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たくさん食べたら大きくなった - (2007/07/04 (水) 02:13:59) の1つ前との変更点
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「……これは何?」
「……団子虫の一種かしら?」
「ふむ……珍しい使い魔だな。もしかすると幻獣の一種かもしれない」
確かにルイズはサモン・サーヴァントに成功した。
しかしそれによって呼び出された使い魔は、
博識で知られるコルベールでさえも全く知らないものだった。
それは子犬ぐらいの大きさの、ずんぐりとした形の、団子虫に似ているものだった。
外皮は硬そうな外骨格、そして腹部にはたくさんの節足、
そして頭部には青色の目が何列も並んでいた。
「まあ、無事に召喚できたようだし、儀式を続けなさい」
「はーい」
それなりの使い魔を召喚できたおかげか、嬉しそうに返事をしながら
ルイズは『契約』の儀式を開始する。
しかし、幸か不幸か、彼らは実はその召喚された使い魔が、
戦争によって文明が崩壊した異世界から召喚されたものだとは
最後まで知る事が無かった。
その後。
「……ねえ、ルイズ」
「……なによ、キュルケ」
「この子、ずいぶん大きくなったわね」
「そうね、ちょっと育ちすぎたかもしれないわね」
「……ちょっとどころじゃないわよ」
ルイズが召喚した団子虫のような使い魔。
当初、この珍しい使い魔にどんな餌をやったら良いのか頭を悩ませたルイズであったが、それはすぐに解決した。
どうやらこの地に自生する植物が余程気に入ったのか、適当な草であれば何でもよく食べるのである。
(なお、特に良く食べたのははしばみ草であり、それこそ一心不乱という形容詞を具現化したかの如く
それを延々と食べつづけるこの使い魔に、タバサが密かに対抗意識を持ったのは余談である)
しかし、それにしてもよく食べる。
まあ、そこらの野山の草を適当に食べさせておけば良いのでルイズの懐は痛まなかったが、
それでも限度はある。ただ食べるだけなら良いのだが、
食べた分に見合ったレベルで延々と大きくなり続けるのはいささか問題があるだろう。
何度も脱皮を繰り返し、今では馬よりも大きくなっている。
当初、ルイズの部屋で飼われていた使い魔は、
もう部屋の扉を通る事ができなくなったため、
他の大型の使い魔と一緒に外の小屋で飼われていた。
ところで脱皮した皮はコルベール先生が嬉しそうに持ち帰っていたけど
一体何に使うつもりなのだろうか。ルイズは気になったけど、
ゴミを処理する手間が省けたと思って気にしない事にした。
さらにその後。
「……ねえ……」
「…………なによ………」
「言わなくてもわかるでしょ」
「わかってるけどわかりたくないわ」
ルイズとキュルケの目の前にいる使い魔。
もはや育ったとかいうようなレベルではなかった。
なんと二階建ての家ぐらいの大きさである。
魔法学院内の、あらゆる使い魔よりもずっと大きかった。
既に学院からは「使い魔の餌はどこかの山の草木を与える事」という指示が下っている。
なにしろこの巨体である。ルイズがちょっと目を離した隙に
学院の花壇をあっという間に全滅させてしまったのは記憶に新しい。
「それにしてもよく育つわね」
「きっとこれはそういう種類なのよ」
彼女たちは知らなかったが、もし仮にこの使い魔が召喚された世界の、
この使い魔の生態を知る人物がこれを知ったら恐らく驚愕したに違いない。
どうやらこの世界の植物がよほど肌に合ったらしく、
この使い魔は本来の速度の何十倍もの速度で育ちつづけているのであった。
ついでに食事量も本来の何十倍もの量であった。
「……でも、この子、どこまで大きくなるんだろう……?」
バキバキと豪快な音をたてながら一心不乱に木を食べ続ける使い魔を見上げると、
この先を想像することは恐ろしくてとてもできなかった。
さらにさらにその後。
「…………………………(唖然)」
「…………………………(呆然)」
もはや、巨大な使い魔という形容詞すら生ぬるかった。
高さは40メイル、全長は100メイルはあるだろうか。文字通り、動く山といった感じの巨体である。
「……どうするのよ、これ」
「……いいい、いいじゃないの、せせせ戦争には、かかか勝ったんだからぁ!」
可哀想なのはアルビオン軍の一般将兵である。
地上にいたアルビオン軍の兵士は、この超巨大な使い魔が通っただけで文字通り粉砕され、
艦隊の方も、うかつに地上近くを航行していた何隻もの艦船がこの使い魔によって地面に引きずり降ろされて撃沈された。
そしてその硬い外皮はアルビオン軍の大砲ごときでは掠り傷ぐらいにしかならず、
かえって目を不気味に赤く光らせながら怒りで大暴走する使い魔の怒涛の体当たりを喰らうだけだった。
そのあまりのとんでもなさにアルビオン軍は、大混乱に陥ったまま敗走するしかできなかった。
「……それと、あれはどうするのよ」
「……あああ、あれはそう、不可抗力よ、不幸な事故よ、天災だったのよ。
だから私にはどうする事もできなかったのよ!!」
キュルケが視線を向けたその先。
そこは、使い魔に食い尽くされてすっかり禿山になってしまった山々があった。
そして、ご主人様の気持ちも知らず、その禿山を作った使い魔は今日も延々と食べつづけるのであった。
「これ、いつまで大きくなるのよ」
「私に聞かないで」
~おしまい~
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