ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2751 ゆっくり餅
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ankoss
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『ゆっくり餅』 13KB
不運 調理 加工場 独自設定 独自設定いっぱいです。皆さん来年もよろしくお願いします。
不運 調理 加工場 独自設定 独自設定いっぱいです。皆さん来年もよろしくお願いします。
『今年のお正月にはゆっくり餅を!』
数年前に突如として現れた不思議饅頭生物ゆっくり。今では愛玩用、食用、工業用、実
に様々な分野でゆっくりは活躍している。そんなゆっくりを扱う企業でも最大手であるゆ
っくり加工所が発表した広告である。新聞、テレビ、ラジオ、インターネット、至る所で
大規模な広告活動を繰り広げた事もあり、ゆっくり餅の知名度は短期間で急上昇していっ
た。
に様々な分野でゆっくりは活躍している。そんなゆっくりを扱う企業でも最大手であるゆ
っくり加工所が発表した広告である。新聞、テレビ、ラジオ、インターネット、至る所で
大規模な広告活動を繰り広げた事もあり、ゆっくり餅の知名度は短期間で急上昇していっ
た。
「へぇ。ゆっくり餅って鏡餅のコーナーに置かれていたのか」
今日は十二月二十六日。クリスマスも終わって、街中がクリスマスモードからお正月モ
ードに切り替わる日でもある。このお兄さんはスーパーに鏡餅を買いにきたようだ。しか
し、鏡餅のコーナーに置かれていたゆっくり餅を見て、どちらを購入しようかと悩んでい
るようである。
ードに切り替わる日でもある。このお兄さんはスーパーに鏡餅を買いにきたようだ。しか
し、鏡餅のコーナーに置かれていたゆっくり餅を見て、どちらを購入しようかと悩んでい
るようである。
「普通の鏡餅にも飽きてきたしな……今年はゆっくり餅のほうを買ってみるか」
お兄さんはゆっくり餅を購入する事に決めたようである。
「うーん……買う事にした物の、こりゃ凄い種類だな。一体どれを買ったらいいんだ」
ゆっくり餅には沢山の種類があった。見た目の違いだけでも、れいむタイプ、まりさタ
イプ、ありすタイプ、ぱちゅりータイプ、ちぇんタイプがある。更に、透明な箱入りの防
音タイプ(素人用)、透明な箱無し(玄人用)などと分かれている。
イプ、ありすタイプ、ぱちゅりータイプ、ちぇんタイプがある。更に、透明な箱入りの防
音タイプ(素人用)、透明な箱無し(玄人用)などと分かれている。
「せっかくだし、玄人用の箱無しタイプを買ってみるか」
お兄さんは透明な箱無しタイプを購入する事にしたようだ。それにしてもこのお兄さん
は冒険家と言える。
は冒険家と言える。
「さて、ゆっくりの種類はどのタイプにしようか……れいむ、まりさは餡子入り、あり
すはカスタード入り、ぱちゅりーは生クリーム入り、ちぇんはチョコレート入りか……」
すはカスタード入り、ぱちゅりーは生クリーム入り、ちぇんはチョコレート入りか……」
悩んだ末にお兄さんはれいむタイプ、ちぇんタイプの二つを購入する事に決めたようで
ある。他に正月に必要な食料品等を買い物カゴに放りこむと、会計を済ませて雪の降る帰
り道を自宅へと急いだ。
ある。他に正月に必要な食料品等を買い物カゴに放りこむと、会計を済ませて雪の降る帰
り道を自宅へと急いだ。
家に帰ったお兄さんは、一通り家事を済ませた後、購入したゆっくり餅を開封してみる
事にした。
事にした。
「まずは箱を開けてっと……おお、真空パックされているのか」
出てきたゆっくり餅は真空パックされていた。大きさはソフトボールとバレーボー
ルの丁度中間程、亜成体といった所だろうか。これを開封するとゆっくりが目覚める
