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戦いは時空を越えて… - (2008/06/18 (水) 21:00:40) の最新版との変更点
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アルビオン・ニューカッスル城・礼拝室――――――――――――
「よくもルイズの気持ちを裏切りやがったなぁ!!」
才人の気迫の剣がワルドに迫る。
「勝手に信じる者を利用して何が悪い!!」
ワルドの杖が空を裂き殺意の風を生み出す。
反王制陣営であるレコン・キスタの一員であったワルドは、アルビオン国のウェールズ皇太子を殺害し
意のままに動かぬルイズをもその手にかけようとしていた。
だが、ルイズの危機を使い魔の能力である「感覚の共有」で知った才人が、間一髪ルイズの元に駆けつけ
今まさに世界を知らぬ平民の意地と世界を動かす貴族の意地がぶつかり合っていた。
「遍在<ユビキタス>!!」
ワルドが呪文を唱えた瞬間、その周囲に陽炎が立ち昇るかのように複数の人影が現われる。
それは姿形ともにワルドそのものであった。
「風は遍在!風の吹くところ何処と無くさ迷い現われるは遍在!使い魔の少年よ、貴様の命もここまでだ!」
人影は才人に対し一斉に構え、突撃していった。
「分身だが何だか知らねーけどよ……お前だけはたたっ斬る!!」
『そうだ相棒!お前の感情なんでもいい!喜怒哀楽どれでもいい!!震わせろ、その心の震えがてめーの力だ!』
才人の左手に刻まれたルーンがより一層輝きを増す。
愛剣・デルフリンガーを構え、自分目がけ襲い来る遍在の中へ斬り込んでいった。
「才人……ワルド……なんで…何で殺しあうの…なんでみんな死んじゃうのよぉ…」
憧れの者に裏切られ、生を望んだ者は死に、目の前では信じていた者と信じている者が殺し合いをしている。
これまでのルイズの人生にとってこれほど悲惨な事は無かった。
しかし自分の力ではこれをどうする事も出来ず、只嘆きながら二人を見ている事しか出来なかった。
『(…は…にあり、…いは…ねにあり、て…はあ…にあり)』
「誰?」
ルイズの耳に何者かの囁きが聞こえてきた。
才人でもワルドでもない、もっと年齢を感じさせる落ち着いた、しかし力強い声。
周囲を見回しても死闘を繰り広げているワルドと才人と、ワルドの一撃で斃れたウェールズ皇太子以外
自分の周りには誰もいない。
しかし声はまだ、ルイズの耳に語りかけてくるのだ。
「一体…何て言ってるの…?」
「遍在を…全て倒すとは流石と…いった所か……ガンダールヴ…!」
「ぶっ…分身に頼ってばっかりのてめーなんざ…楽勝だっての…」
遍在を倒されたワルドは最後の力と、魔力を振り絞った杖を構える。
その左腕の、中ほどから先はもう、無い。最後の遍在を断ち斬った才人の一撃で持っていかれたのだ。
才人もよろめきながらも再びデルフリンガーを真正面に構える。
超人的な身体能力を発するガンダールヴの力も尽きた才人の体には大きな反動が襲っていた。
並の、今までの才人なら即座に倒れて意識を失う程の疲労とダメージ。
しかしここで倒れたらルイズ共々命運はここで尽きてしまう。意志の力だけが才人を支えていた。
「風よ…」
「行くぜ…」
最後の一撃を互いに繰り出そうとしたその時、ルイズはその囁きが
強い声となってこの場に響いたのを感じた。
『運は天にあり!鎧は胸にあり!手柄は足にあり!』
そして、ワルドと才人はまばゆい閃光に包まれた
「また相見えたか!」
「お主こそ久しいな!」
ルイズは光が晴れた目の前の光景を疑った。
対峙していた二人は全くこことは違う、異質な鎧に身を包んでいたのである。
