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  • ゼロな提督-02

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロな提督-02

最終更新:2008年09月01日 20:26

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  • ゼロな提督


「それで、結論を言ってくれんかの?ミスタ・コルベール」
「はい。あのヤン・ウェンリーという男性の左手のルーン、あれはガンダールヴです」

 学院長室でオスマンは椅子に腰掛けながらヒゲを撫でている。
 窓の向こうの朝日を見ながらコルベールの報告を聞いていた。
 ガンダールヴ、という言葉をゆっくりと反芻した学院長は、報告者に向き直る。

「そして、もう一つの点は?」
 もう一つ、と問われたコルベールは、非常に気まずそうに視線を落とす。大きく息を吸い、意を決して口を開いた。
「あの、ヤン・ウェンリーという男はハルケギニアの人間ではありません。ハルケギニアとは接触の無い、聖地よりも遙か遠方の国の人間です。
 衣服の数カ所にあった文様は彼の国の文字と思われます。が、解読不能です。未知の言語ですぞ。
 彼の衣服も銃も、全く正体不明な素材で作られていました。その頑丈さ、加工の精緻さから、技術レベルはハルケギニアを大きく引き離していると思われます。あれほどのものは、いかなる魔法でも練成出来ません」
「・・・結論を、言って欲しいのだが?」

 結論。改めて問うオスマンの視線は、あまりにも厳しい。明らかに結論の内容を自ら予想している。
 コルベールには、その視線を受け止める事が出来ない。彼が、そしてオスマンが予測する結論は、あまりにも重大すぎたからだ。
 彼は黙して立ちつくす事しかできない。

「予め言っておくが、コルベール君。君の責任は問わんよ。これは全く想定外の、事故とすら言えるのじゃから。それに、ワシも現場にいて、この件に関わったんじゃし」
 免責を確約され、ようやくコルベールは最終的な結論を語った。彼が導き出した、この学院の教師一同が大馬鹿揃いであることを示す結論を。

「ミス・ヴァリエールは、トリステインを遙かに上回る国力・技術力を持つ国の軍人を召喚しました。彼の階級章の模様の複雑さ、契約後に彼とミス・ヴァリエールが交わした会話等からの推測なのですが、彼は上級士官。もしかしたら、将軍クラス。ゲルマニアのように、功さえあれば平民でも報われる国なのでしょう。
 恐らく彼の国では大騒動になっていますぞ。捜索隊が四方八方に放たれているかと」



      第2話  平民以上、メイジ未満



 一気に語ったコルベールは、大きく溜め息をつく。そしてそれを聞いたオスマンも。
 再び老人は窓の外を見上げた。
 二人の間にある机には、皮布に包まれた物体が置かれている。

「彼が嘘をついているとか、正気ではない、という可能性は?彼はどうみても軍人らしくないが」
「ありません。そもそも我々は彼の身分を尋ねてませんから、嘘もありません。彼の発言に矛盾点もありません。また軍人でありながら、あまり筋肉質でなかった事などから、前線に立たない階級でしょう。
 ついでに言うなら、彼の所持品は、下着一枚に至るまで、その全てが人間技を超えた未知の技術の塊です。しかも彼が言うには、彼が持っていた銃らしきものすら『オモチャ』だと」
 コルベールは半ば興奮しながら、自分の予測を語り続けた。その研究者としての目は、机の上の皮布に包まれた物体にも注がれている。



 ヤンが暗殺されたのは宇宙暦800年、6月1日午前2時55分。ビーム銃による銃撃で左大腿部の動脈を損傷し出血多量を起こし死亡。享年33歳・・・のはずだった。
 西暦2801年を宇宙暦1年としているので、ハルケギニアの科学レベルが中世ヨーロッパと同程度するなら、その差は2000年。ゴールデンバウム王朝成立と、同盟との永きに渡る戦乱で人類の科学も文化も停滞期に入ってしまったが、それでもハルケギニアとは比べものにならない。


 だがそんな事は、髯の老人が知るはずもない。彼が知っているのは、いや知ってしまったのは、もっと近視眼的な事象だ。
「なんて・・・ことじゃ。
 どうして『契約』前に言ってくれなかったんじゃ!彼がハルケギニアの人間でないと!異国の高級軍人だとっ!!」
 立ち上がってコルベールを詰問するオスマンは、今さっき免責を保証したばかりだという事を忘れていた。詰問されるコルベールも。
「か、彼の話しを聞くまで、まさか、そんな大変な人物だとは思わなくて・・・ただ、凄い品々があるとしか考えなくて・・・それに、『契約』をしないとミス・ヴァリエールは進級出来ず・・・」

 眉間に深い深いシワを刻んで座り直したオスマンは、眉間のシワに負けないほどの深い溜め息をついてしまった。
 召喚の儀式を取り仕切っていたコルベールは、ただでさえ少ない頭髪が更に薄くなったかのように見える。

