ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4596 強くてにゅーゲーム
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愛で 変態 日常模様 戦闘 野良ゆ ドスまりさ 創作亜種 独自設定 いつもながらジャンル付けに困る
愛で 変態 日常模様 戦闘 野良ゆ ドスまりさ 創作亜種 独自設定 いつもながらジャンル付けに困る
チート人間+HENTAI+亜種盛り合わせ+オリジナルチート亜種+バトル+愛で
しばらく書かなかったネタをごった煮へぶちこむ
愛でと言いつつホイホイゆっくりが死ぬので注意
しばらく書かなかったネタをごった煮へぶちこむ
愛でと言いつつホイホイゆっくりが死ぬので注意
強くてにゅーゲーム
「まりさはぜんせかいさいっきょうのちからをてにいれた、さいっきょうのまりさだよ! てはじめにじじいからしんでいってね!」
言葉遣いからはどこにでもいる程度の知力のまりさが、茂みから飛び出してきた。
ここいらの川沿いは駆除対象になっていないため、土手より下の茂みにはゆっくりが大量に住んでいる。春から秋にかけて大量に増えるゆっくりが雑草を刈りこんでくれるし、梅雨や秋雨で増水した川が適当に間引きしてくれるので増えすぎるということもない。
とはいえ、好奇心旺盛なゆっくりのこと。このように人間へ喧嘩を売ってくる個体もいる。しかし特に保護されているわけでもないので、これまた適当に潰されたりして茂みのゆっくりの教育になっていたりもする。
「まりさはつよくてにゅーげーむできるただひとつのまりさなんだよ! にしゅうめのまりさはすてーたすがたかいんだよ! おそろしくてなみだもでないでしょ!」
「うるっさいわッ」
「ゆげえっ!」
俺がうっかり立ち止まったのをいいことに、そのまりさが足元で好き放題喋っていた。その内容はともかく五月蝿さ極まるので地平線の彼方まで飛んでいってもらった。あんまり強く蹴りすぎると、蹴った瞬間に弾けてしまうので、ゆるやかに加速を付けてやるのが靴を汚さない秘訣だ。
「おそらをとんでるみたああああああい……ゆげらっ」
なぜか妙に重かったので飛距離が出なかった。あの声の様子では原型が残っているだろう。まあカラスか他のゆっくりが片付けるので問題は無い。
そのまま土手を歩くのも良かったが、ケチが付いたので今日は土手を降りて帰ることにした。
言葉遣いからはどこにでもいる程度の知力のまりさが、茂みから飛び出してきた。
ここいらの川沿いは駆除対象になっていないため、土手より下の茂みにはゆっくりが大量に住んでいる。春から秋にかけて大量に増えるゆっくりが雑草を刈りこんでくれるし、梅雨や秋雨で増水した川が適当に間引きしてくれるので増えすぎるということもない。
とはいえ、好奇心旺盛なゆっくりのこと。このように人間へ喧嘩を売ってくる個体もいる。しかし特に保護されているわけでもないので、これまた適当に潰されたりして茂みのゆっくりの教育になっていたりもする。
「まりさはつよくてにゅーげーむできるただひとつのまりさなんだよ! にしゅうめのまりさはすてーたすがたかいんだよ! おそろしくてなみだもでないでしょ!」
「うるっさいわッ」
「ゆげえっ!」
俺がうっかり立ち止まったのをいいことに、そのまりさが足元で好き放題喋っていた。その内容はともかく五月蝿さ極まるので地平線の彼方まで飛んでいってもらった。あんまり強く蹴りすぎると、蹴った瞬間に弾けてしまうので、ゆるやかに加速を付けてやるのが靴を汚さない秘訣だ。
「おそらをとんでるみたああああああい……ゆげらっ」
なぜか妙に重かったので飛距離が出なかった。あの声の様子では原型が残っているだろう。まあカラスか他のゆっくりが片付けるので問題は無い。
そのまま土手を歩くのも良かったが、ケチが付いたので今日は土手を降りて帰ることにした。
数日後、普段のように土手を歩いていると遠くの方からまりさが跳ねてきた。
ここいらの土手は近所の子供や鬼威惨がたがゆっくりを狩りに来るので、よほど世間知らずな温室育ちか、自意識過剰な馬鹿以外は茂みから出てくることはない。
「このまえはよくもやってくれたね! せーぶぽいんとがとおかったんだよ!」
今回はそのいずれでもなかったようだ。
「こんかいはじじいのひきょうなこうげきにたえるくんれんをしたんだよ! もうまえみたいにはいかないよ! おそれをなしたらかってにしんでいってね!」
前にお空を飛ばせてあげたまりさは確かに致死ダメージを与えたはずだったが、あの時は土手を降りてしまったので確認していなかった。翌日の帰りに染みしか残っていなかったので、大自然にお片づけされたと思っていたのだが、それは甘かったらしい。
「ゆっふっふ! どうやらかんねんしたようだね! ゆっくりころしてあげるからおとなしくしてるんだね!」
「ううううううーるせえッ!」
声を出すより先に勝手に蹴りの予備動作をした俺の足を、声を出すと同時に蹴りあげる。もはや靴は汚れても構わないという、近年稀に見る絶好の蹴りだった。
しかしその蹴りはまりさを全く浮かせることは無かった。それどころか微動だにしてすらいない。
「あすとろん! だよ! これであしのぶいはかいはせいこうだね! ぷっぷー!」
これで何度、人間の利き足を部位破壊してきたかは定かではないが、残念ながら俺の靴は特別製である。鉄板仕込みの土建屋御用達の、要するに作業用安全靴だ。市販品であって特別製ではないが、まあ、普通の人は履いてないので良しとしよう。
そのまりさは鉄の塊になっているせいで表情は分からないが、心のなかではきっとより強化されたふてぶてしい顔をしているに違いない。しかしそんなことはどうでもよく、俺はとりあえずまりさがアストロンを解かないうちに土手から転げ落とすことにした。無論、川のほうだ。
「なんだかむだなどりょくをしているね! なにをしてもまりさにこうげきはつうじな……ゆっ? なんだかこーろこーろしているよ! きもちわるいよ! じじい、なんとかしてゆぼらっ」
抵抗の強い土手の坂を、しかしその有り余る重量でアストロンまりさは転がっていった。途中他のゆっくりの轢かれる音がしなかったのは、巻き添えを恐れて遠ざかっていたためだろう。そんなわけで同族を足蹴にしてブレーキを掛けることもなく、盛大なしぶきをあげてまりさは水底へと沈んでいった。
「ま、今度は水耐性でも上げてくるんだな」
聞こえていないだろうまりさに向けたその言葉は近所の子供に聞かれ、しばらくネタにされるのだった。
ここいらの土手は近所の子供や鬼威惨がたがゆっくりを狩りに来るので、よほど世間知らずな温室育ちか、自意識過剰な馬鹿以外は茂みから出てくることはない。
「このまえはよくもやってくれたね! せーぶぽいんとがとおかったんだよ!」
今回はそのいずれでもなかったようだ。
「こんかいはじじいのひきょうなこうげきにたえるくんれんをしたんだよ! もうまえみたいにはいかないよ! おそれをなしたらかってにしんでいってね!」