才人の手にはデルフリンガーではない別の物が握られていた。
柄の先に妙な形をした平たい板が付いており何か書かれてある。
ワルドの手にも杖ではなく、ハルゲキニアでは見た事も無い細身の、少し反りが入った剣が握られていた。
「「いざ!」」
そして二人は再び戦い始めた、ワルドの剣はもはやルイズの目では追い切れないほどの猛攻を見せる。
しかし才人は焦る様子も無く手にした武具でその猛攻を捌ききった。
「何が…起こっているの…?」
その光景に目をこすってもルイズの目の前では二人の激戦が繰り広げられている。
今まで瀕死寸前だった二人とは思えないほどの動きは、どこかダンスのように流麗であった。
「この間は妙な人形の体であったが今度は人の体だな謙信!」
「左の腕が無いのが惜しいが遅れはとらぬぞ、信玄!」
“ケンシン”と呼ばれたワルドは改めて剣を構える。魔法衛士隊独特の構えではない、全く違う構え。
“シンゲン”と呼ばれた才人は手にした武具を鎧の腰あたりに挿し、腰にかかっている剣を抜いた。
やはりそれはデルフリンガーではなく、ワルドが持っていた剣と同じ物であった。
構えた二人の動きがぴたりと止む。次の一撃で全てが決すると、ルイズの直感が告げた。
「「斬る!」」
二人の剣が切り結んだ瞬間、再び周囲を眩い閃光が覆った―――――………
「ん…くっ…」
「大丈夫かい?」
ワルドが目を覚ますとグリフォンの上に括りつけられていた。
顔を上げずとも目の前でグリフォンの手綱を取っているのは「土くれのフーケ」だと声で分かる。
「ここは?」
「空の上、旗艦に帰るところだよ」
眼下に広がる風景は幾多もの兵士がニューカッスル城に押し寄せる滅びの風景。
城の守りが破られる時必ず訪れる、殺戮と略奪のうねりである。
「僕は…どうしていた…」
「どうしたも何も、礼拝堂であの小娘と平民と一緒にぶっ倒れてたじゃないか。覚えてないのかい?
大変だったんだよ時間になっても来ないから様子を見に行ったらあの様さ。
あんたを担いでグリフォンに括りつけるの、結構大変だったんだからね。時間外手当でも貰おうかしら?」
ワルドは記憶を辿る、確か最後の一撃をあの平民に叩きこもうとして……そこから記憶は途切れている。
「どうやら、情けない事にお互い最後の一撃を叩き込もうとして倒れたらしい」
「あっははは!『閃光』のワルドとあろう者がねぇ!」
「笑わないでくれよ、傷に響く」
「ごめんごめん。そういえばさ、これ」
そう言ってフーケはワルドの顔の前に何かをズッ、突き出した。
装飾品か、それともマジックアイテムか、Vの字を描いた上に
何かルーンのようなのたくったものが配置されたそれは金色の輝きを発していた。
「何だ?」
「倒れてたアンタが手に持ってたのさ」
眺めていると何故かあの平民が思い浮かんだ。
伝説の使い魔ガンダールヴ。あの主人に叶わぬ恋を抱き、あの主人の為に剣を振るう只の平民。
しかしその想いはついに、ワルドの左腕すら落とした。
「サイト…次こそは……斬る…!」
「んでこれ、いらないんなら捨てちまうかい?」
「…取っておいてくれよ、何だか捨てるのが無性に惜しい」
「あーらら珍しい事で」
「言わなかったかい?僕は世界で一番、欲深い男だよ」
「はっ、今聞いたよそれ!」
ワルドは知らない、知る由もない。
それがあの平民のいた世界に伝わる物だという事は、欠片ほども知らない。
「痛ぅ…」
「ダーリン大丈夫ぅ?」
シルフィードの背びれにもたれかかった才人の腕にキュルケが組み付く。
普段なら嬉しい胸の柔らかさが、今では骨にじわじわと染み入る痛みに感じる。
「ごめん…骨…痛ぇや…」
「怪我人に何やってんのよこの発情痴態女っ!