「こうなると、ミス・ヴァリエールの『契約』が彼の精神を支配しなかったのは幸運といえるじゃろうな」
 コルベールも、ルイズの昨日の落胆を思い返しつつも、安堵したように頷いてしまう。「ですなぁ・・・もし捜索隊がトリステインに来た時、自分たちの上官がまるで犬かネコのように扱われているのを発見したら・・・」
 二人の頬に冷や汗が流れる。
「あらゆる手段で『契約』を消し、彼の身柄を奪い返すじゃろうな。外交問題、というより戦になりかねん。最悪、ミス・ヴァリエールの命は無い。『契約』を強要した我々学院の教師も、な」
「さらにまずいのは、彼の国は王政を打破するための戦争をしていたらしい、ということです。アルビオンのレコン・キスタのように。
 その彼等の士官が、このトリステイン王国の有力貴族に使い魔として無理矢理に拉致されたと知ったら、どうなるか・・・」


 二人の予想は、あまりにも冷酷で絶望的なものだった。
 何故、彼を使い魔として認めてしまったのか。どうして平民だからと『契約』をさせてしまったのか。『契約』前に彼の話を聞こうとしなかったのは誰か。身体が弱っているのを良い事に無理矢理押さえつけたのは。人間を物扱いしたのは。魔法を使えないからと軽んじたのは。
 全て自分達だ。メイジだから平民を支配するのが当然だ、という傲慢が自分の首を絞めたのだ。
 この学院は今、爆弾を抱え込んでしまった。しかも自分達で導火線に火を放ってしまった。ガンダールヴは、ほとんど伝説。だが彼が他国の軍人なのは、もっと切実な現実的問題。
 二人とも、己の間抜けさに打ちひしがれて何も言えない。



 コンコン
 扉がノックされた。
「ミス・ロングビルかの?」
 扉の向こうから若い女性の声がする。秘書のロングビルだ。
「はい。朝食の時間ですが、まだおいでにならないようですので」
「ああ、そんな時間じゃったか。もう少ししたら行くでな」
 承知しました、という言葉を残して足音が去っていく。

 溜息混じりにコルベールが口を開いた。
「念のために言っておきますが、口封じとか証拠隠滅とかは、不可能です」
 聞いたオスマンは顔を紅潮させて立ち上がる。
「わかっとるわ!ヴァリエール家の三女が召喚した使い魔を消す!?その時点でわし等の首が飛ぶわい!!
 というか、そんな外道なマネ、教育者としてありえん!」
 その言葉に、コルベールも安堵したかのように微笑む。
「そうですか。なら、捜索隊が来ない事を祈るしかありません」
「うむ、そして彼の身柄には最大限の注意を払ってくれ。さりげなく、じゃ。彼の過去については、本人が自ら語るまで聞くんじゃないぞ。誰に聞かれても『知らない』と言い張れ。不幸な事故とするしかない」
「はい。既に彼の所持品は返してあります。銃も含めてです。地位についてもミス・ヴァリエールの提案で、使い魔ではなく執事として雇用することになりました」
「そうか。とりあえず、それでよいわい。
 ん・・・?待つんじゃ。何故これは彼に返していないんじゃ?」
 そういってオスマンは皮布に包まれた物体を指し示した。尋ねられたコルベールは、狼狽してしまう。
「そ、それは、その・・・これは、どう見ても彼の物には見えませんでした、ので・・・それに、これは、その、明らかに壊れていますから・・・」

 ジロッと老人は中年男を睨み付ける。

「ふんっ、よく言うわい。どうせ、好奇心とやらに負けたんじゃろ?こっそり研究するつもりじゃったんだろうが」
「いえ!いえ・・・その、はぁ、そうなのです。申し訳ない。で、ですがっ!こうしてここに持ってきたのですから」
「わかっとるわい。それにしても、なぁ・・・」

 オスマンは皮布に向かって杖を振る。
 すると物体は宙に浮き、皮布がほどかれていった。皮布にはベッタリと血がこびりついている。
 二人とも、宙に浮いた物体を珍しそうに見つめている。
「信じられん、ですぞ・・・」
「うむ、そうじゃのぉ・・・一体、これはどうやって作ったんじゃ?」
 オスマンは杖を下ろす。同時に物体も机の上に降りた。

「ミスタ・コルベール、彼に色々と便宜をはかってあげてくれ。他の教員にはわしから話しとく」
「分かりました」
 二人は話を切り上げて朝食に向かう。だがその足取りは、足枷でも着けているかのように重い。
 机の上には、皮布の上に置かれた物体が残った。ヤンの身柄の扱いに頭が一杯で、元通り片付けるのを忘れてしまったようだ。


