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ゼロの守護月天 7 - (2007/08/11 (土) 04:47:48) の1つ前との変更点
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ヴェストリの広場は、噂を聞きつけた生徒たちによって活気に満ちていた。
ギーシュが決闘をするということが学院中に広まってしまったのだ。
決闘を楽しみたい者、賭けを始める者、決闘相手の月の精霊を見たいがために足を運んできた者とかなり多くの人間が集まっている。
しかし、観客たちがここに集まった理由はただ一つ。
みんなヒマなのだ。
ただでさえ娯楽の少ない学院なのだから、滅多に無い『イベント』でヒマを潰そうと考える生徒も少ないない。
さて、こうなってしまうともう後には引けない人物が一人いる。ギーシュだ。
頭に上った血が下がると共に、自分のやらかしてしまった事態を-非常に運が悪いことに-理解してしまったのだ。
自分のやらかした不始末を二人の女性のせいにして八つ当たりしたどころか、月の精霊に決闘を挑んでしまった。
しかもこんなに人が集まってしまっては「全部僕が悪かったです。ごめんなさい」なんて言い出せっこない。
(あぁ、お願いだからここへ来ないでくれ・・・)
ギーシュは強くそのことを願うが、広場に近づいてきた人影によってその願いが砕かれる。
「挑戦者が来たぞー!!」
その一言で、広場に集まった人間の視線が一人の少女-シャオ-に向けられる。
「よ、よく来たじゃないか。別に来なくてもよかったし、今から帰ってもらってもかまわないんだよ?」
引きつった顔でギーシュは本音を漏らすが、この場でその発言は挑発にしかならない。
現に月の精霊を相手に挑発する姿を褒め称えているヤツもいる。
「諸君、決闘だ!」
このセリフにギーシュはぎょっとなる。
「決闘をするのは『青銅』のギーシュと、ゼロのルイズが召喚した月の精霊だ!!」
声がした方を見てみると、なんとマリコルヌが高らかに宣言しているではないか。
「マ、マリコルヌ。君は一体なにをやってるんだ!?」
ギーシュは青ざめた表情でマリコルヌに詰め寄る。
「なにって司会進行に決まってるじゃないか。決闘、がんばれよ」
マリコルヌは当然だと言わんばかりの表情で言いのける。
「では、決闘のルールの説明だ。勝利条件はいたって簡単。相手が戦闘不能になるか降参を宣言した時点で終了だ」
この宣言により、広場は更にヒートアップする。
「二人とも、準備はいいか?」
マリコルヌが最終確認をすると、シャオは黙って頷いた。
「あぁ、もうやけだ!来い、ワルキューレ!!」
完全にやけくそ状態でギーシュは自身の二つ名『青銅』の名にふさわしい青銅のゴーレム『ワルキューレ』を魔法で作り出しシャオに突っ込ませる。
ワルキューレは動きこそは単調だが、金属で出来ているという特性からか並の攻撃にはビクともしない。
その上、たとえジャブであっても生身の人間を相手にするにはそれだけで必殺の一撃ともなり得るのだ。
シャオは見た目だけなら普通の女の子と大差ない。
女性を傷つけるのは忍びないが、きっと一発でも当てることが出来ればそれで終わるはずだ。
ギーシュはそう信じてワルキューレに襲わせる。
あぁ、なんでこんなことになっているんだろうか。
本当はわたしが受けるはずだった決闘を、今こうしてシャオが引き受け、彼女が危険な目に遭ってしまっている。
今のところ、シャオはワルキューレの猛攻を全て受け流しているがきっとそれも時間の問題だろう。
単純な話、ゴーレムはいくら動こうと疲れを感じることはないが、生身のシャオはそうではないのだ。
今は凌ぎ切っているが、いつかは疲労でそれも出来なくなってしまう。
そうなってしまったら傷つくのはシャオだ。
自分ならまだいい。痛いのはイヤだけど・・・。
だが、自分のためにシャオが傷つく姿を見たくない。
そんな葛藤を繰り広げていたルイズは意を決し、この決闘をやめさせるために人垣を分け入っていった。
少し話が逸れるが、そこは勘弁していただきたい。
不幸というヤツはつねに団体行動をしている。
例に挙げてみると、浮気がばれてしまい二人の少女から手痛い仕打ちを受けた挙句、シャオと決闘をするハメになっているギーシュがまさにそうだ。
まぁ彼の不幸はもう少し続くのだが、その辺りは今は置いておこう。
