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ゼロのロリカード-11 - (2008/06/06 (金) 21:00:48) の編集履歴(バックアップ)
ワルドは歯噛みした。
得物持ちの空賊が数十人。二十数門に及ぶ船の大砲。そしてグリフォンを眠らせたメイジ。
彼我の戦力差は明らかだ。だが幸い精神力はほぼ満タンと言っていい、偏在を使い攪乱しつつで戦えばなんとかなるかもしれないが・・・。
しかし相手のメイジが何人いるのかもわからない、いくらかの被るダメージは覚悟しなくてはならないだろう。
そして他を、少なくともルイズを守りながら戦うというのはかなり難しいだろう。
得物持ちの空賊が数十人。二十数門に及ぶ船の大砲。そしてグリフォンを眠らせたメイジ。
彼我の戦力差は明らかだ。だが幸い精神力はほぼ満タンと言っていい、偏在を使い攪乱しつつで戦えばなんとかなるかもしれないが・・・。
しかし相手のメイジが何人いるのかもわからない、いくらかの被るダメージは覚悟しなくてはならないだろう。
そして他を、少なくともルイズを守りながら戦うというのはかなり難しいだろう。
完全な想定外、自分たちは貴族だ。拘束し交渉すれば身代金を得られることくらいは承知の筈。
なればそれに賭けるか?もしかしたら直接交渉も可能かもしれない。
ワルドは思考を巡らせる。敵戦力を再度注意深く観察し、危険を承知で戦うか大人しくするかを天秤にかける。
なればそれに賭けるか?もしかしたら直接交渉も可能かもしれない。
ワルドは思考を巡らせる。敵戦力を再度注意深く観察し、危険を承知で戦うか大人しくするかを天秤にかける。
船員達は恐れ戦き、ルイズは緊張した面持ちを見せている。
しかし唯一人、超然と倣岸不遜に笑みを浮かべている少女がいたものの気に留める者はなかった。
「硫黄か・・・情報通りだな。よしっ船ごと買った、料金はてめえらの命だ」
しかし唯一人、超然と倣岸不遜に笑みを浮かべている少女がいたものの気に留める者はなかった。
「硫黄か・・・情報通りだな。よしっ船ごと買った、料金はてめえらの命だ」
空賊の頭はそう叫ぶと、続いてルイズ達へと近付く。
頭はまじまじとルイズ達を見つめ、値踏みをしているようだった。
緊張感に耐えかねたルイズが口を開く。
「わ・・・我々は大使よ!アルビオン王党派への使いであるトリステイン貴族!ゆえに相応の扱いを私達は要求するわ!」
空賊達は揃って飽きれた顔をする、最初に笑い出したのは頭であった。
頭はまじまじとルイズ達を見つめ、値踏みをしているようだった。
緊張感に耐えかねたルイズが口を開く。
「わ・・・我々は大使よ!アルビオン王党派への使いであるトリステイン貴族!ゆえに相応の扱いを私達は要求するわ!」
空賊達は揃って飽きれた顔をする、最初に笑い出したのは頭であった。
「はっはっはっは。空賊相手に何を言っている?しかも王党派への使い?あいつらは明日にでも滅ぶだろうよ!」
続けざまに他の空賊も笑い出す、ルイズは恥ずかしそうに唇を噛んだ。
確かに略奪に生きる空賊にそんなことを訴えかけたところで意味がない。
続けざまに他の空賊も笑い出す、ルイズは恥ずかしそうに唇を噛んだ。
確かに略奪に生きる空賊にそんなことを訴えかけたところで意味がない。
オーダー マイマスター
「命令をよこせ、我が主人」
並々ならぬオーラを発し、空賊の襲撃から沈黙を守っていた少女は口を開いた。
ルイズは振り向いて声の主を見つめる。
「命令をよこせ、我が主人」
並々ならぬオーラを発し、空賊の襲撃から沈黙を守っていた少女は口を開いた。
ルイズは振り向いて声の主を見つめる。
「今現在我々の置かれた、この状況を打破してやる、こいつらは障害だ。さあ、ルイズ命令をよこせ」
ワルドも、空賊も、船員達も全員が黙りこくしかなかった。
一体今、自分たちがどのような感情をもって言葉を発することができない。否、許されないのか理解できない。
ワルドも、空賊も、船員達も全員が黙りこくしかなかった。
一体今、自分たちがどのような感情をもって言葉を発することができない。否、許されないのか理解できない。
