しかも別段外傷も無く、親れいむにはどうして死んでしまったのか理解すらできない。
赤れいむは、涙と涎と汗と尿を振りまきながら全力で泣き喚いていた。
丘にいたときから。
だから精神的な『ゆっくり不足』と、急激な『脱水症状』により死んでしまったのだ。
折角の蚊に殺させる為のSSなのにマヌケな死に方晒してんじゃあねーよ。
つくづく赤バエは無能すぎるは。でも、やっと静かになりそうで清々するね!
「でいぶのおぢびじゃんがじんじゃっだぁぁぁっ!!!」
「あ、ありずのとがいはなぢびじゃんがあああぁぁ! ゆお~いおいおい! ゅぉ~~ぃおいおい!」
「れいむのいもうとがぁぁぁぁ!!」
「ありしゅのおにぇちゃんぎゃぁぁぁぁっ!!」
「…れいむ、さされたところはだいじょうぶなのかだぜ?」
「すこしかゆかゆだけど、だいじょぶだよ…」
親まりさは伴侶のれいむがぽんぽんを刺されたところをみていた。
大丈夫なのだろうか、れいむになにかあったらまりさは…
赤く腫れたぽんぽんをぺ~ろぺ~ろして癒してあげる。その時
「ゆ゛っ! うばれるぅぅぅぅううう!!!」
「れ、れいむ! あかちゃんうまれそうなのぜ!?」
「うばれるよぉぉおお!! れいむのかわいいかわいいあがちゃんうばれるよぉぉおおお!!!」
「ゆゆっ! きっととかいはなあかちゃんだわ!!」
「おきゃーしゃんがんばっちぇ!」
「ゆっゆ、ふー! だよ! ゆっゆ、ふー! 」
「こんなときにおめでたいね! とってもゆっくりできるね!!」
まったくだ。
親れいむは刺されていた。そしてにんっしんしていた。
「ゆっゆ、ふぅうぅうう!! ゆっゆ、ふぅぅうぅう!!」
「でいぶううっ! あがちゃんがみえできだよ! あとすごしだよ!」
「ゆわ~い! まりしゃ、おねーしゃんになるんだね! ゆっくりー!」
まむまむがくぱぁと開き、そこから小さなゆっくりがメリメリ顔を出す。
ゆっくりって口から先に出てくるのな。
「まりさがうけとめるんだぜ!」
「れいむうたうよ♪ ゆ~ゆ~ゆ~んゆ~ん~♪ おーえんか♪だよ♪ ゆんゅゆゅんゆゆゆ~ゆんっ♪」
念のため、おぼうしを脱いでれいむの産道の前に構える。
背後でおぼうしを咥え『すぽーん!』の衝撃に備えるのだ。
『SUPOOOOON!! MARIASA』
STAGE1:おぼうしで赤ゆっくりを1匹受け止めよう!
すぽーん!
「ゆっ!」
おぼうし内左側面にグレイズ!(減点1)
赤ゆっくりに微ダメージ! (減点3)
おぼうしがよごれている! (減点1)
おうた (減点6)
補助アイテム未使用 (得点1)
0/10
GAMR OVER(ユックリシテイッテネ!!!)
上手く受け止められたようだ。
おぼうしをそっと傾けてあかちゃんをコロリと外に出す。
周りのゆっくりは黒ずんでいる家族のことなど
そっちのけでおぼうしを注視していた。
あかちゃんがうまれるところはなんてゆっくりしているんだろう!
「あかちゃん! ゆっくり…ゆ?」
「がゅぃぃぃぃぃぃ!!! がゆぃぃいぃぃいいいぃいぃ!! いぎぃぃぃいいい!!」
『ゆ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!! どぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!』
転げ出てきたのはかわいいかわいいあかちゃんゆっくり。
ではなくて、赤黒水玉肌色マスクメロンまりさだった。
開幕からかゆかゆ宣言で転げまわり、ちいさなおぼうしが脱げ、その上を転がり、
泥とあんこが付着し、ゆーすい濡れの身体に砂利や落ち葉が張り付き、
おぼうしをひき潰し、泥とあんこが付着し、かゆかゆ宣言をし、
ぽんぽんが破け、泥とあんこが……
少量の毒も全て胎ゆに蓄積されてしまったようだ。
3匹胎ゆはいたが、長女であるこのまりさに全ての毒がまわったようだ。
体外に毒を排出するためか、異常事態に出産が促進されたのか、
未熟児の状態で生まれてきた。
「あかちゃん、ゆっくりしていってね…」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!』
今生まれた赤まりさから返事が返ってくることはなかった。
「ゆっ、そうだよ、ありすのおちびちゃんがひとりいなくなっちゃんだよ…」
「ゆっくりさがすよ…」
2番目に刺された子ありすは、側溝の中にいた。
そこには肌色のボウルが幾つも並び、その器の中に黒い水を湛えている。
半分になったゆっくりの半身が、雨水の受け皿になっていたのだ。
木の柵に張られた針金を通り抜けようとして、