サイトの骨がアンタの乳の圧力で折れるでしょう!?この殺人おっぱい!マーダーバスト!」
「ご、ごめんねダーリン!って言いすぎよこの石板おっぱい!墓標か何かなワケ!?」
「ハハッ、君も難儀だねぇ」
「うるせぇ…前向いてろギーシュ…」
サイトから離れたキュルケにルイズが食って掛かり、いつもの言い争いが繰り広げられた。
色々あったせいか、このいつものやり取りを見ているだけで生きて帰って来れた実感が沸いて来る。
「……」
才人もまた、ワルドと対峙してからの記憶は無かった。
気づいたら倒れているルイズと自分、そして二人を探しに来たギーシュとタバサとキュルケの姿が目に飛び込んできた。
デルフリンガーに聞いても才人と似たようなもので、
「光に包まれてから全然覚えてねぇ、出番が無かった気がするぜ」
といった感じだった
ルイズが話すには「変な鎧を身にまとって妙な剣で戦っていた、すっごい戦いだった」らしい。
気を失っている間の夢だと笑いそうになったが、ルイズから聞いた自身とワルドが交わした内容や
ルイズに聞こえた謎の声の話、そして今手に持っている“ある物”を見ると信じざるを得ない。
…それを眺めているとどういう訳かワルドの事が思い浮かぶ。
ルイズの婚約者だったが慕っていたルイズの気持ちを裏切り、しかもウェールズ皇太子まで殺した
レコン・キスタの一員。魔法の腕が滅法強くガンダールヴの力と
覚醒したデルフブリンガーの力が無ければ今頃はエア・ニードルで穴だらけで死んでいたに違いない。
剣を振るってから力の差を痛感させられた初めての相手。
「ワルド…次はぜってぇ叩きのめして…あとルイズに謝らせる…」
「それ、何?」
隣で本を読んでいたタバサが視線だけを下に向けて話しかけた。
もちろん、その視線の先は才人が手に持っていた“ある物”であった。
才人も実物を見るのは初めてだが、ゲームや漫画、活字とあらゆるメディアに出てくる
それを知らない才人ではない。
「これ…“軍配”ってんだ」
「“グンバイ”?」
「俺の国に昔あったもん。戦の指揮官がこれ持って指揮したりもし剣で切りかかられてもこれで受けて防ぐんだ。」
「…ありがとう」
そう答えると再びタバサは視線を本に戻した。
軍配を握り締めながら才人は空を眺める、あの二人は今も時と空間を越えて戦っているのだろうか?
答えが浮かぶはずも無く、アルビオンの風が才人の頬を撫でていった。
投下終了
召喚された(というか勝手にやってきた)のは上杉謙信と武田信玄の魂ですが
二人の魂がそれぞれ乗り移って戦うという元ネタはSDガンダム戦国伝からです。
ワルドが持っていたのは謙信の兜の前立て、才人はもちろん信玄の軍配。
…そういえば才人のライバルポジション的なキャラって誰だっけ?
アルビオン・ニューカッスル城・礼拝室――――――――――――
「よくもルイズの気持ちを裏切りやがったなぁ!!」
才人の気迫の剣がワルドに迫る。
「勝手に信じる者を利用して何が悪い!!」
ワルドの杖が空を裂き殺意の風を生み出す。
反王制陣営であるレコン・キスタの一員であったワルドは、アルビオン国のウェールズ皇太子を殺害し
意のままに動かぬルイズをもその手にかけようとしていた。
だが、ルイズの危機を使い魔の能力である「感覚の共有」で知った才人が、間一髪ルイズの元に駆けつけ
今まさに世界を知らぬ平民の意地と世界を動かす貴族の意地がぶつかり合っていた。
「遍在<ユビキタス>!!」
ワルドが呪文を唱えた瞬間、その周囲に陽炎が立ち昇るかのように複数の人影が現われる。
それは姿形ともにワルドそのものであった。
「風は遍在!風の吹くところ何処と無くさ迷い現われるは遍在!使い魔の少年よ、貴様の命もここまでだ!」
人影は才人に対し一斉に構え、突撃していった。
「分身だが何だか知らねーけどよ……お前だけはたたっ斬る!!」
『そうだ相棒!お前の感情なんでもいい!喜怒哀楽どれでもいい!!震わせろ、その心の震えがてめーの力だ!』
才人の左手に刻まれたルーンがより一層輝きを増す。
