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「糸色望の使い魔-1」(2013/05/23 (木) 11:05:12) の最新版変更点
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「絶望した、魔法文明に絶望した!!」
一通りの説明を終えるとその男、イトシキはそう叫んだ。
うるさかったので一喝して黙らせる。
そうすると今度は部屋の隅でブツブツと言い始めた。
蝋燭の炎で二人の影がゆらゆらと揺れていた。
「なんなのよ、アンタは」
はぁ、とため息を吐き出す。
ともかくこの使い魔であるイトシキは召喚した時から挙動不審だった。
そもそも服装が変だ。
妙に色が浅くて地味だし。
いい加減に無視して寝ようかと思ったところで、イトシキが立ち上がった。
「すいません、ロープを貸してもらえませんか?」
「……持ってないわよ、何に使うのよ?」
「いえ、無いのならいいのです」
そう言うと使い魔用に用意したわら束に寝転がった。
そうして、私こと、ルイズ・ド・ヴァリエールの一日は終わった。
体が揺れている、それに合わせて目を開けると窓から差し込む光が目を刺した。
首を曲げると朝から辛気臭い顔があった。
「……誰?」
「糸色です」
「あぁ、昨日に使い魔にしたんだったわね」
残念ながら夢では無かったようだ。
まだ、はっきりとしない頭を揺らしながら起き上がり。衣装棚から着替えを取り出した。
「着せなさい」
「それも仕事ですか?」
「そうよ」
「私は男ですが?」
「使い魔じゃない」
「そういうモノなんですか?」
「そういうものよ、早くしなさい」
しぶしぶといった顔でイトシキは服を取り着替えを手伝う。
着替えが終わる、ふとイトシキが微妙な顔をしていることに気がついた。
「何?」
「いえ、文化の違いに戸惑いを隠せないだけです」
あぁ、そう言えば何処かの外国から召喚したんだったわね。
「あと、昨日言われてた洗濯はやっておきましたよ」
「そ、じゃあ食堂に行くわよ」
そう言ってドアを開けようとする。
だがイトシキがまったく動かない事に気づき振り返る。
「どうしたの? あなたも朝ご飯は食べるでしょう」
「ルイズさん、何か忘れてませんか?」
忘れてること?
そう言われて自らの格好を確かめ、杖があることを確かめた。
「筆記具ならあとで良いのよ、そのまま授業に行くわけじゃないから」
「違います」
ならば何を忘れたというのだろうか。
「確かに、私のほうから要求するのは筋違いというものかもしれません。
しかし、コレがあってこそ人間関係の潤滑。
さらには次への活力となるのでは無いでしょうか」
あまりに真剣な顔で言うものだから考えた
考えてなんとなく言いたい事を察してこう言い返した。
「……お洗濯、ごくろうさま」
朝から妙に疲れた気分になりながら部屋を出た
廊下に赤い髪を揺らしツェルプトーがそこに居た。
「おはよう、ルイズ。いい朝ね」
「私は最悪な気分よ、ツェルプトー」
原因はイトシキが七割、ツェルプトーが三割ぐらいで。
「あなたがルイズの使い魔ね」
「あまり認めたくありませんが、そのようです」
と失礼なことを言ったので足をかかとで踏みつけた。
「昨日はじっくり見てなかったから見に来たんだけど……」
痛みにこらえているイトシキの顔を覗き込んだ。
「冴えない顔ねぇ」
「自覚してるので、あまりはっきり言わないで下さい」
自覚してるんだ。
「使い魔って言うのはこういうのを言うのよ、フレイム」
ツェルプトーが言うとその後ろから大きな火トカゲが出てくる
「使い魔って人間以外も居るんですね」