 机の上に置かれているのは、トマホークだ。
 柄の部分が切れ、ヘッド部分しか無い。。鏡のような見事な切り口を下に覗かせる。
 そして、その刃にはどす黒い血がついていた。だが、二人が注目していたのは血ではない。刃そのものだ。
 宇宙歴800年。トマホークの刃は帝国でも同盟でも、炭素クリスタルで作られている。簡単に言うと、それは巨大な人工ダイヤモンド。




 アルヴィーズの食堂では、生徒達の食事が終わる所だった。教師達も中階のロフトに揃い、お茶を飲みながら歓談に興じている。
 二人はロフトに上がりながらも、生徒達の方を見やる。特にルイズの席の辺りを。だがいるのはルイズだけ。ヤンの姿はなかった。食堂全体を見回すが、やはり彼の姿はない。
 二人が自分たちの席に着くと、メイド達がお茶を注ぎに来た。

 コルベールはお茶を口にしながら、黒髪をカチューシャで纏めたそばかすのメイドに尋ねた。
「君、シエスタ君だったね?例の、平民の使い魔なんだけど」
「あ、はい。ヤン・ウェンリーという人ですね?」
「そうそう、彼は朝食はどうなってるのかな?」
「はぁ、それでしたら先日ミス・ヴァリエールから命じられまして、小さくて古くて堅いパン一個と薄いスープを床に直接置いておくように、と」
 ぶふぉっ!
 思いっきりお茶を吹き出した。コルベールも、ついでにオスマンもゲホゲホとむせこんでしまう。
「き!君っ!それは本当か?!」
 慌ててテーブルや床を拭くメイドに必死で問いただしてしまう。
「いえ、確かに先日そのように命じられたのですが、今朝になって『厨房で他の平民達と共に食べさせよ』と。今、彼は使用人用の食堂にいます」
 これを聞いたコルベールは、安堵の溜め息をついて胸をなで下ろす。
 オスマンは、胃が痛くなってきた。




 朝食が終わり、授業が始まった。
 オスマンは学院長室に、コルベールは自分の授業に行く。ヤンがルイズの後をついて教室に向かうのを確認しながら。
 そしてしばらくすると

 どっかーん

 どこからか凄まじい爆発音が響いてきた。
 その爆発音の原因は何か、この学院に知らぬ者はいない。だが、その原因の近くにいるはずの人物について知る者は少ない。
 少数の「知る者」であるコルベールは、即座に自分の授業を放り出し、音の方へ駆け出した。もくもくと窓から煙が上がる教室へ。


 教壇には、爆発でボロボロになったルイズと、吹っ飛ばされ気絶してるミセス・シュヴルーズ。そして崩壊した教室があった。机も椅子も吹き飛び、使い魔達が暴走し暴れ回っている。
 コルベールは冷や汗をだらだらと流しながら、ヤンの姿を探す。
 しかし見つからない。

 もし、外へ吹き飛ばされていたり、机や椅子の下敷きになっていたら・・・


 そんな最悪の事態が脳裏をかすめる。
 だが、最後尾の机の影に、壁際でへたり込んでいるヤンの姿を見つけた。見たところ驚いて腰が抜けただけらしく、怪我はない。
 コルベールは安堵の溜め息をつく。同時にハラハラと頭髪も落ちていく。


 学院長室の壁にかけられた大きな鏡に映し出された教室を見ていたオスマンは、彼に関する予想が外れてくれる事を、捜索隊がハルケギニアまで来ない事を始祖ブリミルに祈っていた。
 痛む胃を必死にさすりながら。




 これが、ゼロと呼ばれる理由だったんだね

 そう思い知らされたヤンだが、しょんぼりと箒を掃く少女に無神経な言葉をかけるようなまねは出来なかった。黙って吹き飛んだ机や椅子を片付けていく。
 ルイズは教師に教壇で魔法の見本を示すよう命じられた。だが彼女が魔法を使うのを必死に止めようとするクラスメート達。結果、誰でもできる簡単で安全なはずの魔法を、大爆発させた事実。これらはヤンが自分の今後を考える上で、あまりにも頭の痛い事実だった。
 使う魔法全てが爆発という結果になる魔法使い。
 大貴族の子弟ではあるが、落第寸前の落ちこぼれ。
 メイジでありながら、誰にもメイジとは認められない孤独と劣等感。
 当然、彼女への風当たりは、彼女の下で働くことになった自分へも及ぶ。
 なにより、自分を召還したはずの彼女が、自分を送り返すことができない。話を聞いたところ、そもそも送還魔法自体存在しないというが、あっても彼女の力量では戻せないだろう。