といった仕組みのようだ。お兄さんは、早速パックを破ってゆっくりを目覚めさせる
事にした。
ルの丁度中間程、亜成体といった所だろうか。これを開封するとゆっくりが目覚める
といった仕組みのようだ。お兄さんは、早速パックを破ってゆっくりを目覚めさせる
事にした。
「ゆぅ……ゆぅ……れいむにあまあまちょうだいね……」
「ゆぅ……わかるよー……ゆぅ……」
「ゆぅ……わかるよー……ゆぅ……」
真空パックを開封したことで、ゆっくり達が仮死状態から回復したようだ。ゆぅ……ゆ
ぅ……という小さい寝息と共に、憎たらしい寝言が聞こえてきた。
ぅ……という小さい寝息と共に、憎たらしい寝言が聞こえてきた。
「「ゆぅ…ゆぅ…ゆ……ゆゆ?」」
ゆっくり達がお目覚めのようだ。
(俺の知識が正しければ……次はお決まりのあれなんだろうな)
「「ゆっくりしていってね!!!!!」」
近所迷惑な程の音量でのゆっくりしていってね!!! の合唱である。幸いお兄さんの
家の周りは畑が多いために、近所迷惑になる事はないだろう。
家の周りは畑が多いために、近所迷惑になる事はないだろう。
「ゆ~?おにいさんゆっくりしていってね。ここはどこなの?」
「わかるよー。ちぇんたちはかいゆっくりになったんだねー」
れいむは自分がどうしてここに居るのかわかっておらず、ちぇんに至っては飼いゆっく
りになれたと勘違いしているようだ。
りになれたと勘違いしているようだ。
「お前達は俺が買ったんだ。短い間の付き合いだが、ゆっくりしていってね」
お兄さんはゆっくりに宣言すると、早速見栄えのする場所に飾るためにゆっくりを持ち
上げる。
上げる。
(柔らなくて、もちもちしてるな……普通のゆっくりとは違うみたいだぞ……?」
そう、このゆっくりは加工所の最新技術を利用して、生まれた時から小麦粉で出来た皮
ではなく、米粉で出来た皮を持っているのである。ゆっくり餅の名前はそこから来ている
のだ。
ではなく、米粉で出来た皮を持っているのである。ゆっくり餅の名前はそこから来ている
のだ。
「ゆゆ! おにいさん! みじかいあいだってどういうことなの!?」
「わからないよー! おにいさんはちぇんとずっとゆっくりしようよー?」
お兄さんはれいむとちぇんの叫びを聞き流すと、二匹を鏡餅の設置一として定番のテレ
ビ(お兄さんの家のテレビはもうすぐ地デジ移行のために映らなくなってしまう、旧式の
ブラウン管テレビである)の上に飾る。大掃除をするために別の部屋へと向かってしまっ
た。
ビ(お兄さんの家のテレビはもうすぐ地デジ移行のために映らなくなってしまう、旧式の
ブラウン管テレビである)の上に飾る。大掃除をするために別の部屋へと向かってしまっ
た。
「おにいさんまって! ゆゆ!? どぼぢであんよさんがうごかないのおおお!?」
「わからないよおおおおお!? ちぇんのちーたーのようなあんよさんがああ!?」
ゆっくり餅として出荷されるゆっくりは、予めあんよの部分を固められているのだ。そ
のため、れいむとちぇんは二度と自分の意思で移動する事はできないのである。
のため、れいむとちぇんは二度と自分の意思で移動する事はできないのである。
「ゆぅぅぅ……どぼぢで? でいぶはなにもわるいことしてないのにどぼぢでこんなこ
とにぃ……」
とにぃ……」
「れいむぅ……わからないよぉぉぉ!? にゃんでちぇんたちがこんなめにあうの?」
誰もいない部屋で、れいむとちぇんは泣きながら己の人生を呪っていた。二匹の人生は
「ゆっくり餅」として生まれてきた時点で詰みなのである。泣こうが喚こうがその時点で
どうしようも無いのである。一頻り泣いた後、泣きつかれたのか眠りにつくれいむとちぇ
ん。寝ている時だけが、彼女らの唯一のゆっくりタイムなのかもしれない。
「ゆっくり餅」として生まれてきた時点で詰みなのである。泣こうが喚こうがその時点で
どうしようも無いのである。一頻り泣いた後、泣きつかれたのか眠りにつくれいむとちぇ