前にお空を飛ばせてあげたまりさは確かに致死ダメージを与えたはずだったが、あの時は土手を降りてしまったので確認していなかった。翌日の帰りに染みしか残っていなかったので、大自然にお片づけされたと思っていたのだが、それは甘かったらしい。
「ゆっふっふ! どうやらかんねんしたようだね! ゆっくりころしてあげるからおとなしくしてるんだね!」
「ううううううーるせえッ!」
声を出すより先に勝手に蹴りの予備動作をした俺の足を、声を出すと同時に蹴りあげる。もはや靴は汚れても構わないという、近年稀に見る絶好の蹴りだった。
しかしその蹴りはまりさを全く浮かせることは無かった。それどころか微動だにしてすらいない。
「あすとろん! だよ! これであしのぶいはかいはせいこうだね! ぷっぷー!」
これで何度、人間の利き足を部位破壊してきたかは定かではないが、残念ながら俺の靴は特別製である。鉄板仕込みの土建屋御用達の、要するに作業用安全靴だ。市販品であって特別製ではないが、まあ、普通の人は履いてないので良しとしよう。
そのまりさは鉄の塊になっているせいで表情は分からないが、心のなかではきっとより強化されたふてぶてしい顔をしているに違いない。しかしそんなことはどうでもよく、俺はとりあえずまりさがアストロンを解かないうちに土手から転げ落とすことにした。無論、川のほうだ。
「なんだかむだなどりょくをしているね! なにをしてもまりさにこうげきはつうじな……ゆっ? なんだかこーろこーろしているよ! きもちわるいよ! じじい、なんとかしてゆぼらっ」
抵抗の強い土手の坂を、しかしその有り余る重量でアストロンまりさは転がっていった。途中他のゆっくりの轢かれる音がしなかったのは、巻き添えを恐れて遠ざかっていたためだろう。そんなわけで同族を足蹴にしてブレーキを掛けることもなく、盛大なしぶきをあげてまりさは水底へと沈んでいった。
「ま、今度は水耐性でも上げてくるんだな」
聞こえていないだろうまりさに向けたその言葉は近所の子供に聞かれ、しばらくネタにされるのだった。
半月後、土手から川の水面を見ていると、一頭のまりさが水から上がってきた。体を振って水を飛ばしたまりさは、帽子からざりがにを取り出して食べ始める。人工的に作られたらしい水中ゆっくりは、カイコと同じで自活能力が無いと聞くが、自然発生種なのだろうか。
狩ってきたざりがにやら水草やらを食べ終えたまりさがこちらに気がつく。するとそのまりさは他のゆっくりのように逃げることもなく、こちらへ向かってきた。
「まさかつむとはおもわなかったよ! いくらせーぶぽいんとがあってもみずはこわいんだよ!」
最初からあのまりさが水中まりさだった可能性もある。しかしアストロン水中まりさなんているのだろうか。……まあ、加工所から逃げてきたということにしよう。あそこならなんでもありだ。
「あすとろん! これでじじいにはうつてなしだね! さあかんねんしてね!」
俺は特に戸惑うこともなく川岸へ降りると、いつからか放り出されているシャベルで土手に穴を掘り始めた。そしてアストロンまりさの戯言を無視して掘り続けること小一時間。そこには深さ二メートル弱にもなった大穴があった。
粘土みたいで掘りにくいかと思ったら、案外土が多くて掘り易かった。よくよく考えてみればここいらの数しれないゆっくりがその体をここにうずめるのだから、土手自体が富栄養化していてもおかしいことではないのかもしれない。
「どうやらじぶんのはかをほりおえたようだね! でもめんどくさいからうめるのもじぶんでやってね!」
勝ち誇ったような口調のまりさがこちらへ嘲りの声をかける。
俺は前回と同じように鉄塊となったまりさを転がす。無論、今しがた掘り終えた穴へだ。
「どうやらくそじじいはがくしゅうのうりょくもないようだね! まりさのみずたいせいは二……二ひゃ、ゆーと、た、たっくさんなんだよ! かんねんしてゆわわっ」
「うるせって言ってんだろうがッ」
念入りに掘った墓穴へまりさを蹴り落とした俺は、穴の脇へ盛られた土の山を豪快に崩してやる。ひとすくいひとすくい丁寧に掘り出していった土を何も考えず元の穴へ流し込むカタルシス。ましてやそれが口うるさいゴミ饅頭を片付けるためなら最高だ。
「やめてね。やめてねっ。そんなことしたらまたつんじゃうでしょおおおおおおおおっ? やめてねっ? やめ……」
五十センチも埋めた時点で何も聞こえなくなった。しかし念には念を入れて饅頭性廃棄物を地の底へ封印する。こうまですればどんな特殊なゆっくりでも抜けだせはしないだろう。
最後にスコップの腹でぺんぺんと叩いて、墓標のようにスコップを刺せば完成だ。
「所詮その小さいボディじゃどうにもならんのさ」
小粒でもぴりりと辛いなんとやらになれとは言わない。そんなのはあの日から俺を散々ネタにしている、例の悪童どもだけで十分だろう。
狩ってきたざりがにやら水草やらを食べ終えたまりさがこちらに気がつく。するとそのまりさは他のゆっくりのように逃げることもなく、こちらへ向かってきた。
「まさかつむとはおもわなかったよ! いくらせーぶぽいんとがあってもみずはこわいんだよ!」
最初からあのまりさが水中まりさだった可能性もある。しかしアストロン水中まりさなんているのだろうか。……まあ、加工所から逃げてきたということにしよう。あそこならなんでもありだ。
「あすとろん! これでじじいにはうつてなしだね! さあかんねんしてね!」
俺は特に戸惑うこともなく川岸へ降りると、いつからか放り出されているシャベルで土手に穴を掘り始めた。そしてアストロンまりさの戯言を無視して掘り続けること小一時間。そこには深さ二メートル弱にもなった大穴があった。
粘土みたいで掘りにくいかと思ったら、案外土が多くて掘り易かった。よくよく考えてみればここいらの数しれないゆっくりがその体をここにうずめるのだから、土手自体が富栄養化していてもおかしいことではないのかもしれない。
「どうやらじぶんのはかをほりおえたようだね! でもめんどくさいからうめるのもじぶんでやってね!」
勝ち誇ったような口調のまりさがこちらへ嘲りの声をかける。
俺は前回と同じように鉄塊となったまりさを転がす。無論、今しがた掘り終えた穴へだ。
「どうやらくそじじいはがくしゅうのうりょくもないようだね! まりさのみずたいせいは二……二ひゃ、ゆーと、た、たっくさんなんだよ! かんねんしてゆわわっ」
「うるせって言ってんだろうがッ」
念入りに掘った墓穴へまりさを蹴り落とした俺は、穴の脇へ盛られた土の山を豪快に崩してやる。ひとすくいひとすくい丁寧に掘り出していった土を何も考えず元の穴へ流し込むカタルシス。ましてやそれが口うるさいゴミ饅頭を片付けるためなら最高だ。
「やめてね。やめてねっ。そんなことしたらまたつんじゃうでしょおおおおおおおおっ? やめてねっ? やめ……」
五十センチも埋めた時点で何も聞こえなくなった。しかし念には念を入れて饅頭性廃棄物を地の底へ封印する。こうまですればどんな特殊なゆっくりでも抜けだせはしないだろう。
最後にスコップの腹でぺんぺんと叩いて、墓標のようにスコップを刺せば完成だ。
「所詮その小さいボディじゃどうにもならんのさ」