 もっともヤンは、彼らの魔法で自分を元の場所に送り返してもらう、という希望はすでに抱いていなかった。
 彼らの文明レベルは地球の古代ヨーロッパ並。当然宇宙に関して何の知識もない。「大地はまっ平らで、ゾウの背に乗っていて、星や太陽が周囲を回っている」とか考えている連中に、銀河の彼方や別宇宙へ送り返してくれと頼む。
 冗談にもならない。
 そもそも、本当に元の場所へ送り返せるとしたら、そちらのほうが大問題だ。ヤンが撃たれたのは、イゼルローン回廊という宇宙空間を航行していた巡航艦『レダⅡ』号の中。つまり、ヤンは真空の中に宇宙服もなしに放り出されることになるのだから。

 救難信号を送れないかな・・・でも送れても、届かないだろうなぁ

 外れた扉をはめなおしながら、そんなことをずっと考えていた。


「あんただって、あたしを馬鹿にしてるんでしょ」
 箒を握り締めるルイズが、押し殺した声でつぶやく。
「ビックリしたのは本当だよ。すごい爆発だった」
「・・・昔から、そうよ。どんな魔法も必ず爆発させるの。成功確立ゼロ。だからゼロのルイズ」
「そうか・・・」
 どうにか扉をはめなおしたヤンは、手をポンポンと叩きながら床のゴミを見渡す。
「でも、僕を召還することはできたようだね。あと契約も」
「それが、生まれてはじめての成功だったの・・・でも、やっぱり失敗だった。召還したのはあんたの死体。なんとか蘇生させて契約したけど、全然使い魔になってない」
 箒でかき集めたゴミの山を前に立ち尽くすルイズ。そのしょぼくれた姿は、昨夜ヤンの前で見せた強気な少女と同じものだとは思えないほどだ。


 自分を奴隷にしようとした娘ではあるが、さすがに痛ましい。なんとか彼女を元気づけられないものか、と慣れない思考に頭を捻ってしまう
「その、皮肉のつもりはないんだけど、でも、君のおかげで私は無事に生き返ることができたんだ。それに、こうやって使い魔としてではなく、一人の人として君と話をすることができる。
 君にとっては不幸な事実だけど、でも僕はとても感謝しているよ。
 まぁ、君は僕からの感謝ではなく、無条件の絶対服従が欲しかったんだろうけど」
「ええ。平民の同情なんか役に立たないわ」

 ヤンはルイズのうつむいた顔を覗き込む。

 そこには、落ち込んではいるものの、嘘とか虚勢とかは見られない。ただの真顔があるだけだ。つまり、本当に彼女は平民をメイジの所有物かその辺の動物と同類だと思っている。
 その下等動物のはずの自分にすら彼女は、出て行かないで欲しい、と泣いて懇願せざるを得なかった。その屈辱はどれ程の物か、想像もつかない。

 この世界の徹底した貴族制度。その中で平民として生きていくことを強いられる自分、メイジとして生きることが困難な少女。そんな二人が苦し紛れに結んだ雇用契約。

 この目の前のゴミみたいには片付かない。ちり取りでゴミを拾いながら、今後の不安に胸を痛める二人がいた。




 場所は再び学院長室。
 お昼休みではあるが、昼食返上でオスマンとコルベールは議論を続けていた。
 そして、ルイズ・ヤンと同じくらい二人も胸を、そして頭を痛めていた。
「・・・やはり、他の教師達はダメでしたか・・・」
「うむ…全く、笑われてしもうたわい。ただの平民を何故そこまで気にかけるのか、と」
「こちらもダメでした。彼が軍人だとか、遙かに高い技術を持つ国の出身だとか、誰にも信じてはもらえませんでしたぞ」
「そうじゃろなぁ。というか我々自身が半信半疑、推測が外れている事を願ってるのじゃから」
 二人とも、ヤンの処遇について他の職員に話をしていた。だが、このトリステインはゲルマニアとは違う、昔ながらの封建的貴族社会だ。平民は、ただ平民と言うだけで人間扱いはされない事も多い。そしてハルケギニア以外の世界など想像した事もない人がほとんど。
 理解など得られるはずもない。

 二人してふはぁ~っと本日何度目かの溜め息をついていると、朝と同じように、いや朝より激しく扉がノックされた。
 オスマンの言葉を待たず、ロングビルが扉を開け放ち息を弾ませて叫び出す。
「オールド・オスマン!大変です!今、食堂で生徒同士のケンカが起きて」
「なに?全くガキ共が・・・誰が暴れとるんじゃ?」
「そ、それが・・・ぜ、ぜっ」
 ロングビルは、息を詰まらせてなかなか次の言葉が出ない。
「・・・ぜ?」
 オスマンの促しに、ロングビルはようやく言葉を吐き出した。