「どうやって?」
思わずルイズは聞き返した。返ってきたのは至極簡単な答え。
「殲滅する、唯の一人も残さずに」
ゴクリとアーカードを除いた全員が生唾を飲む、当然その言葉はルイズやワルドや船員達に向けられたものではない。
がしかし、その迫力は理性を持った動物の内なる生存本能が働いた結果なのかもしれない。
思わずルイズは聞き返した。返ってきたのは至極簡単な答え。
「殲滅する、唯の一人も残さずに」
ゴクリとアーカードを除いた全員が生唾を飲む、当然その言葉はルイズやワルドや船員達に向けられたものではない。
がしかし、その迫力は理性を持った動物の内なる生存本能が働いた結果なのかもしれない。
「私は殺せる、微塵の躊躇も無く、一片の後悔も無く鏖殺できる。この私は化物だからだ」
アーカードは続ける、他の者達はその口上をただ聞くのみ。
アーカードは続ける、他の者達はその口上をただ聞くのみ。
「剣は私が構えよう、敵も私が定めよう。鞘から刀身を抜き、標的の抵抗を潜り、地へ引き摺り倒し、白刃をその首元へと突きつけよう。
だが、殺すのはお前の殺意だ。さあどうする、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!」
だが、殺すのはお前の殺意だ。さあどうする、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!」
ワルドは絶句した。あぁ、やはりこの少女は危険過ぎる。目的を遂行する上で必ず邪魔になる存在だ。
力量を推察することは、戦闘に於いてとても重要である。若いながらもそれなりに経験を積んできたつもりだ。
だからわかる、そして直感する。恐らくハルケギニアに存在する、人間を含めたあらゆる獣よりも危険だと。
力量を推察することは、戦闘に於いてとても重要である。若いながらもそれなりに経験を積んできたつもりだ。
だからわかる、そして直感する。恐らくハルケギニアに存在する、人間を含めたあらゆる獣よりも危険だと。
ルイズの額から嫌な汗が流れる。殺意が人を殺す。
自分が命令を下すだけでアーカードは宣言と相違なく、間違いなく皆殺しにするだろう。
言葉では形容できない重圧がルイズの心を鈍らせる。
自分が命令を下すだけでアーカードは宣言と相違なく、間違いなく皆殺しにするだろう。
言葉では形容できない重圧がルイズの心を鈍らせる。
「こ・・・殺さないで無力化することはできないの?」
重圧に耐えかねたルイズは質問をする、アーカードはその言葉に嘆息をついた。
「その1、根本的に手加減は得意ではない。その2、主を守りながらそれを行なうは難し」
「むっ・・・」
悩み始め、考え込むルイズをアーカードは半眼で見つめる。
そのままアーカードはトスンッと地べたへ腰を下ろし、あぐらをかき両手をその間へと置いて欠伸をした。
重圧に耐えかねたルイズは質問をする、アーカードはその言葉に嘆息をついた。
「その1、根本的に手加減は得意ではない。その2、主を守りながらそれを行なうは難し」
「むっ・・・」
悩み始め、考え込むルイズをアーカードは半眼で見つめる。
そのままアーカードはトスンッと地べたへ腰を下ろし、あぐらをかき両手をその間へと置いて欠伸をした。
オーダー
「命令マダー」
場を張り詰めていた気が弛緩する、しかし先の余韻の所為か動こうとする者はいなかった。
ルイズはうんうんと唸り、空気も読まず思考を巡らせていた。
「命令マダー」
場を張り詰めていた気が弛緩する、しかし先の余韻の所為か動こうとする者はいなかった。
ルイズはうんうんと唸り、空気も読まず思考を巡らせていた。
「そんなにこの場を血風呂にするのが嫌かのう」
頭を体ごと左右に揺らしながらアーカードは呟く。
「だって・・・」
ルイズはバツが悪そうに唇を尖らせた。
「やれやれ・・・まだまだだ喃、ルイズ。こんなことでは股ぐらもいきり立たん・・・・・・ないけど」
「なっ・・・ま・・またっ・・・・また・・・・・・」
ルイズの顔が紅潮する。そんな様子を見ながらアーカードはニヤニヤと笑っていた。