そして、今度の団体行動をしている不幸たちの次のターゲットは、どうもルイズのようだ。
「えぇい、ちょこまかと!これでも喰らえ!!」
ギーシュはそう叫ぶとワルキューレは大きく溜めを作り、一気にシャオに向かって突進する。
だが、この攻撃もシャオは軽く回避したのだが、その先を見て騒然となる。
「ご主人様、危ない!!」
元々ギーシュは人間の身体の作りについて詳しいわけではない。
それゆえにワルキューレは動きが単調になり受身も取ることができない。
だからなのだろう。
勢いの乗ったワルキューレが石に躓き、前方にすっ飛んでしまったのは。
そして不運にもその直線状には、その場の空気に支配された観客によって押し出されてしまったルイズがいたのだ。
「え?」
ルイズは自身の身に起こる未来を理解できずにその場で立ち尽くしてしまい、自分に向かってすっ飛んできたワルキューレを避けることができなかった。
「ぐぼぁ!!」
すっ飛んできたワルキューレの頭突き-俗に言うフライング・ヘッドバット-を喰らったルイズは、くぐもった悲鳴を上げた。
「ご、ご主人様!!」
シャオは慌ててルイズに駆け寄る。
「しっかりしてください、ご主人様!」
シャオは目に涙を浮かべながらも、ルイズの状態を確認すると治療専門の星神『長沙』を呼び出す。
「長沙、ご主人様をお願い」
シャオはそう言いつけると、再びギーシュに向かい合う。
今のシャオにはそれまであった甘さは一切無く、あるのはただ一つ『怒り』の感情のみ。
「ぼ、僕は悪くない。僕は悪くないぞ。ルイズが勝手に突っ込んできただけだからな!」
その雰囲気に怯えたギーシュは慌てて弁解をする。
だがな、ギーシュよ。そのセリフは更に相手を怒らせるためにあるんだぞ?
「たとえどんな理由があろうとも、ご主人様を傷つけましたね」
静かに言い放たれるその言葉には、怒りの色が強く滲んでいた。
「許しません」
シャオは支天輪をヴィンダールブのルーンの輝く右手でかざし、高らかに謳い始める。
「天明らかにして星来たれ」
ルーンの輝きに合わせるかのように支天輪が輝き始める。
「鉤陳(こうちん)の星は召臨を厭わず 月天は心を帰せたり」
彼女は呼び掛ける。自身に仕える星神に。
「来々 北斗七星!!」
シャオが詠唱を謳い終わると同時に、貧狼、巨門、禄存、文曲、簾貞、武曲、破軍の7人からなる最強の『攻撃用』星神が現れる。
「ひっ!ワ、ワルキューレ!そいつらをなんとかしろ!!」
ギーシュはそう叫ぶと、さらに6体のワルキューレを作り出す。
数で言えば7対7で互角。それにドットとは言えメイジの作り出したのは金属性のゴーレム。
もしかしたら相殺しきれるかもしれない。その未来に一縷の希望を託した命令をギーシュは下す。
だが、その希望はワルキューレごと無残にも砕かれる。
一瞬にして全てのワルキューレが破壊されてしまったのだ。
北斗七星は、対抗するためには学校クラスの巨大な建物をゴーレムにしなければならない程強力な星神。
更に、今の彼らはヴィンダールブの効果により普段の倍以上の力を発揮できる。
そんな連中に囲まれてしまってギーシュにできることは一つしかない。
「ま、まいっ「私はご主人様を傷つけたあなたを許すわけにはいきません」」
腰を抜かしたギーシュは降参しようとするが、無常にもシャオはその言葉を遮り、北斗七星が攻撃態勢をとる。
「ひっ!!」
ギーシュは次の瞬間に来る現実に耐え切れず目を強く瞑った。
「待って!!」
治療の終えたルイズがシャオのやろうとしたことを止めるために、彼女の前に立ちはだかる。
「ご、ご主人様?」
ルイズの行動に、流石にシャオも困惑としている。
「待って、シャオ。これ以上のことはもういいわ。わたしはもう大丈夫だから。ね?」
少しの沈黙のあと、北斗七星は攻撃態勢を解き姿を消した。
「わかりました。ご主人様がそうおっしゃるんであればそうします」
そういうとシャオは支天輪をしまう。
「そうそう、ギーシュにお礼をするのを忘れてたわ」
ルイズはそう言うとまだ腰を抜かしているギーシュに近寄る。
なんの好意もない笑顔が怖い。
「な、なにを言ってるんだ、ルイズ。お礼を言うのはむしろ僕のほっ!?!?!?!?!?!!!!!!」
キーン!!という擬音と共にギーシュが倒れる。集まった生徒たちのうち男の生徒だけが悲痛な表情で股間を押さえている。
「さ、行きましょうか、シャオ」
そう言うと、ルイズたちは広場を後にした。