小粒でもぴりりと辛いなんとやらになれとは言わない。そんなのはあの日から俺を散々ネタにしている、例の悪童どもだけで十分だろう。
「うーん、フラグだったかあ」
三ヶ月後、いつもの様に土手を歩いていた俺の眼前に立ちはだかったのは、身の丈三メートルほどのドスまりさだった。その周囲には突如として現れた救世主に目を輝かせている土手のゆっくりたちの姿がある。
「どすがきたからにはもうにんげんはおしまいだよ!」
「とっととまちをあけわたして、そしたらとっととしんでね!」
「しぬまえにあまあまをさしだしてもいいのよ! ぜったいにゆるさないけどね!」
強大な力を持つ同胞が現れた時の反応は人間もゆっくりも大して変わらない。言動が言動だけにガキっぽく感じてしまうのがゆっくりの哀れな所ではあろうが。
「まあ、ほら。近所迷惑だからね」
道幅の関係でドスの目の前にだけ集っている普通のゆっくりを、優しく蹴り飛ばして故郷の土手へ強制送還してやる。たぶんドスの後ろにもたむろっているのだろうが、それは後回しでもいいだろう。
まるで無造作に同胞を蹴り飛ばす俺に対して、ドスまりさはおよそ二分間、ドスの前にいたゆっくりが全て捌けてしまうまで呆然としていた。そしておもむろに我に返ったドスは大声で感想を述べる。
「どうしてどすがいるのにこうげきしちゃうのおおおおおっ? ぶりょくによるよくしりょくってなんだったっていうのおおおおおおっ?」
「知らんがな」
悠長に構えているドスへ例のスコップの一撃を叩き込む。人間に毒づく駄饅頭をそのままにしておくドスなど、どうせ友好的なゆっくりではないだろう。となれば身動きする前に攻撃するのが兵法の一というものである。しかしやはりというか、その一撃は功を奏しなかった。
「ゆっふっふ、あすとろん! だよ! じじいもしょせんはくそにんげんだね! がくしゅうのうりょくってものがないよ!」
どうやら何ヶ月か前に出会ったアストロン水中まりさと同一個体らしい。知力も大分上がったようで、多少は手強さというものが出てきた。……ド親切な誰かが掘り起こしてでもやったのだろうか?
それにしても大丈夫だろうか。いや、舗装路のことである。この大きさの鉄塊と言ったら何トンか分からないが、そのままにしていては土手が崩壊する危険性も孕んでいるはずだ。俺の仕事ではないだろうが、この町の財政に関わることなので早めに解決するのが自分の為でもあるだろう。主に住民税的な意味で。
「でも、ま、所詮は防御用なんだよな」
俺はドヤ顔で鉄塊になっているドスから少し離れると『一級河川、餡殺川』と書かれている金属製の看板に寄りかかって一息つき始めた。『あんさつがわ』ではない。『あんころがわ』である。川周辺の動植物とゆっくり、そして定期的な川の増水が一種の自然サイクルとなっていることから、いつの頃からか餡ころ餅になぞらえて改名されてしまった川である。正直物騒過ぎる名前だが、相手がゆっくりならどうでもいい気もする。
「ゆっ? もうあきらめちゃったの? それじゃ、こっちからこうげきするよ! まりささいっきょうでごめんね!」
そう宣言してアストロンを解いたドスまりさだったが、ゆっと唸ったまま身動きしなくなった。当然だろう。川の土手に設けられている道など車も通り過ぎられないものが多い。この道は片道通行のかなり狭い道であり、高さ三メートル、横幅も三メートルあるようなドスまりさであれば、底面の両側は土手へはみ出して満足に跳ねることも出来ないはずだからだ。
「ゆっ、ゆ? ゆうー……、たいあたりできないなら、ふみつぶせばいいんだね! まりさてんっさいでごめんね!」
さながら鉄骨綱渡りのごとくずりずりと俺までの距離を二メートルくらいに縮めていたドスまりさは、突然叫んで身体を低く沈めた。普通に跳ねるだけならそれほど隙も多くはないが、一般的な成人男性の高さ以上に跳ねるためには軽く二メートルは高さを確保しなくてはならない。それから大層な時間を掛けて山高帽を乗っけた鏡餅のようになったドスは、俺の方向を見定めるように睨むと気勢を上げて跳ね上がった。
「ゆっくりしねえええええええええええ……ゆぎょっ!?」
マンガやアニメじゃないので、流石に跳ねるのを見てから避ける準備をするのは至難だ。三秒もしないうちに大怪我を負ってしまうだろう。しかし避けるタイミングが分かっていれば、靴紐がほどけてでもいない限り問題はない。よって残念ながらドスは土手の脇へ退避していた俺にダメージを与えることはできなかった。
またもう一度避ける必要もないだろう。件のドスまりさは一声うめき声を上げて以来身動き一つしない。それは俺の予測が正しければ、既に死んでいるからだ。
ドスの着地点には俺の他に看板が立っていた。看板は鉄かそれに近い合金であり、すくなくとも俺の首の骨よりは頑丈だ。それに横からではなく上から突っ込めば如何に厚い面の皮でもぶち破るという寸法である。すなわちドスまりさは全体重を掛けて看板を踏み抜いたのだ。それも運悪く中枢餡を貫く形で。
「重けりゃいいってもんじゃねえんだよ」
俺は役所に連絡して始末を頼みつつ、もはや還らない指導者の死を悼む近所のゆっくりたちの間を縫って土手を歩いて行くのだった。
三ヶ月後、いつもの様に土手を歩いていた俺の眼前に立ちはだかったのは、身の丈三メートルほどのドスまりさだった。その周囲には突如として現れた救世主に目を輝かせている土手のゆっくりたちの姿がある。
「どすがきたからにはもうにんげんはおしまいだよ!」
「とっととまちをあけわたして、そしたらとっととしんでね!」
「しぬまえにあまあまをさしだしてもいいのよ! ぜったいにゆるさないけどね!」
強大な力を持つ同胞が現れた時の反応は人間もゆっくりも大して変わらない。言動が言動だけにガキっぽく感じてしまうのがゆっくりの哀れな所ではあろうが。
「まあ、ほら。近所迷惑だからね」
道幅の関係でドスの目の前にだけ集っている普通のゆっくりを、優しく蹴り飛ばして故郷の土手へ強制送還してやる。たぶんドスの後ろにもたむろっているのだろうが、それは後回しでもいいだろう。
まるで無造作に同胞を蹴り飛ばす俺に対して、ドスまりさはおよそ二分間、ドスの前にいたゆっくりが全て捌けてしまうまで呆然としていた。そしておもむろに我に返ったドスは大声で感想を述べる。
「どうしてどすがいるのにこうげきしちゃうのおおおおおっ? ぶりょくによるよくしりょくってなんだったっていうのおおおおおおっ?」
「知らんがな」
悠長に構えているドスへ例のスコップの一撃を叩き込む。人間に毒づく駄饅頭をそのままにしておくドスなど、どうせ友好的なゆっくりではないだろう。となれば身動きする前に攻撃するのが兵法の一というものである。しかしやはりというか、その一撃は功を奏しなかった。
「ゆっふっふ、あすとろん! だよ! じじいもしょせんはくそにんげんだね! がくしゅうのうりょくってものがないよ!」
どうやら何ヶ月か前に出会ったアストロン水中まりさと同一個体らしい。知力も大分上がったようで、多少は手強さというものが出てきた。……ド親切な誰かが掘り起こしてでもやったのだろうか?