頭を体ごと左右に揺らしながらアーカードは呟く。
「だって・・・」
ルイズはバツが悪そうに唇を尖らせた。
「やれやれ・・・まだまだだ喃、ルイズ。こんなことでは股ぐらもいきり立たん・・・・・・ないけど」
「なっ・・・ま・・またっ・・・・また・・・・・・」
ルイズの顔が紅潮する。そんな様子を見ながらアーカードはニヤニヤと笑っていた。
「くっ・・・」
アーカードの笑う顔を見て、してやられた感と羞恥心でルイズは半ば自棄気味に空賊達へと向き直る。
「直ちに退きなさい下郎!私の使い魔は本当にアンタ達を殺せるわ。わかったらとっととこの場から消えなさい」
アーカードの笑う顔を見て、してやられた感と羞恥心でルイズは半ば自棄気味に空賊達へと向き直る。
「直ちに退きなさい下郎!私の使い魔は本当にアンタ達を殺せるわ。わかったらとっととこの場から消えなさい」
精一杯の言葉でルイズは空賊達に
「いや、その必要はねえ。お嬢ちゃん、ちょっと俺らの船にきてくれ」
その場にいる誰もが一瞬ポカンとする。
「は・・・?」
「勿論そっちの怖いお嬢さんにもついてきてもらって構わない。ちょっとばかし交渉したいことがある、なぁに悪いようにはしねえ」
「いや、その必要はねえ。お嬢ちゃん、ちょっと俺らの船にきてくれ」
その場にいる誰もが一瞬ポカンとする。
「は・・・?」
「勿論そっちの怖いお嬢さんにもついてきてもらって構わない。ちょっとばかし交渉したいことがある、なぁに悪いようにはしねえ」
ルイズは迷った、どういう腹づもりであるのか勘繰るもよくわからない。
「おめーらは俺の指示があるまではこのまま待機しろ!抵抗されたら別だがな」
頭が空賊達に命令する、空賊達もわけが分からない様子で疑問を抱きながらもそれに従う。
「おめーらは俺の指示があるまではこのまま待機しろ!抵抗されたら別だがな」
頭が空賊達に命令する、空賊達もわけが分からない様子で疑問を抱きながらもそれに従う。
「・・・・・・わかったわ」
ルイズは決断する。
「僕も行こう」
ワルドはルイズに近付きながら言う。
ルイズは決断する。
「僕も行こう」
ワルドはルイズに近付きながら言う。
「いえワルド、あなたは残って。もしなにかあった時に、戦力となる人間が全員敵の船にいるのはまずいもの」
「・・・わかった。でも何かあったらなんでもいい、合図を出してくれ。すぐに助けに行く、僕にとって君は大切な婚約者だからね」
ワルドの言葉にルイズは恥ずかしげに俯く。
「・・・わかった。でも何かあったらなんでもいい、合図を出してくれ。すぐに助けに行く、僕にとって君は大切な婚約者だからね」
ワルドの言葉にルイズは恥ずかしげに俯く。
いつの間にか立ち上がったアーカードが言う。
「では参ろうか」
「では参ろうか」
◇
ルイズは部屋で顎に手を当て月を眺めていた。
そこは明日には滅びるであろう王党派が篭城するニューカッスルの城。
そこは明日には滅びるであろう王党派が篭城するニューカッスルの城。
アーカードが威圧している最中、空賊の頭ことウェールズはルイズが嵌めていた指輪に気付いた。
実際には交渉ではなく、ルイズ達がトリステインからきた貴族なのか、その指輪が本物なのかを確かめたかったのである。
トリステイン王家の水のルビーとアルビオン王家の風のルビー。水と風は虹をつくり、それが紛う事のない本物だと証明された。
空賊を装っていたのは色々とそちらのが都合が良かったからだそうだ。
実際には交渉ではなく、ルイズ達がトリステインからきた貴族なのか、その指輪が本物なのかを確かめたかったのである。
トリステイン王家の水のルビーとアルビオン王家の風のルビー。水と風は虹をつくり、それが紛う事のない本物だと証明された。
空賊を装っていたのは色々とそちらのが都合が良かったからだそうだ。
一向はそのままニューカッスルの城まで行き、ルイズはアンリエッタの手紙を渡し、また受け取った。
ウェールズ皇太子達は、収奪した硫黄で以って最後の抵抗を試みるらしい
ルイズの説得むなしく、ウェールズら王党派の意志は固かった。
ウェールズ皇太子達は、収奪した硫黄で以って最後の抵抗を試みるらしい