とイトシキが見当違いな感想を漏らした。
ツェルプトーがキョトンとした顔をしたあと、腹を抱えて笑い始めた。
「あははは、何、あなた、あははは」
「笑うんじゃないわよ!! イトシキあなたはもう口を閉じてなさい」
「なっ、人間って私だけなんですか?!」
「いいから口を閉じてなさい!」
ただでさえ人間を召喚してしまった事でいろいろ言われるのだと覚悟していたのに
その上、無知な田舎モノと思われては恥の上塗りに他ならない。
「くっ、新しい職場には人間の同僚すら居ないというのか……」
よく分からない事を言っていたが、無視することにした。
もうつれて歩くのも半ば億劫になったので、他の使い魔と同じように
使用人に食事を貰うように言うと私は一人食堂へと向かった。
予想通りに様々な揶揄を受けた、当然のごとく反論する。
そんなこんながあったが、毎日の習慣のようにそれを消化した。
食事が終わると中庭にイトシキを迎えにいく。
普通の使い魔なら念じるだけで呼び寄せられるのだが。
「そうです、我々は主のために働いている。ですがその実態は衣食住を得るための
生き物としての当たり前の事でしかない。いわばコレも仕事なのです
たとえ職場の環境が最悪であろうと、この就職難の世界を生き抜くためには……」
そこには何故か他の使い魔相手に演説しているイトシキの姿があった。
しかも内容が微妙に後ろ向きである。
あまりに恥ずかしい光景だったので黙って歩き、そのまま耳を引っ張ってその場を離れた。
そんな事があったから集中力が乱れたのか。
それともいつもどおりだったのかは分からないが、今日の授業で大失敗をしてしまった。
錬金するはずの石を爆発させて先生を気絶させてしまったのである。
爆発の影響でボロボロになってしまった教室
その後片付けをイトシキと二人でやっていた。
「……なんか言いなさいよ」
掃除がはじまってから
と言うよりは授業がはじまってからイトシキはほとんど喋ってなかった
間が持たずにそう話しかけた
「いろいろ、考えていました」
「何を?」
「ぇえ……実は私、こちらに来る前は学校の先生をやってまして」
それは意外だった。こんな人間に果たして人を導くことができるのだろうか?
「その経験から言わせて貰うと、生徒のいじめというものは本当に酷い!!」
何が言いたいのかその目的が掴めずに黙って聞いた。
「靴に画鋲をいれたり、トイレの上から水をかけるのは当たり前……」
確かにそれに似た事をやる生徒もたまに居る。
だけど靴に何か入れるというのは余り無い、ベッド以外では脱がないのに
どこで入れる機会があるのだろう?
「中にはいじめられっ子の家まで行ってペットをいじめ殺した事があるとか」
「ふ~ん、それは確かに酷いわね」
「そうなると、私も殺されてしまうのでは無いでしょうか!?」
「へ?」
何故そんな結論に至ったのか、落ち着いて今の話を頭の中で整理する。
いじめられてる子のペット、つまりは使い魔である自分が殺されてしまう。
ならば、そのいじめられっ子とは
「だ、誰がいじめられっ子よ!!」
「貴女です」
「死になさい!」
投げたその机の木片は彼の頭に当たった。
「……」
バタリと倒れる
「あ……」
しまった、思いっきり投げてしまった。
慌てて近寄る。少しコブになっている、だが言うほど酷くは無さそうだ。
「大丈夫?」
頭を抑えてゆっくりと起き上がった。
「し……」
「し?」
「死んだらどうする!?」
今まで敬語だった相手がいきなり乱暴な言葉になる。
さすがにやりすぎたと思って、謝罪の言葉を述べた。
「あ、いや――わ、悪かったわ」
「まったく、気をつけてくださいね。豆腐の角にぶつかって死ぬ人すら居るんですから」
トウフ?
