ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2718 絶望のオブジェ
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『絶望のオブジェ』 5KB
現代 鬱話 人間被害注意 黒二行作
現代 鬱話 人間被害注意 黒二行作
葉っぱ、無数の葉っぱ。それが男の目の前に山積みになっている。
ひとつを手に取る。表面にマジックで描かれているのは、酒浸りのミミズのような文字。
辛うじて『まりさ』と読めた。
ひとつを手に取る。表面にマジックで描かれているのは、酒浸りのミミズのような文字。
辛うじて『まりさ』と読めた。
「これは、何だ?」
「しょめいさんです」
「しょめいさんです」
野生にしては、やけに鮮やかなリボンを持つ饅頭がそう言った。聞けば長れいむだという。
どういう基準で長に選ばれたのか、容易に見当が付く。
どういう基準で長に選ばれたのか、容易に見当が付く。
「これは、むれのみんなのおねがいだよ」
「なるほど、実に理性的で知性的な手段だな。関心した。でも駄目だ」
「どうして? たくさん、おなまえかくと、にんげんさんはおねがいきいてくれるんでしょ?」
「そうだといいな。心からそう思うよ。でも無駄だ」
「おねがいします、にんげんさん! れいむたちは、おやまでくらしてるだけなんです!
にんげんさんのじゃまにならないよう、しずかにくらします!
むーしゃむーしゃも、すっきりーも、がまんして、おやまをあらさないようにします!」
「もし、それが本当にできるとして……。それでも無理だ。
お前達は、ここから出て行かなくちゃいけない。そう、決まったからな」
「……だれがきめたの?」
「ドスだ。ゆっくりで言えばな」
「なるほど、実に理性的で知性的な手段だな。関心した。でも駄目だ」
「どうして? たくさん、おなまえかくと、にんげんさんはおねがいきいてくれるんでしょ?」
「そうだといいな。心からそう思うよ。でも無駄だ」
「おねがいします、にんげんさん! れいむたちは、おやまでくらしてるだけなんです!
にんげんさんのじゃまにならないよう、しずかにくらします!
むーしゃむーしゃも、すっきりーも、がまんして、おやまをあらさないようにします!」
「もし、それが本当にできるとして……。それでも無理だ。
お前達は、ここから出て行かなくちゃいけない。そう、決まったからな」
「……だれがきめたの?」
「ドスだ。ゆっくりで言えばな」
長れいむがトボトボと帰っていく。山へ戻るのだろう。
今時珍しく、山間部の再開発が決まった。
男は行政側の担当として下見に来ていたのだが、そこで、計画が群れのゆっくりに気付かれていることを知った。
企業側の誰かが嬉しそうに吹聴して回ったという。憂さ晴らしならば別の方法でやって欲しかった。
ともあれ開発計画のついでに、饅頭どもに顔まで知られてしまった男は、ここに来る度に陳情につき合わされる羽目になっている。
今時珍しく、山間部の再開発が決まった。
男は行政側の担当として下見に来ていたのだが、そこで、計画が群れのゆっくりに気付かれていることを知った。
企業側の誰かが嬉しそうに吹聴して回ったという。憂さ晴らしならば別の方法でやって欲しかった。
ともあれ開発計画のついでに、饅頭どもに顔まで知られてしまった男は、ここに来る度に陳情につき合わされる羽目になっている。
数日後、地図を片手に山中を行き来していると、またもやあのれいむが目の前、正確には足元に現れた。
今日はすぃーに乗って来ていて、何やら枝の塊を後部座席っぽい所に載せている。
今日はすぃーに乗って来ていて、何やら枝の塊を後部座席っぽい所に載せている。
「にんげんさん、きょうは、これをみてほしいよ!」
「その、やたら前衛的な荷物のことか?」
「これは、むれでいちばんとかいはなありすがつくった、おぶじぇさんだよ。
ゆっくりが、にんげんさんとなかよくできますように、そんなおぶじぇさんだよ!」
「文化的だな、いや、芸術的だ」