ルイズの説得むなしく、ウェールズら王党派の意志は固かった。
「ねえアーカード、・・・どうしてあの人たちは自ら進んで死を選ぶのかしら。想い人が逃げてと言っているのに・・・わけわかんない」
椅子に腰掛けたアーカードはゆっくりと喋りだす。
「ふむ・・・そうだな、人の死生観など様々だと、言ってしまえばそれまでだ。生まれも違えば育ちも違う、理解することなど甚だ不可能だろう。
彼らは命を賭すだけの価値を見出したから、喜び勇んで死地へと赴く。それだけだ、人間は歩き回る陽炎に過ぎん。
が、しかし・・・前にも言ったが私は足掻く人間が好きだ。限られた生の中で儚くも燃え上がる人間は素敵だ。
死とはある種のあきらめ、彼らは最初から負けるつもりで闘いを選んでいる。私はそれが気に入らない」
椅子に腰掛けたアーカードはゆっくりと喋りだす。
「ふむ・・・そうだな、人の死生観など様々だと、言ってしまえばそれまでだ。生まれも違えば育ちも違う、理解することなど甚だ不可能だろう。
彼らは命を賭すだけの価値を見出したから、喜び勇んで死地へと赴く。それだけだ、人間は歩き回る陽炎に過ぎん。
が、しかし・・・前にも言ったが私は足掻く人間が好きだ。限られた生の中で儚くも燃え上がる人間は素敵だ。
死とはある種のあきらめ、彼らは最初から負けるつもりで闘いを選んでいる。私はそれが気に入らない」
月明かりだけが部屋を照らす中、アーカードは淡々と続ける。
「どんなに絶望的状況下であろうが、満身創痍の状態であろうが、仮に勝機が千に一つか万に一つか、億か兆かそれとも京か。
例えそれが那由他の彼方であろうとも、諦めず進み続ける人間は素晴らしい」
ルイズは一拍置き、アーカードに尋ねる。
「もし・・・彼らが勝つ為に戦おうとするのなら、アーカードはそれを肯定するの?」
「無論だ」
間髪入れず答えが返ってくる。
「どんなに絶望的状況下であろうが、満身創痍の状態であろうが、仮に勝機が千に一つか万に一つか、億か兆かそれとも京か。
例えそれが那由他の彼方であろうとも、諦めず進み続ける人間は素晴らしい」
ルイズは一拍置き、アーカードに尋ねる。
「もし・・・彼らが勝つ為に戦おうとするのなら、アーカードはそれを肯定するの?」
「無論だ」
間髪入れず答えが返ってくる。
「私には・・・・・・わからないわ。残された人の気持ちはどうなるの?自分の事しか考えられないの?」
「死に逝く者は残される者の気持ちも慮ろうとしない、だが残される者も死に逝く者の心を鑑みてやれない。
一方が妥協すれば一方が我を通すことになる、双方が折り合いをつけてもどこかである種の諦めが生じる」
「死に逝く者は残される者の気持ちも慮ろうとしない、だが残される者も死に逝く者の心を鑑みてやれない。
一方が妥協すれば一方が我を通すことになる、双方が折り合いをつけてもどこかである種の諦めが生じる」
「・・・・・・じゃあどうしようもないの?」
「どちらも己が信念を、気持ちを通そうとしているだけ。だが相手を説き伏せて根幹からその考えを変えてしまえばよいかもしれんな。
なればそこには妥協も諦めもない。尤も、当然それは容易なことではない。そして今はそんな時間もないだろう」
「なら・・・しょうがないことなの?」
「さてな」
「どちらも己が信念を、気持ちを通そうとしているだけ。だが相手を説き伏せて根幹からその考えを変えてしまえばよいかもしれんな。
なればそこには妥協も諦めもない。尤も、当然それは容易なことではない。そして今はそんな時間もないだろう」
「なら・・・しょうがないことなの?」
「さてな」
ルイズはぐずと鼻をすすり大きく溜息を吐き、窓から双月を仰ぎ見る。
ハルケギニア大陸よりも、雲よりも高いアルビオンから見る夜空は手を伸ばせば届きそうで。
気分が落ち着くまで眺め続け、ルイズは眠りへとついた。
そして・・・ニューカッスルの決戦前夜は更けていく。
ハルケギニア大陸よりも、雲よりも高いアルビオンから見る夜空は手を伸ばせば届きそうで。
気分が落ち着くまで眺め続け、ルイズは眠りへとついた。
そして・・・ニューカッスルの決戦前夜は更けていく。