それにしても大丈夫だろうか。いや、舗装路のことである。この大きさの鉄塊と言ったら何トンか分からないが、そのままにしていては土手が崩壊する危険性も孕んでいるはずだ。俺の仕事ではないだろうが、この町の財政に関わることなので早めに解決するのが自分の為でもあるだろう。主に住民税的な意味で。
「でも、ま、所詮は防御用なんだよな」
俺はドヤ顔で鉄塊になっているドスから少し離れると『一級河川、餡殺川』と書かれている金属製の看板に寄りかかって一息つき始めた。『あんさつがわ』ではない。『あんころがわ』である。川周辺の動植物とゆっくり、そして定期的な川の増水が一種の自然サイクルとなっていることから、いつの頃からか餡ころ餅になぞらえて改名されてしまった川である。正直物騒過ぎる名前だが、相手がゆっくりならどうでもいい気もする。
「ゆっ? もうあきらめちゃったの? それじゃ、こっちからこうげきするよ! まりささいっきょうでごめんね!」
そう宣言してアストロンを解いたドスまりさだったが、ゆっと唸ったまま身動きしなくなった。当然だろう。川の土手に設けられている道など車も通り過ぎられないものが多い。この道は片道通行のかなり狭い道であり、高さ三メートル、横幅も三メートルあるようなドスまりさであれば、底面の両側は土手へはみ出して満足に跳ねることも出来ないはずだからだ。
「ゆっ、ゆ? ゆうー……、たいあたりできないなら、ふみつぶせばいいんだね! まりさてんっさいでごめんね!」
さながら鉄骨綱渡りのごとくずりずりと俺までの距離を二メートルくらいに縮めていたドスまりさは、突然叫んで身体を低く沈めた。普通に跳ねるだけならそれほど隙も多くはないが、一般的な成人男性の高さ以上に跳ねるためには軽く二メートルは高さを確保しなくてはならない。それから大層な時間を掛けて山高帽を乗っけた鏡餅のようになったドスは、俺の方向を見定めるように睨むと気勢を上げて跳ね上がった。
「ゆっくりしねえええええええええええ……ゆぎょっ!?」
マンガやアニメじゃないので、流石に跳ねるのを見てから避ける準備をするのは至難だ。三秒もしないうちに大怪我を負ってしまうだろう。しかし避けるタイミングが分かっていれば、靴紐がほどけてでもいない限り問題はない。よって残念ながらドスは土手の脇へ退避していた俺にダメージを与えることはできなかった。
またもう一度避ける必要もないだろう。件のドスまりさは一声うめき声を上げて以来身動き一つしない。それは俺の予測が正しければ、既に死んでいるからだ。
ドスの着地点には俺の他に看板が立っていた。看板は鉄かそれに近い合金であり、すくなくとも俺の首の骨よりは頑丈だ。それに横からではなく上から突っ込めば如何に厚い面の皮でもぶち破るという寸法である。すなわちドスまりさは全体重を掛けて看板を踏み抜いたのだ。それも運悪く中枢餡を貫く形で。
「重けりゃいいってもんじゃねえんだよ」
俺は役所に連絡して始末を頼みつつ、もはや還らない指導者の死を悼む近所のゆっくりたちの間を縫って土手を歩いて行くのだった。
半年後、土手を歩いていた俺はなんだか嫌な予感がして、おもむろに土手を下った。直後、それまで俺が歩いていた土手を熱線が通り抜けていく。
「ふいうちをさけるとは、さすがにまりさがみこんだにんげんなのぜ」
いつ見込まれたのかは分からないが、その振り向いた先にいたのはゆっくりであった。とはいっても普通のゆっくりの大きさではなく、かといってドススパークを操る割に小さい。俗に言うプチドス、中途半端な大きさのドスである。狭い道に対応した都市型ドスまりさとか言われているそうだが、目立つ以上、あっさり駆除されてしまう不憫なやつでもある。
なぜこの攻撃を避けられたかといえば、いつもは川べりから聞こえてくるゆっくりたちの『むーしゃむーしゃ』という声が、なぜか真後ろから聞こえてきたからである。競争が激しい食料をわざわざ危険な舗装路で食べるわけもない。それにドススパークを撃つためにはスパークキノコと呼ばれるキノコを咀嚼する必要があり、熟練したドスでもない限りその声を隠すことは出来ないのだ。
「かれいなふっとわーく、しんぴのどすすぱーく、てっぺきのあすとろん、みわくのみずたいせい255。よっつもそろえばらすぼすのにんげんでもさすがにたおせるのぜ?」
いつの間にかラスボス扱いである。というかあのドスまりさは死んでいなかったのだろうか? いや、翌日死んだ目をした役所の人間が清掃活動をしているのを見ているので、間違い無く死んでいるだろう。……あの時の取り巻きの誰かかな。
「まりさのたいあたりをくらってしぬのぜ!」
とりあえずシャベルを取りに土手へ戻った俺を、まりさはゆっくりにしては高い打点の体当たりで出迎える。身長一メートル弱の餡塊はどう見積もっても百キロは行っているだろう。一般的な成人男性程度の体重しか無い俺では、流石に無傷とはいかないはずだ。しかし体当たりを受けた上でその力を受け流すくらいであれば不可能ではない。
ゆっくりへ対抗するには十分過ぎる策ではあったが、その考えは少し甘かった。
「あすとろん!」
なんとプチドスは体当たりの途中でアストロンを使ったのだ。もちろんそれまでに持っていた運動エネルギーでは俺の胴体へぶつかる軌道は確保できず、失速する。だがその先には弁慶の泣き所とされるスネがあった。
慌てて避けた俺は危うい所で骨折の危機を脱する。
「あすとろんかいじょ! かーらーのー、どすすぱーく!」
プチドス特有の控えめな威力と控えめな準備時間を持つドススパークが足元で発動する。標的はアストロン体当たりを避けた足ではなく、もう一方の軸になっている足だ。避けた瞬間に狙えば身動きできないもう片方の足は絶好の弱点といえる。
「甘いわッ」
俺は『かーらーのー』の掛け声を見逃さず、無助走で前に飛び込んだ。片足で踏み切るため大した距離は稼げないが、それでも着地直後のまりさとなら同格だ。