「その、やたら前衛的な荷物のことか?」
「これは、むれでいちばんとかいはなありすがつくった、おぶじぇさんだよ。
ゆっくりが、にんげんさんとなかよくできますように、そんなおぶじぇさんだよ!」
「文化的だな、いや、芸術的だ」
男は構わずオブジェを通り過ぎようとした。
色々載せたすぃーが、バックしながらそれに追い付いてくる。
色々載せたすぃーが、バックしながらそれに追い付いてくる。
「にんげんさん、れいむたち、ここをでていったら、もういくとこないんだよ。
ほかに、やまや、もりはないし、まちは、にんげんさんのものでしょ?」
「まあな」
「だったら、れいむたちは、どこにいけばいいの? どうやって、いきていけばいいの?」
「もう、お前達が暮らせる場所なんてないよ」
「ゆぅ」
「残念だ、心から同情するよ。どうしようもないんだ。だから、そういうのは無意味だ」
ほかに、やまや、もりはないし、まちは、にんげんさんのものでしょ?」
「まあな」
「だったら、れいむたちは、どこにいけばいいの? どうやって、いきていけばいいの?」
「もう、お前達が暮らせる場所なんてないよ」
「ゆぅ」
「残念だ、心から同情するよ。どうしようもないんだ。だから、そういうのは無意味だ」
男は祈りを込めた創作物を指差す。
祈りも願いも、想うだけではあまりにも無力だ。
祈りも願いも、想うだけではあまりにも無力だ。
「この前の署名、一応、人間のドスへ持って行ったよ」
「ゆゆ! にんげんさん、ありが」
「笑われもしなかった。今頃は、焼却炉を通り過ぎている。そんなもんだ」
「ゆゆ! にんげんさん、ありが」
「笑われもしなかった。今頃は、焼却炉を通り過ぎている。そんなもんだ」
焼却炉というものが理解できたかどうか。
取りあえず、実らなかったことだけは理解できたようだ。紅饅頭の瞳がそう語っている。
取りあえず、実らなかったことだけは理解できたようだ。紅饅頭の瞳がそう語っている。
「……このまえ、まりさが、むれのなかで、えだをぶんぶんして、あばれまわったんだよ。
たくさん、たくさん、ゆっくりがしんじゃったから、せいさいっしたよ……」
「追いつめられて通り魔か。そんな手合いもいるだろうな」
「にんげんさん……。れいむたち、しぬしかないんだね……」
「そうだな。だから、そんな無駄な努力で、自分を慰めるのは止めろ。正直、見ていられない」
「だったら、どうしたらいいの?」
「通りまりさのように、感情をストレートに出せばいい。ただし、それを向けるべきは、身内じゃないだろう?」
「ゆ……」
「どうせ、死ぬんだ」
たくさん、たくさん、ゆっくりがしんじゃったから、せいさいっしたよ……」
「追いつめられて通り魔か。そんな手合いもいるだろうな」
「にんげんさん……。れいむたち、しぬしかないんだね……」
「そうだな。だから、そんな無駄な努力で、自分を慰めるのは止めろ。正直、見ていられない」
「だったら、どうしたらいいの?」
「通りまりさのように、感情をストレートに出せばいい。ただし、それを向けるべきは、身内じゃないだろう?」
「ゆ……」
「どうせ、死ぬんだ」
必ずしも、そんな結果を望んだわけじゃない。
むしろあの時、男がれいむと交わしたものは戯言と言って良かった。
しかし、あれから3日後、市役所は黒く染まっていた。
夥(おびただ)しいゆっくりどもが、市役所の一階部分に特攻し、爆散していった。
そしてそれが幾度も幾度も繰り返されていく。
コンクリートの壁、窓、ガラス戸、横付けされていた市長の車。餡まみれでないものはない。
どうやって上ったのか。市役所に隣接するビルの屋上からも、ゆっくりが次々に投身し、役所を上から染め上げていった。
ゆっくり達はその間何も語らず、断末魔のひとつさえ聞こえてこない。ただ爆ぜる音だけが淡々と続いていった。
弾丸饅頭の目はどれも虚(うつ)ろであり、顔には奇妙な皺の跡が刻まれていた。あらゆる感情が吹き荒れ、そして去っていったのであろう。
自滅するゆっくりの中には白や黄色の餡を持つものも大勢いた。にも拘わらず、辺りは一面の黒だ。