『遠見の鏡』を通してこの出来事を見ていたオスマンとコルベールは脂汗を流し、股間を押さえながらシャオのことを王宮に報告することを禁止し、閉口令を下すのであった。
ヴェストリの広場は、噂を聞きつけた生徒たちによって活気に満ちていた。
ギーシュが決闘をするということが学院中に広まってしまったのだ。
決闘を楽しみたい者、賭けを始める者、決闘相手の月の精霊を見たいがために足を運んできた者とかなり多くの人間が集まっている。
しかし、観客たちがここに集まった理由はただ一つ。
みんなヒマなのだ。
ただでさえ娯楽の少ない学院なのだから、滅多に無い『イベント』でヒマを潰そうと考える生徒も少ないない。
さて、こうなってしまうともう後には引けない人物が一人いる。ギーシュだ。
頭に上った血が下がると共に、自分のやらかしてしまった事態を-非常に運が悪いことに-理解してしまったのだ。
自分のやらかした不始末を二人の女性のせいにして八つ当たりしたどころか、月の精霊に決闘を挑んでしまった。
しかもこんなに人が集まってしまっては「全部僕が悪かったです。ごめんなさい」なんて言い出せっこない。
(あぁ、お願いだからここへ来ないでくれ・・・)
ギーシュは強くそのことを願うが、広場に近づいてきた人影によってその願いが砕かれる。
「挑戦者が来たぞー!!」
その一言で、広場に集まった人間の視線が一人の少女-シャオ-に向けられる。
「よ、よく来たじゃないか。別に来なくてもよかったし、今から帰ってもらってもかまわないんだよ?」
引きつった顔でギーシュは本音を漏らすが、この場でその発言は挑発にしかならない。
現に月の精霊を相手に挑発する姿を褒め称えているヤツもいる。
「諸君、決闘だ!」
このセリフにギーシュはぎょっとなる。
「決闘をするのは『青銅』のギーシュと、ゼロのルイズが召喚した月の精霊だ!!」
声がした方を見てみると、なんとマリコルヌが高らかに宣言しているではないか。
「マ、マリコルヌ。君は一体なにをやってるんだ!?」
ギーシュは青ざめた表情でマリコルヌに詰め寄る。
「なにって司会進行に決まってるじゃないか。決闘、がんばれよ」
マリコルヌは当然だと言わんばかりの表情で言いのける。
「では、決闘のルールの説明だ。勝利条件はいたって簡単。相手が戦闘不能になるか降参を宣言した時点で終了だ」
この宣言により、広場は更にヒートアップする。
「二人とも、準備はいいか?」
マリコルヌが最終確認をすると、シャオは黙って頷いた。
「あぁ、もうやけだ!来い、ワルキューレ!!」
完全にやけくそ状態でギーシュは自身の二つ名『青銅』の名にふさわしい青銅のゴーレム『ワルキューレ』を魔法で作り出しシャオに突っ込ませる。
ワルキューレは動きこそは単調だが、金属で出来ているという特性からか並の攻撃にはビクともしない。
その上、たとえジャブであっても生身の人間を相手にするにはそれだけで必殺の一撃ともなり得るのだ。
シャオは見た目だけなら普通の女の子と大差ない。
女性を傷つけるのは忍びないが、きっと一発でも当てることが出来ればそれで終わるはずだ。
ギーシュはそう信じてワルキューレに襲わせる。
あぁ、なんでこんなことになっているんだろうか。
本当はわたしが受けるはずだった決闘を、今こうしてシャオが引き受け、彼女が危険な目に遭ってしまっている。
今のところ、シャオはワルキューレの猛攻を全て受け流しているがきっとそれも時間の問題だろう。
単純な話、ゴーレムはいくら動こうと疲れを感じることはないが、生身のシャオはそうではないのだ。
今は凌ぎ切っているが、いつかは疲労でそれも出来なくなってしまう。
そうなってしまったら傷つくのはシャオだ。
自分ならまだいい。痛いのはイヤだけど・・・。
だが、自分のためにシャオが傷つく姿を見たくない。
そんな葛藤を繰り広げていたルイズは意を決し、この決闘をやめさせるために人垣を分け入っていった。
少し話が逸れるが、そこは勘弁していただきたい。
不幸というヤツはつねに団体行動をしている。
例に挙げてみると、浮気がばれてしまい二人の少女から手痛い仕打ちを受けた挙句、シャオと決闘をするハメになっているギーシュがまさにそうだ。
まぁ彼の不幸はもう少し続くのだが、その辺りは今は置いておこう。
そして、今度の団体行動をしている不幸たちの次のターゲットは、どうもルイズのようだ。
「えぇい、ちょこまかと!これでも喰らえ!!」
ギーシュはそう叫ぶとワルキューレは大きく溜めを作り、一気にシャオに向かって突進する。