俺が土手の舗装路を転がるのと、まりさのドススパークが看板を貫くのはほぼ同時だった。鉄板である看板を軽く貫ける威力であれば、人間くらい軽く倒せるだろう。そもそも大艦巨砲主義のドススパークは仮想敵が何であるかは分からないがオーバースペック過ぎるのは言うまでもない。万事ほどほどが大事と言ったのは誰であったか。
それはともかく今それを食らう状況にあるのは俺である。
「おじけづいたのぜ? こわかったらいのちごいしてもいいのぜ? それでもらすぼすをたおすたたかいから、らすぼすをたおすさぎょうになるだけだから、じじいにはかんけいないけどね!」
言い終わるやいなや、まりさは飛びかかってくる。そしてシャベルで応戦しようとする俺にアストロンで対抗。金属音を響かせて着地する。
「……かーらーのー、ドススパーごぎゅっ?」
身を翻して避けた俺に対してドススパークを放とうとしたプチドスは、しかしそれを放つことは出来なかった。ドススパークを撃ちかけたプチドスの口腔目掛けてシャベルをぶち込んだからだ。あとはほぼ発射するばかりだったドススパークはあえなく口内で暴発。破砕されたシャベルの破片が内側からプチドスを貫いたのであった。
「二度目は無えんだよ。クズが」
長年愛した愛刀シャベルをプチドスの口内に残すと、俺は舗装路で打った痛む足腰を押さえながら土手を歩いて行くのだった。
「ふいうちをさけるとは、さすがにまりさがみこんだにんげんなのぜ」
いつ見込まれたのかは分からないが、その振り向いた先にいたのはゆっくりであった。とはいっても普通のゆっくりの大きさではなく、かといってドススパークを操る割に小さい。俗に言うプチドス、中途半端な大きさのドスである。狭い道に対応した都市型ドスまりさとか言われているそうだが、目立つ以上、あっさり駆除されてしまう不憫なやつでもある。
なぜこの攻撃を避けられたかといえば、いつもは川べりから聞こえてくるゆっくりたちの『むーしゃむーしゃ』という声が、なぜか真後ろから聞こえてきたからである。競争が激しい食料をわざわざ危険な舗装路で食べるわけもない。それにドススパークを撃つためにはスパークキノコと呼ばれるキノコを咀嚼する必要があり、熟練したドスでもない限りその声を隠すことは出来ないのだ。
「かれいなふっとわーく、しんぴのどすすぱーく、てっぺきのあすとろん、みわくのみずたいせい255。よっつもそろえばらすぼすのにんげんでもさすがにたおせるのぜ?」
いつの間にかラスボス扱いである。というかあのドスまりさは死んでいなかったのだろうか? いや、翌日死んだ目をした役所の人間が清掃活動をしているのを見ているので、間違い無く死んでいるだろう。……あの時の取り巻きの誰かかな。
「まりさのたいあたりをくらってしぬのぜ!」
とりあえずシャベルを取りに土手へ戻った俺を、まりさはゆっくりにしては高い打点の体当たりで出迎える。身長一メートル弱の餡塊はどう見積もっても百キロは行っているだろう。一般的な成人男性程度の体重しか無い俺では、流石に無傷とはいかないはずだ。しかし体当たりを受けた上でその力を受け流すくらいであれば不可能ではない。
ゆっくりへ対抗するには十分過ぎる策ではあったが、その考えは少し甘かった。
「あすとろん!」
なんとプチドスは体当たりの途中でアストロンを使ったのだ。もちろんそれまでに持っていた運動エネルギーでは俺の胴体へぶつかる軌道は確保できず、失速する。だがその先には弁慶の泣き所とされるスネがあった。
慌てて避けた俺は危うい所で骨折の危機を脱する。
「あすとろんかいじょ! かーらーのー、どすすぱーく!」
プチドス特有の控えめな威力と控えめな準備時間を持つドススパークが足元で発動する。標的はアストロン体当たりを避けた足ではなく、もう一方の軸になっている足だ。避けた瞬間に狙えば身動きできないもう片方の足は絶好の弱点といえる。
「甘いわッ」
俺は『かーらーのー』の掛け声を見逃さず、無助走で前に飛び込んだ。片足で踏み切るため大した距離は稼げないが、それでも着地直後のまりさとなら同格だ。
俺が土手の舗装路を転がるのと、まりさのドススパークが看板を貫くのはほぼ同時だった。鉄板である看板を軽く貫ける威力であれば、人間くらい軽く倒せるだろう。そもそも大艦巨砲主義のドススパークは仮想敵が何であるかは分からないがオーバースペック過ぎるのは言うまでもない。万事ほどほどが大事と言ったのは誰であったか。
それはともかく今それを食らう状況にあるのは俺である。
「おじけづいたのぜ? こわかったらいのちごいしてもいいのぜ? それでもらすぼすをたおすたたかいから、らすぼすをたおすさぎょうになるだけだから、じじいにはかんけいないけどね!」
言い終わるやいなや、まりさは飛びかかってくる。そしてシャベルで応戦しようとする俺にアストロンで対抗。金属音を響かせて着地する。
「……かーらーのー、ドススパーごぎゅっ?」
身を翻して避けた俺に対してドススパークを放とうとしたプチドスは、しかしそれを放つことは出来なかった。ドススパークを撃ちかけたプチドスの口腔目掛けてシャベルをぶち込んだからだ。あとはほぼ発射するばかりだったドススパークはあえなく口内で暴発。破砕されたシャベルの破片が内側からプチドスを貫いたのであった。
「二度目は無えんだよ。クズが」
長年愛した愛刀シャベルをプチドスの口内に残すと、俺は舗装路で打った痛む足腰を押さえながら土手を歩いて行くのだった。
二年後、珍しくスーツで会社へ行っていた俺は、慣れない姿に辟易しつつ土手を歩いていた。数年の間に町の様子は随分と変わっていたが、この土手は相変わらずゆっくりの声であふれていた。そしてゆっくりで遊ぶ近所の学生、土手を歩く近所の子供、荒れ狂う全裸の鬼威惨……なんだか見てはならないものを見てしまった気はするが、ともかく土手はいつもどおりであった。
ふと道の向こう側から子供が歩いてくるのが見えた。このところよく見る線の細い子で、いつも黒い帽子と袖の長い服を着ている辺り、肌が弱いのかもしれないと伺わせる。どんな顔をしているのかは、その黒い帽子、すなわち山高帽のせいで分からない。