「全員です!」

「「なっ!?」」
「ほぼ全生徒が、一人の女生徒を、ミス・ヴァリエールを囲んで、その、つるし上げにしようとしてます!!」
 今度は男二人が言葉を失った。




 アルヴィーズの食堂では、生徒達の食事が終わった所だった。
 そして、それを待っていたかのように、事件は起きた。
「ちょっとぉ、ミス・ヴァリエールぅ?話しがあるんだけどぉ」
「・・・なにかしら?ミス・シャラント」
 食事を終えたルイズに声をかけて来たのはトネー・シャラントという女生徒。周囲には彼女の友人達もクスクスと笑いながらついてきている。
 トネーのニヤニヤとした下品な笑いにルイズの不快感がつのる。
「あなたが呼び出したゾンビの事よ」

 ゾンビ。

 その言葉だけでルイズにはトネーの、そして周囲の取り巻き達が何をしに来たかは理解出来た。瞬間、彼女の顔は真っ赤に染まる。椅子を跳ね飛ばして立ち上がる。
「ゾンビなんかじゃないわっ!れっきとした人間よ、ちゃんと生きてるじゃないの!?」
「はっ!死んでたのは事実よ。つまりアレは動く死体。ゾンビよ」
「治療して治ったわ!ちゃんとした人間よ!」
「ふーん、アレって人間なんだ」
「そうよ、もう元気になって歩き回ってるわよ」
「で、あなたは・・・何?」
「え・・・」

 あなたはなに
 そう尋ねられたルイズは、質問の意図が分からなかった。
 わたしは・・・何?
 改めて、考えてみる。ルイズとは、なんなのか。

 口の端を醜く釣り上げて、トネーはさらに続けた。
「よーく考えてごらんなさいな。使い魔は、主の魔力や系統をそのまま現すのよ。なら、死体を召喚するあなたの系統は、何?」
「何って・・・私の、系統・・・使い魔が、人間で、死んでて・・・」

 ルイズの震える手が自身の顔を覆う。すくんだ足で後ずさっていく。

「死体の系統、それはただ一つ。『死』よ」
「死・・・」

 何かの救いを求めるように、ルイズは周囲を見る。
 だが、そこに救いはなかった。
 ルイズを見つめる何百という生徒達の白い目。それは等しく軽蔑・疑念・嫌悪、いやもはや憎しみすら含んでいた。

 トネーの取り巻きが、そして近くで聞いていた他の生徒達までもが、口々に彼等の心の中に溜め込んでいた物を吐きはじめる。
「あんた、始祖ブリミルの祝福を得ていないのは間違いないわね」
「使う魔法、全部爆発か・・・なるほど。『死』だな」 
「もういい加減言わせてもらうけど、あんたの爆発で皆迷惑してるのよ!」
「まったくだ!さっきの爆発騒ぎで死んだ使い魔、俺のラッキーを返せよっ!」
「ヴァリエール家の三女だからって甘やかされて、いい気になってんじゃないわよ!!」
「どうせ、あの平民だってどっかから連れてきたんだろ?」
「爆発に紛れて召喚したように装おうとしたら、平民自身が巻き込まれたんだろうねぇ」
「ハッキリ言って、あんたメイジじゃないわ」
「始祖ブリミルより授けられし4系統。これを引き継がない者はメイジと言えない」
「つか、お前は呪われてる。死体を召喚した事でハッキリしたよ」
「ゼロのルイズならまだしも・・・呪詛のルイズか。もう退学だな」
「うん、退学しかないよ、これ」
「つか、出てって。今すぐ」
「みんなのために、消えて頂戴。死に魅入られた女なんて汚らわしいわ。こっちが祟られ
るなんて良い迷惑よ」


 周囲からは、消えろだの、出て行けだのという罵声が散々に浴びせられる。
 もはやルイズも虚勢を張ることができない。耳を塞いで目を閉じてしまう。
 だが耳を塞いですら、怒号と嘲笑が彼女の耳に届く。
 震える足が、彼女のさほど重くもないはずの小さな身体すら支える力を失い、地に膝をつきそうになる。


「止めて下さいっ!!」


 突然、厨房の方から大声がした。
 そこにはヤンがいた。
 軍服の上にエプロン姿、手には泡まみれの包丁。洗い物の最中だったらしい。
 全員が静まりかえり、声の主である平民に注目する。

「えっと、あの、ですね。私が死にかけの状態で召喚されたせいで、皆さんに余計な心配をかけてるんだと思います。でも、私はこうしてちゃんと生きているわけですし、ミス・ヴァリエールは私を助けるために尽力して下さいました。
 ですから、ミス・ヴァリエールは召喚に成功しましたし、呪われてもいません。系統の事は私には分かりませんが、どうかミス・ヴァリエールを責めないで下さい。
 お願いします」