ん。寝ている時だけが、彼女らの唯一のゆっくりタイムなのかもしれない。
日付が変わって十二月二十七日、真夜中にも関わらずれいむとちぇんは目覚めた。
「ゆゆ……ゆっくりおきたよ! ちぇんはまだおねんねしてるの?」
先に起きたれいむがちぇんに呼びかける。ちぇんも丁度目覚めるタイミングだったのだ
ろうか、れいむの呼びかけに反応して目覚めた。
ろうか、れいむの呼びかけに反応して目覚めた。
「にゃ……れいむ……ゆっくりおはよう!」
暗い部屋の中、お互いに声を掛けあって存在を確認し合うれいむとちぇん。ゆっくりは
孤独に弱く、個体によってはそれが原因で非ゆっくち症を起こして死んでしまうケースも
報告されている。お互いの存在を確認し合える事は、ゆっくりにとってはとても幸せな事
なのである。感情が高ぶってきた二匹は、大声でお決まりの台詞を叫んだ。
孤独に弱く、個体によってはそれが原因で非ゆっくち症を起こして死んでしまうケースも
報告されている。お互いの存在を確認し合える事は、ゆっくりにとってはとても幸せな事
なのである。感情が高ぶってきた二匹は、大声でお決まりの台詞を叫んだ。
「「ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!」」
「うるせえぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「ゆぴぃ!?」」
二匹の大声で寝ていたお兄さんが起きてしまった。お兄さんは部屋の電気をつけ、不機
嫌そうに二匹に近寄ると、二匹のおでこに強烈なデコピンをぶちかました。
嫌そうに二匹に近寄ると、二匹のおでこに強烈なデコピンをぶちかました。
「いだい゛い゛い゛い゛! でいぶのせかいいちきれいなおかおがあああ!?」
「わがらに゛ゃい゛よおおお!? ちぇんのびゅーてぃほーなおかおがああ!」
餅皮が衝撃を吸収するのであまり痛くないはずなのだが、必要以上に痛がる二匹。この
辺りは所詮ゆっくりという事だろうか。
辺りは所詮ゆっくりという事だろうか。
「どぼぢでごんなごどずるの……? れいむはゆっくりしたいだけなのに……」
「だめだよ、れいむ。そんなこといったら、またたたかれちゃうよ、わかってねー」
ちぇんのほうはれいむよりも物分りが良いようだ。
「いいか、次に五月蝿くしたら永遠にゆっくりさせてやるからな」
そう言ってお兄さんは再び眠りについた。布団の中で
(やっぱり防音効果のある透明な箱付きを買ったほうが良かったかな……)
と今更ながらに後悔していたのは言うまでもない。
その後、お兄さんが起床して仕事へ行くまでの間、二匹は一言も喋ることができなかっ
た。お兄さんが仕事へ向かった後、れいむがちぇんに十時間ぶりに話しかけた。
た。お兄さんが仕事へ向かった後、れいむがちぇんに十時間ぶりに話しかけた。
「ちぇん……れいむたちこれからどうなっちゃうのかな?」
「わからないよー。でも、ゆっくりできないことだけはわかるよー」
その会話の後、再び訪れる沈黙。二匹は自分の餡子(チョコレート)脳をフル回転して
今後の事を考えているに違いない。時計が正午を回った頃、れいむが口を開いた。
今後の事を考えているに違いない。時計が正午を回った頃、れいむが口を開いた。
「れいむは……れいむはちぇんがそばにいるだけでしあわせー! だよ。ゆっくりでき
ないことはたくさんあるかもしれないけど、ちぇんがいればゆっくりできるよ!」
ないことはたくさんあるかもしれないけど、ちぇんがいればゆっくりできるよ!」
「れいむ……ちぇんはいまうまれていちばんゆっくりできてるよー! れいむのおかげ
だよー! ゆっくりありがとう!」
だよー! ゆっくりありがとう!」
二匹の間には、番のそれと同じ程の絆が生まれていた。これから何があっても、二匹で
いればなんとかやっていける。そんな希望も生まれていた。だが、二匹はこれから始まる
