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サーヴァント・ARMS-08 - (2008/02/26 (火) 01:30:58) のソース
#navi(サーヴァント・ARMS) 今、一体何が起こった? 上半身を丸ごと吹き飛ばされた、自分が生み出した巨大なゴーレム・・・の残骸が崩れ落ちていくのを唖然として見上げながら。 ―――『土くれ』のフーケは、誰でもいいから教えて欲しいと、そう思った。 ある教師から聞き出した情報によれば、今回自分が狙っていたお宝のある宝物庫は物理的な衝撃に弱いらしく。 壁自体はかなり分厚いが、結局良い方法も思いつかなかったので強攻策で30メイルはあるゴーレムで壁をぶち壊そうとしたのがついさっき。 しかしかなり頑丈な壁で中々破れない、それどころかヒビ一つ入る気配の無い壁に業を煮やしかけたその時――― 彼方から飛来してくる光弾に気付いたのは僥倖だった。 あのまま咄嗟に飛び降りて『レビテーション』をかけてなかったら、きっとゴーレムごと自分も消し飛んでいたに違いない。 だが一拍置いて起こった突風でフーケの正体を覆い隠していたローブは飛んでいってしまったし、握っていた杖も手から離れてどこかに転がっていく。 もっともそっちはあらかじめ予備の杖を持ち歩いているので、すぐにそれを抜いた。 光弾がUターンしてくる。そしてその正体が何なのかはっきりと確認したフーケはあんぐりと口を開けた。 光り輝くガーゴイル。しかしその翼は羽ばたかず、背中から空気か何かを噴出させる事で宙に浮いている。 収束された魔力のオーラとは違う、しかし遥かに力強さを感じさせる光。 今の状況も、自分がしていた事も忘れて、思わず見入った。 ―――我に返ったのは、そのガーゴイルが気に掛けるような声を発した時である。 「あ、あの、大丈夫ですか?」 「へっ、あ、な、近寄るんじゃないよ!」 咄嗟に杖を向けた。ガーゴイルは見掛けに似合わない、慌てた声で両手を挙げた。 「ち、違うんです!さっきのおっきなのを倒した時に巻き込んじゃって怪我させたのかと思ってつい! あの、確かこの学院で働いてる人ですよね?見覚えがあるんですけど・・・」 ――こいつ、私の正体に気付いてないのかい?―― 丁度良い。このまま誤魔化してしまおう。 「え、ええ。オールド・オスマンの個人秘書をしているミス・ロングビルです。先ほどのゴーレムを止めようと駆けつけたんですが・・・」 名うての盗賊であるフーケ――またの名をミス・ロングビルにとって、咄嗟の演技は朝飯前である。 その時近づいてくる複数の足音と声。 「これってガーゴイル?」 「ミス・ロングビルから離れなさい!」 「わ、ち、違うんだ!魔法は止めて!」 ガーゴイルは擬似的に意識を埋め込まれた魔法人形の事だ。 が、それでもこのガーゴイルは、今まで見てきたどんなガーゴイルよりも反応が人間っぽい。 それにこの声、どこかで聞いたような。 「僕だよ、ほら、タバサの使い魔の巴武士だ!」 「う、うう嘘おっしゃい!あんたガーゴイルじゃないのよ!そんな訳無いでしょ!」 「でもちょっと待ちなさいよルイズ。この声、確かにタバサの使い魔の彼と同じよ?」 「彼の言っている事は本当」 場に更に1名追加。タバサが武士とルイズ達の間にフワリと舞い降りた。 ・・・何故か杖以外にも服を抱えていたが。 何気に顔も青い。髪とはまた別の意味で青い。つーか青白い。死人みたく。 そして実際、彼女は気分が悪かった。地面に足が触れた途端、ついに限界が来たらしく。 「・・・ばたんきゅう」 「「タバサ―――――っ!!?」」 「えええ!?ちょ、ちょっと誰か来なさいよ!衛生兵!えいせいへーい!!」 