 ヤンは、深々と頭を下げた。

 ヤンの対応は、とても常識的で良識的なものだと言える。帝国でも同盟でも、大概の事はこれで収まったろう。
 だが、ルイズの爆発魔法に日々迷惑していた若い貴族の生徒達は、たかが平民が頭を下げたくらいで頭に昇った血を下ろすはずがなかった。それはただの平民だと思われているヤンが相手でも同じだ。

「下がれ下郎っ!」
 トネーが杖をヤンに向ける。
「たかが平民ごときが貴族に口出しするとは何事か!分際をわきまえよ」
「はぁ、確かに私は魔法の使えない身です。でも、命の恩人が困っているのを見過ごせないのに身分は無いと思うのです」
 ヤンは平身低頭しつつも下がろうとはしない。
 ルイズが、驚いてヤンを見つめる。この場でただ一人、並み居るメイジ達を前にしても恐れずに自分を擁護してくれる中年男を。

 だが、貴族の子弟達は、ヤンの仲裁に耳をかそうとはしていなかった。
 太った少年の杖がヤンに向けられ、口からルーンが漏れる。

「『ウィンド・ブレイク』!」

 杖から放たれた突風が食堂を突き抜ける。
 それは頭を下げているヤンを壁まで吹き飛ばし、したたかに叩き付けた。
「・・・?」
 太った少年は、目の前に起きた事が分からなかった。


 吹き飛ばしたはずの男が、壁に叩き付けられるはずが、壁に立っていたからだ。壁に垂直に着地した、と言える姿だ。
 何のダメージを受けた様子もなく、そのまま床に降り立った。



「『ファイア・ボール』!」
 横合いから別の生徒が火の玉を撃ちだした。
 だが、ヤンは慌てるでもなく、飛んできた火の玉をヒョイと避けた。
 避けられた火の玉が壁際の机に当たって火の粉を飛び散らす。


 食堂に、どよめきが起きる。
 中肉中背の、どうみても冴えない中年の平民が、いくら学生とはいえメイジの魔法を受けて平然としている。
 そしてその様子を見渡したヤンは、再び深々と頭を下げた。

「私の無礼は、この通り謝罪致します。ですが、どうかここはミス・ヴァリエールを、私の命の恩人をお許し下さい。この通りです」


 ヤンは、頭を下げたまま動かない。
 そして食堂の学生達も、どうすべきか、どう答えるべきか分からず視線を泳がせる。


「諸君!ここは彼の言う通りじゃないか!?」
 そう言って前に進み出たのは、薔薇の花を手にしたキザッたらしい少年。
 大げさに両手を広げて、聴衆を前にした演説家よろしく朗々と語り始めた。
「これ以上ミス・ヴァリエールを叱責するのは、貴族の名誉に反するのではないかな?見ての通り、かの平民はゾンビでもなんでもないんだ。諸君らの疑念は晴れたと言うべきだろう!」

「ギーシュ、なぁ~にカッコつけてるのぉ?二股ばれたヤツがえらそーに」
生徒達の中から、甘ったるい女性の声があがる。

「うぐ、キュルケ・・・それは言わないでくれないかなぁ」
 ギーシュに名を呼ばれたのは、炎のように赤く長い髪を持つ褐色の肌の女性。巨乳を揺らしながら、むせ返るような色気と共に前へ進み出る。
「大方、この前二股がばれてケティとモンモランシーに振られたから、名誉挽回にカッコつけようとしてるんでしょ?似合わないのよねぇ」
「ぐぐ、いや、それとこれとは」
 言われたギーシュは、明らかに動揺してしまっていた。
「はいはぁい!そうよね、そう言う事にしといてあげるわ。確かにギーシュの言う事が正しいわね。
 というわけで!あなた達、バカ騒ぎはこれでお終いよぉ」

 二人の貴族にうながされ、生徒達はブツブツと不平や捨てぜりふを残しつつも、パラパラと散っていった。
 あとに残ったのはギーシュとキュルケとルイズ、そして青い髪の少女に、ヤン。
 ルイズは、へなへなと力なく床に座り込む。
 ヤンは慌ててルイズに駆け寄り、ルイズを助け起こす。
 メイド達はそそくさと食器を片付けたり焦げたテーブルを下げたりしつつも、チラチラとルイズ達を、特にヤンを見つめている。


「だ!大丈夫かねっ!?」「ミス・ヴァリエールもミスタ・ウェンリーも無事ですか!?」
 二人の安否を問う叫びと共に食堂へ駆け込んできたのは、オスマンとコルベールだ。その後にロングビルも続く。
「あらあら学院長にミスタ・コルベールも、ゆっくりしたご到着ですことぉ」
 赤い髪をかき上げながらのキュルケの皮肉も、二人の耳には入らない。
 息を切らしながら騒ぎの主役の元へと駆けてくる。コルベールがヤンの身体をペタペタ触って無事を確認した。
「ミスタ・ウェンリー!怪我はありませんか!?」
「ええ、私はなんともありません・・・あの、ちょっと、止めて欲しいのですが」
「え?あっと、これは失礼しましたぞ」
 コルベールは、慌ててヤンから手を離した。
「どうも。あの、でも、そのミスタ・ウェンリーというのも、なんです。私、ヤンの方がファミリーネームなんです」
「へ?はぁ、そうなのでしたか、失礼しました」