山高帽と見てまさかとは思ったが、かれこれ三ヶ月はすれ違うこの土手で襲撃されたことは一度もない。
そんなわけで今日もまた、その少女の脇を通りすぎようとしていた俺は、その認識が甘かったことを実感することになる。
いつになくふらふらと歩いていたその少女は、俺の横を通り過ぎようとする間際、俺に倒れかかって来た。しかし俺の身体に触れた少女の手は妙に硬く、尖っている。
「ゆふふ……ようやく隙を見せたのぜ」
その声でようやく少女の正体を知った俺は、少女を突き放した。その少女、胴付きのまりさが握りしめていたのは小さなバタフライナイフだった。
「人間を倒すのにゆっくりの土俵で戦うなんて馬鹿な話だったのぜ。人間は人間の道具で死ぬのが筋ってもんなのぜ」
勝ったも同然という口ぶりで話すその胴付きまりさには一種の哀れみを感じた。ここまで不運だとたしかに俺がラスボスでも間違いないような気がしてきてしまう。
胴付きまりさがナイフを刺したのはブレザータイプである俺のスーツの第二ボタンのあたり。身体のラインが隠されてしまうこともあって分かりにくいが、この位置は腹と腰の間くらいに相当する。それだけなら彼女が狙うに問題はないのだが、問題はまっとうな社会人であれば付けているベルトがそれくらいの位置へ装着されるという点である。なめし革で作られたベルトは、世が世ならレザーアーマーとして使われるほど強靭だ。か弱い力でバタフライナイフ程度ならば防げないこともない。
非力な少女程度の力しか無い胴付きまりさが、手頃な脚ではなく致死ダメージを狙って腹へ攻撃した結果がこれである。まったく不運としか言いようが無い。
「止めにドススパークで攻撃してやるのぜ。最後はやっぱりゆっくりの土俵で戦わないとしっくりこないのぜ」
「ま、まて。最後に頼みがある。……お前の顔を近くで見せてくれ」
スーツ越しにベルトのバックルを握りしめながら迫真の棒読みで胴付きまりさへ懇願する。流石に血までは演技できないので、脚を震わせて瀕死感を漂わせてみた。
「ゆ? まあ、それくらいなら面倒見てやってもいいのぜ?」
ドススパークを撃とうとしていた胴付きまりさは、意外そうな顔をして取りやめると、緊張感の欠片もなく無造作に近づいてきた。そして力なく膝をつく俺の顔を覗きこむ。
「ほらこれでいいのぜ?」
「ああ、なんだお前、結構かわいい顔してたんだな」
「ゆっ!? そ、そんなこと言われたって嬉しくも何とも無いんだぜ。それにゆっくりが可愛いなんてじじいはHENTAIなのぜ!?」
白い顔を真っ赤に染めて恥じらうまりさは普通に可愛いと思う。その顔は、まあゆっくりはゆっくりだが、現実的に考えて人間の女の子の大多数よりは少なくとも可愛いだろう。
「だがそれだけにちょっと残念かな」
「ゆっ? 何を言って……ゆぎっ!?」
指をふるふると痙攣させながら胴付きまりさの顔へ近づいていた俺の手は、そこへ到達することなく、不意に胴付きまりさの二の腕へ組み付いた。そしてそれを容赦なくぶち折る。
「な、何これ……ゆぎゃっ、ナイフで刺したはず……ゆびっ!? も、もうやめっゆああ!?」
胴付きまりさがなんと言おうと、俺は腕や脚を折る手を休めなかった。可愛いかどうか、不運かどうか、それはどうでもいい。とりあえず不遜なゆっくりは始末するのが俺の流儀である。
関節が二倍に増えた胴付きまりさを見下ろすと、俺はいつもの様に捨て台詞を口にした。
「子供の姿で勝てるほど大人は弱くねえんだよ」
そしてまりさを捨ておいて、俺は一抹の虚無感を感じつつ土手を後にするのであった。近所でHENTAI活動を行なっていた鬼威惨からの通報で、俺が餡殺川流域連続幼女猟奇殺人事件の容疑者に上げられてしまうのはのちの話である。
ふと道の向こう側から子供が歩いてくるのが見えた。このところよく見る線の細い子で、いつも黒い帽子と袖の長い服を着ている辺り、肌が弱いのかもしれないと伺わせる。どんな顔をしているのかは、その黒い帽子、すなわち山高帽のせいで分からない。
山高帽と見てまさかとは思ったが、かれこれ三ヶ月はすれ違うこの土手で襲撃されたことは一度もない。
そんなわけで今日もまた、その少女の脇を通りすぎようとしていた俺は、その認識が甘かったことを実感することになる。
いつになくふらふらと歩いていたその少女は、俺の横を通り過ぎようとする間際、俺に倒れかかって来た。しかし俺の身体に触れた少女の手は妙に硬く、尖っている。
「ゆふふ……ようやく隙を見せたのぜ」
その声でようやく少女の正体を知った俺は、少女を突き放した。その少女、胴付きのまりさが握りしめていたのは小さなバタフライナイフだった。
「人間を倒すのにゆっくりの土俵で戦うなんて馬鹿な話だったのぜ。人間は人間の道具で死ぬのが筋ってもんなのぜ」
勝ったも同然という口ぶりで話すその胴付きまりさには一種の哀れみを感じた。ここまで不運だとたしかに俺がラスボスでも間違いないような気がしてきてしまう。
胴付きまりさがナイフを刺したのはブレザータイプである俺のスーツの第二ボタンのあたり。身体のラインが隠されてしまうこともあって分かりにくいが、この位置は腹と腰の間くらいに相当する。それだけなら彼女が狙うに問題はないのだが、問題はまっとうな社会人であれば付けているベルトがそれくらいの位置へ装着されるという点である。なめし革で作られたベルトは、世が世ならレザーアーマーとして使われるほど強靭だ。か弱い力でバタフライナイフ程度ならば防げないこともない。
非力な少女程度の力しか無い胴付きまりさが、手頃な脚ではなく致死ダメージを狙って腹へ攻撃した結果がこれである。まったく不運としか言いようが無い。
「止めにドススパークで攻撃してやるのぜ。最後はやっぱりゆっくりの土俵で戦わないとしっくりこないのぜ」
「ま、まて。最後に頼みがある。……お前の顔を近くで見せてくれ」