地獄をまだ知らなかったのであった。
いればなんとかやっていける。そんな希望も生まれていた。だが、二匹はこれから始まる
地獄をまだ知らなかったのであった。
――数時間後――
「れいむ……? ちぇんはとってもおなかがすいたんだよー……」
「ゆう……れいむもおなかがすいたよ。でも、まわりにごはんさんもないし、れいむた
ちはうごけないからごはんさんをさがしにもいけないよ……」
ちはうごけないからごはんさんをさがしにもいけないよ……」
出荷時の栄養状態が良かった事もあって空腹を感じていなかった二匹であったが、仮死
状態から目覚めて丸一日経過した現在、空腹感に苛まれていた。
状態から目覚めて丸一日経過した現在、空腹感に苛まれていた。
「このままじゃえいえんにゆっくりできなくなっちゃうよ……おこられてもいいからお
にいさんにごはんさんをおねがいしようね……」
にいさんにごはんさんをおねがいしようね……」
「わかるよー。えいえんにゆっくりできなくなっちゃったらおしまいなんだねー」
更に数時間後、お兄さんが仕事から帰ってきた。お兄さんが風呂等を済ませ、ゆっくり
し始めたのを見計らって、二匹は要望を伝える事にした。
し始めたのを見計らって、二匹は要望を伝える事にした。
「おにいさん! れいむとちぇんはおなかがぺーこぺこなんだよ。なまごみさんでもな
んでもいいから、ごはんさんをむーしゃむしゃさせてください。おねがいします!」
んでもいいから、ごはんさんをむーしゃむしゃさせてください。おねがいします!」
「ちぇんからもおねがいなんだねー。おにいさんのたべのこしでもなんでもいいんだね
ー。どうかおねがいしますなんだねー」
ー。どうかおねがいしますなんだねー」
永遠にゆっくりさせられる覚悟で二匹はお兄さんに懇願した。黙っていても空腹で永遠
にゆっくりするだけである。どうせ死ぬなら……という二匹の一世一代の大勝負だった。
にゆっくりするだけである。どうせ死ぬなら……という二匹の一世一代の大勝負だった。
「何故食品のお前らのために飯をやらなきゃならんのだ? それに、お前らは栄養とら
なくても暫くは生きていられるように出来てるから大丈夫だ」
なくても暫くは生きていられるように出来てるから大丈夫だ」
「「ゆゆゆ??????」」
二匹は知らなかった。ゆっくり餅として生産されたゆっくりは、数週間は飲まず食わず
でも生きられるという事を。ここまで成長する課程で与えられた餌のエネルギーを体内に
溜め込めるという仕組みらしいが、詳しいことは加工所の企業秘密なのでわからない。し
かし、死なないと空腹感は別物である。永遠にゆっくりするまでの数週間、空腹感を満た
される事がないというのは、どれだけ苦しいことなのだろうか。永遠にゆっくりしたほう
がマシだと思えるぐらい苦しい事に違いない。
でも生きられるという事を。ここまで成長する課程で与えられた餌のエネルギーを体内に
溜め込めるという仕組みらしいが、詳しいことは加工所の企業秘密なのでわからない。し
かし、死なないと空腹感は別物である。永遠にゆっくりするまでの数週間、空腹感を満た
される事がないというのは、どれだけ苦しいことなのだろうか。永遠にゆっくりしたほう
がマシだと思えるぐらい苦しい事に違いない。
――年が変わり、元旦――
「ふう……うめっ……これめっちゃうめっ……」
お兄さんがおせち料理を食べている。それをテレビの上から虚ろな目で眺める二匹。あ
の日から二匹は何も口にしていない。餅で出来た皮は乾燥して硬くなり、それにつれて二
匹は喋るのですら辛い状態になっていた。それに加えてお兄さんが正月休みでずっと家に
いるので、喋りたくても喋れない。普通のゆっくりならばとっくに非ゆっくち症を起こし
ているような状態だ。
の日から二匹は何も口にしていない。餅で出来た皮は乾燥して硬くなり、それにつれて二