 オスマンの方はルイズの無事を確認している。
「ふむ、どうやらミス・ヴァリエールも無事のようじゃ。良かった良かった。だが、大事
を取って午後は部屋で休みなされ」
「なら、私が送っていきますわ」
 と名乗り出たのはロングビル。ルイズはコクリと頷いて秘書と共に寮塔へと歩いていった。


「それにしても、驚いたねぇ。冴えない風を装って、大した物じゃないか、平民君」
 ギーシュがジロジロと上から下まで、ヤンを値踏みするように眺めたおす。
 見られているヤンは、どうにも気持ち悪いようで顔をしかめてしまう。
「はぁ、まぁ、一応、軍にいましたので」
「そうかそうか!なぁるほどねぇ。ああ、名乗るのが遅れたね。僕はギーシュ・ド・グラモン。栄えあるグラモン家の四男だ。覚えておきたまえよ」
「あ、はい、こちらこそ。私はヤン・ウェンリーと言います」
 右手を胸に当てて頭を下げるヤン。
 ヤンの前にはキュルケも、不自然なほど色っぽい仕草でやってくる。
「あたしはキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は『微熱』よ。よろしくね、ミスタ・ヤン。
 それと、こっちにいるのが親友のタバサよ」
 タバサと呼ばれた青い髪の少女が僅かに頭を下げる。
 コルベールはようやく安心したようで、ダラダラと脂汗を滝のように流しながらも笑顔を浮かべた。
「さぁさぁ、もう授業の時間ですぞ。そろそろ教室へ向かいなさい」

 ギーシュ達も立ち去り、後には冴えない中年男二人と老人が残った。

 ぅおっほんっ!
 オスマンが誤魔化すように咳払いを一つ。
「ともかく、じゃ。ウチの生徒達が失礼をしたようで、申し訳ない。皆にはワシから叱っておくで、どうか恨まんで欲しいのじゃ」
「いえ、恨むだなんてとんでもない。それでは、あの、厨房に戻ってよろしいですか?まだ洗い物がありますので」
 ヤンの手には、泡だらけの包丁が握られたままだった。



 ヤンが厨房に戻るのを見つめるオスマンとコルベール。
 厨房の方からは、もの凄い歓声が響いてくる。すっげぇじゃねえか!とか、尊敬しますわっ!!なんて叫び声も交じってくる。厨房に務める平民達にもみくちゃにされているのだろう。
 オスマンが呆然としながら呟く。
「一体、彼は何者なんじゃろうなぁ」
 コルベールも唖然として呟く。
「さぁ・・・いずれにせよ、あの柔和かつ勇敢、そして知的で謙虚な人となり。ただの軍人ではありませんぞ」
「そうじゃな。そして・・・これは本当に困った事じゃ」
 オスマンは天をあおいでしまう。
「彼が大人物であればあるほど、大規模な捜索隊が組まれるのじゃ」
 二人は突っ立ったまま、厨房から届く声を聞き続けていた。




 夕方の学院。
 あかね雲が広がる空の下、学院近くの森の中を走り回る人影があった。
 狼のように草むらを走り抜け、猿のように木々の間を飛び、風のように何者にも遮られることなく駆けていく。
「おっと、ごめんよ」
 森の中、眠っていた青い竜を見かけると、その人物は一言謝って即座に離れていった。
 あっという間に学院の正門が見える場所まで森を抜けてきたのは、ヤン。右手は胸の銃に触れたままだ。

「いやぁ~、まったく凄いなぁ」
 ヤンはじっと左手に光るルーンを見つめている。
「士官学校では実技は赤点だらけ。卒業後も全然鍛錬をしていなかったのに・・・。まさか、これほどの肉体強化を得られるなんて。さすが魔法の世界だなぁ。昨日のうちに気付いていなかったら、昼は危なかった」
 銃から手を離し、学院へ足を向けた。