よく分からないが人が死ぬほど硬いものらしい。
「ともかく、魔法は諦めずに頑張ってください
使えるようになればいじめも無くなるはずです」
「言われなくても諦める気なんて無いわよ」
「もし貴女が引きこもりにでもなったら私の人生も危ういんですから」
励ましてくれた訳じゃないようだ。
彼と出会ってからほぼ一日経とうとしているが
大体、イトシキの性格が分かりかけてきた。
ネガティブだ、何事も後ろ向きに考える性格なのだろう。
そんな性格の使い魔なんて自分には合わない。
もっと気高く自信に溢れているべきである。
ここはご主人様としてこの性格は矯正するべきだろう。
「ところでルイズさん」
「何よ?」
「使い魔というのはお給料はあるのでしょうか?」
「無いわよ」
「……一銭も?」
「……銅貨一枚も無いわ」
「絶望した、使い魔に絶望した!!」
―――――ひとまず完―――――
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#navi(糸色望の使い魔)
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「絶望した、魔法文明に絶望した!!」
一通りの説明を終えるとその男、イトシキはそう叫んだ。
うるさかったので一喝して黙らせる。
そうすると今度は部屋の隅でブツブツと言い始めた。
蝋燭の炎で二人の影がゆらゆらと揺れていた。
「なんなのよ、アンタは」
はぁ、とため息を吐き出す。
ともかくこの使い魔であるイトシキは召喚した時から挙動不審だった。
そもそも服装が変だ。
妙に色が浅くて地味だし。
いい加減に無視して寝ようかと思ったところで、イトシキが立ち上がった。
「すいません、ロープを貸してもらえませんか?」
「……持ってないわよ、何に使うのよ?」
「いえ、無いのならいいのです」
そう言うと使い魔用に用意したわら束に寝転がった。
そうして、私こと、ルイズ・ド・ヴァリエールの一日は終わった。
体が揺れている、それに合わせて目を開けると窓から差し込む光が目を刺した。
首を曲げると朝から辛気臭い顔があった。
「……誰?」
「糸色です」
「あぁ、昨日に使い魔にしたんだったわね」
残念ながら夢では無かったようだ。
まだ、はっきりとしない頭を揺らしながら起き上がり。衣装棚から着替えを取り出した。
「着せなさい」
「それも仕事ですか?」
「そうよ」
「私は男ですが?」
「使い魔じゃない」
「そういうモノなんですか?」
「そういうものよ、早くしなさい」
しぶしぶといった顔でイトシキは服を取り着替えを手伝う。
着替えが終わる、ふとイトシキが微妙な顔をしていることに気がついた。
「何?」
「いえ、文化の違いに戸惑いを隠せないだけです」
あぁ、そう言えば何処かの外国から召喚したんだったわね。
「あと、昨日言われてた洗濯はやっておきましたよ」
「そ、じゃあ食堂に行くわよ」
そう言ってドアを開けようとする。
だがイトシキがまったく動かない事に気づき振り返る。
「どうしたの? あなたも朝ご飯は食べるでしょう」
「ルイズさん、何か忘れてませんか?」
忘れてること?
そう言われて自らの格好を確かめ、杖があることを確かめた。
「筆記具ならあとで良いのよ、そのまま授業に行くわけじゃないから」
「違います」
ならば何を忘れたというのだろうか。
「確かに、私のほうから要求するのは筋違いというものかもしれません。
しかし、コレがあってこそ人間関係の潤滑。
さらには次への活力となるのでは無いでしょうか」
あまりに真剣な顔で言うものだから考えた
考えてなんとなく言いたい事を察してこう言い返した。
「……お洗濯、ごくろうさま」
朝から妙に疲れた気分になりながら部屋を出た
廊下に赤い髪を揺らしツェルプトーがそこに居た。
「おはよう、ルイズ。いい朝ね」
「私は最悪な気分よ、ツェルプトー」
原因はイトシキが七割、ツェルプトーが三割ぐらいで。
「あなたがルイズの使い魔ね」
「あまり認めたくありませんが、そのようです」
と失礼なことを言ったので足をかかとで踏みつけた。
「昨日はじっくり見てなかったから見に来たんだけど……」
痛みにこらえているイトシキの顔を覗き込んだ。
「冴えない顔ねぇ」
「自覚してるので、あまりはっきり言わないで下さい」
自覚してるんだ。
「使い魔って言うのはこういうのを言うのよ、フレイム」
ツェルプトーが言うとその後ろから大きな火トカゲが出てくる
「使い魔って人間以外も居るんですね」
とイトシキが見当違いな感想を漏らした。
ツェルプトーがキョトンとした顔をしたあと、腹を抱えて笑い始めた。