横からスッパリ切断されたゆっくり達の成れの果てだった。
その饅頭皿の黒池に、子ありすが浮かんでいた。
「ちびちゃん! いまたすけるからねええええええ!!」
「れいむ! ゆっくりきをつけてね!」
側溝は幅が成体ゆ2匹分、深さ1匹分あり、
にんっしんした個体では昇降は少々困難であった。
それ以前にゆっくりの垂直跳躍高は成体でせいぜい5センチ程度。
これはゆっくりの『ちから』によるもので、
自然落下した方が遥かに大きなエネルギーを生むことができるのだが
ゆっくりが自らの膂力で跳ねるとその非力ゆえに全く力量エネルギーが得られないのであった。
ゆっくりが窓から侵入したり、3階のベランダにいたりするのは、
ピタゴラスイッチ的な要領で運良く、極稀に、
一家全員(または認識できない個体数を消費して)
ソコまで辿り着いていたからに過ぎない。
だから子ありすを救出しても、足場を確保しない限り親れいむは側溝から脱出できないのだ。
でも、そんなことはゆっくりにはわからない。今は子ありすを助けなければ。
「ゆゆ…、たかいよ…、ゆっくりできなさそうだよ…」
だが、そのあまりの高さ(笑)に躊躇してしまう親れいむ。
「れいむぅぅぅう!! はやくおちびちゃんをたすけてあげてねぇぇええ!!」
「みゃみゃぎゃんばりぇ~~~~~っ!!」
「しっかりするんだぜ! れいむ! れいむはおとーさんなのぜ!?」
側溝の縁で足踏みしていたれいむを皆が叱咤激励する。
「ゆゆゆ! そうだね! おちびちゃんまっててね! おとーさんがいまいくよ! ゆっくりたすけるよ!」
ゆっくりがおとーさんとか超ワケわからんがなんとか気を持ち直す親れいむ。
でも、降りたら二度と上がってこれないよ? わかってるの? わかってるの?
お情けで助けたりなんかしないよ? 絶対殺すよ? 惨めな死に方させるよ?
「ゆーーーーーーっ!!」
「れいむが! れいむがとんだのぜ!」
「っきゃっきょいいいいいい!!」
「すごいよ! おそらとんでるよ!」
「ゆー♪ れいむおそらを(ry」
ギャシャァ!
「ゆぎっ!」
側溝の対面の壁に顔面(とはいっても全身みたいなモノだが)を
こすり付けながら降下する親れいむ。
着地は上手くいかなかったようだ。
「ゆがぁぁ!!! いだいいいいいい!! いだいよぉぉぉおおおお!」
「れいむううう! だいじょうぶなのぉぉぉおおお?!」
たっぷり5分は転げまわった。
「ちびちゃん、ゆっくりがまんしてね」
親れいむは顔の右半分を沈めた赤ありすに近づき、その髪を咥えた。
赤ありすが動いていないのには気付いていない。
あんこの池に蠢く、無数のボウフラにも…
「ゆんしょ! ゆんしょ!」
「れいむうう! ゆっくりがんばってねえ!!」
「ゆーえす! うーえす!」
「おばさんがんばってね!」
「もうすぐなんだぜ!」
「ゆーーーーーっ!!」
池の端までなんとか引っ張り、そこから一気に身体を反らせ、
釣り上げるように引き揚げた。
「ゆ~~~っ!! やっとたすけられたよ! おちびちゃんだいじょう…ぶ?」
子ありすの右半分は無かった。池に浸かりすぎて融けてしまったからだ。
餡血の凝固を防ぐ蚊の唾液もそれを助けた。
残った半身は当然、アレルギーの症状が支配していた。
その表情は恐ろしく苦悶に満ちている。
「ゆげ! ゆげぇぇぇぇええっ!」
「びげぇぇぇえっ!」
「あびゃっ! ゆびゃばっ!」
「ゆっぐりでぎないよ…」
張力でその形を保っていた子ありすの半身も、
池から引き上げられるとその断面からどぼりとカスタードがこぼれ、
一瞬で皮だけになってしまった。
側溝の縁で上から見下ろしていた者達もそのあまりに凄惨な光景にあんこを吐き出してしまう。
「ど、どぼじでぇぇ… れいぶのおぢびぢゃん… ゆっぐ! ゆっぐぅぅ!」
「おぢびぢゃん、あんこさんはいたらだめだよ…ゆっくりもとにもどそうね」
「ゆぅぅ、まりさ、のどさんからからだよ! おみずさんご~くご~くしたいよ!」
「れいむもご~くご~くしたいよ!」
「ゆ! そういえば、なんだかさっきからのどさんがからからなのぜ」
昼から泣き通しのゆっくり達は水分不足の警告にやっと気が付いたようだ。
もっとはやく気が付いていれば、赤れいむ2匹は死ななかったかもしれない。
だが、この遊歩道に初めて訪れたゆっくり達には近くに水場があるかどうかも判らない。
展望台に水道が通っているが、ゆっくりは立ち入り禁止である。
おみず、おみず…
おみずがないとゆっくりできないよ…
どうして、いつから蚊がゆっくりを襲うようになったのか…
果たして、ゆっくり達の運命は…
続きます。