 パチパチパチ・・・

 急に頭上から拍手がした。
 ヤンが上を向くと、ずっと上空にロングビルが浮いていた。杖を手に持ったまま、器用に拍手しながら降りてくる。
「お見事ですわ。さすが異国の将、という所かしら」
「やれやれ、いやだなぁ。ずっと見ていたんですか?」
 ロングビルはニッコリ微笑みながらヤンの前に降り立った。
「食堂での立ち振る舞いから、ただ者ではないと思っていましたが・・・やはり一軍を率いるだけの事はありますわね」
「まったく、どうして将だって分かったんですか?私の階級章は、この国の人には分からないはずですよ」
「ええ。今のあなたの言葉を聞くまで分かりませんでしたわ♪」
 ロングビルの引っかけに気がついたヤンは、照れ隠しにポリポリと頭をかいてしまう。
「あの、この事は内密にお願いします」
「あら、よろしいんですの?ご自分の立場を理解してもらえれば、待遇はずっと良くなると思いますわよ」
「いいんです。私の故郷の事は信じてはもらえないでしょうから。故郷での私の地位なんて、この国では意味がないです」
「そうですか、分かりましたわ。
 ところで、あなたの主の事なのですが・・・早く行ってあげた方がよろしいかと思いますわ」
「ああ、それで呼びに来てくれたんですね。わざわざすいません」
 ヤンはロングビルに一礼して、学院へ駆けていく。
 ロングビルは彼の背を見送った。




 ルイズは布団に潜り込み、丸くなっている。
 ヤンがベッドの横に来ても、何の反応もない。

「ねえ、ミス・ヴァリエール」
 一瞬ビクッと震え、ますます小さく縮こまってしまうルイズ。

「僕はね、確かに士官学校を卒業して軍に入った。
 でも、別に軍人になりたかったからじゃない。奨学金で歴史を勉強しようと思っての事なんだ」
 よっこらせ、とヤンはベッドの横にあぐらをかく。天井を眺めながら、のんびりと語り続ける。
「途中で歴史を専攻する科が廃止されちゃってね。それで、戦略とかを専攻する科に移されたんだ。たまたま、そちらの成績が良かった、というだけの理由で無理矢理ね」
 ルイズは何も答えない。
 ヤンも気にせず天井へ向かって言葉を投げかける。
「そしたらビックリだよ。いつのまにやら、何というか、たまたま戦争に負けなくて。気がついたら軍を辞めるに辞められない所まで来てしまった。
 時々思うんだ。あのまま歴史を勉強し続けていたら、どうなっていたんだろうかって。もしかしたら、ただの一兵士として前線に狩り出され、すぐに戦死していたかもしれないなぁ、と」

「・・・何が、言いたいのよ・・・」

 ルイズの小さな声がヤンの耳に届く。
「うん、まぁ、何が言いたいかと聞かれると、少し困るんだけど。つまり、世の中って言うのは分からないものだって言う事だよ。どこでどう転ぶかなんて、誰にも分からないんだ。
 暗殺されたと思ったら、いきなりハルケギニアに召喚されて、蘇生したと思ったら、使い魔にされてしまった私のようにね」

 ルイズがヤンに背を向けて、のそっと体を起こす。
 壁の方に顔を向けて、動かない。

「だから、その、いつか魔法がちゃんと使えるようになるかもしれないから、その時のために、ね。しっかり歩いて行こう、ということ・・・かな?」
 肩越しにチラッとヤンを見るルイズ。
「何よそれ。バッカみたい」
 言われたヤンは、ポリポリと頭を掻いてしまう。

「ねぇあんた・・・何か欲しいモノ、ある?」


「・・・うん?欲しいモノかい?」
 いきなりの言葉に、ヤンもふと首を傾げる。
「急に、どうしたんだい?」
 ルイズはぷいっと壁に向き直る。
「うぅっ、うっさいわね。何か言いなさいよ。もう、お金ほとんど残ってないけど、少しくらいなら、残ってるから。
 平民が欲しがる程度のものなら買ってあげるわ!」

 一瞬、クスクスと笑い出しそうになったヤンだが、すぐにオホンと咳払いをして誤魔化した。

「それでは、言わせてもらうよ。ただし、僕が欲しいのはモノじゃないんだ」
「・・・何よ」
「文字だ。この世界の本を急いで読めるようになりたいんだよ」
「なんだ、そんな事で良いの?」
「あと、乗馬も出来ないと。こんな辺鄙な場所じゃ移動に困ってしまう」
 乗馬、と聞いて今度はルイズが首を傾げる。
「あんた、馬に乗れないの?軍にいたのに?」
 キョトンとした瞳がヤンの方を向く。
 その目には、泣きはらした後がくっきりと浮かんでいた。
「うん。僕の国には馬はほとんどいなかったから。数がとても少ないので、軍では使ってなかったよ」
「そう・・・」

 ルイズはベッドからノロノロと降り立ち、机から本を取り出す。

「こっち、来なさいよ。文字、教えてあげる」
「うん、ありがとう」
「明日から、乗馬も教えてあげる」
「助かるよ」
「礼なんか、いらないわ」

 その日は、夜遅くまでルイズの部屋に灯りがついていた。

                   第2話  平民以上、メイジ未満  END

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