今宵の魔法学院の夜は、騒がしく更けていく・・・・・・ サーヴァント・ARMS:第8話 『舞踏』ダンスパーティ タバサがぶっ倒れてしまった事で、フーケの犯行を見ていたとされる面々は翌朝に学院長室に呼び出される事となった。 ちなみにタバサが倒れた原因は武士にあるらしい。 早めに学院に戻ろうと飛ばした結果1000リーグ以上の距離を2時間弱で飛んできたので、 流石に魔法で風の障壁を張って軽減していても、腕の中に居たタバサには負担が大きすぎたようだ。 それでもまだ武士は本気じゃないのだが。 朝食後、授業を免除されて呼び出されたルイズ、キュルケ、タバサ、涼、隼人、武士は学院長室に居た。 待ち受けていたのはコルベールと昨日武士が現場で鉢合わせたミス・ロングビル、そして言わずもがな、部屋の主のオールド・オスマンである。 使い魔組3人は『土くれ』のフーケの事はサッパリ知らなかったが、学院長からの説明でとりあえず名うてのメイジであり盗賊でもあるというのはよく分かった。 なにせ隼人が相手にしたギーシュのゴーレムとは桁が違う。見た目よりも質を重視するタイプという感じだ。 そして―――何よりオスマンが気になったのは、そのフーケのゴーレムを一撃で撃破したという武士の事についてである。 「とにかく礼を言わせて貰おう。あの宝物庫には生徒や教師の貴重品以外にも王宮の方から預かっているものも在っての。 おそらくフーケはそれを狙っとったんじゃろうが、君のお陰でそれを防ぐ事が出来た。心から感謝しておる」 「いえ、あの、僕はその、あの大きなゴーレムが暴れてるのを見て、それで高槻君や隼人君やタバサの友達や学院の皆に何かあったら大変だと思ったからしただけです」 「フォッフォッフォッ、良い子じゃのう君は。・・・ところで、少し教えて欲しい事があるんじゃが・・・」 微かにオスマンの目が細くなる。 気配も変わった。何処と無く涼の両親に似た雰囲気だ。 つまり、一見するとそうでもないが、実はかなりの実力者という事。 オスマンに退室を促されてコルベールが出て行った。 ミス・ロングビルの場合は、既にこれからの話の内容に関わってしまっている為残ってもいいのだろう。武士の主人であるタバサも以下同文。 涼やルイズ達も退室を促された。が、武士から話を聞いて大体の展開が読めていたので、 「多分きっと、俺と隼人も関わっている話だと思うんでここに残らせてください」 「そ、それなら私は使い魔の主人なんですからその話を聞く権利があります!」 「ミス・ヴァリエールと同じ意見というのは気に食いませんが、私も以下同文ですわ」 そういう事になった。 「『あーむず』・・・とな?それが君達の持つ力の事かね?」 「はい。ナノマシンというとても小さな機械の集まりでできた一種の生命体みたいな物で、普段は今みたいに他の人と大差無い様に見えるんですけど・・・」 涼は右袖を捲り上げながらそう解説し、一旦区切ると右腕に力を込める感覚で発動させる。 次の瞬間、異形の腕に一変していた。 「発動すると、ナノマシンの増殖と配列の組み換えによってこうなります」 「なんと、まあ」 まさしく唖然呆然といった体でオスマンは呟きを漏らす。ルイズもキュルケもロングビルも目を見開いていた。 タバサだけ表情は変わらない。それでも視線は涼の右腕に固定されている。 大木が途中からへし折れるような音が重なって響くと、涼同様左袖とズボンの両裾を捲り上げた隼人と武士もARMSを発動させていた。 隼人の左腕は盾と片刃剣が一体化したような造形に。武士の両足は膝から足首近くまでの部分が普通の二倍以上の太さに。 しかし変貌した部分とそこから先の生身の部分はハッキリと一体化して繋がっていた。 「発動するとどうなるのかね?」 