それは、或いは意志であったのだろうか。意志を持つことさえ許されないものの意志。
消防車が続々と到着する。火を消す代わりに放水車として、餡を流し暴饅を食い止めるため、銀色の勇敢な男達はホースを手にした。
勢いよく水は流れ、一切は洗い流される。そして、綺麗になった道の上を、またもやゆっくりの列が埋め尽くした。
水を撃てども撃てども、餡と意志が詰まったものどもが湧き止まない。ノルマンディーさながらだったと、ある消防士は後に語った。
市役所に入ることも出来ずに立ち往生するもの、あと多数の野次馬がそれらを見守っている。
群衆の中の誰かが、こりゃ山から下りてきたゆっくり達だと言った。それにしちゃ多過ぎると、誰かが答えている。
むしろあの時、男がれいむと交わしたものは戯言と言って良かった。
しかし、あれから3日後、市役所は黒く染まっていた。
夥(おびただ)しいゆっくりどもが、市役所の一階部分に特攻し、爆散していった。
そしてそれが幾度も幾度も繰り返されていく。
コンクリートの壁、窓、ガラス戸、横付けされていた市長の車。餡まみれでないものはない。
どうやって上ったのか。市役所に隣接するビルの屋上からも、ゆっくりが次々に投身し、役所を上から染め上げていった。
ゆっくり達はその間何も語らず、断末魔のひとつさえ聞こえてこない。ただ爆ぜる音だけが淡々と続いていった。
弾丸饅頭の目はどれも虚(うつ)ろであり、顔には奇妙な皺の跡が刻まれていた。あらゆる感情が吹き荒れ、そして去っていったのであろう。
自滅するゆっくりの中には白や黄色の餡を持つものも大勢いた。にも拘わらず、辺りは一面の黒だ。
それは、或いは意志であったのだろうか。意志を持つことさえ許されないものの意志。
消防車が続々と到着する。火を消す代わりに放水車として、餡を流し暴饅を食い止めるため、銀色の勇敢な男達はホースを手にした。
勢いよく水は流れ、一切は洗い流される。そして、綺麗になった道の上を、またもやゆっくりの列が埋め尽くした。
水を撃てども撃てども、餡と意志が詰まったものどもが湧き止まない。ノルマンディーさながらだったと、ある消防士は後に語った。
市役所に入ることも出来ずに立ち往生するもの、あと多数の野次馬がそれらを見守っている。
群衆の中の誰かが、こりゃ山から下りてきたゆっくり達だと言った。それにしちゃ多過ぎると、誰かが答えている。
長れいむと無駄話を続けてきた男も、黒く染まり続ける建物を遠巻きに眺めていた。
彼に浮かんでいた感情は怒りでもなく自責でもない。ただ拳を握り締めて、想いを巡らせている。
彼に浮かんでいた感情は怒りでもなく自責でもない。ただ拳を握り締めて、想いを巡らせている。
「そうだ、早くこうすれば良かったんだ。
どうせ潰されるなら、感情を生命ごと、叩きつけるべき場所に……」
どうせ潰されるなら、感情を生命ごと、叩きつけるべき場所に……」
男は目の前の惨状に、何を投影していたのだろうか。
彼が語らない以上、それは誰にも分からないことだ。
彼が語らない以上、それは誰にも分からないことだ。
不条理な運命に翻弄されるもの達が、いつまでもいつまでも市役所を染め上げていく。
迷惑で無知で自己満足かつ無意味な行為。それは常に自らを壊すほどの激しく暗い感情による。
人はそれを絶望と呼ぶ。
生命により黒く甘く汚された建物は、正しく絶望のオブジェであった。
それは見苦しかったが、少なくとも怯えや虚飾はなく、どこか美しくさえあったという。
迷惑で無知で自己満足かつ無意味な行為。それは常に自らを壊すほどの激しく暗い感情による。
人はそれを絶望と呼ぶ。
生命により黒く甘く汚された建物は、正しく絶望のオブジェであった。
それは見苦しかったが、少なくとも怯えや虚飾はなく、どこか美しくさえあったという。
(終)
過去作:http://www26.atwiki.jp/ankoss/pages/392.html
番外編:ふたば系ゆっくりろーだー内 「二行」で検索
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