世の中には天才と言う物が存在する。各々、己の得意分野をリードし、世の中の発展に大きく寄与する天才。だが、真の天才という物は、おおよそにして常人とはかけ離れた思考回路の持ち主であるという。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが召喚してしまったのは、正しくそうした真の天才であった。
その青年はまず、風体から変わっていた。
異国風の装束はまだ良い。解らないのはその頭部。巻かれたターバンの上に鎮座するのは、何故か鳥の卵。さらにその周りを極楽鳥の羽が取り巻いている。
ルイズは召喚の後、何者かを問う前に思わずその風体について問いただす。得られた答えはただ一つ。
異国風の装束はまだ良い。解らないのはその頭部。巻かれたターバンの上に鎮座するのは、何故か鳥の卵。さらにその周りを極楽鳥の羽が取り巻いている。
ルイズは召喚の後、何者かを問う前に思わずその風体について問いただす。得られた答えはただ一つ。
「雅であろう?」
全く意味不明だ。
それからも、この使い魔は意味不明な行動をとり続けルイズは頭痛に悩まされる事となる。
例えば、ギーシュの落とした香水瓶をそのまま己の物とし、ルイズの部屋をハシバミ草の臭いで充満させたかとおもえば、翌日は一日中タバサとハシバミ草について語らい、興が乗ったのか、『ハシバミ草の語らい』なる曲、いやさ雑音、いやいや騒音を食堂で演奏して、学院の生徒達を数多錯乱させた事件。通称『アルヴィーズの食堂の怪奇』は有名なところだ。
ルイズ自身もこの事件に関しては、「あの狂ったフルートの音を止めてくれ!!ああ、見える、世界の彼方、虚空の中心で煮えたぎる混沌の姿が!!」と叫び、医務室に運ばれたマリコルヌの姿が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
ルイズ自身もこの事件に関しては、「あの狂ったフルートの音を止めてくれ!!ああ、見える、世界の彼方、虚空の中心で煮えたぎる混沌の姿が!!」と叫び、医務室に運ばれたマリコルヌの姿が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
他にも、アンリエッタ王女の依頼で潜入したアルビオンで、「誇りの為に死を覚悟の上で決戦に赴く」と言ったウェールズ皇太子を問答無用で殴り倒し、そのまま担いで先に帰還してしまった『アルビオンの暴虐』、はたまた、ミスターコルベールが開発した「愉快なへびさん」をえらく気に入り、またもや頭上にセットしてみたり。
とにかく訳のわからぬこの使い魔は、きわめて気まぐれで思いがけない行動に出るという特徴も備えていた。件のアルビオンでの事然り、また、レキンコスタとの戦いで殿を勤め、生死不明と思われたときも、何故かルイズ達より先に学院に帰還して、茶を飲んでいたり、どこからともなくエルフの血を引く少女と彼女の被保護者の孤児達を連れ帰ったりと、まさに意味不明、歩く理不尽そのものと言った輩なのだ。
しかし、この使い魔はきわめて有能であった。
宝物庫から「破壊の杖」を盗もうとしたフーケとの戦いでは、いつの間にかゴーレムをよじ登り、問答無用でフーケを殴り倒して捕獲。レキンコスタとの戦いでは、ふと姿を消したと思えば、次の瞬間には、なんと敵総大将たるクロムウェルを捕らえて来たり。とにかく意味不明だが有能なのは間違いないという使い魔だった。
宝物庫から「破壊の杖」を盗もうとしたフーケとの戦いでは、いつの間にかゴーレムをよじ登り、問答無用でフーケを殴り倒して捕獲。レキンコスタとの戦いでは、ふと姿を消したと思えば、次の瞬間には、なんと敵総大将たるクロムウェルを捕らえて来たり。とにかく意味不明だが有能なのは間違いないという使い魔だった。
*
極めつけはつい先日、タバサを救出するためにガリアに潜入した時のことだ。
強大極まりない先住の魔法の使い手たるエルフのビダーシャル。あわやルイズ達がコレまでと思ったその時に、しばらく姿を消していたこの使い魔は現れた。
「おおルイズ、久しぶりではないか。と、そちらに居るのはビダーシャル殿か?過日は世話になったな、せっかく再会したのだし、旧交を温めようではないか。」
そんな使い魔ののんきな言葉を聞いたビダーシャルが、苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。おそらく、このエルフも、この使い魔の気まぐれで相当の被害を被ったのであろう。今まさに敵対している相手とはいえ、このエルフに同情を禁じ得ないルイズだった。
そうこうしていると使い魔は、双方が戦闘中であると理解し、この場を納めようと提案する。
そうこうしていると使い魔は、双方が戦闘中であると理解し、この場を納めようと提案する。
「ビダーシャル殿、私も友人同士が争うのは見たく無いのだ。そこで、つい先ほど完成した新曲『ガリアの宴、友人との再会編第一楽章』を聞いて心落ち着けて考え直してはいただけまいか。」
「やめい!!」
「やめい!!」
反射的にツッコミを入れるルイズを、ビダーシャルが気の毒そうな目で見ている。「そうか、キミもこの男の行動に苦しめられて来たのだね」とその瞳は語っていた。思わず仲間意識が芽生えるルイズとビダーシャルであった。しかし、使い魔は問答無用で演奏を開始する。まさにその笛の音色は混沌の調べとでもいおうか。
のたうち回る一同。そしてビダーシャルは苦しみのあまり、懇願する。
のたうち回る一同。そしてビダーシャルは苦しみのあまり、懇願する。
「この場は見逃すし、おまけでオルレアン公妃が飲んだ毒の効果も消そう。だから、コイツのこの笛を止めさせてくれ!!」
一も二もなく受け入れるルイズ。それを見届けると使い魔はこうのたもうた。
「そうか、ようやく解ってくれたか。うむ、私は嬉しいぞ。そこでだ、たった今完成した『ガリアの宴、友人との再会編第二楽章』を披露させていただこう。」
その後数十分地獄続行。全てが終わったとき、半泣きで走り去ったビダーシャルの姿を、ルイズは一生忘れ無いだろう。
とまあ、極めて不条理かつ有能なこの使い魔。
この使い魔の事を思い浮かべる度、ルイズはこう叫ばずには居られない。
この使い魔の事を思い浮かべる度、ルイズはこう叫ばずには居られない。
「お願いですミスターコルベール!!召喚をやり直させてください!!これ以上この藍 龍蓮を使い魔にしているのには耐えられません!!」
終わり
-「彩雲国物語」の藍 龍蓮(らん りゅうれん)を召喚