「こうハッキリと発動させる必要はありませんけど、身体能力が上がったり、ARMSの種類によって色々な能力が得られます」 「つまりその『あーむず』の種類によって発動の際に変化する部位や特性も違ってくるのかの?魔法の系統のように」 「まあそんな所です。戦闘用に特化したのもあれば、索敵向けのARMSもありましたから」 「ふむそうか・・・ならばミス・ロングビルが見たと言う、ミス・タバサの使い魔のあの姿はどう説明してくれるのかのう?」 使い魔組除く全員、武士に注目。 しかし口を開いたのはやはり先ほどから説明役に徹している涼である。 「ARMSの発動にも種類があるんですよ。今みたいに一部だけ発動させるのでも色々種類があって」 数秒足らずで巨大な拳と化した涼の右腕に大砲のような砲口が生まれる。 「こんな風に変わったり、最終形態だとさっきの武士の様に外見全体が変化するんです」 「ううむ・・・・・」 重々しい唸りがオスマンの口から漏れた。発せられる雰囲気の余りのシリアスさにロングビルが思わず目を見開くほどだ。 名家の子女子息の生徒が集う魔法学院の教師達の頂点に立つには、それなりの力を持つだけではやってけないのである。 「1つ聞かせとくれんか」 「何ですか?」 「わしはこの学院の院長じゃ。この学院の生徒やここで働く教師やその他の者達の安全を保障せなければならん立場にある。 トライアングルクラスの実力を持つと言われるフーケのゴーレムを一撃で倒せるだけの力となれば、それは大層なもんじゃろう。 もし君達が学院の人間にその力を振るう場合、それなりの対応をせなければならなくなるんじゃが・・・」 深いシワが刻まれた眉の向こうで、オスマンの瞳が鋭く光った。 「別に俺達、そんなつもりありませんよ。大体、ARMSが復活したのだってこの世界に来てからだし、俺達の目的は一緒にこの世界に来た筈の仲間2人を探して一緒に元の場所に帰る事なんですから」 「ちょ、ちょっと帰るなんてそんなの聞いてないわよ!?勝手にそんな事許さないんだからね!アンタは私の使い魔なんだから―――」 ガツンッ!! 「テメェ、勝手に人を変な所攫っといて勝手な事言ってんじゃねえ!」 「ダーリンを召喚しちゃったのは私なんだけどね」 「あ、そういえば久留間さんもやっぱりこの世界に来てたみたいだよ。昨日まで行ってたガリアって国で会ったんだ」 「マジか!?」 「うん。でも向こうで出会ったイザベラって子と色々あって、その子にリーダーとしての心構えとかを叩き込んであげるわって張り切ってたけど・・・」 「相変わらずだなオイ」 「貴方とそっくりだった」 「ゲ、ちょっとそりゃ聞き捨てならねえな。一体俺の何処がアイツに似てるってんだ?」 「・・・手が早い」 「ああ、確かにそうだよ」 「武士にまで納得された!?」 「だ、だからいい加減にしなさいよアンタはぁ~~~~~!!」 「・・・・・・と、とりあえず、1人は居場所が分かったみたいです」 「「そ、そうかの(ですか)・・・」」 どうも遅かれ早かれ話のどこかでドタバタが混じるのが最近の彼らの定番らしい。 結局話は頭に血の上ったルイズと隼人のせいで有耶無耶になったが、一応涼達がARMSの力を振りかざして学院の人間に危害を加えない限り、 オスマンも涼達の人探しに協力すると約束してくれた。 それに宝物庫の襲撃の件で少なからず感謝していたらしい。後日それなりの謝礼も出してくれるそうだ。 最低限ルイズ達の世話になっているから衣食住は保障されているとはいえ、やはり世界が変わっても金は天下の回り物なのは同様。 貰うのは武士だが、これは非常用の資金という事で3人で共有する方向で使い道は決定している。 その日の夜に行われたのはフリッグの舞踏会。 吹き抜け構造のアルヴィーズの食堂の2階部分にある大きなホールでは着飾った生徒達がパートナーと共にステップを踏み、 相手が居ない者や休憩中の者は日頃よりも一層豪華な食事に舌鼓を打っている。 