匹は喋るのですら辛い状態になっていた。それに加えてお兄さんが正月休みでずっと家に
いるので、喋りたくても喋れない。普通のゆっくりならばとっくに非ゆっくち症を起こし
ているような状態だ。
では、この二匹は何故非ゆっくち症を発症しないのか。これも加工所の技術である。加
工所は非ゆっくち症を防止する技術までも開発していたのである。満たされぬ空腹の状態
のまま、お兄さんの食べる年越しそば、おせち料理、その他おつまみの数々。美味しい食
べ物を目の前でお兄さんだけが食べている。まさに生地獄と呼ぶに相応しい状態である。
この生地獄はお兄さんが仕事に出掛けるようになる一月四日まで続いた。
工所は非ゆっくち症を防止する技術までも開発していたのである。満たされぬ空腹の状態
のまま、お兄さんの食べる年越しそば、おせち料理、その他おつまみの数々。美味しい食
べ物を目の前でお兄さんだけが食べている。まさに生地獄と呼ぶに相応しい状態である。
この生地獄はお兄さんが仕事に出掛けるようになる一月四日まで続いた。
「……ゆ……おにいさんがおしごとにいったよ……ちぇん……ゆっくり大丈夫……?」
「れ……れいむ……ちぇ……んは……だいじょうぶだよー……わかってねー……それよ
り……れいむは……だいじょうぶ……?」
り……れいむは……だいじょうぶ……?」
空腹感と硬くなった皮でやっとの思いでお喋りをする二匹。この一言が限界だったのだ
ろう。再び二匹は黙りこんでしまった。しかし、お互い側にいるだけで通じ合える、二匹
はそんな気持ちを抱きながら過ごしていた。
ろう。再び二匹は黙りこんでしまった。しかし、お互い側にいるだけで通じ合える、二匹
はそんな気持ちを抱きながら過ごしていた。
―― 一月十一日 ――
「さて、どっちにしようかな? やっぱりスタンダードにれいむからいくか……?」
お兄さんが実に一週間半ぶりに二匹を覗き込んでいる。何やら二匹を見ながら考え事を
しているようである。
しているようである。
「やっぱり出来上がりが想像できるれいむだな。うーん、実に美味しそうだ」
そんな事を呟きながら台所へ入っていったお兄さん。そう、一月十一日は鏡開きの日で
ある。れいむとちぇんはこの日のために生きていたと言っても良い。勿論、とうの本ゆん
達は知るよしも無いが。しかし、れいむは本能的に食べられるという事を感じ取ったので
あろう。ガチガチに硬くなった口を必死に動かし、ちぇんに最後の言葉を伝えた。
ある。れいむとちぇんはこの日のために生きていたと言っても良い。勿論、とうの本ゆん
達は知るよしも無いが。しかし、れいむは本能的に食べられるという事を感じ取ったので
あろう。ガチガチに硬くなった口を必死に動かし、ちぇんに最後の言葉を伝えた。
「ちぇん、れいむはさきにえいえんにゆっくりするよ……でも、ちぇんはこのあとぜっ
たいにゆっくりできるようになるはずだよ。れいむのぶんまでもっともっとゆっくりして
ほしいよ……」
たいにゆっくりできるようになるはずだよ。れいむのぶんまでもっともっとゆっくりして
ほしいよ……」
「れいむぅ……わからない……わからないよーーー……」
数分後、お兄さんがやってきてれいむを台所へと運んでいった。ちぇんは干からびてガ
チガチになっている目から、出るはずの無い涙を流して見送った。
チガチになっている目から、出るはずの無い涙を流して見送った。
(れいむはえいえんにゆっくりしちゃうんだね……ちぇん……れいむのぶんまでぜった
いにゆっくりしてね……)
いにゆっくりしてね……)
れいむは空腹による極限状態からか、永遠にゆっくりする直前のゆっくりらしくない程
の落ち着きぶりを見せている。お兄さんがれいむを水の張った鍋に放りこんでも動じる様
子すら見せない。
の落ち着きぶりを見せている。お兄さんがれいむを水の張った鍋に放りこんでも動じる様
子すら見せない。
(ゆ……?なんだか体が動くようになってきたよ……?)