愛剣・デルフリンガーを構え、自分目がけ襲い来る遍在の中へ斬り込んでいった。
「才人……ワルド……なんで…何で殺しあうの…なんでみんな死んじゃうのよぉ…」
憧れの者に裏切られ、生を望んだ者は死に、目の前では信じていた者と信じている者が殺し合いをしている。
これまでのルイズの人生にとってこれほど悲惨な事は無かった。
しかし自分の力ではこれをどうする事も出来ず、只嘆きながら二人を見ている事しか出来なかった。
『(…は…にあり、…いは…ねにあり、て…はあ…にあり)』
「誰?」
ルイズの耳に何者かの囁きが聞こえてきた。
才人でもワルドでもない、もっと年齢を感じさせる落ち着いた、しかし力強い声。
周囲を見回しても死闘を繰り広げているワルドと才人と、ワルドの一撃で斃れたウェールズ皇太子以外
自分の周りには誰もいない。
しかし声はまだ、ルイズの耳に語りかけてくるのだ。
「一体…何て言ってるの…?」
「遍在を…全て倒すとは流石と…いった所か……ガンダールヴ…!」
「ぶっ…分身に頼ってばっかりのてめーなんざ…楽勝だっての…」
遍在を倒されたワルドは最後の力と、魔力を振り絞った杖を構える。
その左腕の、中ほどから先はもう、無い。最後の遍在を断ち斬った才人の一撃で持っていかれたのだ。
才人もよろめきながらも再びデルフリンガーを真正面に構える。
超人的な身体能力を発するガンダールヴの力も尽きた才人の体には大きな反動が襲っていた。
並の、今までの才人なら即座に倒れて意識を失う程の疲労とダメージ。
しかしここで倒れたらルイズ共々命運はここで尽きてしまう。意志の力だけが才人を支えていた。
「風よ…」
「行くぜ…」
最後の一撃を互いに繰り出そうとしたその時、ルイズはその囁きが
強い声となってこの場に響いたのを感じた。
『運は天にあり!鎧は胸にあり!手柄は足にあり!』
そして、ワルドと才人はまばゆい閃光に包まれた
「また相見えたか!」
「お主こそ久しいな!」
ルイズは光が晴れた目の前の光景を疑った。
対峙していた二人は全くこことは違う、異質な鎧に身を包んでいたのである。
才人の手にはデルフリンガーではない別の物が握られていた。
柄の先に妙な形をした平たい板が付いており何か書かれてある。
ワルドの手にも杖ではなく、ハルゲキニアでは見た事も無い細身の、少し反りが入った剣が握られていた。
「「いざ!」」
そして二人は再び戦い始めた、ワルドの剣はもはやルイズの目では追い切れないほどの猛攻を見せる。
しかし才人は焦る様子も無く手にした武具でその猛攻を捌ききった。
「何が…起こっているの…?」
その光景に目をこすってもルイズの目の前では二人の激戦が繰り広げられている。
今まで瀕死寸前だった二人とは思えないほどの動きは、どこかダンスのように流麗であった。
「この間は妙な人形の体であったが今度は人の体だな謙信!」
「左の腕が無いのが惜しいが遅れはとらぬぞ、信玄!」
“ケンシン”と呼ばれたワルドは改めて剣を構える。魔法衛士隊独特の構えではない、全く違う構え。
“シンゲン”と呼ばれた才人は手にした武具を鎧の腰あたりに挿し、腰にかかっている剣を抜いた。
やはりそれはデルフリンガーではなく、ワルドが持っていた剣と同じ物であった。
構えた二人の動きがぴたりと止む。次の一撃で全てが決すると、ルイズの直感が告げた。
「「斬る!」」
二人の剣が切り結んだ瞬間、再び周囲を眩い閃光が覆った―――――………
「ん…くっ…」
「大丈夫かい?」
ワルドが目を覚ますとグリフォンの上に括りつけられていた。
顔を上げずとも目の前でグリフォンの手綱を取っているのは「土くれのフーケ」だと声で分かる。
「ここは?」
「空の上、旗艦に帰るところだよ」
眼下に広がる風景は幾多もの兵士がニューカッスル城に押し寄せる滅びの風景。
城の守りが破られる時必ず訪れる、殺戮と略奪のうねりである。
「僕は…どうしていた…」
「どうしたも何も、礼拝堂であの小娘と平民と一緒にぶっ倒れてたじゃないか。覚えてないのかい?