だが、この攻撃もシャオは軽く回避したのだが、その先を見て騒然となる。
「ご主人様、危ない!!」
元々ギーシュは人間の身体の作りについて詳しいわけではない。
それゆえにワルキューレは動きが単調になり受身も取ることができない。
だからなのだろう。
勢いの乗ったワルキューレが石に躓き、前方にすっ飛んでしまったのは。
そして不運にもその直線状には、その場の空気に支配された観客によって押し出されてしまったルイズがいたのだ。
「え?」
ルイズは自身の身に起こる未来を理解できずにその場で立ち尽くしてしまい、自分に向かってすっ飛んできたワルキューレを避けることができなかった。
「ぐぼぁ!!」
すっ飛んできたワルキューレの頭突き-俗に言うフライング・ヘッドバット-を喰らったルイズは、くぐもった悲鳴を上げた。
「ご、ご主人様!!」
シャオは慌ててルイズに駆け寄る。
「しっかりしてください、ご主人様!」
シャオは目に涙を浮かべながらも、ルイズの状態を確認すると治療専門の星神『長沙』を呼び出す。
「長沙、ご主人様をお願い」
シャオはそう言いつけると、再びギーシュに向かい合う。
今のシャオにはそれまであった甘さは一切無く、あるのはただ一つ『怒り』の感情のみ。
「ぼ、僕は悪くない。僕は悪くないぞ。ルイズが勝手に突っ込んできただけだからな!」
その雰囲気に怯えたギーシュは慌てて弁解をする。
だがな、ギーシュよ。そのセリフは更に相手を怒らせるためにあるんだぞ?
「たとえどんな理由があろうとも、ご主人様を傷つけましたね」
静かに言い放たれるその言葉には、怒りの色が強く滲んでいた。
「許しません」
シャオは支天輪をヴィンダールヴのルーンの輝く右手でかざし、高らかに謳い始める。
「天明らかにして星来たれ」
ルーンの輝きに合わせるかのように支天輪が輝き始める。
「鉤陳(こうちん)の星は召臨を厭わず 月天は心を帰せたり」
彼女は呼び掛ける。自身に仕える星神に。
「来々 北斗七星!!」
シャオが詠唱を謳い終わると同時に、貧狼、巨門、禄存、文曲、簾貞、武曲、破軍の7人からなる最強の『攻撃用』星神が現れる。
「ひっ!ワ、ワルキューレ!そいつらをなんとかしろ!!」
ギーシュはそう叫ぶと、さらに6体のワルキューレを作り出す。
数で言えば7対7で互角。それにドットとは言えメイジの作り出したのは金属性のゴーレム。
もしかしたら相殺しきれるかもしれない。その未来に一縷の希望を託した命令をギーシュは下す。
だが、その希望はワルキューレごと無残にも砕かれる。
一瞬にして全てのワルキューレが破壊されてしまったのだ。
北斗七星は、対抗するためには学校クラスの巨大な建物をゴーレムにしなければならない程強力な星神。
更に、今の彼らはヴィンダールヴの効果により普段の倍以上の力を発揮できる。
そんな連中に囲まれてしまってギーシュにできることは一つしかない。
「ま、まいっ「私はご主人様を傷つけたあなたを許すわけにはいきません」」
腰を抜かしたギーシュは降参しようとするが、無常にもシャオはその言葉を遮り、北斗七星が攻撃態勢をとる。
「ひっ!!」
ギーシュは次の瞬間に来る現実に耐え切れず目を強く瞑った。
「待って!!」
治療の終えたルイズがシャオのやろうとしたことを止めるために、彼女の前に立ちはだかる。
「ご、ご主人様?」
ルイズの行動に、流石にシャオも困惑としている。
「待って、シャオ。これ以上のことはもういいわ。わたしはもう大丈夫だから。ね?」
少しの沈黙のあと、北斗七星は攻撃態勢を解き姿を消した。
「わかりました。ご主人様がそうおっしゃるんであればそうします」
そういうとシャオは支天輪をしまう。
「そうそう、ギーシュにお礼をするのを忘れてたわ」
ルイズはそう言うとまだ腰を抜かしているギーシュに近寄る。
なんの好意もない笑顔が怖い。
「な、なにを言ってるんだ、ルイズ。お礼を言うのはむしろ僕のほっ!?!?!?!?!?!!!!!!」
キーン!!という擬音と共にギーシュが倒れる。集まった生徒たちのうち男の生徒だけが悲痛な表情で股間を押さえている。
「さ、行きましょうか、シャオ」
そう言うと、ルイズたちは広場を後にした。
『遠見の鏡』を通してこの出来事を見ていたオスマンとコルベールは脂汗を流し、股間を押さえながらシャオのことを王宮に報告することを禁止し、閉口令を下すのであった。
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