「あははは、何、あなた、あははは」
「笑うんじゃないわよ!! イトシキあなたはもう口を閉じてなさい」
「なっ、人間って私だけなんですか?!」
「いいから口を閉じてなさい!」
ただでさえ人間を召喚してしまった事でいろいろ言われるのだと覚悟していたのに
その上、無知な田舎モノと思われては恥の上塗りに他ならない。
「くっ、新しい職場には人間の同僚すら居ないというのか……」
よく分からない事を言っていたが、無視することにした。
もうつれて歩くのも半ば億劫になったので、他の使い魔と同じように
使用人に食事を貰うように言うと私は一人食堂へと向かった。
予想通りに様々な揶揄を受けた、当然のごとく反論する。
そんなこんながあったが、毎日の習慣のようにそれを消化した。
食事が終わると中庭にイトシキを迎えにいく。
普通の使い魔なら念じるだけで呼び寄せられるのだが。
「そうです、我々は主のために働いている。ですがその実態は衣食住を得るための
生き物としての当たり前の事でしかない。いわばコレも仕事なのです
たとえ職場の環境が最悪であろうと、この就職難の世界を生き抜くためには……」
そこには何故か他の使い魔相手に演説しているイトシキの姿があった。
しかも内容が微妙に後ろ向きである。
あまりに恥ずかしい光景だったので黙って歩き、そのまま耳を引っ張ってその場を離れた。
そんな事があったから集中力が乱れたのか。
それともいつもどおりだったのかは分からないが、今日の授業で大失敗をしてしまった。
錬金するはずの石を爆発させて先生を気絶させてしまったのである。
爆発の影響でボロボロになってしまった教室
その後片付けをイトシキと二人でやっていた。
「……なんか言いなさいよ」
掃除がはじまってから
と言うよりは授業がはじまってからイトシキはほとんど喋ってなかった
間が持たずにそう話しかけた
「いろいろ、考えていました」
「何を?」
「ぇえ……実は私、こちらに来る前は学校の先生をやってまして」
それは意外だった。こんな人間に果たして人を導くことができるのだろうか?
「その経験から言わせて貰うと、生徒のいじめというものは本当に酷い!!」
何が言いたいのかその目的が掴めずに黙って聞いた。
「靴に画鋲をいれたり、トイレの上から水をかけるのは当たり前……」
確かにそれに似た事をやる生徒もたまに居る。
だけど靴に何か入れるというのは余り無い、ベッド以外では脱がないのに
どこで入れる機会があるのだろう?
「中にはいじめられっ子の家まで行ってペットをいじめ殺した事があるとか」
「ふ~ん、それは確かに酷いわね」
「そうなると、私も殺されてしまうのでは無いでしょうか!?」
「へ?」
何故そんな結論に至ったのか、落ち着いて今の話を頭の中で整理する。
いじめられてる子のペット、つまりは使い魔である自分が殺されてしまう。
ならば、そのいじめられっ子とは
「だ、誰がいじめられっ子よ!!」
「貴女です」
「死になさい!」
投げたその机の木片は彼の頭に当たった。
「……」
バタリと倒れる
「あ……」
しまった、思いっきり投げてしまった。
慌てて近寄る。少しコブになっている、だが言うほど酷くは無さそうだ。
「大丈夫?」
頭を抑えてゆっくりと起き上がった。
「し……」
「し?」
「死んだらどうする!?」
今まで敬語だった相手がいきなり乱暴な言葉になる。
さすがにやりすぎたと思って、謝罪の言葉を述べた。
「あ、いや――わ、悪かったわ」
「まったく、気をつけてくださいね。豆腐の角にぶつかって死ぬ人すら居るんですから」
トウフ?
よく分からないが人が死ぬほど硬いものらしい。
「ともかく、魔法は諦めずに頑張ってください
使えるようになればいじめも無くなるはずです」
「言われなくても諦める気なんて無いわよ」
「もし貴女が引きこもりにでもなったら私の人生も危ういんですから」
励ましてくれた訳じゃないようだ。
彼と出会ってからほぼ一日経とうとしているが
大体、イトシキの性格が分かりかけてきた。
ネガティブだ、何事も後ろ向きに考える性格なのだろう。
そんな性格の使い魔なんて自分には合わない。
もっと気高く自信に溢れているべきである。
ここはご主人様としてこの性格は矯正するべきだろう。
「ところでルイズさん」
「何よ?」
「使い魔というのはお給料はあるのでしょうか?」
「無いわよ」
「……一銭も?」
「……銅貨一枚も無いわ」
「絶望した、使い魔に絶望した!!」
―――――ひとまず完―――――
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