鍋に張った水が、コンロで熱せられてお湯へと変わっていく。その過程でれいむの硬く
なった皮も柔らかくなり、固められていたあんよもその機能を回復させた。今まで満足に
動くことの出来ず、生きる希望も自ずと弱くなっていたれいむであったが、身体機能の回
復により”生きたいという願望”が急激に強くなっていった。
なった皮も柔らかくなり、固められていたあんよもその機能を回復させた。今まで満足に
動くことの出来ず、生きる希望も自ずと弱くなっていたれいむであったが、身体機能の回
復により”生きたいという願望”が急激に強くなっていった。
「れいむは……れいむは……まだ生きたいよ……ゆ……ゆゆ……?ど、どぼぢでからだ
さんがとけていくのおおおお!?」
さんがとけていくのおおおお!?」
鍋の水は急激に温められ、温度がどんどん上昇していく。それにつれて、れいむが溶け
ていく速度もどんどん上がっていった。
ていく速度もどんどん上がっていった。
「い゛やだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。まだじにだぐな゛い゛い゛い゛い゛。ぢぇえ゛え゛
え゛え゛ん! でいぶをだずげでえ゛ぇぇぇぇ!」
え゛え゛ん! でいぶをだずげでえ゛ぇぇぇぇ!」
この世への未練を叫びながら、れいむが溶けていく。数十秒もするとその叫び声も聞こ
えなくなり、数分後には美味しそうなお汁粉が完成していた。
えなくなり、数分後には美味しそうなお汁粉が完成していた。
「れいむ……れいむぅ……」
れいむの断末魔は居間にいるちぇんにも聞こえていた。しかしちぇんのあんよは動かな
いので助けに行く事もできない。それに、れいむの次は自分も同じ運命を辿るであろうこ
とは、ちぇんのチョコレート脳でもわかっていた。
いので助けに行く事もできない。それに、れいむの次は自分も同じ運命を辿るであろうこ
とは、ちぇんのチョコレート脳でもわかっていた。
「はーふ、はーふ、しあわせー。でも餅が大きすぎるな。やはり刻んでから煮ればよか
ったかな」
ったかな」
ちぇんの目の前でお兄さんがれいむだった物を物凄い勢いで食べていく。大食いチャン
ピオンも真っ青な速度である。数分後には、れいむだった物は跡形もなくこの世から消え
去った。
ピオンも真っ青な速度である。数分後には、れいむだった物は跡形もなくこの世から消え
去った。
「さて、次は食後のデザートにチョコレートぜんざいいってみるか」
ちぇんにお兄さんの手が伸びる。ちぇんは迫り来るお兄さんの手を見つめながら、こう
思っていた。
思っていた。
(もうちぇんはえいえんにゆっくりするんだねー。ちぇんがゆっくりできないなら、せ
めておにいさんをゆっくりさせてあげるのがゆっくりなんだねー)
めておにいさんをゆっくりさせてあげるのがゆっくりなんだねー)
このちぇんは、飼いゆっくりに生まれてきたならばプラチナバッジを間違い無く取れる
のではないかと言う程のゆっくりのようだ。ゆっくり餅として生まれて来たのは非常にも
ったいないと言える。
のではないかと言う程のゆっくりのようだ。ゆっくり餅として生まれて来たのは非常にも
ったいないと言える。
しかし、そんな事はお兄さんには分かるはずもなく、程無くしてちぇんはチョコレート
ぜんざいへと生まれ変わったのである。お兄さんにゆっくりして貰いたい、そんな想いを
残して……
ぜんざいへと生まれ変わったのである。お兄さんにゆっくりして貰いたい、そんな想いを
残して……
「まずっ! やっぱりチョコレートぜんざいなんて前衛的だったな。お金損したわ」
END
あとがき
『胴付きになりたかったまりさ』の挿絵、どうもありがとうございました。作品を書
く間が空いてしまって、気付く&お礼が遅れてしまって、申し訳ありません。今年の投
稿はこれが最後になると思います。それでは皆さん、良いお年を。
く間が空いてしまって、気付く&お礼が遅れてしまって、申し訳ありません。今年の投
稿はこれが最後になると思います。それでは皆さん、良いお年を。
いままで書いた作品
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anko2561 すぃーはゆっくりできない
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anko2561 すぃーはゆっくりできない
anko2737 イヴの夜に
挿絵:車田あき