スーツ越しにベルトのバックルを握りしめながら迫真の棒読みで胴付きまりさへ懇願する。流石に血までは演技できないので、脚を震わせて瀕死感を漂わせてみた。
「ゆ? まあ、それくらいなら面倒見てやってもいいのぜ?」
ドススパークを撃とうとしていた胴付きまりさは、意外そうな顔をして取りやめると、緊張感の欠片もなく無造作に近づいてきた。そして力なく膝をつく俺の顔を覗きこむ。
「ほらこれでいいのぜ?」
「ああ、なんだお前、結構かわいい顔してたんだな」
「ゆっ!? そ、そんなこと言われたって嬉しくも何とも無いんだぜ。それにゆっくりが可愛いなんてじじいはHENTAIなのぜ!?」
白い顔を真っ赤に染めて恥じらうまりさは普通に可愛いと思う。その顔は、まあゆっくりはゆっくりだが、現実的に考えて人間の女の子の大多数よりは少なくとも可愛いだろう。
「だがそれだけにちょっと残念かな」
「ゆっ? 何を言って……ゆぎっ!?」
指をふるふると痙攣させながら胴付きまりさの顔へ近づいていた俺の手は、そこへ到達することなく、不意に胴付きまりさの二の腕へ組み付いた。そしてそれを容赦なくぶち折る。
「な、何これ……ゆぎゃっ、ナイフで刺したはず……ゆびっ!? も、もうやめっゆああ!?」
胴付きまりさがなんと言おうと、俺は腕や脚を折る手を休めなかった。可愛いかどうか、不運かどうか、それはどうでもいい。とりあえず不遜なゆっくりは始末するのが俺の流儀である。
関節が二倍に増えた胴付きまりさを見下ろすと、俺はいつもの様に捨て台詞を口にした。
「子供の姿で勝てるほど大人は弱くねえんだよ」
そしてまりさを捨ておいて、俺は一抹の虚無感を感じつつ土手を後にするのであった。近所でHENTAI活動を行なっていた鬼威惨からの通報で、俺が餡殺川流域連続幼女猟奇殺人事件の容疑者に上げられてしまうのはのちの話である。
三十年後、いい加減おっさんになった俺は、それでもこの町を離れずこの土手を歩いていた。護岸工事のせいで生息圏を減らしてはいるものの、餡殺川のゆっくりも健在であり、何十代目か分からないがその営みを続けていた。
まだ俺が若い頃にたびたびやってきた強くてニューゲームまりさも、ここ二十年はとんと姿を見せず、寂しいばかりである。直後に重症を負わせたとはいえ、告白まがいの口説き文句を口にした俺は確かにHENTAIなのかもしれず、これに至るまで彼女のひとりもいない。といって胴付きゆっくりのいる性風俗店にもいかず、どっちつかずな俺はよく河川敷のHENTAI鬼威惨にたしなめられている。
「どこいくの? おにーさん」
もう随分暗くなってきたとある日、俺に声をかけてきたのは夜の闇に溶けこむような黒い服を着た少女だった。胸元に大きく切り込みが入った上着に、限界まで引き上げられたミニスカート。そこから覗く色素の薄い肌からは少女の不健康な日常を匂わせる。
しかしそれは、まあ人間ではなかった。上述した性風俗ゆっくり、それも売春型の質の悪い形態だ。合法ロリとも言われている胴付きゆっくりではあるが、使えればオーケーという人種からは良いカモとなっており、非合法活動で資金を稼ぐ一部団体の資金源にもなっているため警察組織からも狙われている。
「俺はいい。間に合ってるよ」
そう言って立ち去ろうとするが、少女は俺の袖を引っ張って留まらせた。
「ねえおにーさん、まりさのことわすれちゃった?」
「ん、まさかお前あの時の?」
少女は俺の言葉を聞いて嬉しそうに淡く微笑む。
「ラスボスのおにーさんを倒せるようにずっとずっと頑張ってきたけど、まりさはあの時分かったんだよ。まりさはおにーさんを倒すのが目的じゃないんだって。おにーさんに会って、おにーさんに相手してもらうのが楽しいんだって」
少女、胴付きまりさはくるりと楽しそうに一回転する。
「まりさ、恋しちゃったのかな?」
可愛い。それが例え売春で培われたものだとしても、その可愛さは一級品だった。その可愛い女の子が手を変え品を変えアタックを繰り返すというのはなんとも心に来るものがある。たとえそれがゆっくりで、最初はそのつもりすら無かったとしても。
そのまりさはお互いの肌が当たりそうなほどに近寄ってくると、おもむろに両手で胸元を大きく広げた。そして胴付きゆっくりにしては豊か過ぎるその胸が、大事なところが見えそうなほど露出される。
「まりさね、おにーさんに気に入ってもらえるようにえっちな経験値、たくさん積んだんだよ」
胴付きまりさは俺の身体にもたれかかるようにして身体を密着させ、また脚を絡めて俺を誘惑してきた。興奮しているのだろう。服の隙間から見える肌にはうっすらと汗が浮かび、砂糖水の甘ったるい香りが俺の鼻孔をくすぐる。
「もう身体が熱くて堪らないの。ね、おにーさんのお手手で冷まして……」
「うーん、チェンジ」
俺はまりさが次の言葉を発するより先に彼女の頭に手を掛けていた。そして勢い良くそれを回転させる。よく響く異音がしてまりさの首が真後ろを向いた。そして俺の身体にもたれていた身体は力なく崩折れる。まりさは舗装路に突っ伏しながら驚きを隠し切れない声で呟いた。
「ど……どぼじで……」
「ビッチはお呼びじゃねえんだよ」
どんなに可愛くてもビッチはゆっくり出来ない。俺は意外にも純情派なのである。そんなわけで俺は吐き捨てるようにそう言うと、まりさの亡骸はそのままに家路を急ぐのであった。
まだ俺が若い頃にたびたびやってきた強くてニューゲームまりさも、ここ二十年はとんと姿を見せず、寂しいばかりである。直後に重症を負わせたとはいえ、告白まがいの口説き文句を口にした俺は確かにHENTAIなのかもしれず、これに至るまで彼女のひとりもいない。といって胴付きゆっくりのいる性風俗店にもいかず、どっちつかずな俺はよく河川敷のHENTAI鬼威惨にたしなめられている。
「どこいくの? おにーさん」
もう随分暗くなってきたとある日、俺に声をかけてきたのは夜の闇に溶けこむような黒い服を着た少女だった。胸元に大きく切り込みが入った上着に、限界まで引き上げられたミニスカート。そこから覗く色素の薄い肌からは少女の不健康な日常を匂わせる。