今日の主役はタバサとその使い魔である武士だった。 学院を襲撃したフーケのゴーレムを倒したのは武士らしい、と既に学院中にその話は伝わっていた。どっから聞きつけたのやら。 ちなみに当人達は踊る事無く壁の花に徹している。お互いあまり目立つのは好みじゃないらしい。 時折、武士が空になったタバサの小皿を持って料理の補充をしに行き来していた。 タバサがパクついていたハシバミ草のサラダが皿から全て消えた。 武士がタバサの口元に付いたドレッシングに気付いて拭い取った。 頭を優しく撫でながら、目線をタバサの高さに合わせてにっこり微笑する。 タバサの頬が軽く手に染まった。しかし嫌がっている様子は無い。 兄属性と妹属性を持つ者同士、相性は抜群のようだ。 ―――――――つーか、和む。 そのタバサのただ1人の親友と言えるキュルケは、露出の多いパーティドレスに身を包んで思春期の野郎ども・・・ げふんげふん、取り巻きの男子生徒達に囲まれてちやほやされている。 隼人はご馳走を前にここぞとばかり食い溜めしていた。その様子はキャラは違うが、某赤貧マルチドライバー高校生に通じる部分がある。 と、キュルケが取り巻きから抜け出して隼人の腕に抱きついた。 顔を真っ赤にしてキュルケの胸から抜け出る。 隼 人 は 逃 げ 出 し た し か し キ ュ ル ケ に 回 り 込 ま れ た ・・・キュルケ、隼人の天敵確定。 キース・ホワイトを倒した彼も、色気にゃあ敵わなかった。 恵に知れたらどうなる事やら。 涼はバルコニーで双月を見上げながらワインを啜っていた。 ルイズの姿は無い。あの後涼を部屋から追い出して1人、絶賛立て篭もり中だ。 原因はどうも涼がARMSについて隠していた事らしい。力を隠していた事が、ルイズのコンプレックスか何かに触れてしまったようだ。 もしくは受け入れるのを拒否した、と言うべきか。 少なくとも今晩は部屋の中に入れないのは確実だろう。 ――カツミ、今回も絶対お前を見つけ出して、一緒に元の世界に帰るからな―― もしかすると彼女も見ているかもしれない、赤と青の月にそう誓う。 「ちょっとー、テファー?こっち来てみてよ」 ある森の中の家の前で、黒髪の少女が夜空を見上げて声を上げた。 夜闇のせいで分かり辛いが、彼女が着ているのは青みがかった黒色の水兵服に似たデザインの衣装である。 人それを、学生服と呼ぶ。 家の中から現れたのは艶やかな金色の髪の少女。 長く突き出た耳はハルケギニア全土で恐れられるある種族の証なのだが、黒髪の少女は一向に気にするそぶりを見せない。 当たり前だ。種族がどうであれテファは彼女の恩人で、とても良い子だから。 一体彼女の何処に、恐れる必要があるというのか? ・・・年頃の少女としては、テファに装備された特大胸部装甲は充分脅威だったりするけれど。 「ほらあれ、今日は月がこんなに綺麗よ」 「うわぁ、本当ですね」 ――ねえアリス、異世界の月も結構良いと思わない?―― 黒髪の少女は、胸の中でそう問いかける。 そうかもね―――と、小さな少女の声が聞こえた。 ============= NGシーン:完全形態発動後の定番 「う、うう嘘おっしゃい!あんたガーゴイルじゃないのよ!そんな訳無いでしょ!」 「ちょっと待って、今元に戻るから!!」 数mはある翼や身体が瞬く間に縮んでいく。 そして数秒足らずでガーゴイルの居た場所に立っているのは、1人の少年だった。 ・・・裸の。 「「「あ」」」 「・・・中々ご立派」 突如始まったストリーキング騒ぎを眼下に、武士の学生服一式を抱えたタバサが宙に浮いたまま静かに親指を立てていた。 つーか、見たのか? #navi(サーヴァント・ARMS)