大変だったんだよ時間になっても来ないから様子を見に行ったらあの様さ。
あんたを担いでグリフォンに括りつけるの、結構大変だったんだからね。時間外手当でも貰おうかしら?」
ワルドは記憶を辿る、確か最後の一撃をあの平民に叩きこもうとして……そこから記憶は途切れている。
「どうやら、情けない事にお互い最後の一撃を叩き込もうとして倒れたらしい」
「あっははは!『閃光』のワルドとあろう者がねぇ!」
「笑わないでくれよ、傷に響く」
「ごめんごめん。そういえばさ、これ」
そう言ってフーケはワルドの顔の前に何かをズッ、突き出した。
装飾品か、それともマジックアイテムか、Vの字を描いた上に
何かルーンのようなのたくったものが配置されたそれは金色の輝きを発していた。
「何だ?」
「倒れてたアンタが手に持ってたのさ」
眺めていると何故かあの平民が思い浮かんだ。
伝説の使い魔ガンダールヴ。あの主人に叶わぬ恋を抱き、あの主人の為に剣を振るう只の平民。
しかしその想いはついに、ワルドの左腕すら落とした。
「サイト…次こそは……斬る…!」
「んでこれ、いらないんなら捨てちまうかい?」
「…取っておいてくれよ、何だか捨てるのが無性に惜しい」
「あーらら珍しい事で」
「言わなかったかい?僕は世界で一番、欲深い男だよ」
「はっ、今聞いたよそれ!」
ワルドは知らない、知る由もない。
それがあの平民のいた世界に伝わる物だという事は、欠片ほども知らない。
「痛ぅ…」
「ダーリン大丈夫ぅ?」
シルフィードの背びれにもたれかかった才人の腕にキュルケが組み付く。
普段なら嬉しい胸の柔らかさが、今では骨にじわじわと染み入る痛みに感じる。
「ごめん…骨…痛ぇや…」
「怪我人に何やってんのよこの発情痴態女っ!
サイトの骨がアンタの乳の圧力で折れるでしょう!?この殺人おっぱい!マーダーバスト!」
「ご、ごめんねダーリン!って言いすぎよこの石板おっぱい!墓標か何かなワケ!?」
「ハハッ、君も難儀だねぇ」
「うるせぇ…前向いてろギーシュ…」
サイトから離れたキュルケにルイズが食って掛かり、いつもの言い争いが繰り広げられた。
色々あったせいか、このいつものやり取りを見ているだけで生きて帰って来れた実感が沸いて来る。
「……」
才人もまた、ワルドと対峙してからの記憶は無かった。
気づいたら倒れているルイズと自分、そして二人を探しに来たギーシュとタバサとキュルケの姿が目に飛び込んできた。
デルフリンガーに聞いても才人と似たようなもので、
「光に包まれてから全然覚えてねぇ、出番が無かった気がするぜ」
といった感じだった
ルイズが話すには「変な鎧を身にまとって妙な剣で戦っていた、すっごい戦いだった」らしい。
気を失っている間の夢だと笑いそうになったが、ルイズから聞いた自身とワルドが交わした内容や
ルイズに聞こえた謎の声の話、そして今手に持っている“ある物”を見ると信じざるを得ない。
…それを眺めているとどういう訳かワルドの事が思い浮かぶ。
ルイズの婚約者だったが慕っていたルイズの気持ちを裏切り、しかもウェールズ皇太子まで殺した
レコン・キスタの一員。魔法の腕が滅法強くガンダールヴの力と
覚醒したデルフブリンガーの力が無ければ今頃はエア・ニードルで穴だらけで死んでいたに違いない。
剣を振るってから力の差を痛感させられた初めての相手。
「ワルド…次はぜってぇ叩きのめして…あとルイズに謝らせる…」
「それ、何?」
隣で本を読んでいたタバサが視線だけを下に向けて話しかけた。
もちろん、その視線の先は才人が手に持っていた“ある物”であった。
才人も実物を見るのは初めてだが、ゲームや漫画、活字とあらゆるメディアに出てくる
それを知らない才人ではない。
「これ…“軍配”ってんだ」
「“グンバイ”?」
「俺の国に昔あったもん。戦の指揮官がこれ持って指揮したりもし剣で切りかかられてもこれで受けて防ぐんだ。」
「…ありがとう」
そう答えると再びタバサは視線を本に戻した。
軍配を握り締めながら才人は空を眺める、あの二人は今も時と空間を越えて戦っているのだろうか?
答えが浮かぶはずも無く、アルビオンの風が才人の頬を撫でていった。
投下終了
召喚された(というか勝手にやってきた)のは上杉謙信と武田信玄の魂ですが
二人の魂がそれぞれ乗り移って戦うという元ネタはSDガンダム戦国伝からです。
ワルドが持っていたのは謙信の兜の前立て、才人はもちろん信玄の軍配。
…そういえば才人のライバルポジション的なキャラって誰だっけ?
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