しかしそれは、まあ人間ではなかった。上述した性風俗ゆっくり、それも売春型の質の悪い形態だ。合法ロリとも言われている胴付きゆっくりではあるが、使えればオーケーという人種からは良いカモとなっており、非合法活動で資金を稼ぐ一部団体の資金源にもなっているため警察組織からも狙われている。
「俺はいい。間に合ってるよ」
そう言って立ち去ろうとするが、少女は俺の袖を引っ張って留まらせた。
「ねえおにーさん、まりさのことわすれちゃった?」
「ん、まさかお前あの時の?」
少女は俺の言葉を聞いて嬉しそうに淡く微笑む。
「ラスボスのおにーさんを倒せるようにずっとずっと頑張ってきたけど、まりさはあの時分かったんだよ。まりさはおにーさんを倒すのが目的じゃないんだって。おにーさんに会って、おにーさんに相手してもらうのが楽しいんだって」
少女、胴付きまりさはくるりと楽しそうに一回転する。
「まりさ、恋しちゃったのかな?」
可愛い。それが例え売春で培われたものだとしても、その可愛さは一級品だった。その可愛い女の子が手を変え品を変えアタックを繰り返すというのはなんとも心に来るものがある。たとえそれがゆっくりで、最初はそのつもりすら無かったとしても。
そのまりさはお互いの肌が当たりそうなほどに近寄ってくると、おもむろに両手で胸元を大きく広げた。そして胴付きゆっくりにしては豊か過ぎるその胸が、大事なところが見えそうなほど露出される。
「まりさね、おにーさんに気に入ってもらえるようにえっちな経験値、たくさん積んだんだよ」
胴付きまりさは俺の身体にもたれかかるようにして身体を密着させ、また脚を絡めて俺を誘惑してきた。興奮しているのだろう。服の隙間から見える肌にはうっすらと汗が浮かび、砂糖水の甘ったるい香りが俺の鼻孔をくすぐる。
「もう身体が熱くて堪らないの。ね、おにーさんのお手手で冷まして……」
「うーん、チェンジ」
俺はまりさが次の言葉を発するより先に彼女の頭に手を掛けていた。そして勢い良くそれを回転させる。よく響く異音がしてまりさの首が真後ろを向いた。そして俺の身体にもたれていた身体は力なく崩折れる。まりさは舗装路に突っ伏しながら驚きを隠し切れない声で呟いた。
「ど……どぼじで……」
「ビッチはお呼びじゃねえんだよ」
どんなに可愛くてもビッチはゆっくり出来ない。俺は意外にも純情派なのである。そんなわけで俺は吐き捨てるようにそう言うと、まりさの亡骸はそのままに家路を急ぐのであった。
それから三世紀後、俺は結局幾度と無く求婚に訪れたまりさの求めを受けていた。
「まりさ、もう真エンディングなんていらないの。おにーさんとこのままずっと一緒にいられればそれで幸せだから……」
という何万回目だかの告白を受けてようやく籍を入れたのだ。世紀末パンク少女になってみたり、深窓令嬢になってみたり、はたまた俺がゲイと勘違いしてガチムチになってみたりと様々な変遷があったが、結局原点回帰して普通の胴付きまりさになった。よくその間に飽きなかったものだが、それも愛ゆえにだろう。
いつの頃からかは分からないが、俺はまりさのラスボスとしての宿命を背負わされてしまったらしく、能力も寿命も限界知らずとなった。きっとこれはまりさが俺を倒すまで解除されないのだろう。
まりさのステータスは軒並み一億を超え、耐性値も限界まで上がった。それにありとあらゆるチート能力を得て、今では俺よりはるかに強い存在になってしまった。もはや俺はおろか、世界中の誰が挑んでも傷ひとつ付かないだろう。それでもまりさはラスボスであるはずの俺を倒そうとはせず、俺の伴侶であろうとした。
「おにーさん、今日のお献立は黄ニラとあさりのソテー、すっぽんのスープ、あとカツオのお刺身だよ。ニンニクとショウガたっぷり擦ったからねっ」
「……」
今日もまたおにーさん攻略の訓練と称した熱い抱擁が交わされることは間違いない。数時間に渡る激闘が待ち受けていることも、爆裂拳を彷彿とする強烈な腰使いも問題はない。
「どうしたの? ご飯冷めちゃうよ?」
「ああ、今行くよ」
ただ両性具有であるゆっくりの手前、今日のまりさがタチかネコか、それだけが当面の問題だった。
「まりさ、もう真エンディングなんていらないの。おにーさんとこのままずっと一緒にいられればそれで幸せだから……」
という何万回目だかの告白を受けてようやく籍を入れたのだ。世紀末パンク少女になってみたり、深窓令嬢になってみたり、はたまた俺がゲイと勘違いしてガチムチになってみたりと様々な変遷があったが、結局原点回帰して普通の胴付きまりさになった。よくその間に飽きなかったものだが、それも愛ゆえにだろう。
いつの頃からかは分からないが、俺はまりさのラスボスとしての宿命を背負わされてしまったらしく、能力も寿命も限界知らずとなった。きっとこれはまりさが俺を倒すまで解除されないのだろう。
まりさのステータスは軒並み一億を超え、耐性値も限界まで上がった。それにありとあらゆるチート能力を得て、今では俺よりはるかに強い存在になってしまった。もはや俺はおろか、世界中の誰が挑んでも傷ひとつ付かないだろう。それでもまりさはラスボスであるはずの俺を倒そうとはせず、俺の伴侶であろうとした。
「おにーさん、今日のお献立は黄ニラとあさりのソテー、すっぽんのスープ、あとカツオのお刺身だよ。ニンニクとショウガたっぷり擦ったからねっ」
「……」
今日もまたおにーさん攻略の訓練と称した熱い抱擁が交わされることは間違いない。数時間に渡る激闘が待ち受けていることも、爆裂拳を彷彿とする強烈な腰使いも問題はない。
「どうしたの? ご飯冷めちゃうよ?」
「ああ、今行くよ」
ただ両性具有であるゆっくりの手前、今日のまりさがタチかネコか、それだけが当面の問題だった。
おしまい
強くて乳ゲーム……っていうね
チートこそゆっくりの真骨頂だと思う
これも愛での形と信じて
チートこそゆっくりの真骨頂だと思う
これも愛での形と信じて